王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第5章 王女の学園生活

27 強化種と残る疑問

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 濃密な殺気に晒された私たちは、周囲を警戒する。2人の様子を見ると警戒しつつも緊張しているようだった。表情が硬くなっていて余裕がなさそうだ。

「2人とも落ち着いて対処すれば大丈夫よ。危険なときは逃げることを優先するけど、一先ず様子見かしらね。」

「「わかりました…」」

 私の言葉に2人は深呼吸する。呼吸を落ち着かせると少しは緊張が柔らいたように見える。

「前から来るようね…準備は良い?」

 私の問いかけに2人は頷く。相手がさらに接近して目視できるところまで来ると、次第に姿を捉えることができた。

「あれはオーガの群れ…ですよね?」

「それにしてはなにかおかしいような?うまく言葉にできないです。」

 オーガらしき魔物が10匹近く現れた。ロナとロアはオーガの姿を見ると怪訝な表情で呟く。現れた魔物たちはオーガの形をしているが、相対したときに感じる圧迫感は通常の比ではない。

「あれはオーガの強化種だけど、それだけではないわね。強化種っていうのは生存競争を繰り返す中で進化した魔物だけど、同時に魔力を取り込むほど強くなるから…それに応じて肉体も強化されるのよ。」

 と言ったものの不可解な点があった。強化種はともかくこの辺りに存在する魔力量では、ありえないほど強化されているように感じる。
 感覚としては東の大陸に存在するオーガの強化種が近いかもしれない。

「私が前に出るから2人は支援と広範囲の警戒をお願いね。」

「わかりました。全力で支援します。」

「お任せください。」

 2人をその場に残して、一番近くにいたオーガに向かって走り出す。すると2人からの魔術が私を追い越して、さらに後ろのオーガに迫った。
 私が一番近いオーガを抜刀と同時に斬り捨てる。
 その間にもロナの魔術が群れ全体を抑え、ロアの魔術によって後ろにいたオーガが倒れたようだった。
 そのまま戦うと10匹のオーガは全滅する。

「なかなか強い相手でしたね…」

 ロアが先ほどまでの戦いを振り返りながら呟くとロナも頷いている。

「一旦戻りましょうか。カーラさんたちにも1度伝えて、皆で今後の方針を決める必要がありそうだわ。」

 私たちは探索しながらつけた目印を頼りに、来た道を戻っていく。しばらく歩き続けて、明かりが見える位置まで戻ってくると、外から激しい音が聞こえてきた。

「まさか外でも戦闘が?」

「可能性は高いかもね。急ぐわよ!」

 私たちは走る速度を上げて洞窟から外に出る。すると4人が洞窟の中にいたものと同じオーガを倒しきった所だった。

「3人が急いで戻ってきたということは…そういうこと?」

 アリアがオーガたちの骸に目を向けながら問いかける。

「ええ、想像の通りよ。洞窟の中でもオーガの群れに遭遇したわ。それで伝えるために戻ってきたのだけど、カーラさんこの後どうします?…カーラさん?」

 この後の方針についてカーラに確認しようと問いかけるが、遠くを眺めているようで反応がなかった。見つめていると私の視線に気付いたようで「ごめんなさい。なんでしたっけ?」といいながら近付いてきた。

「この後の指針が気になりまして。どうしますか?」

 改めて聞くとカーラは悩むそぶりを見せる。

「そうですね…こちらが把握している洞窟はこちらが最後ですから…探索を続けましょうか。今回のようなオーガと遭遇した場合は討伐しましょう。私たちはこちらを見張りますから、またお願いできますか?」

 私たち3人は再び洞窟の中で戻っていく。先ほどオーガと戦った場所も通り抜けて、さらに億へと進んでいった。すると、広い空間へと繋がる。

「ここが洞窟の最深部でしょうか?」

「多分そうだと思うけど…魔物の気配はしないから手分けして探索かな?」

 3人で手分けしながら見て回るが、特に痕跡があるということもなかった。仕方がないのでそのまま外に戻ることにした。

「中の調査はどうだった?」

「何か見つかったか!?」

 ドムとノアは期待する眼差しで見てくるが、私たちが首を横に振ると肩を落とした。

「見つかりませんでしたか…」

「それにしては不思議ですね…」

 カーラとアリアがため息を吐いていると、ロナとロアが不思議そうな表情をしている。

「見つからないことが残念なのは分かりますけど…どうして不思議なんですか?」

「冒険者が行方不明になっていたけど、魔物に襲われる場合って…跡が残るのよ。」

 具体的に言いたくなかったため言葉を濁した。2人も想像したらしく顔を顰めていたが、納得もしたようだった。

「森も全体的に回ったことですし、これ以上は意味があるかわからないですね。1度王都に戻るとしましょうか。」

 強化種のオーガの発見と他には何もおかしいところがないという、疑問が増える結果にはなったがひとまず調査が終わった。

 王都に戻るとそのままギルド支部に向かい、依頼の精算を行う。

「今回はありがとうございました。依頼はこれで一区切りとさせていただきます。報酬は今日中に振り込みますので。」

 別れを告げるとこのまま解散となった。
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