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第6章 エスペルト王国の革命
11 王位奪還宣言と宣戦布告
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レティシアと話し合いをした翌日、行動を起こす予定の日。
通信用の部屋には私、ローザリンデ、リーファス、叔母、イリーナの5人が並んでいる。通信用の魔術具を起動し、王国内の全都市の全魔術具に対して通信を開始した。これによって一方的に映像と音声を伝えることが可能になる。
この放映は王鍵による機能によるもので、領主では他の街や城にある部屋との通信までしかできない。街に設置されている、映写用の魔術具に直接接続することができるのは王族のみとなる。
全魔術具へ接続が完了したことを確認すると、私は口を開いた。
「皆様、ごきげんよう。わたくしはラティアーナ・エスペルト。グラビス国王陛下の実子、第3王女です。今回王国全土に通信を行ったのは、革命を起こし新王を謳っているディートリヒには屈することはできないからです。彼…ディートリヒはドラコロニア共和国と共謀し外患誘致を行いました。エスペルト王国は国章が示すとおり人々の平和を願い作られた国…他国からの干渉を許すわけには行きません。」
エスペルト王国の国章は、白の4つの花弁を基に盾と2本の剣が示されている。国の創設者5人が考えたらしく花が知恵と平和、剣と盾がこの過酷な世界の中で守る力を象徴しているそうだ。
私は一呼吸開けると次の言葉に繋げる。
「第3王女ラティアーナ及び第4王女ローザリンデ、第5王子リーファスそしてマギルス公爵家を代表して当主イベリス、次期当主イリーナの名においてここに宣言します。今から6日後、王城にて逆賊であるディートリヒを討ちます。また、本日をもって…ドラコロニア共和国への宣戦布告を行います!わたくしたちに賛同してくれる領地の方は6日後に王都で、王城で会いましょう。皆の誇りと信念を信じています。以上です。」
伝えたい内容は全て言葉にしたため、通信を切る。
王国全域への通信は、相手の反応が見えないことも重なってとても緊張する。高まっていた心臓の鼓動を落ち着かせるために深呼吸してから部屋を出た。
「さて、これで後には引けなくなったわね。まずは…ドラコロニア共和国への牽制攻撃に移りましょう。」
「ええ、艦隊を動かす準備をしてきますわ。今日の夕方には出港できるはずです。イリーナは領兵たちを率いて地上部隊の再編を。それではラティアーナにローザリンデ殿下、リーファス殿下、失礼しますね。」
叔母は出撃準備をするために去って、イリーナも地上部隊に動かすために去っていく。
残った私たちは船に乗るまでは待機となる予定だ。
「それにしても…本当にローザリンデもリーファスも王城へ同行するつもり?」
3人だけになった機会に、最後の確認の意味を込めて聞いてみた。
私はディートリヒと相対しなくてはいけないが、2人はこのままマギルス領にいて後方支援という形でも問題ない。しかし2人とも共に戦うと言って聞かなかった。
「王族としての戦わなければならない時に、1人だけ安全な場所にいるなんて…わたくしの矜持が許せませんわ。」
「私も姉上たちが戦場に出るというのに、ただ待つということはできません。ブルーノもいますし極力足を引っ張らないようにしますから…少しでも役に立ちたいのです。」
2人の意思は変わらず決まっているようだ。そこまでの覚悟があるのであれば…後は信じてみようと思う。
「わかったわ。2人ともわたくしより前には出ないようにね。それから…護衛の騎士から離れないこと。」
ローザリンデとリーファスは共に「わかりました…よろしくお願いします。」と元気よく返事をする。
それからしばらくして叔母とイリーナが呼びに来る。
「戦艦の出航準備は完了よ。いつでも出発できるわ。」
「地上部隊も問題ないわ。国境沿いの砦にも連絡を入れて最大限の警戒をしてもらっている。あと領城にある転移陣は塞いであるわ。」
王城と領城、国境門などは王鍵による転移陣が設置されていた。私では権限がない国王や王太子などで有れば使用できるらしい。
ただし転移をさせないようにすることは簡単にできる。空間転移の特性上、指定範囲内の空間ごと入れ替える。ただし入れ替える空間との境界に、固体のような物質があると入れ替えることができない。
そのため、転移陣を跨ぐようにして物を置いておくと作動しないわけだ。
「では戦艦に乗り込みましょうか。皆いいかしら?」
私はローザリンデやリーファス、テレシア、ブルーノの顔を順番に見る。4人とも準備はできているようで「行きましょう。」と自信のある顔で頷き返してくれた。
私たちは戦艦に乗り込むために港に向かうのだった。
一方その頃の王都では、ディートリヒとバルトロスが玉座の間からラティアーナの通信を見ていた。
「ふん、無能の王女風情が…俺を討つというのであれば返り討ちにしてやろう…反逆を起こしたかつての王族をボロボロに傷つけて晒し者にすれば、旧王族派の連中は震え上がるだろうよ。」
ディートリヒが嫌らしい笑みを浮かべて呟くとバルトロスが嗜めるような声を上げる。
「あなたの強さは分かっていますが…慢心はしないでくださいよ?それから王としての役割を果たすのですから、くれぐれも人前で素の状態で話さないでください。」
「わかってるよ…こんなに楽しいことは久々なんだ。ヘマはしねえさ。」
