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第6章 エスペルト王国の革命
7 逃亡の終わり
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私は魔術で姿を隠して見つかりにくくしながら、皆のいる方向を目指していた。手元にある魔術具を見て、方向を確認して空をかけていく。
早朝に出発してから半日少しかけて、森にようやく戻ってきた。魔術具を確認するとだいぶ近い距離まで来たようで、木の枝を伝って駆け寄っていく。
そうしていると4人の姿を確認することができたため、地面に降りた。
「ただいま戻ったわよ。」
「「ラティアーナ王女殿下!おかえりなさいませ。」」
ちょうど野営の場所を見つけたところのようで、ブルーノとテレシアが安心した表情で出迎えてくれた。
隣にいたリーファスも「ラティアーナ姉上!」と声を上げながら私に向かって駆け寄ってくると、そのまま抱きついてきた。私は手を背中に回してポンポンと叩くと「ただいま。遅くなってごめんね?」と笑みを向けながら囁く。
「ローザリンデの体調はどうかしら?」
背負っているテレシアに目を向けると芳しくないようで首を横に振った。
「今は眠っていますが…熱が下がらずお辛そうにされています。」
「そう。ローザリンデが起きたら食事にしましょうか。薬を飲んで少しでも楽になればいいけど…」
3人と話しながらも野営の準備を進めていく。預けていたテントをブルーノが準備している間に、私は魔物避けなどの設置をしてから食事の準備をする。
「代わりましょうか?」
「わたくしがやるから大丈夫よ。そのままローザリンデのことをお願いね…って、その不安そうな目はなにかしら?」
テレシアの不安そうな目線が気になって。じーっと見つめ返すと「すみません。なんでもないです。」と弁明していた。
「別に料理くらい人並みにできるから心配しないでいいわよ?」
私はそう呟きながら、携帯用食料を鍋代わりの入れ物に移して魔術で作ったお湯を注いでいく。
さらに容器ごと火にくべると、街で買ってきた野菜や肉を一緒に煮込んで、塩などで味を調える。
「野菜だけでなく肉も買ってきたのですか?」
「ずっと同じ食事だと…飽きるでしょう。街でちょうど売っていたから助かったわ。あぁ、魔法袋に入れる前に凍らせたから大丈夫よ。」
魔法袋によって容量や重さをある程度無視できるといっても、食べ物をそのまま入れては腐ってしまうだろう。外は寒いため大丈夫かも知れないが、念のため魔術で凍らせていた。
1度凍らせれば直ぐには溶けないため、魔力回復薬を数本あけただけで持たせることは可能だ。
「さ、準備できたから食べましょうか。わたくしはローザリンデを看ながら食べてくるわ。」
3人の返事を聞きつつテントの中に入りローザリンデの寝床に向かった。
呼びかけると「んっ…お姉様?戻って、いたのですね…」と声を上げながら目を開く。
「少しでも食べて薬を飲まないと…治らないわよ。」
そう言って食事を渡すと。少しずつだが食べ始める。私が食べ終わる頃には、できる限り口に入れたようだった。
「はい、解熱薬と栄養剤よ。明日には楽になると思うから…薬を飲んでゆっくり休みなさい。」
それから身体を拭いて濡れタオルを額にのせると、眠ったことを確認してからテントの外に出た。
テントの外では、テレシアが食事の後片付けをしていてブルーノとリーファスが話していた。
「ローザリンデは眠ったから一先ず安心ね。リーファスも体調は大丈夫?疲れていない?」
王都からここまでの旅は9歳のリーファスには酷なものだと思う。離宮という比較的安全なところで、いきなり命の危険に晒されるのは精神的にも辛いだろう。
「私は大丈夫です…ラティアーナ姉上はどうしてそんなに強いのですか?ローザリンデ姉上と1つしか違わないのに森を歩くのも平気そうで、兵士相手にも引けを取ってません。」
リーファスが私の目をまっすぐ見て聞いてきた。
「そうね。しいて言うのであれば…守りたい人たちや守りたいもの、何があっても失いたくないという思いがあったからかしらね。」
「守りたい人やものですか?」
「今はまだ分からなくてもそのうちわかるようになるわ。」
リーファスの頭を撫でて「もう遅いからそろそろ寝なさい」と伝えて寝かせてくると私も眠ることにした。
翌朝、3人で朝食の準備をしているとリーファスとローザリンデが起きてきた。
「「おはようございます。」」
「2人ともおはよう。」
朝食を食べながらローザリンデの様子を伺うと、昨日よりは食欲があるようだった。熱はまだあるものの昨日よりは下がっていて顔色も少し良くなっている。
「ローザリンデ様、体調はどうですか?」
「おかげさまでだいぶ楽になりましたわ。まだ少し体は重いですけど…動けそうですの。」
「姉上が元気になってよかったです。」
「リーファスも心配かけたわね…お姉様も色々とありがとうございました。」
テレシアとブルーノは仕える主たちが元気を取り戻したのを微笑んで見守っている。リーファスも姉のことが心配で笑顔が少なくなっていたため、久しぶりに満面の笑みを浮かべていた。
食事と片付けが終わって出発しようとした時、リーファスが駆け寄ってくる。
「ラティアーナ姉上…今度私に剣を教えてもらえませんか?」
「構わないけど…急にどうしたの?」
私の問いかけにリーファスは難しそうな顔をして告げた。
「姉上が昨日言っていたことは、まだわかりませんでした。でも…姉上たちを守れる男にはなりたいと思います。そのためにできることをしたいです。」
「あなたの意思で本当にやりたいと思ったことなら応援するわ。」
私は笑みを浮かべて承諾する。他の人も準備ができたようで、ローザリンデを背負うと皆で出発する。
