王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第8章 女王の日常と南の国々

31 反攻作戦開始

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 二日後の早朝
 三カ国合同作戦が決行される日。

 暁の空は綺麗な様相を見せていた。

 私は起きた後、身支度を整えて艦橋へと向かう。
 昨日まで魔力を使わずに安静にしていたため身体もほぼ回復。体調も万全に仕上げてある。

 艦橋に入ると既に皆、席についていて各部隊長も集まっていた。

「陛下。出発準備は完了しました。飛空船への魔力補給及び物資補給も万全です」

 渓谷に設営した陣地は全て片付け、兵士達も輸送船に乗り込んでいる。
 エインスレイス連邦やドラコロニアへの支援用の食糧や薬類、消耗した魔術具や砲弾もエスペルト王国運搬して補充済みだ。

「最終確認よ。第一目標地点は、ここから南に50キロメートル。前回破壊した拠点から更に進んだところね。拠点はなるべく破壊せずに奪取することを優先するわ。占領後が陣を築いて他作戦地域への支援する基点とする…総指揮はエクハルト、船の防衛はアドリアス、イリーナ、シクスタスに任せるわ。あとはわたくしについてだけれど…」

 私は言葉を止めてると空中に浮かび上がっている地図を指して

「これが目標地点の地図。そして第一目標から南東へおよそ10キロメートルの場所。そこは巨大な監獄になっているらしいわ。第二目標地点として、わたくしとシリウス、アルキオネ、デトロークの四名で潜入する」

 と告げた。

 ナイトメア内での邪気による進化というものは、兵士に対してのみ行っているらしい。指揮官以上や兵士以外はそのままのようだが、邪気による実験を行なっている可能性がある。
 監獄には侵略時に捕らえた民がいるため、実験場になっている可能性が高かった。

 最低でも囚われている人々の救出、可能であれば制圧まで行う。それが第二目標だ。

「他国でも武力を持って君臨する王はいますが…ここまで最前線で戦う王は陛下くらいですよ…」

 私の説明にシクスタスは呆れたような視線を向けて言葉にした。
 アドリアスとイリーナも苦笑していて、エクハルトは少し戸惑っているようだ。

「わたくしらしいでしょう?さて、時間ね」

 雑談を交わしている間に作戦開始の定刻となる。
 窓から陽が見え始め、朝日が艦橋の中を照らし出した。

 私は通信用魔術具を手にとって全軍への通信へ切り替える。

「総員傾注せよ!これより第一目標地点へ移動を開始する。全艦出航!」

「アンカー抜錨!旗艦エスペルト浮上開始、高度10メートル、微速前進!他の船は続け!」

 私の言葉に続いてエクハルトが指示を出す。
 船と地面を固定していた錨を格納、船が垂直に上昇した。
 浮上したところでゆっくりと前に進んでいく。他の船も一列になって動き出した。

「高度そのまま…第3戦速。輸送船を囲むように編成」

 渓谷を突破したところから徐々に加速を始めた。
 戦艦4隻で3隻の輸送船の四方を囲み、更にその前を旗艦エスペルトが飛翔する。

 前回ほど高度を上げないため速度は出せないが、代わりに魔物と相対する可能性が少ない高度でもある。

 8隻の飛空船は魔物と衝突することなく進み続けた。

 そして半刻少し経った頃。ようやく第一目標となる街が見えてきた。

「第一目標に接近。降下開始予定まであと500!陛下…準備はいいですか?」

「大丈夫よ!いつでも行けるわ」

「了解しました。射出準備に入ります。高度を3000メートルまで上昇。第4戦速!」

 エクハルトに通信を返すと、船が急上昇して更に加速していく。

 第二目標へ向かう私を含めた四人は、飛行船の最下層後部の降下室にいた。
 監獄へは侵入することが目的のため船では近付けない
 第一目標から第二目標までのおよそ10キロメートル。四人しての空の旅を楽しむ予定だ。

 マントのように身につけていて、魔力を流すと翼のように広がる装備。これを持って自由落下によって加速、徐々に落下しながら飛行することが可能になる。
 さらにはマントに光学迷彩用に雷光属性の魔術が刻まれていた。周囲の光を屈折させることで透過させる魔術は、室内や暗いところでは効果が薄い。
 しかし空のように一面青であったりすると効果が高くなる性質がある。

「降下箇所到着!パッチ開きます!」

「了解…出撃するわ!」

 部屋の床にあるパッチ部分が開いていく。
 外の冷たい空気が入ったからと同時に、雲が見えてさらに遠くに大地が見える。

 一歩踏み出すと落下する感覚と共に景色が一変する。
 周囲を覆うのは青と白。空の中、そして雲の中を通って落下していく。
 マントに魔力を流すと翼が広がった。急浮上するように体全体が引っ張られた後、姿勢が安定していく。

「このまま飛行体制を維持。第二目標である監獄へ向かうわ!」

 後ろにいる3人に通信を送ると、シリウスとアルキオネからは了解とのアイコンタクトが返ってきた。デトロークからも視線が合うと首肯される。

「あれがそうね…塀沿いの塔に見張りはいるけれど…中の監視が主な役割みたい。外を監視している者も地面にしか注意していないし、このまま屋根の上に降りるわ」

 私たちは空を飛びながらも徐々に高度を下げていく。
 光学迷彩を用いながらなるべく音をたたないよう体勢を整えた。

「アルキオネ…着陸補助頼んだわよ!」

「了解…シリウスとデトロークも行きますよ」

 アルキオネは魔術を行使して風を操作する。
 向かい風を抑えることで推進力を低減、さらに上昇気流を生み出して落下速度を緩めた。

 そして静かに屋根の上に降り立ったのだった。

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