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第9章 ターニングポイント
33 ブラック・ヘロンとの対面
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クラーケンを倒して港へ戻った私宛に、シリウスやブラッドからブラック・ヘロンの襲撃者を捕らえたと通信が入った。そして他の敵は居なさそうだとも。
「これで全て終わったようね」
完全に警戒を解くべきではない。それでも事態は無事終息したと考えて問題はないだろう。
私の言葉に反応したザヴィヤにも伯爵邸での出来事を伝えると「スピカも無事でよかったです」と安堵した様子を見せた。
「わたくしはスピカの元に戻るわ。後始末はお願いね」
「かしこまりました。父上には私から報告しますのでご安心ください」
私はザヴィヤにお礼を告げて伯爵邸へと戻る。すると屋敷の庭にはシリウスが待っていた。
「ラティアーナ様、無事で何よりです」
「そちらもご苦労様。他の皆は?」
「ブラッド様とフレア、カレナは地下牢にいます。アルキオネはスピカの元で護衛を」
大体の貴族の屋敷には地下牢が設置されている。これは屋敷に侵入する犯罪者を捕らえていくことが多いからだ。伯爵にも話は通していて地下牢の使用許可はとってある。
「そう……だったら地下牢へ行くわ。ブラック・ヘロンのメンバーがどんな人物か知りたいし、聞きたいこともあるからね」
私は伯爵邸の中に入って地下へと向かう。階段を降りて向かった先には、少し広めの空間になっていて鋼鉄製の大きな扉があった。扉の外には敵から押収したと見られる様々な物が置いてある。
置かれている大半の物は、短剣などを含む暗器。他には投擲用の魔術具。そしてリボルバー式の銃と大きな銃だ。
私の記憶が合っていれば、大きな銃はM82と呼ばれるスナイパーライフルに近い形状をしている。他では見たことがないことからも敵の中には前世の記憶を持っている者がいるのかも知れない。
「銃を再現できるってことは、軍属か製造に関わっていたのかもしれないわね」
もっとも初めて話す前世持ちだったとしても、仮に同郷の身だったとしても許すつもりはなかった。
私は意を決して扉を開ける。すると中にはいくつかの鉄格子が見えた。その牢の中の一つにはボロボロの男が四人いて、私たちを襲ってきた連中と同じだった。
「ブラッドお疲れ様。何か聞き出せたことはある?」
「いや……流石に闇組織で有名なことだけはあるね。何も答えてはくれないみたいだ。まぁ…拷問すれば吐かせられるかも知れないけど?」
ブラッドが私にどうするかと視線を向けていた。流石は影の役割を持つノーティア公爵家なだけあって、潜入などの諜報だけでなく暗殺術や拷問術など幅広く技術を受け継いでいるのだろう。
「無駄だ…いくら痛めつけられても何も言わん」
口を割らないと言ったのはリーダ格であろう小柄の男だ。背格好からして私のことを遠くから狙ってきた人だろう。
私は探知魔術を行使して牢にいる者の魔力を探る。それだけで王都で狙った者がこの中にいるかが判明する。
「なるほどね。この中のリーダ格っぽいあなたが王都でスピカを襲撃しアドリアスに反撃を受けた犯人だったのね。本名は分からないけれどセレーナ王国で消息をたった元Aランク冒険者……登録名はジョン・ドゥ」
「なっ!?どうしてエスペルト王国の貴族がそんな情報を持っている!セレーナ王国と親交はないはずだ。そもそも冒険者情報なんて手に入るはずが……」
そこまで言葉にして、しまったというような表情を見せた。慌てて口を閉じるが手遅れだろう。そもそも魔力による判別を行った時点で誤魔化す道は閉ざされているわけだが。
「と、とにかく。たとえ何をされても何も言わない。組織の秘密は口外しない。それが闇の世界に踏み込んだ者の血の掟だ。特に俺たちが痛みには慣れている。拷問は無駄だ」
闇組織に一度でも入った者は抜けることを許さない。もしありえるとしたら死んだときのみ。それがこの世界での常識だろう。それこそ誰かが作った組織でも国が裏で関係している組織でも変わらない。
だからこそ目の前の四人は口を閉ざす。仮に話して解放されたとしても組織にばれればどんな目にあうか分からないからだ。
「勘違いしてもらっては困るよ。僕の拷問はあくまで精神干渉しやすくする手段でしかない。僕くらい闇属性の適性が高いとね……自白を促すような子供騙しの魔術じゃなくて、記憶を覗く系統の魔術を使える。君たちの心に隙間ができた時、全てが終わる」
「……」
精神干渉を防ぐには魔術による防御か高い精神力を持って防ぐしかない。
敵もそれは知っているようで言葉に詰まっていた。ブラッドの纏っている気配からして冗談や脅しではなく、本気で行うと感じているのだろう。
そしてその気負い自体も精神干渉を受ける隙となり得る。
「尋問はブラッドに全面的に任せるわね」
「わかった。明日までには終わらせておくよ…フレアとカレナの二人を借りたままでいいかな?」
「良いわよ。三人ともよろしくね」
ブラッドたちに任せておけば大丈夫だろう。そう判断して地下牢を後にする。最後にスピカの元を訪れようかと考えていた時、ふと目の前にある銃が目に入る。
後で解析するために魔術省に渡そうと思っていたが少し気になった。てはとって魔力を流してみると、いくつかの術式が仕込んであるようだった。
「なるほどね……雷管を魔術で代用して炸裂、銃弾を飛ばしているのか。あと銃弾にも魔力が込められているのね」