それから5日間、とくに問題のない日々が続いた。
そして今日の昼過ぎ、ついにマギルス領の領都に到着した。
早朝に出発してから半日少しかけて、森にようやく戻ってきた。魔術具を確認するとだいぶ近い距離まで来たようで、木の枝を伝って駆け寄っていく。
そうしていると4人の姿を確認することができたため、地面に降りた。
「ただいま戻ったわよ。」
「「ラティアーナ王女殿下!おかえりなさいませ。」」
ちょうど野営の場所を見つけたところのようで、ブルーノとテレシアが安心した表情で出迎えてくれた。
隣にいたリーファスも「ラティアーナ姉上!」と声を上げながら私に向かって駆け寄ってくると、そのまま抱きついてきた。私は手を背中に回してポンポンと叩くと「ただいま。遅くなってごめんね?」と笑みを向けながら囁く。
「ローザリンデの体調はどうかしら?」
背負っているテレシアに目を向けると芳しくないようで首を横に振った。
「今は眠っていますが…熱が下がらずお辛そうにされています。」
「そう。ローザリンデが起きたら食事にしましょうか。薬を飲んで少しでも楽になればいいけど…」
3人と話しながらも野営の準備を進めていく。預けていたテントをブルーノが準備している間に、私は魔物避けなどの設置をしてから食事の準備をする。
「代わりましょうか?」
「わたくしがやるから大丈夫よ。そのままローザリンデのことをお願いね…って、その不安そうな目はなにかしら?」
テレシアの不安そうな目線が気になって。じーっと見つめ返すと「すみません。なんでもないです。」と弁明していた。
「別に料理くらい人並みにできるから心配しないでいいわよ?」
私はそう呟きながら、携帯用食料を鍋代わりの入れ物に移して魔術で作ったお湯を注いでいく。
さらに容器ごと火にくべると、街で買ってきた野菜や肉を一緒に煮込んで、塩などで味を調える。
「野菜だけでなく肉も買ってきたのですか?」
「ずっと同じ食事だと…飽きるでしょう。街でちょうど売っていたから助かったわ。あぁ、魔法袋に入れる前に凍らせたから大丈夫よ。」
魔法袋によって容量や重さをある程度無視できるといっても、食べ物をそのまま入れては腐ってしまうだろう。外は寒いため大丈夫かも知れないが、念のため魔術で凍らせていた。
1度凍らせれば直ぐには溶けないため、魔力回復薬を数本あけただけで持たせることは可能だ。
「さ、準備できたから食べましょうか。わたくしはローザリンデを看ながら食べてくるわ。」
3人の返事を聞きつつテントの中に入りローザリンデの寝床に向かった。
呼びかけると「んっ…お姉様?戻って、いたのですね…」と声を上げながら目を開く。
「少しでも食べて薬を飲まないと…治らないわよ。」
そう言って食事を渡すと。少しずつだが食べ始める。私が食べ終わる頃には、できる限り口に入れたようだった。
「はい、解熱薬と栄養剤よ。明日には楽になると思うから…薬を飲んでゆっくり休みなさい。」
それから身体を拭いて濡れタオルを額にのせると、眠ったことを確認してからテントの外に出た。
テントの外では、テレシアが食事の後片付けをしていてブルーノとリーファスが話していた。
「ローザリンデは眠ったから一先ず安心ね。リーファスも体調は大丈夫?疲れていない?」
王都からここまでの旅は9歳のリーファスには酷なものだと思う。離宮という比較的安全なところで、いきなり命の危険に晒されるのは精神的にも辛いだろう。
「私は大丈夫です…ラティアーナ姉上はどうしてそんなに強いのですか?ローザリンデ姉上と1つしか違わないのに森を歩くのも平気そうで、兵士相手にも引けを取ってません。」
リーファスが私の目をまっすぐ見て聞いてきた。
「そうね。しいて言うのであれば…守りたい人たちや守りたいもの、何があっても失いたくないという思いがあったからかしらね。」
「守りたい人やものですか?」
「今はまだ分からなくてもそのうちわかるようになるわ。」
リーファスの頭を撫でて「もう遅いからそろそろ寝なさい」と伝えて寝かせてくると私も眠ることにした。
翌朝、3人で朝食の準備をしているとリーファスとローザリンデが起きてきた。
「「おはようございます。」」
「2人ともおはよう。」
朝食を食べながらローザリンデの様子を伺うと、昨日よりは食欲があるようだった。熱はまだあるものの昨日よりは下がっていて顔色も少し良くなっている。
「ローザリンデ様、体調はどうですか?」
「おかげさまでだいぶ楽になりましたわ。まだ少し体は重いですけど…動けそうですの。」
「姉上が元気になってよかったです。」
「リーファスも心配かけたわね…お姉様も色々とありがとうございました。」
テレシアとブルーノは仕える主たちが元気を取り戻したのを微笑んで見守っている。リーファスも姉のことが心配で笑顔が少なくなっていたため、久しぶりに満面の笑みを浮かべていた。
食事と片付けが終わって出発しようとした時、リーファスが駆け寄ってくる。
「ラティアーナ姉上…今度私に剣を教えてもらえませんか?」
「構わないけど…急にどうしたの?」
私の問いかけにリーファスは難しそうな顔をして告げた。
「姉上が昨日言っていたことは、まだわかりませんでした。でも…姉上たちを守れる男にはなりたいと思います。そのためにできることをしたいです。」
「あなたの意思で本当にやりたいと思ったことなら応援するわ。」
私は笑みを浮かべて承諾する。他の人も準備ができたようで、ローザリンデを背負うと皆で出発する。
それから5日間、とくに問題のない日々が続いた。
そして今日の昼過ぎ、ついにマギルス領の領都に到着した。
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