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第6章 エスペルト王国の革命
3 森の中の逃避行
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王都の城門を突破したあと、さらに東に向けて移動する。私たち王族は指名手配されている可能性もあるため信用できる領地もしくは集落くらいしか立ち寄ることができないだろう。万が一、新王側の領地にあることがバレた場合は、そのまま拘束される危険があるからだ。
ただし集落の場合でも基本的に住民しかいないため、他所の人がいるとかなり目立つ。結局のところは、食料などの補充を最低限済ませるだけにして、当分は森の中の移動と野営をしていくことになる。
「1度この辺りで野営をしませんか?」
王都を出てからの初めての夜。
街道を少し離れた森の中でテレシアは提案した。できる限り距離を離したかったため、日が暮れても歩き続けていた。
感覚的には10の鐘ということで夕食を取らなければいけないだろうし、慣れないローザリンデとリーファスは体力的にも精神的にも限界を迎えているはずだ。
「そうね…わたくしは構わないわよ?2人はどう?」
「ええ…少し休めるのであればありがたいですわ。」
「助かります…」
「わたくしの魔法袋にテントが入っているからそれを使いましょう。空間拡張すれば5人でも使えるわ。」
「ラティアーナ王女殿下助かります。わたくしが食事の用意をしますので、ブルーノは周囲の警戒と野営の準備をお願いします。」
「了解です。」
ブルーノは周囲を警戒しながら魔物除けを設置していき、テレシアは携帯用食料の準備をしていた。
私はその間にテントを設置するとローザリンデとリーファスをテントの中で休ませる。
今まで2人は、突如起きた革命という出来事と身近に起きた戦いや王都を離れて森の中を歩くということから、常に緊張して気を張っていたと思う。
恐らく本人が気づかないだけで、気が緩んだ瞬間に疲労が一気に押し寄せるだろう。
「2人とも疲れたでしょう。ゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます…」
「お邪魔します…テントの中、暖かいですね。」
2人はテントの中に入ると外との気温差に驚いていた。
このテントは保温性が高いため1度中を暖めてさえすればしばらく室温を保つことができる。
外の寒さから解放されてようやく寛ぐことができたローザリンデとリーファスは、心地よい暖かさのためか眠気に誘われた表情をしていた。
私は2人をテントの中に置いて外に出る。ちょうど食事の準備ができたそうで、ローザリンデとリーファスに食事を渡して、ブルーノとテレシアの元に向かった。
「ラティアーナ王女殿下もテントの中でゆっくり食事をどうぞ。わたくしたちが外で見張りをしますので。」
テレシアが申し訳なさそうに口を開くが、3人でいる間に話したいことがあった。
「そうね、基本的には見張りはお願いするわ。けれどその前に…これからのことを話し合いたいと思ったのよ。」
「かしこまりました…お2人には聞かせたくないお話ですか?」
テレシアは私の真意を確かめようとして見つめてきた。聞かせたくないというよりも2人にこれ以上負担をかけたくないと思っていた私は、テレシアとブルーノに目を逸らさずにそう伝えて、目的地に当てがあるか確認した。
「このまま、あてもなく歩き続けるわけには行きませんね…私の領地は恐らく新王側につくと思います。テレシアはどうですか?」
ブルーノは悩みながらも実家の領地には頼ることができないと答えた。テレシアも「わたくしの領地も中立を維持すると思います。」と悲しげに首を振る。
私も協力してくれる領地があるか思案する。関わりのある領地はそれなりにあるが、新王側の圧力を跳ね除けることができる領地となると大分限られるだろう。
となると、思いついた領地は1つだけだった。
「少し遠いですが…マギルス公爵領まで逃げましょう。支援してくれるはずです。」
夏に話した時に助力を惜しまないと、味方でいてくれると言ってくれた。貴族間の言葉だけの約束はあまり信用できないことの方が多いが、叔母のイベリスのことは信頼できる。
「そうですね。マギルス公爵家が力を貸していただけるのであれば、心強いですね。」
「かしこまりました。イベリス様の力を借りることができれば心強いです。わたくしもラティアーナ殿下にお任せいたします。」
「わたくしも2人のことを頼りにしているわ。ローザリンデとリーファスのこと、守ってくれてありがとうね。」
2人にお礼を告げながら微笑むと微笑み返してくれた。
食事が終わると夜も遅いため、テントで休むことになる。
夜の見張りはブルーノとテレシアが交代で行うことになったため、私もゆっくりと休ませてもらうことにした。
朝になるとマギルス領に向けて出発する。すでに王都の隣の領地に入っているため、テレシアにはローザリンデの着る服を用意してもらった。
貴族用のドレスは見た目のわりに動きやすいと言われているが、走ったりするのが精一杯で足場が不安定な森を歩くには心許なかったからだ。
それからも5人で歩いていく。慣れないローザリンデとリーファスに合わせるため、移動速度はゆっくりだが着実に目的地へと近づいていくのだった。
ただし集落の場合でも基本的に住民しかいないため、他所の人がいるとかなり目立つ。結局のところは、食料などの補充を最低限済ませるだけにして、当分は森の中の移動と野営をしていくことになる。
「1度この辺りで野営をしませんか?」
王都を出てからの初めての夜。
街道を少し離れた森の中でテレシアは提案した。できる限り距離を離したかったため、日が暮れても歩き続けていた。
感覚的には10の鐘ということで夕食を取らなければいけないだろうし、慣れないローザリンデとリーファスは体力的にも精神的にも限界を迎えているはずだ。
「そうね…わたくしは構わないわよ?2人はどう?」
「ええ…少し休めるのであればありがたいですわ。」
「助かります…」
「わたくしの魔法袋にテントが入っているからそれを使いましょう。空間拡張すれば5人でも使えるわ。」
「ラティアーナ王女殿下助かります。わたくしが食事の用意をしますので、ブルーノは周囲の警戒と野営の準備をお願いします。」
「了解です。」
ブルーノは周囲を警戒しながら魔物除けを設置していき、テレシアは携帯用食料の準備をしていた。
私はその間にテントを設置するとローザリンデとリーファスをテントの中で休ませる。
今まで2人は、突如起きた革命という出来事と身近に起きた戦いや王都を離れて森の中を歩くということから、常に緊張して気を張っていたと思う。
恐らく本人が気づかないだけで、気が緩んだ瞬間に疲労が一気に押し寄せるだろう。
「2人とも疲れたでしょう。ゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます…」
「お邪魔します…テントの中、暖かいですね。」
2人はテントの中に入ると外との気温差に驚いていた。
このテントは保温性が高いため1度中を暖めてさえすればしばらく室温を保つことができる。
外の寒さから解放されてようやく寛ぐことができたローザリンデとリーファスは、心地よい暖かさのためか眠気に誘われた表情をしていた。
私は2人をテントの中に置いて外に出る。ちょうど食事の準備ができたそうで、ローザリンデとリーファスに食事を渡して、ブルーノとテレシアの元に向かった。
「ラティアーナ王女殿下もテントの中でゆっくり食事をどうぞ。わたくしたちが外で見張りをしますので。」
テレシアが申し訳なさそうに口を開くが、3人でいる間に話したいことがあった。
「そうね、基本的には見張りはお願いするわ。けれどその前に…これからのことを話し合いたいと思ったのよ。」
「かしこまりました…お2人には聞かせたくないお話ですか?」
テレシアは私の真意を確かめようとして見つめてきた。聞かせたくないというよりも2人にこれ以上負担をかけたくないと思っていた私は、テレシアとブルーノに目を逸らさずにそう伝えて、目的地に当てがあるか確認した。
「このまま、あてもなく歩き続けるわけには行きませんね…私の領地は恐らく新王側につくと思います。テレシアはどうですか?」
ブルーノは悩みながらも実家の領地には頼ることができないと答えた。テレシアも「わたくしの領地も中立を維持すると思います。」と悲しげに首を振る。
私も協力してくれる領地があるか思案する。関わりのある領地はそれなりにあるが、新王側の圧力を跳ね除けることができる領地となると大分限られるだろう。
となると、思いついた領地は1つだけだった。
「少し遠いですが…マギルス公爵領まで逃げましょう。支援してくれるはずです。」
夏に話した時に助力を惜しまないと、味方でいてくれると言ってくれた。貴族間の言葉だけの約束はあまり信用できないことの方が多いが、叔母のイベリスのことは信頼できる。
「そうですね。マギルス公爵家が力を貸していただけるのであれば、心強いですね。」
「かしこまりました。イベリス様の力を借りることができれば心強いです。わたくしもラティアーナ殿下にお任せいたします。」
「わたくしも2人のことを頼りにしているわ。ローザリンデとリーファスのこと、守ってくれてありがとうね。」
2人にお礼を告げながら微笑むと微笑み返してくれた。
食事が終わると夜も遅いため、テントで休むことになる。
夜の見張りはブルーノとテレシアが交代で行うことになったため、私もゆっくりと休ませてもらうことにした。
朝になるとマギルス領に向けて出発する。すでに王都の隣の領地に入っているため、テレシアにはローザリンデの着る服を用意してもらった。
貴族用のドレスは見た目のわりに動きやすいと言われているが、走ったりするのが精一杯で足場が不安定な森を歩くには心許なかったからだ。
それからも5人で歩いていく。慣れないローザリンデとリーファスに合わせるため、移動速度はゆっくりだが着実に目的地へと近づいていくのだった。
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