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第7章 女王の戴冠
18 巨大な獣
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巨大な4本足の獣は邪気を纏いながら佇んでいた。1歩進むたびに地響きが起きて、衝撃が伝わってくる。
「あれは…初めてみるわね」
「俺も知らないな」
私だけでなくアドリアスも知らないようだった。他の人も知らないようで、分からなさそうにしているとアイリスが近づいてきて「あれは岩山竜と呼ばれるものよ。滅多にみることのない稀少な魔物ね」と教えてくれた。
「竜なのですか?翼がないですけど…」
不思議そうにスピカが呟くとアドリアスが「竜と言っても翼が必ずあるわけではないからな。実際、地竜などは目にすることが多いがモグラの親戚のようなものだし」と話している。
「わたくしも文献で読んだだけなので詳しいわけではありませんが、動きが遅いものの強固な体表と巨体による体当たりによって、歩いた後には破壊された跡だけが残ると言われているようです」
「と言うことはこのまま離れれば問題なさそうだけど…放置してもしもエスペルト王国の方に歩いてしまったら大問題よね」
アイリスの言葉にどうするか迷っていた。移動にあたっては、可能な限り無駄な戦闘は避けるべきだが、エスペルト王国の王侯貴族としては王国の害になるようであれば対処する必要がある。
私が悩んでいるとアドリアスが「俺たちであれば負けないだろう。先生たちもいることだし守りも万全だ」と言葉にした。
「わたくしもそれで良いと思うわよ?ここにいる皆は、一定以上の実力があるわ。もし危なくなっても逃げることぐらいはそれぞれで出来るでしょう」
「ありがとう…わたくしは国王としてあの魔物を撃退するわ。だから闘いたくないと思う人は下がっていて。強制はしないし責めるつもりもない」
私の言葉に皆は顔を見合わせると「一緒に戦います」と言ってくれた。それぞれが準備をしているとアイリスが「ではわたくしたちも支えます。後ろのことは気にしなくて大丈夫です」と教員たちに指示を出している。
少しして岩山竜私たちの目の前まで来るとイリーナが先に動いた。
「それだけの巨体ならばさぞ重いでしょう。まずは動きを止めるわ!」
イリーナは地面に杖を当てて魔術を行使する。術式が展開されると、岩山竜が前脚を置こうとした場所が陥没し脚が沈んだ。
脚が止まったことを確認したアドリアスは、聖剣を構えると魔力を込めつつ接近する。そして接近した勢いをそのままに、聖剣を振り被った。
「ちっ!?これでも通らないとは硬いな…」
アドリアスは文句を言いながらも脚を斬りつける。しかし、なかなかの硬さのようで、刃が通る気配がなかった。
「アドリアス、そこ交代して!」
私の言葉に反応したアドリアスは後ろに跳ぶ。私は空いたスペースに入ると、夜月を抜刀して魔力を纏わせながら斬り払った。
「これでもこの程度なのね…」
夜月による斬撃は、ガリガリと削るような音を響かせるだけになった。表面を傷つけることが関の山で、有効打を与えることができない。
私とアドリアスがどうするか考えているとカトレアの「大きめの一撃行くわよ!」との声が聞こえてきた。後ろを見ると巨大な氷の槍が回転しながら飛来して弾かれた。
「それでも駄目なのね…けれど、攻撃の手を緩めるわけには行かないわ!」
カトレアがそう言いながら魔術を展開していく。巨大な雷弾を生成して放つと、岩山竜の脚を雷撃が包み込んだ。
「僕たちも行きましょう。双子の力を合わせれば…」
「はい。私も全力を尽くします」
ロアとロナは2人で軍団魔術を行使する。双子だからこその息を合わせた魔術によって、魔力が収束されて砲弾と化して撃ち出される。更に2人の魔力は近いことから親和性が高く同調しやすい。
並の軍団魔術よりも高い威力となった一撃になって岩山竜を揺らした。
それでも少し傷つけるだけに留まり、有効打にならなかった。
その後もカイやブラッドが斬りつけ、アルマクやスピカが魔術による攻撃を仕掛ける。更にアイリスや教員たちの追撃も重なって、岩山竜に襲い掛かる。
「これでもこの程度なのね」
岩山竜は窪みから脚を出すと再び歩み始めた。今までの攻撃で傷は負っているものの、大したダメージにはなっていないようで悠然としている。