ディートリヒは笑い声を上げながら席を立つと、近くに置いてある剣を磨くのだった。
通信用の部屋には私、ローザリンデ、リーファス、叔母、イリーナの5人が並んでいる。通信用の魔術具を起動し、王国内の全都市の全魔術具に対して通信を開始した。これによって一方的に映像と音声を伝えることが可能になる。
この放映は王鍵による機能によるもので、領主では他の街や城にある部屋との通信までしかできない。街に設置されている、映写用の魔術具に直接接続することができるのは王族のみとなる。
全魔術具へ接続が完了したことを確認すると、私は口を開いた。
「皆様、ごきげんよう。わたくしはラティアーナ・エスペルト。グラビス国王陛下の実子、第3王女です。今回王国全土に通信を行ったのは、革命を起こし新王を謳っているディートリヒには屈することはできないからです。彼…ディートリヒはドラコロニア共和国と共謀し外患誘致を行いました。エスペルト王国は国章が示すとおり人々の平和を願い作られた国…他国からの干渉を許すわけには行きません。」
エスペルト王国の国章は、白の4つの花弁を基に盾と2本の剣が示されている。国の創設者5人が考えたらしく花が知恵と平和、剣と盾がこの過酷な世界の中で守る力を象徴しているそうだ。
私は一呼吸開けると次の言葉に繋げる。
「第3王女ラティアーナ及び第4王女ローザリンデ、第5王子リーファスそしてマギルス公爵家を代表して当主イベリス、次期当主イリーナの名においてここに宣言します。今から6日後、王城にて逆賊であるディートリヒを討ちます。また、本日をもって…ドラコロニア共和国への宣戦布告を行います!わたくしたちに賛同してくれる領地の方は6日後に王都で、王城で会いましょう。皆の誇りと信念を信じています。以上です。」
伝えたい内容は全て言葉にしたため、通信を切る。
王国全域への通信は、相手の反応が見えないことも重なってとても緊張する。高まっていた心臓の鼓動を落ち着かせるために深呼吸してから部屋を出た。
「さて、これで後には引けなくなったわね。まずは…ドラコロニア共和国への牽制攻撃に移りましょう。」
「ええ、艦隊を動かす準備をしてきますわ。今日の夕方には出港できるはずです。イリーナは領兵たちを率いて地上部隊の再編を。それではラティアーナにローザリンデ殿下、リーファス殿下、失礼しますね。」
叔母は出撃準備をするために去って、イリーナも地上部隊に動かすために去っていく。
残った私たちは船に乗るまでは待機となる予定だ。
「それにしても…本当にローザリンデもリーファスも王城へ同行するつもり?」
3人だけになった機会に、最後の確認の意味を込めて聞いてみた。
私はディートリヒと相対しなくてはいけないが、2人はこのままマギルス領にいて後方支援という形でも問題ない。しかし2人とも共に戦うと言って聞かなかった。
「王族としての戦わなければならない時に、1人だけ安全な場所にいるなんて…わたくしの矜持が許せませんわ。」
「私も姉上たちが戦場に出るというのに、ただ待つということはできません。ブルーノもいますし極力足を引っ張らないようにしますから…少しでも役に立ちたいのです。」
2人の意思は変わらず決まっているようだ。そこまでの覚悟があるのであれば…後は信じてみようと思う。
「わかったわ。2人ともわたくしより前には出ないようにね。それから…護衛の騎士から離れないこと。」
ローザリンデとリーファスは共に「わかりました…よろしくお願いします。」と元気よく返事をする。
それからしばらくして叔母とイリーナが呼びに来る。
「戦艦の出航準備は完了よ。いつでも出発できるわ。」
「地上部隊も問題ないわ。国境沿いの砦にも連絡を入れて最大限の警戒をしてもらっている。あと領城にある転移陣は塞いであるわ。」
王城と領城、国境門などは王鍵による転移陣が設置されていた。私では権限がない国王や王太子などで有れば使用できるらしい。
ただし転移をさせないようにすることは簡単にできる。空間転移の特性上、指定範囲内の空間ごと入れ替える。ただし入れ替える空間との境界に、固体のような物質があると入れ替えることができない。
そのため、転移陣を跨ぐようにして物を置いておくと作動しないわけだ。
「では戦艦に乗り込みましょうか。皆いいかしら?」
私はローザリンデやリーファス、テレシア、ブルーノの顔を順番に見る。4人とも準備はできているようで「行きましょう。」と自信のある顔で頷き返してくれた。
私たちは戦艦に乗り込むために港に向かうのだった。
一方その頃の王都では、ディートリヒとバルトロスが玉座の間からラティアーナの通信を見ていた。
「ふん、無能の王女風情が…俺を討つというのであれば返り討ちにしてやろう…反逆を起こしたかつての王族をボロボロに傷つけて晒し者にすれば、旧王族派の連中は震え上がるだろうよ。」
ディートリヒが嫌らしい笑みを浮かべて呟くとバルトロスが嗜めるような声を上げる。
「あなたの強さは分かっていますが…慢心はしないでくださいよ?それから王としての役割を果たすのですから、くれぐれも人前で素の状態で話さないでください。」
「わかってるよ…こんなに楽しいことは久々なんだ。ヘマはしねえさ。」
ディートリヒは笑い声を上げながら席を立つと、近くに置いてある剣を磨くのだった。
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