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第8章 女王の日常と南の国々
17 ナイトメア戦線へ出陣
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日が変わって出陣当日。
転移あるいは飛空船によって王国軍5千人は、サウスガーディアン領の国境門の外側に集結を始めていた。
なおデトロークについてはシリウスが監視も兼ねて近くにいるようにしている。私の近くにはアルキオネが護衛として近くにいる。
予定では今日の夕方まで集結を完了。夜にまぎれて渓谷の間を低空飛行し陣を敷くことになる。
私も王都から出発する兵士たちと共にサウスガーディアンに移動していた。
今はドミニクと共に最終確認をしている。
「ラティアーナ陛下。今回の部隊ですがこのように編成しました。どうですかな?」
「これは!?」
編成表を見た私は、思わず声を上げてしまった。というのも記載されていた編成は想定外で、けれども嬉しいもので
空軍
8隻 以下1千人
陸軍
騎士隊 大隊長アドリアス 以下2千人
魔術士隊 大隊長イリーナ 以下1千人
弓兵隊 大隊長シクスタス 以下1千人
という構成になっていた。実際には近衛騎士団が百人と諜報部隊百人が今回の総数となる。
「これならば陛下も戦いやすいと思いまして」
「ありがとう。とても助かるわ」
アドリアスが参戦するのは聞いていたため驚きはない。そしてシクスタスも以前の帝国戦でなじみがあるため良く知っている相手だ。
イリーナの参戦には一番驚いたが、親しいことに加えて王国最高峰の魔術の実力というのは、とてもありがたいものだ。
「アドリアス…お前にはこれを渡しておく。元々学園を卒業した時に渡すつもりだったが…少し早くても構わないだろう」
近くにやってきたアドリアスにドミニクが声をかける。
「これは聖槍聖槍ファスケストですか…」
聖槍ファスケスト。初代王が初代グラディウス家の当主に授けた槍だ。
以降は元帥を引き継ぐものが代々使っている王国軍元帥の証明でもある。
「ああ卒業と同時に家督と元帥の立場を譲るつもりだったからな。まぁ私もまだ影から支えるつもりではあったが数月の差だ。問題あるまいて」
「父上…ありがとうございます」
アドリアスも表情を引き締めるとドミニクに向き合った。
「アドリアス良かったじゃない。期待しているわよ」
「ありがとう。全力を尽くす」
こうして話している間にも王国中から飛空船が集まってくる。ドミニクは私が不在の間全ての軍事の指揮を取るため「では後は頼みました。陛下後武運を」とだけ言って王都に帰っていった。
そして昼が過ぎて太陽が下り始める頃。
この場に飛空船8隻とおよそ5千人の王国軍が集結した。
少しの休憩を挟んだ後、兵士たちは整列する。
私は今から前に出て言葉を話す。
前の帝国戦との違いは士気をためだけでなく、作戦や陣形の説明もすることだ。
「総員傾注せよ!」
私の言葉が拡声の魔術具を通して大気に伝わっていく。
兵士たちの視線が一斉に集まったのを確認した私は、全員の視線を受け止めて言葉を続ける。
「今回の対ナイトメア戦線は、エインスレイス連邦およびドラコロニアとの協力体制となるわ。ナイトメアは大陸の南側を次々に侵略、支配下にしているけれど、当然これは許されることではない。これ以上の被害を出さないために、わたくしたちの国を守るためにここで死守すること!それが今回の防衛戦の目的よ!今ここにいる皆が再び笑いあって過ごせるように、家族や友人といった大切な人と過ごせるように。総員、生きて帰ることを最優先にして持てる力の全てを出しなさい!」
ここまでは士気を高めるための王としての話。
そしてここからは、司令官としての話だ。
「では作戦を説明するわ!わたくしたち王国軍は、渓谷の出口付近…平野の近くに陣を敷く。ここで相手が攻めてきた場合は、適宜迎撃する予定ね。相手の編成はまだ分からないけど、今までと同じであれば魔物の大群が来たあとに兵士たちが攻めてくる可能性があるわ」
ナイトメアの全ての戦いを知っているわけではないが、何度も手を変えてくることはないだろう。
それに教会や冒険者ギルドからの情報にもあったが、魔物を操ることはできても意思疎通をするのは難しい。飛龍のように知能が高い魔物はともかく、オークのような一般的な魔物は精々襲う方向を指示するくらいだ。
ただ突進してくる敵というのは、まともに戦えば恐ろしい。しかし罠にもはめやすい。
「渓谷の入り口に罠を仕掛けておくわ。警戒心の強い兵士はともかく、使い捨ての魔物の群れは直接手を出すまでもない。多重に仕掛けた罠で一網打尽にする。以上!」
私の言葉が終わると、兵士たちは敬礼を返す。
そしてついに渓谷へ飛びたつときが来た。
私を含む部隊長は旗艦エスペルトに乗船する。
船の中に入って艦橋に向かうと一人の壮年の男性が挨拶に来た。
「ラティアーナ陛下。よろしくお願いします」
「ええエクハルト。艦長として、空軍部隊長として頼りにしているわ」
本名はエクハルト・アクアリス。
私の家庭教師を務めていたユリアの弟にあたる。元々は飛空船の研究を行っていた魔術省の文官だった。
この船の開発にも関わっていて船のことはもちろんのこと、操縦だけでなく指揮能力も高いため部隊長に抜擢したわけだ。
各船の艦長が指示を出して出航準備を行っていく。
全ての船の準備が完了した報告を受けて
「全艦出撃!」
と伝えた。
日が暮れた頃。
8隻の飛空船は上空数メートルまで浮上し、目的地を目指して進みだした。
転移あるいは飛空船によって王国軍5千人は、サウスガーディアン領の国境門の外側に集結を始めていた。
なおデトロークについてはシリウスが監視も兼ねて近くにいるようにしている。私の近くにはアルキオネが護衛として近くにいる。
予定では今日の夕方まで集結を完了。夜にまぎれて渓谷の間を低空飛行し陣を敷くことになる。
私も王都から出発する兵士たちと共にサウスガーディアンに移動していた。
今はドミニクと共に最終確認をしている。
「ラティアーナ陛下。今回の部隊ですがこのように編成しました。どうですかな?」
「これは!?」
編成表を見た私は、思わず声を上げてしまった。というのも記載されていた編成は想定外で、けれども嬉しいもので
空軍
8隻 以下1千人
陸軍
騎士隊 大隊長アドリアス 以下2千人
魔術士隊 大隊長イリーナ 以下1千人
弓兵隊 大隊長シクスタス 以下1千人
という構成になっていた。実際には近衛騎士団が百人と諜報部隊百人が今回の総数となる。
「これならば陛下も戦いやすいと思いまして」
「ありがとう。とても助かるわ」
アドリアスが参戦するのは聞いていたため驚きはない。そしてシクスタスも以前の帝国戦でなじみがあるため良く知っている相手だ。
イリーナの参戦には一番驚いたが、親しいことに加えて王国最高峰の魔術の実力というのは、とてもありがたいものだ。
「アドリアス…お前にはこれを渡しておく。元々学園を卒業した時に渡すつもりだったが…少し早くても構わないだろう」
近くにやってきたアドリアスにドミニクが声をかける。
「これは聖槍聖槍ファスケストですか…」
聖槍ファスケスト。初代王が初代グラディウス家の当主に授けた槍だ。
以降は元帥を引き継ぐものが代々使っている王国軍元帥の証明でもある。
「ああ卒業と同時に家督と元帥の立場を譲るつもりだったからな。まぁ私もまだ影から支えるつもりではあったが数月の差だ。問題あるまいて」
「父上…ありがとうございます」
アドリアスも表情を引き締めるとドミニクに向き合った。
「アドリアス良かったじゃない。期待しているわよ」
「ありがとう。全力を尽くす」
こうして話している間にも王国中から飛空船が集まってくる。ドミニクは私が不在の間全ての軍事の指揮を取るため「では後は頼みました。陛下後武運を」とだけ言って王都に帰っていった。
そして昼が過ぎて太陽が下り始める頃。
この場に飛空船8隻とおよそ5千人の王国軍が集結した。
少しの休憩を挟んだ後、兵士たちは整列する。
私は今から前に出て言葉を話す。
前の帝国戦との違いは士気をためだけでなく、作戦や陣形の説明もすることだ。
「総員傾注せよ!」
私の言葉が拡声の魔術具を通して大気に伝わっていく。
兵士たちの視線が一斉に集まったのを確認した私は、全員の視線を受け止めて言葉を続ける。
「今回の対ナイトメア戦線は、エインスレイス連邦およびドラコロニアとの協力体制となるわ。ナイトメアは大陸の南側を次々に侵略、支配下にしているけれど、当然これは許されることではない。これ以上の被害を出さないために、わたくしたちの国を守るためにここで死守すること!それが今回の防衛戦の目的よ!今ここにいる皆が再び笑いあって過ごせるように、家族や友人といった大切な人と過ごせるように。総員、生きて帰ることを最優先にして持てる力の全てを出しなさい!」
ここまでは士気を高めるための王としての話。
そしてここからは、司令官としての話だ。
「では作戦を説明するわ!わたくしたち王国軍は、渓谷の出口付近…平野の近くに陣を敷く。ここで相手が攻めてきた場合は、適宜迎撃する予定ね。相手の編成はまだ分からないけど、今までと同じであれば魔物の大群が来たあとに兵士たちが攻めてくる可能性があるわ」
ナイトメアの全ての戦いを知っているわけではないが、何度も手を変えてくることはないだろう。
それに教会や冒険者ギルドからの情報にもあったが、魔物を操ることはできても意思疎通をするのは難しい。飛龍のように知能が高い魔物はともかく、オークのような一般的な魔物は精々襲う方向を指示するくらいだ。
ただ突進してくる敵というのは、まともに戦えば恐ろしい。しかし罠にもはめやすい。
「渓谷の入り口に罠を仕掛けておくわ。警戒心の強い兵士はともかく、使い捨ての魔物の群れは直接手を出すまでもない。多重に仕掛けた罠で一網打尽にする。以上!」
私の言葉が終わると、兵士たちは敬礼を返す。
そしてついに渓谷へ飛びたつときが来た。
私を含む部隊長は旗艦エスペルトに乗船する。
船の中に入って艦橋に向かうと一人の壮年の男性が挨拶に来た。
「ラティアーナ陛下。よろしくお願いします」
「ええエクハルト。艦長として、空軍部隊長として頼りにしているわ」
本名はエクハルト・アクアリス。
私の家庭教師を務めていたユリアの弟にあたる。元々は飛空船の研究を行っていた魔術省の文官だった。
この船の開発にも関わっていて船のことはもちろんのこと、操縦だけでなく指揮能力も高いため部隊長に抜擢したわけだ。
各船の艦長が指示を出して出航準備を行っていく。
全ての船の準備が完了した報告を受けて
「全艦出撃!」
と伝えた。
日が暮れた頃。
8隻の飛空船は上空数メートルまで浮上し、目的地を目指して進みだした。
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