126 / 475
第5章 王女の学園生活
27 強化種と残る疑問
しおりを挟む
濃密な殺気に晒された私たちは、周囲を警戒する。2人の様子を見ると警戒しつつも緊張しているようだった。表情が硬くなっていて余裕がなさそうだ。
「2人とも落ち着いて対処すれば大丈夫よ。危険なときは逃げることを優先するけど、一先ず様子見かしらね。」
「「わかりました…」」
私の言葉に2人は深呼吸する。呼吸を落ち着かせると少しは緊張が柔らいたように見える。
「前から来るようね…準備は良い?」
私の問いかけに2人は頷く。相手がさらに接近して目視できるところまで来ると、次第に姿を捉えることができた。
「あれはオーガの群れ…ですよね?」
「それにしてはなにかおかしいような?うまく言葉にできないです。」
オーガらしき魔物が10匹近く現れた。ロナとロアはオーガの姿を見ると怪訝な表情で呟く。現れた魔物たちはオーガの形をしているが、相対したときに感じる圧迫感は通常の比ではない。
「あれはオーガの強化種だけど、それだけではないわね。強化種っていうのは生存競争を繰り返す中で進化した魔物だけど、同時に魔力を取り込むほど強くなるから…それに応じて肉体も強化されるのよ。」
と言ったものの不可解な点があった。強化種はともかくこの辺りに存在する魔力量では、ありえないほど強化されているように感じる。
感覚としては東の大陸に存在するオーガの強化種が近いかもしれない。
「私が前に出るから2人は支援と広範囲の警戒をお願いね。」
「わかりました。全力で支援します。」
「お任せください。」
2人をその場に残して、一番近くにいたオーガに向かって走り出す。すると2人からの魔術が私を追い越して、さらに後ろのオーガに迫った。
私が一番近いオーガを抜刀と同時に斬り捨てる。
その間にもロナの魔術が群れ全体を抑え、ロアの魔術によって後ろにいたオーガが倒れたようだった。
そのまま戦うと10匹のオーガは全滅する。
「なかなか強い相手でしたね…」
ロアが先ほどまでの戦いを振り返りながら呟くとロナも頷いている。
「一旦戻りましょうか。カーラさんたちにも1度伝えて、皆で今後の方針を決める必要がありそうだわ。」
私たちは探索しながらつけた目印を頼りに、来た道を戻っていく。しばらく歩き続けて、明かりが見える位置まで戻ってくると、外から激しい音が聞こえてきた。
「まさか外でも戦闘が?」
「可能性は高いかもね。急ぐわよ!」
私たちは走る速度を上げて洞窟から外に出る。すると4人が洞窟の中にいたものと同じオーガを倒しきった所だった。
「3人が急いで戻ってきたということは…そういうこと?」
アリアがオーガたちの骸に目を向けながら問いかける。
「ええ、想像の通りよ。洞窟の中でもオーガの群れに遭遇したわ。それで伝えるために戻ってきたのだけど、カーラさんこの後どうします?…カーラさん?」
この後の方針についてカーラに確認しようと問いかけるが、遠くを眺めているようで反応がなかった。見つめていると私の視線に気付いたようで「ごめんなさい。なんでしたっけ?」といいながら近付いてきた。
「この後の指針が気になりまして。どうしますか?」
改めて聞くとカーラは悩むそぶりを見せる。
「そうですね…こちらが把握している洞窟はこちらが最後ですから…探索を続けましょうか。今回のようなオーガと遭遇した場合は討伐しましょう。私たちはこちらを見張りますから、またお願いできますか?」
私たち3人は再び洞窟の中で戻っていく。先ほどオーガと戦った場所も通り抜けて、さらに億へと進んでいった。すると、広い空間へと繋がる。
「ここが洞窟の最深部でしょうか?」
「多分そうだと思うけど…魔物の気配はしないから手分けして探索かな?」
3人で手分けしながら見て回るが、特に痕跡があるということもなかった。仕方がないのでそのまま外に戻ることにした。
「中の調査はどうだった?」
「何か見つかったか!?」
ドムとノアは期待する眼差しで見てくるが、私たちが首を横に振ると肩を落とした。
「見つかりませんでしたか…」
「それにしては不思議ですね…」
カーラとアリアがため息を吐いていると、ロナとロアが不思議そうな表情をしている。
「見つからないことが残念なのは分かりますけど…どうして不思議なんですか?」
「冒険者が行方不明になっていたけど、魔物に襲われる場合って…跡が残るのよ。」
具体的に言いたくなかったため言葉を濁した。2人も想像したらしく顔を顰めていたが、納得もしたようだった。
「森も全体的に回ったことですし、これ以上は意味があるかわからないですね。1度王都に戻るとしましょうか。」
強化種のオーガの発見と他には何もおかしいところがないという、疑問が増える結果にはなったがひとまず調査が終わった。
王都に戻るとそのままギルド支部に向かい、依頼の精算を行う。
「今回はありがとうございました。依頼はこれで一区切りとさせていただきます。報酬は今日中に振り込みますので。」
別れを告げるとこのまま解散となった。
「2人とも落ち着いて対処すれば大丈夫よ。危険なときは逃げることを優先するけど、一先ず様子見かしらね。」
「「わかりました…」」
私の言葉に2人は深呼吸する。呼吸を落ち着かせると少しは緊張が柔らいたように見える。
「前から来るようね…準備は良い?」
私の問いかけに2人は頷く。相手がさらに接近して目視できるところまで来ると、次第に姿を捉えることができた。
「あれはオーガの群れ…ですよね?」
「それにしてはなにかおかしいような?うまく言葉にできないです。」