「だからこそ岩山と称されているのでしょう。ですが…倒すことは出来ないまでも歩く方向を変えることはできるはず。地道ですが積み重ねが大事です」
私たちの長い戦いが始まった。
「あれは…初めてみるわね」
「俺も知らないな」
私だけでなくアドリアスも知らないようだった。他の人も知らないようで、分からなさそうにしているとアイリスが近づいてきて「あれは岩山竜と呼ばれるものよ。滅多にみることのない稀少な魔物ね」と教えてくれた。
「竜なのですか?翼がないですけど…」
不思議そうにスピカが呟くとアドリアスが「竜と言っても翼が必ずあるわけではないからな。実際、地竜などは目にすることが多いがモグラの親戚のようなものだし」と話している。
「わたくしも文献で読んだだけなので詳しいわけではありませんが、動きが遅いものの強固な体表と巨体による体当たりによって、歩いた後には破壊された跡だけが残ると言われているようです」
「と言うことはこのまま離れれば問題なさそうだけど…放置してもしもエスペルト王国の方に歩いてしまったら大問題よね」
アイリスの言葉にどうするか迷っていた。移動にあたっては、可能な限り無駄な戦闘は避けるべきだが、エスペルト王国の王侯貴族としては王国の害になるようであれば対処する必要がある。
私が悩んでいるとアドリアスが「俺たちであれば負けないだろう。先生たちもいることだし守りも万全だ」と言葉にした。
「わたくしもそれで良いと思うわよ?ここにいる皆は、一定以上の実力があるわ。もし危なくなっても逃げることぐらいはそれぞれで出来るでしょう」
「ありがとう…わたくしは国王としてあの魔物を撃退するわ。だから闘いたくないと思う人は下がっていて。強制はしないし責めるつもりもない」
私の言葉に皆は顔を見合わせると「一緒に戦います」と言ってくれた。それぞれが準備をしているとアイリスが「ではわたくしたちも支えます。後ろのことは気にしなくて大丈夫です」と教員たちに指示を出している。
少しして岩山竜私たちの目の前まで来るとイリーナが先に動いた。
「それだけの巨体ならばさぞ重いでしょう。まずは動きを止めるわ!」
イリーナは地面に杖を当てて魔術を行使する。術式が展開されると、岩山竜が前脚を置こうとした場所が陥没し脚が沈んだ。
脚が止まったことを確認したアドリアスは、聖剣を構えると魔力を込めつつ接近する。そして接近した勢いをそのままに、聖剣を振り被った。
「ちっ!?これでも通らないとは硬いな…」
アドリアスは文句を言いながらも脚を斬りつける。しかし、なかなかの硬さのようで、刃が通る気配がなかった。
「アドリアス、そこ交代して!」
私の言葉に反応したアドリアスは後ろに跳ぶ。私は空いたスペースに入ると、夜月を抜刀して魔力を纏わせながら斬り払った。
「これでもこの程度なのね…」
夜月による斬撃は、ガリガリと削るような音を響かせるだけになった。表面を傷つけることが関の山で、有効打を与えることができない。
私とアドリアスがどうするか考えているとカトレアの「大きめの一撃行くわよ!」との声が聞こえてきた。後ろを見ると巨大な氷の槍が回転しながら飛来して弾かれた。
「それでも駄目なのね…けれど、攻撃の手を緩めるわけには行かないわ!」
カトレアがそう言いながら魔術を展開していく。巨大な雷弾を生成して放つと、岩山竜の脚を雷撃が包み込んだ。
「僕たちも行きましょう。双子の力を合わせれば…」
「はい。私も全力を尽くします」
ロアとロナは2人で軍団魔術を行使する。双子だからこその息を合わせた魔術によって、魔力が収束されて砲弾と化して撃ち出される。更に2人の魔力は近いことから親和性が高く同調しやすい。
並の軍団魔術よりも高い威力となった一撃になって岩山竜を揺らした。
それでも少し傷つけるだけに留まり、有効打にならなかった。
その後もカイやブラッドが斬りつけ、アルマクやスピカが魔術による攻撃を仕掛ける。更にアイリスや教員たちの追撃も重なって、岩山竜に襲い掛かる。
「これでもこの程度なのね」
岩山竜は窪みから脚を出すと再び歩み始めた。今までの攻撃で傷は負っているものの、大したダメージにはなっていないようで悠然としている。
「だからこそ岩山と称されているのでしょう。ですが…倒すことは出来ないまでも歩く方向を変えることはできるはず。地道ですが積み重ねが大事です」
私たちの長い戦いが始まった。
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