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第7章 女王の戴冠
16 国境を越えた先
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Aクラスの西方連合国家群への旅路は順調で、国境都市ウィスタリアまで5日でたどり着く事ができた。
ここからがついにエスペルト王国の外、この旅路の本番となる。
「ここから先は野営となりますので街で休める最後の機会となります。今日一日は各自ゆっくりするようにしてください。明日の朝から国境門を通過し砂丘と森を突破することになります」
アイリスからの説明があってから今日は自由時間となった。
今回は、基本的に馬車で分かれているグループごとに行動することになっている。私たちのグループは、私のほかにカトレアとロアで、他のグループはアドリアス、スピカ、カイとイリーナ、ブラッド、アルマク、ロナとなっていた。
「半日ほどありますがどうしますか?」
「そうね…ここに来るのも久しぶりだし観光でもしようかしら?」
「いいですね。私も色々見てみたいです」
カトレアの問いに私とロアがそれぞれ答える。目的は特にないが街を見てまわることにした。
「それにしても誰も気づかないとは、その眼鏡すごいですね」
「そうね。とても便利だから助かるわ」
夕食を食べていると、カトレアが感心するように私がつけている眼鏡を見ていた。
普段の王都に出る時などに使っている変装は、平民として見られるようにするものなため今日のような場合は使えない。しかし、ただの王女であったときはともかくとして、国王となった今は全都市に映像が流れているため街を歩いていると目立ってしまう。
そこで眼鏡の魔術具をつけることで認識阻害を発生させていた。正体に気付いたものに対しては効果が薄いが、初対面の相手からは私だと思われない。
「今まで街を歩くときは使っていませんでしたよね?理由でもあるのですか?」
ロアは私の変装した姿を見ているため、今まで使っていなかったことを不思議に思っているのだろう。
「これはあくまで認識を阻害するだけだから、髪色みたいに大きく印象を与えるものには効果がないのよ。簡単に言うと細かい顔を思い出せなくなるというか…記憶にある顔と見ている顔が一致しなくなるって言った方が近いかも知れないわね」
私の言葉にロアは不思議そうにしながらも納得したようだった。
それからは夕食を食べ終えるとそのまま宿に戻った。
翌日の朝、国境の外に出る時が来た。
「それではこれから国境門を通過します。私たち教員も戦いますが、基本的に先行する馬車に戦闘を任せることになると思いますのでそのつもりで。では行きましょう」
門が開き私たちの馬車6台は、西に向けて走り出した。
少しの間は平坦な大地を走っていたが、すぐに砂丘へと入る。そして魔物も現れる頻度が徐々に増えていった。
「最初はわたくしたちの番ですね…あれは土竜ですか」
カトレアは視力を強化して、遠くにいる魔物を見つけていた。ロアも見つけたようで「数体いますね」と呟いている。
「ラティアーナ様、遠距離の魔物はわたくしとロアで対処しますわ。わたくしたちの攻撃を抜けた魔物の相手をお願いします」
「ええ、近くの魔物は任せなさい。全て斬り伏せるから」
私も周りを警戒していると、カトレアとロアの魔術が放たれる。中級や上級並の魔術によって土竜たちは吹き飛ばされていく。
「これならわたくしの出番はなさそうね」
2人の魔術は土竜たちを一方的に殲滅していく。接近される前に魔物は全て倒されていった。
その後も交代しながら魔物との戦闘が続くが速度を落とさずに移動することができ、日が暮れる頃、森へと差し掛かる。
野営のために移動を止める合図を受けて、私たちは馬車から降りる。
「この辺りで野営をしましょう。森の中も魔物は多数います。砂丘のように遠距離から視認されにくいので、魔物避けでおおよそ避けることができると思いますが注意するように」
アイリスから注意事項を聞いた後、野営の準備を行うことになった。
私とカトレアが食事の準備をして、ロアがテントの設営を行う。
「はい、夕食の準備ができたわよ」
野営の定番となっている携帯用食料に手持ちの具材と香辛料で味付けをしたものを2人に渡していく。3人して席に着くと少し落ち着くことができるだろう。
「ありがとうございます。こちらもテントは準備できました」
「では寝るまで寛げそうですね。順調で良かったです」
馬車での移動中は、後ろに下がっている時でも気を張っているため疲労が多い。たとえ危険な外でもこうして休める時間は貴重だった。
「あと6日くらいはこの生活が続きそうね。そうすれば西方連合国家群の東側の国に着くわ」
「ラティアーナ様は訪れたことがあるのでしたっけ?」
「ええ。約5年くらい前にお忍びで歩いたことがあるのと、2年前くらいに通ったわ」
私はそう言いながら訪れた国々を思い浮かべる。花の都と叡智の国に滞在した日数が多い分、とても印象に残っている。
私は「どこの国も訪れて良かったわよ」と伝えて、その後は雑談を交わす。
そして夜も更けてきたためテントで睡眠をとる。
警戒のために数人の教師が寝ずの番をしていて他の人たちが寝静まった頃、突如地響きが起きて大きな魔力を感じた。
「今のは何ですか!?」
「魔力を感じましたけど…」
「1度外に出て様子を見ましょう」
3人して外に出て様子を伺うと、黒い魔力の柱が見えた。
ここからがついにエスペルト王国の外、この旅路の本番となる。
「ここから先は野営となりますので街で休める最後の機会となります。今日一日は各自ゆっくりするようにしてください。明日の朝から国境門を通過し砂丘と森を突破することになります」
アイリスからの説明があってから今日は自由時間となった。
今回は、基本的に馬車で分かれているグループごとに行動することになっている。私たちのグループは、私のほかにカトレアとロアで、他のグループはアドリアス、スピカ、カイとイリーナ、ブラッド、アルマク、ロナとなっていた。
「半日ほどありますがどうしますか?」
「そうね…ここに来るのも久しぶりだし観光でもしようかしら?」
「いいですね。私も色々見てみたいです」
カトレアの問いに私とロアがそれぞれ答える。目的は特にないが街を見てまわることにした。
「それにしても誰も気づかないとは、その眼鏡すごいですね」
「そうね。とても便利だから助かるわ」
夕食を食べていると、カトレアが感心するように私がつけている眼鏡を見ていた。
普段の王都に出る時などに使っている変装は、平民として見られるようにするものなため今日のような場合は使えない。しかし、ただの王女であったときはともかくとして、国王となった今は全都市に映像が流れているため街を歩いていると目立ってしまう。
そこで眼鏡の魔術具をつけることで認識阻害を発生させていた。正体に気付いたものに対しては効果が薄いが、初対面の相手からは私だと思われない。
「今まで街を歩くときは使っていませんでしたよね?理由でもあるのですか?」
ロアは私の変装した姿を見ているため、今まで使っていなかったことを不思議に思っているのだろう。
「これはあくまで認識を阻害するだけだから、髪色みたいに大きく印象を与えるものには効果がないのよ。簡単に言うと細かい顔を思い出せなくなるというか…記憶にある顔と見ている顔が一致しなくなるって言った方が近いかも知れないわね」
私の言葉にロアは不思議そうにしながらも納得したようだった。
それからは夕食を食べ終えるとそのまま宿に戻った。
翌日の朝、国境の外に出る時が来た。
「それではこれから国境門を通過します。私たち教員も戦いますが、基本的に先行する馬車に戦闘を任せることになると思いますのでそのつもりで。では行きましょう」
門が開き私たちの馬車6台は、西に向けて走り出した。
少しの間は平坦な大地を走っていたが、すぐに砂丘へと入る。そして魔物も現れる頻度が徐々に増えていった。
「最初はわたくしたちの番ですね…あれは土竜ですか」
カトレアは視力を強化して、遠くにいる魔物を見つけていた。ロアも見つけたようで「数体いますね」と呟いている。
「ラティアーナ様、遠距離の魔物はわたくしとロアで対処しますわ。わたくしたちの攻撃を抜けた魔物の相手をお願いします」
「ええ、近くの魔物は任せなさい。全て斬り伏せるから」
私も周りを警戒していると、カトレアとロアの魔術が放たれる。中級や上級並の魔術によって土竜たちは吹き飛ばされていく。
「これならわたくしの出番はなさそうね」
2人の魔術は土竜たちを一方的に殲滅していく。接近される前に魔物は全て倒されていった。
その後も交代しながら魔物との戦闘が続くが速度を落とさずに移動することができ、日が暮れる頃、森へと差し掛かる。
野営のために移動を止める合図を受けて、私たちは馬車から降りる。
「この辺りで野営をしましょう。森の中も魔物は多数います。砂丘のように遠距離から視認されにくいので、魔物避けでおおよそ避けることができると思いますが注意するように」
アイリスから注意事項を聞いた後、野営の準備を行うことになった。
私とカトレアが食事の準備をして、ロアがテントの設営を行う。
「はい、夕食の準備ができたわよ」
野営の定番となっている携帯用食料に手持ちの具材と香辛料で味付けをしたものを2人に渡していく。3人して席に着くと少し落ち着くことができるだろう。
「ありがとうございます。こちらもテントは準備できました」
「では寝るまで寛げそうですね。順調で良かったです」
馬車での移動中は、後ろに下がっている時でも気を張っているため疲労が多い。たとえ危険な外でもこうして休める時間は貴重だった。
「あと6日くらいはこの生活が続きそうね。そうすれば西方連合国家群の東側の国に着くわ」
「ラティアーナ様は訪れたことがあるのでしたっけ?」
「ええ。約5年くらい前にお忍びで歩いたことがあるのと、2年前くらいに通ったわ」
私はそう言いながら訪れた国々を思い浮かべる。花の都と叡智の国に滞在した日数が多い分、とても印象に残っている。
私は「どこの国も訪れて良かったわよ」と伝えて、その後は雑談を交わす。
そして夜も更けてきたためテントで睡眠をとる。
警戒のために数人の教師が寝ずの番をしていて他の人たちが寝静まった頃、突如地響きが起きて大きな魔力を感じた。
「今のは何ですか!?」
「魔力を感じましたけど…」
「1度外に出て様子を見ましょう」
3人して外に出て様子を伺うと、黒い魔力の柱が見えた。
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