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第6章 エスペルト王国の革命
13 動き出す人々
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時は少し遡ってラティアーナがエスペルト王国全域に通信を入れた頃、各々の領地でも動き始めていた。
ルークス領ではシリウスを筆頭に王城へ向かう準備が進められている。
「シリウス様、飛空船の修理完了しました。いつでも出せます。」
「了解した。このまま領地の防衛を頼む。」
報告に来た兵士は「はっ!」と返事をして去っていく。
近衛騎士団は飛空船の大まかな操作は知っているが、操作したことのあるものは、いなかった。そのため離陸はなんとかなったものの、着陸するときに少し壊してしまい修理を行っていた。
領地には文官が多数いるため飛空船の仕組みや操作方法について詳しく知っているものもいる。
「姫様の王城入りに合わせてこちらも進撃する。離宮の人々は姫様にとってとても大事な人たちだ。領地をあげて死守せよ。」
シリウスは戦いに備えて指示を出す。
「近衛第3騎士団からは1小隊置いていく。領軍と協力するように。残りは飛空船に乗り込んで王城行きだ。」
飛空船で1日あれば王都まで行けるため、それまでに準備を行う必要がある。近衛騎士団も領地の兵士や文官も慌ただしく駆け回るのだった。
一方で北方の領地では、レティシアとガイアスが話し合いをしていた。
「ガイアス…先程の放送を見たかしら?」
「ラティアーナの放送なら見たが…こちらが動けないのを良いことに好き勝手してるな。とはいえ、グランバルド帝国の動きを考えると俺が動くわけにはいくまいよ。どうにも嫌な感じもすることだしな…」
「そうですね…ですが他に適任がいないでしょう?せめてギルベルトがこちらにいれば良かったのですがね。」
レティシアはどうも上手くいかないと言いたげに首を振った。
「ギルベルトは王位を狙ってはいないようだが…目的がわからん。ラティアーナの方はディートリヒを退けた後でもなんとかなるだろう。」
ガイアスは今後のことを考えていると、外が少し騒がしくなった。
「母上はここに…俺が見てくる。」
ガイアスは剣を片手に街の外へ向かった。
そしてラティアーナが王城を攻めディートリヒを討つと宣言した日。
マギルス領付近の海では、小型船の射出準備が行われていた。元々あった小型船を改修して長めの翼を取り付けており、知っている人が見れば飛行機だという人が多いだろう。
「最終確認よ。小型船にはラティアーナとローザリンデ殿下、リーファス殿下、テレシア様、ブルーノ様、イリーナの6人が乗る…でいいのよね?」
「ええ、敵陣の中心に乗り込むから複数人を相手取れる人でないとね。イリーナならわたくしも慣れているから戦いやすくて助かるわ。」
「そうね、今回はローザリンデ様とリーファス様の守りはテレシア様とブルーノ様に任せて…わたくしとラティアーナの2人で相手を打倒する、で良いのよね?」
イリーナの確認に私は了承する。近衛騎士の2人は基本的に護衛にのみ集中して、ローザリンデとリーファスは後方からの魔術による支援と攻撃を担ってもらうことにした。
私とイリーナは、接近戦でも問題ないため共に前に出て襲ってくる相手を迎撃し無力化する。
「わかっていると思うけど、国軍相手の場合は極力無力化にとどめるけど…身の危険を感じた時は容赦はしないようにね。それから無理だけはしないように。」
これはどちらかというとローザリンデとリーファスに向けた言葉だった。2人とも学園には通っていないし私のように自由に動き回っていないため、実戦経験はもちろんない。
魔力量や適性はかなり高く魔術の講義は受けているため戦闘技術はあるだろうが、実戦となると精神的なものが大きく関わってくる。
「お姉様は心配しすぎよ…」
「私も大丈夫です。それにいつまでも守られてばかりというわけにはいきませんから。」
そう口にした2人は共に覚悟を決めた凛々しい表情をしていた。
「皆大丈夫そうね…話を続けるけど皆が乗り込んだ小型船を2つの戦艦の間の海に出すわ。それから今回乗っている魔術士たちが軍団魔術を行使する。1つ目は海を凍らせて発射台に、2つ目は発生した電磁気力による加速で船を上空に向けて射出する、ここまでがわたくしたちが行うことになるわ。」
作戦は単純で、マギルス領の魔術士たちの力を借りて小型船を一気に加速し空に飛ばすというものだ。空に飛び上がった後は、翼による飛行を主軸にしてイリーナが魔術で細かい制御し、途中の飛行と着地を支える。
最終確認が終わると、小型船を戦艦から海に下ろしてから私たちは乗り込んだ。翼だけでなく船内も改修していて、人数分の座席と固定用のベルトが設置されている。
全員で座って固定すると準備完了の合図を送る。設置されている通信用の魔術具から外の声が聞こえてきた。
「軍団魔術開始、一段目…水属性と氷冷属性魔術展開!氷の射出台を生成しなさい!」
小型船が浮いている海に術式が広がると、水が隆起しながら凍っていく。それに合わせて船が斜め上を向くように浮かび上がった。
「二段目…雷系術式展開、電磁レール準備!」
