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第5章 王女の学園生活
22 大会予選2日目
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大会も2日目となり学年の上位4名が決定することになる。
順調に勝ち上がっていたAクラスのメンバーも、それぞれぶつかり合うことになる。
まず最初のAクラス同士の対決はカトレア対ロアの試合だった。
「カトレアさん対ロアさんの試合を始めます…それでは、始め!」
審判の合図と同時に仕掛けたのはロアだった。
身体強化を使って跳躍すると、杖に魔力を込めて魔術を展開しロアの周りに魔力による槍を作り出す。
カトレアに近づいた瞬間、準備していた槍を斉射した。
カトレアは一歩も動いていないが、周りには魔術による盾が展開されている。盾と槍が衝突して魔力の爆発が起こるが、カトレアの盾を破ることはできなかった。
「流石ですねカトレア様…」
「ロアこそ。なかなかの威力でした。」
カトレアもロアも魔術が主体だが、戦い方は対極に近い。
カトレアは基本的に魔術による強固な防御を軸としてあまり動かずに攻撃する。それに対してロアは、避けることを前提として常に位置を変えながら攻撃を仕掛ける。
「今度はわたくしの番です。」
カトレアは盾を維持しながら、新しく魔術を2つ行使して術式を複数展開いく。1つは氷の弾丸を放つための砲台を、もう1つは魔力を収束させるための砲台だ。
氷の弾丸を連射しながら牽制しつつ、魔力を収束していく。
「わっ!」
チャージされた魔力砲が放たれてロアは急いで避ける。すると、先ほどまでロアのいた場所を魔力砲が炸裂した。
「想像以上の威力ですね…」
ロアが抉れた地面を見ながら呟くと、カトレアも笑みを浮かべている。
「わたくしも公爵家令嬢として負けられませんから。まだまだ行きますよ!」
ロアは射線から外れるように走って位置を変えるが、カトレアの術式はロアの動きを追うように方向を変える。
そして、氷の弾丸が絶え間なく放たれ一定間隔で魔力砲が放たれるのだった。
試合が始まってしばらく、カトレアが攻めてロアが避けるという繰り返しになっていた。
(カトレア様からの射線が切れない…こうなったら一か八か全速力で回り込んで、一撃を与える!)
ロアは身体強化に回す魔力を最大まで引き上げる。
身体強化というのは身体が許容できる範囲という限度はあるが、魔力を多く流せばその分強化される。
しかし自身で扱える身体能力には限度があるため、過剰に強化すると思ったように動けなくなるデメリットがあった。
当然ロアも知ってはいるが、カトレアの後ろに回り込むだけのため、リスクを承知で実行した。
想定よりも大回りになったが、後ろに回り込むことに成功する。カトレアの術式も回頭が間に合っていないため、魔術による攻撃も飛んでこない。
ロアは杖に全力で魔力を集めると、自身が最速で扱える魔力の弾丸を放った。そしてカトレアに直撃する瞬間、魔力の爆発を発生させる。
「僕の考える限りの全力…これな!?」
爆発の影響で土煙が立っているため、息を整えながら様子を見ようとしていると、煙の中から雷撃を撃たれた。
とっさに横に跳躍して避けようとするが、続けて放たれた雷撃が直撃し闘技場の防御が作動する。
「そこまで!勝者はカトレアさん!」
周りからの歓声が上がって試合が終わった。
「最後の攻撃…どう対処したのですか?」
「ロアが後ろから攻撃したとき、わたくしからは死角になっていたわ。けどね…わたくしの立ち回りだと死角からの攻撃が一番危険だから、瞬時に防御魔術を発動できるように心がけているのよ。」
ロアはカトレアの言葉に驚いたようだった。
「でも…煙で見えない状態で、あんなに正確に攻撃を当てるなんて。」
「実戦で軍団を指揮するとき、味方と敵の位置を把握することが重要なのよ。だからわたくしの場合は魔術による探知をかけているの。それのおかげね。」
それを聞いたロアは「まだまだ練習が足りなかったようです。」と呟いた後、お礼を告げる。
カトレアもお礼を告げたあと闘技場を後にするのだった。