私が宝石や水晶に魔力を込めているように、多くの魔術士が杖に魔力を溜めておく仕組みを作るように、この銃は魔力を込めた弾丸を消費しているようだ。
応用すれば銃や杖以外の武具にも使えるかも知れない気がした。
「これで全て終わったようね」
完全に警戒を解くべきではない。それでも事態は無事終息したと考えて問題はないだろう。
私の言葉に反応したザヴィヤにも伯爵邸での出来事を伝えると「スピカも無事でよかったです」と安堵した様子を見せた。
「わたくしはスピカの元に戻るわ。後始末はお願いね」
「かしこまりました。父上には私から報告しますのでご安心ください」
私はザヴィヤにお礼を告げて伯爵邸へと戻る。すると屋敷の庭にはシリウスが待っていた。
「ラティアーナ様、無事で何よりです」
「そちらもご苦労様。他の皆は?」
「ブラッド様とフレア、カレナは地下牢にいます。アルキオネはスピカの元で護衛を」
大体の貴族の屋敷には地下牢が設置されている。これは屋敷に侵入する犯罪者を捕らえていくことが多いからだ。伯爵にも話は通していて地下牢の使用許可はとってある。
「そう……だったら地下牢へ行くわ。ブラック・ヘロンのメンバーがどんな人物か知りたいし、聞きたいこともあるからね」
私は伯爵邸の中に入って地下へと向かう。階段を降りて向かった先には、少し広めの空間になっていて鋼鉄製の大きな扉があった。扉の外には敵から押収したと見られる様々な物が置いてある。
置かれている大半の物は、短剣などを含む暗器。他には投擲用の魔術具。そしてリボルバー式の銃と大きな銃だ。
私の記憶が合っていれば、大きな銃はM82と呼ばれるスナイパーライフルに近い形状をしている。他では見たことがないことからも敵の中には前世の記憶を持っている者がいるのかも知れない。
「銃を再現できるってことは、軍属か製造に関わっていたのかもしれないわね」
もっとも初めて話す前世持ちだったとしても、仮に同郷の身だったとしても許すつもりはなかった。
私は意を決して扉を開ける。すると中にはいくつかの鉄格子が見えた。その牢の中の一つにはボロボロの男が四人いて、私たちを襲ってきた連中と同じだった。
「ブラッドお疲れ様。何か聞き出せたことはある?」
「いや……流石に闇組織で有名なことだけはあるね。何も答えてはくれないみたいだ。まぁ…拷問すれば吐かせられるかも知れないけど?」
ブラッドが私にどうするかと視線を向けていた。流石は影の役割を持つノーティア公爵家なだけあって、潜入などの諜報だけでなく暗殺術や拷問術など幅広く技術を受け継いでいるのだろう。
「無駄だ…いくら痛めつけられても何も言わん」
口を割らないと言ったのはリーダ格であろう小柄の男だ。背格好からして私のことを遠くから狙ってきた人だろう。
私は探知魔術を行使して牢にいる者の魔力を探る。それだけで王都で狙った者がこの中にいるかが判明する。
「なるほどね。この中のリーダ格っぽいあなたが王都でスピカを襲撃しアドリアスに反撃を受けた犯人だったのね。本名は分からないけれどセレーナ王国で消息をたった元Aランク冒険者……登録名はジョン・ドゥ」
「なっ!?どうしてエスペルト王国の貴族がそんな情報を持っている!セレーナ王国と親交はないはずだ。そもそも冒険者情報なんて手に入るはずが……」
そこまで言葉にして、しまったというような表情を見せた。慌てて口を閉じるが手遅れだろう。そもそも魔力による判別を行った時点で誤魔化す道は閉ざされているわけだが。
「と、とにかく。たとえ何をされても何も言わない。組織の秘密は口外しない。それが闇の世界に踏み込んだ者の血の掟だ。特に俺たちが痛みには慣れている。拷問は無駄だ」
闇組織に一度でも入った者は抜けることを許さない。もしありえるとしたら死んだときのみ。それがこの世界での常識だろう。それこそ誰かが作った組織でも国が裏で関係している組織でも変わらない。
だからこそ目の前の四人は口を閉ざす。仮に話して解放されたとしても組織にばれればどんな目にあうか分からないからだ。
「勘違いしてもらっては困るよ。僕の拷問はあくまで精神干渉しやすくする手段でしかない。僕くらい闇属性の適性が高いとね……自白を促すような子供騙しの魔術じゃなくて、記憶を覗く系統の魔術を使える。君たちの心に隙間ができた時、全てが終わる」
「……」
精神干渉を防ぐには魔術による防御か高い精神力を持って防ぐしかない。
敵もそれは知っているようで言葉に詰まっていた。ブラッドの纏っている気配からして冗談や脅しではなく、本気で行うと感じているのだろう。
そしてその気負い自体も精神干渉を受ける隙となり得る。
「尋問はブラッドに全面的に任せるわね」
「わかった。明日までには終わらせておくよ…フレアとカレナの二人を借りたままでいいかな?」
「良いわよ。三人ともよろしくね」
ブラッドたちに任せておけば大丈夫だろう。そう判断して地下牢を後にする。最後にスピカの元を訪れようかと考えていた時、ふと目の前にある銃が目に入る。
後で解析するために魔術省に渡そうと思っていたが少し気になった。てはとって魔力を流してみると、いくつかの術式が仕込んであるようだった。
「なるほどね……雷管を魔術で代用して炸裂、銃弾を飛ばしているのか。あと銃弾にも魔力が込められているのね」
私が宝石や水晶に魔力を込めているように、多くの魔術士が杖に魔力を溜めておく仕組みを作るように、この銃は魔力を込めた弾丸を消費しているようだ。
応用すれば銃や杖以外の武具にも使えるかも知れない気がした。
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