オーガらしき魔物が10匹近く現れた。ロナとロアはオーガの姿を見ると怪訝な表情で呟く。現れた魔物たちはオーガの形をしているが、相対したときに感じる圧迫感は通常の比ではない。
「あれはオーガの強化種だけど、それだけではないわね。強化種っていうのは生存競争を繰り返す中で進化した魔物だけど、同時に魔力を取り込むほど強くなるから…それに応じて肉体も強化されるのよ。」
と言ったものの不可解な点があった。強化種はともかくこの辺りに存在する魔力量では、ありえないほど強化されているように感じる。
感覚としては東の大陸に存在するオーガの強化種が近いかもしれない。
「私が前に出るから2人は支援と広範囲の警戒をお願いね。」
「わかりました。全力で支援します。」
「お任せください。」
2人をその場に残して、一番近くにいたオーガに向かって走り出す。すると2人からの魔術が私を追い越して、さらに後ろのオーガに迫った。
私が一番近いオーガを抜刀と同時に斬り捨てる。
その間にもロナの魔術が群れ全体を抑え、ロアの魔術によって後ろにいたオーガが倒れたようだった。
そのまま戦うと10匹のオーガは全滅する。
「なかなか強い相手でしたね…」
ロアが先ほどまでの戦いを振り返りながら呟くとロナも頷いている。
「一旦戻りましょうか。カーラさんたちにも1度伝えて、皆で今後の方針を決める必要がありそうだわ。」
私たちは探索しながらつけた目印を頼りに、来た道を戻っていく。しばらく歩き続けて、明かりが見える位置まで戻ってくると、外から激しい音が聞こえてきた。
「まさか外でも戦闘が?」
「可能性は高いかもね。急ぐわよ!」
私たちは走る速度を上げて洞窟から外に出る。すると4人が洞窟の中にいたものと同じオーガを倒しきった所だった。
「3人が急いで戻ってきたということは…そういうこと?」
アリアがオーガたちの骸に目を向けながら問いかける。
「ええ、想像の通りよ。洞窟の中でもオーガの群れに遭遇したわ。それで伝えるために戻ってきたのだけど、カーラさんこの後どうします?…カーラさん?」
この後の方針についてカーラに確認しようと問いかけるが、遠くを眺めているようで反応がなかった。見つめていると私の視線に気付いたようで「ごめんなさい。なんでしたっけ?」といいながら近付いてきた。
「この後の指針が気になりまして。どうしますか?」
改めて聞くとカーラは悩むそぶりを見せる。
「そうですね…こちらが把握している洞窟はこちらが最後ですから…探索を続けましょうか。今回のようなオーガと遭遇した場合は討伐しましょう。私たちはこちらを見張りますから、またお願いできますか?」
私たち3人は再び洞窟の中で戻っていく。先ほどオーガと戦った場所も通り抜けて、さらに億へと進んでいった。すると、広い空間へと繋がる。
「ここが洞窟の最深部でしょうか?」
「多分そうだと思うけど…魔物の気配はしないから手分けして探索かな?」
3人で手分けしながら見て回るが、特に痕跡があるということもなかった。仕方がないのでそのまま外に戻ることにした。
「中の調査はどうだった?」
「何か見つかったか!?」
ドムとノアは期待する眼差しで見てくるが、私たちが首を横に振ると肩を落とした。
「見つかりませんでしたか…」
「それにしては不思議ですね…」
カーラとアリアがため息を吐いていると、ロナとロアが不思議そうな表情をしている。
「見つからないことが残念なのは分かりますけど…どうして不思議なんですか?」
「冒険者が行方不明になっていたけど、魔物に襲われる場合って…跡が残るのよ。」
具体的に言いたくなかったため言葉を濁した。2人も想像したらしく顔を顰めていたが、納得もしたようだった。
「森も全体的に回ったことですし、これ以上は意味があるかわからないですね。1度王都に戻るとしましょうか。」
強化種のオーガの発見と他には何もおかしいところがないという、疑問が増える結果にはなったがひとまず調査が終わった。
王都に戻るとそのままギルド支部に向かい、依頼の精算を行う。
「今回はありがとうございました。依頼はこれで一区切りとさせていただきます。報酬は今日中に振り込みますので。」
別れを告げるとこのまま解散となった。
6
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
初期ステータスが0!かと思ったら、よく見るとΩ(オメガ)ってなってたんですけどこれは最強ってことでいいんでしょうか?
夜ふかし
ファンタジー
気がついたらよくわからない所でよくわからない死を司る神と対面した須木透(スキトオル)。
1人目は美味しいとの話につられて、ある世界の初転生者となることに。
転生先で期待して初期ステータスを確認すると0!
かと思いきや、よく見ると下が開いていたΩ(オメガ)だった。
Ωといえば、なんか強そうな気がする!
この世界での冒険の幕が開いた。

田村涼は異世界で物乞いを始めた。
イペンシ・ノキマ
ファンタジー
異世界に転生した田村涼に割り振られた職業は「物乞い」。それは一切の魔術が使えず、戦闘能力は極めて低い、ゴミ職業であった。おまけにこの世界は超階級社会で、「物乞い」のランクは最低の第四階級。街の人々は彼を蔑み、馬鹿にし、人間扱いさえしようとしない。そのうえ、最近やってきた教会長はこの街から第四階級の人々を駆逐しようとさえしている。そんななか、田村涼は「物乞い」には”隠されたスキル”があることに気がつく。そのことに気づいたところから、田村涼の快進撃が始まる――。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる