王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第8章 女王の日常と南の国々

6 友人と未来と日常と

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 エインスレイス連邦を旅立って数日。私たちは王都へ帰ってきた。

 ニコラウスや大臣たちに会談の概略を伝えて、署名した書面を渡す。以降の細かい調整を頼んだ後は、自室で旅の疲れを癒すことにした。


「ラティアーナ様…起きてください。今日は学園へ行くのですよね?」

 丸一日休みを取った翌日の朝、リーナが起こしに来る。

「リーナおはよう…前期の最終日だからね。久しぶりに向かうわ」

 外国への実習演習が終わってから予定が立て込んでいて忙しかった。長い間王立学園を休んでいたが、今日を逃すと夏季休暇に入るため学園に向かう。
 私としても、友人たちとの会話は気を遣わない。学園であれば身分差をあまり気にしない立前がある分とても楽だった。

 制服へと着替えて朝食をとり学園の準備をする。
 リーナにロックフォードで買い込んだお土産を持ってきてもらい学園へと向かった。

 朝のうちにクラスメートにお土産を渡す。そして一日授業を受け終わった後、私はスピカと共に学園の外にあるカフェに来ていた。
 というのも

「お待たせしました」

「今日は誘っていただきありがとう存じます」

 ミモザとベロニカを誘っていたからだ。

 クラスが違うためそれぞれと話すことはあっても、こうして4人だけで集まる機会は貴重なものになる。王位についてからは初めてなくらいだ。

「わたくしもようやく落ち着くことができそうだし…休暇に入る前に話したかったのよ」

「王立学園を卒業したら…こうして集まることも難しくなりますね…」

 ベロニカがふと寂しそうに呟く。ミモザも卒業した後のことを想像したようで「仕方ないですね…」と口にしている。

「お二人に伝えていないのですか?」

「あー、2人同時に伝えたかったから今日言おうかなって…」

 スピカが不思議そうにしていて、私は少し気まずい気持ちで弁明した。

 国王ともなると私的に特定の貴族を呼ぶということはあまりしない。どうしても派閥や周りの反応を気にしてしまって特定の貴族と親しくできないからだ。
 けれど過去の通例を必ず踏襲しないといけないわけではない。最後の手段としてお忍びという手もあるわけで

「卒業しても定期的に4人でのお茶会を開きましょう。いざと言う時はわたくしが変装していくから安心しなさいな」

「わたくしは常に王都にいますし…ミモザとベロニカも暫くは、王都にいるのですからいつでも会えますよ」

 私の言葉にスピカが重ねて口にした。
 ミモザとベロニカも婚約者は決まった。しかし婚約相手が当主になるような場合や急いで結婚したい時以外は、数年の婚約期間を設けてから結婚することが多い。
 2人とも結婚して夫人になるまでは、文官として働くそうで所属は王国になる。

 ミモザとベロニカは2人の言葉に少し驚いた様子を見せる。けれどすぐに、はにかんだような笑顔で「はい!」と答えた。

 それから夕方まで4人で他愛もない話をして過ごした。



 翌日以降からクラスメートや友人たちは、それぞれの領地へ帰っていく。
 その中で王都に住んでいるアドリアスの他に、イリーナもしばらくの間、王都に滞在する予定になっていた。
 というのも叔母のイベリスが同盟のために、王城に務めることになったからだ。

 イリーナに王都に行く手段を尋ねたところ、カイと共にアドリアスの馬車に乗せてもらうそうだ。それを聞いた私は良いことを思いつく。

「じゃあわたくしも同行しようかな」

「俺たちは構わないが…普段転移で移動しているのだろう?大丈夫なのか?」

「それは連絡するから大丈夫よ。しばらくは予定もないし王城を空けていても平気だから」

 王鍵を使っての転移は、王鍵の魔術具にある魔力炉に蓄積された魔力を使う。1人分の転移程度であれば全体から見れば微々たるものだが、節約できるのであればそれで良いだろう。

「わたくしとカイは準備できてるけどラティアーナはどう?」

「荷物とか特にないからいつでも行けるわよ」

「じゃあ馬車に向かいましょうか。アドリアスも良いわよね?」

「大丈夫だ。問題ない」

 4人で馬車に乗り込んで王都に向けて出発した。予定ではお昼過ぎには到着するだろう。
 持ち込んだお茶や菓子を食べつつ、雑談を交わしている。
 話題が途切れたところで、アドリアスがふいに話題を変えてきて

「そういえば休暇の間、父上と共に行動することになったんだ。王城に居ることが多いと思うが、ラティアーナが王としての務めている姿を見ることができるのは楽しみだな」

 と面白そうな顔をして言う。アドリアスがこういった顔をする時は大体からかっているときだ。

「別に普段と変わりないわよ?学園にいる時も城にいる時も同じだからね」

 私はいつでも一緒だと言う意味を込めて、手を横に振った。すると私とアルキオネを見ていたイリーナが「ラティアーナが王族として務めている姿を見たことないかも」と呟く。

「いやいや、革命の時は一緒にいたじゃない」

「あれは含めなくて…きちんと王族としている時よ」

「いつもだけど!?」

 思わず抗議の声を上げる。イリーナは素知らぬ顔で「いつも王族っぽくないというか…威厳がないのよね」と言った。

「だったらいつでも執務室に来なさいな。威厳のある王としての姿を見せてあげるわ」

「お母様と城にいるから時間を見つけて見てあげるわ」

 王都に着くまでこのような会話の応酬が繰り広げられていた。
 幼い頃に離宮でお茶会をしていた時のような他愛もない話。
 最近では他にも人がいることが多かったため、ここまで砕けた会話は懐かしくも感じた。

 因みに側で聞いていたカイは、ポカンとした表情を浮かべていた。
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