小型船の両脇に雷によるレールが敷かれた。
「カウント3、2、1…電磁力最大出力!」
その言葉を最後に小型船は一気に上空へと撃ちあげられた。
ルークス領ではシリウスを筆頭に王城へ向かう準備が進められている。
「シリウス様、飛空船の修理完了しました。いつでも出せます。」
「了解した。このまま領地の防衛を頼む。」
報告に来た兵士は「はっ!」と返事をして去っていく。
近衛騎士団は飛空船の大まかな操作は知っているが、操作したことのあるものは、いなかった。そのため離陸はなんとかなったものの、着陸するときに少し壊してしまい修理を行っていた。
領地には文官が多数いるため飛空船の仕組みや操作方法について詳しく知っているものもいる。
「姫様の王城入りに合わせてこちらも進撃する。離宮の人々は姫様にとってとても大事な人たちだ。領地をあげて死守せよ。」
シリウスは戦いに備えて指示を出す。
「近衛第3騎士団からは1小隊置いていく。領軍と協力するように。残りは飛空船に乗り込んで王城行きだ。」
飛空船で1日あれば王都まで行けるため、それまでに準備を行う必要がある。近衛騎士団も領地の兵士や文官も慌ただしく駆け回るのだった。
一方で北方の領地では、レティシアとガイアスが話し合いをしていた。
「ガイアス…先程の放送を見たかしら?」
「ラティアーナの放送なら見たが…こちらが動けないのを良いことに好き勝手してるな。とはいえ、グランバルド帝国の動きを考えると俺が動くわけにはいくまいよ。どうにも嫌な感じもすることだしな…」
「そうですね…ですが他に適任がいないでしょう?せめてギルベルトがこちらにいれば良かったのですがね。」
レティシアはどうも上手くいかないと言いたげに首を振った。
「ギルベルトは王位を狙ってはいないようだが…目的がわからん。ラティアーナの方はディートリヒを退けた後でもなんとかなるだろう。」
ガイアスは今後のことを考えていると、外が少し騒がしくなった。
「母上はここに…俺が見てくる。」
ガイアスは剣を片手に街の外へ向かった。
そしてラティアーナが王城を攻めディートリヒを討つと宣言した日。
マギルス領付近の海では、小型船の射出準備が行われていた。元々あった小型船を改修して長めの翼を取り付けており、知っている人が見れば飛行機だという人が多いだろう。
「最終確認よ。小型船にはラティアーナとローザリンデ殿下、リーファス殿下、テレシア様、ブルーノ様、イリーナの6人が乗る…でいいのよね?」
「ええ、敵陣の中心に乗り込むから複数人を相手取れる人でないとね。イリーナならわたくしも慣れているから戦いやすくて助かるわ。」
「そうね、今回はローザリンデ様とリーファス様の守りはテレシア様とブルーノ様に任せて…わたくしとラティアーナの2人で相手を打倒する、で良いのよね?」
イリーナの確認に私は了承する。近衛騎士の2人は基本的に護衛にのみ集中して、ローザリンデとリーファスは後方からの魔術による支援と攻撃を担ってもらうことにした。
私とイリーナは、接近戦でも問題ないため共に前に出て襲ってくる相手を迎撃し無力化する。
「わかっていると思うけど、国軍相手の場合は極力無力化にとどめるけど…身の危険を感じた時は容赦はしないようにね。それから無理だけはしないように。」
これはどちらかというとローザリンデとリーファスに向けた言葉だった。2人とも学園には通っていないし私のように自由に動き回っていないため、実戦経験はもちろんない。
魔力量や適性はかなり高く魔術の講義は受けているため戦闘技術はあるだろうが、実戦となると精神的なものが大きく関わってくる。
「お姉様は心配しすぎよ…」
「私も大丈夫です。それにいつまでも守られてばかりというわけにはいきませんから。」
そう口にした2人は共に覚悟を決めた凛々しい表情をしていた。
「皆大丈夫そうね…話を続けるけど皆が乗り込んだ小型船を2つの戦艦の間の海に出すわ。それから今回乗っている魔術士たちが軍団魔術を行使する。1つ目は海を凍らせて発射台に、2つ目は発生した電磁気力による加速で船を上空に向けて射出する、ここまでがわたくしたちが行うことになるわ。」
作戦は単純で、マギルス領の魔術士たちの力を借りて小型船を一気に加速し空に飛ばすというものだ。空に飛び上がった後は、翼による飛行を主軸にしてイリーナが魔術で細かい制御し、途中の飛行と着地を支える。
最終確認が終わると、小型船を戦艦から海に下ろしてから私たちは乗り込んだ。翼だけでなく船内も改修していて、人数分の座席と固定用のベルトが設置されている。
全員で座って固定すると準備完了の合図を送る。設置されている通信用の魔術具から外の声が聞こえてきた。
「軍団魔術開始、一段目…水属性と氷冷属性魔術展開!氷の射出台を生成しなさい!」
小型船が浮いている海に術式が広がると、水が隆起しながら凍っていく。それに合わせて船が斜め上を向くように浮かび上がった。
「二段目…雷系術式展開、電磁レール準備!」
小型船の両脇に雷によるレールが敷かれた。
「カウント3、2、1…電磁力最大出力!」
その言葉を最後に小型船は一気に上空へと撃ちあげられた。
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