同じ頃、別の闘技場ではスピカとアルマクの試合が行われていた。
魔術士志望同士でアルマクのほうが魔力量が多いため有利と思われているが、試合を押しているのはスピカだった。
スピカは身体強化を使って杖を構えると、アルマクに接近し打撃を加えていく。
アルマクは盾の魔術で防ぐが、杖による打撃と度々放たれる炎弾によって攻撃する隙を作れないでいた。
「スピカさん!?あなた今まで一度も近接戦闘なんてしなかったでしょう!?」
アルマクは驚きが隠せない様子でスピカのことを見ている。
「ええ。ですが…アドリアス様に特訓を付き合っていただきましたから!勝たせていただきます。」
長期休暇以降、アドリアスとスピカは仲を深めていて、学園が終わった後や休日にも出かけるようになっていた。その際に魔術の練習に付き合ってもらうこともあったが、簡単な護身術として棒術も学んでいた。
これがスピカにはあっていたらしく、魔術士相手であれば通用するくらいにはなっている。
スピカは杖を突き出して魔術の盾にぶつけると、そのままアルマクの足元に風の魔術を展開した。
それによってアルマクの足元からの突風によって飛ばされそうになり、一瞬動きが止まる。その隙にスピカは杖の先から魔力弾を放つとアルマクに直撃した。
「試合終了。スピカさんの勝利です!」
アルマクとスピカはお互いにお礼を告げると下がっていく。スピカはこの後同じ会場で試合があるため、待機用の部屋に戻っていった。
午後になるとまずは、スピカとロナの試合から始まる。
2人の試合は、スピカが攻めてロナが守るという展開になっていた。
元々、ロナは防御と治癒の魔術が得意だった。学園に入ってからは、いくつかの支援系の魔術や攻撃魔術を習得しているが本質は変わらない。
ここまでの戦いでは強固な防御によって、相手の攻撃を誘い、隙ができるのを待つ戦法をとっていた。
防御の仕方次第では攻撃するほうが魔力消費が多くなるため、魔力切れを気にして焦りが生まれるためだ。
しかしそれを知っているスピカは杖による打撃を主体にすることで、攻撃時の魔力を抑えていた。
そして、一定の時間が経過したときロナが膝を着いた。
「ま、参りました…」
ロナから降参の声が上がる。
「試合終了。スピカさんの勝利です!」
アナウンスの声を聞きながら、スピカはロナの元に寄っていく。
「ロナ大丈夫?」
「スピカ様…はい、大丈夫です。魔力切れを起こしただけですから…」
スピカはロナに手を貸して起こすと、肩を貸して一緒に闘技場を後にする。
そして第4試合が全て終わり予選の最終である第5試合が始まる。
最後の組み合わせは、以下のとおりとなる。
ラティアーナ対ブラッド
アドリアス対イリーナ
スピカ対Bクラスの生徒
カトレア対Bクラスの生徒
まず、スピカとカトレアは苦戦もすることなく勝利し、先に予選突破となった。
そしてアドリアスとイリーナの試合が始まる。
「あなたと全力で戦いのは始めてね。」
「ああそうだな。昔から手合わせはしていなかったからな…」
お互いに笑みを浮かべると位置に着く。少ししてからアナウンスの声が聞こえる。
「それでは…試合開始!」
開始と同時に、2人はお互いに向かって走り出す。
アドリアスが剣を突き出し、イリーナの魔術の盾が防ぐ。次の瞬間、イリーナの雷撃が空から降り注いだ。
アドリアスは咄嗟に剣を払って、雷撃を弾く。
「流石の速さだな。」
「ええ、あなたが相手だもの…出し惜しみはしないわ!」
イリーナは炎弾を大量に作り出すと斉射する。アドリアスも斬り払いながら弾幕の中を進んでいく。
そこからは互角の戦いが続いた。お互いが高速で移動しながら魔術と剣術が入り乱れる。
半刻ほど試合が続いた頃、突如甲高い音が響いた。
「っ!もう少しもつと思ったが…」
アドリアスが魔術を斬った瞬間、剣が半ばから二つに折れて空気中を舞う。
そのため、一瞬だがアドリアスに隙が生まれた。
イリーナは待機状態にあった術式に魔力を流して、上級に匹敵するであろう雷魔術を発動させる。同時に空からアドリアスに向けて雷が降り注ぎ、球場に広がる雷の檻が作られた。
アドリアスも咄嗟に体に魔力を纏わせるが、防ぎ切れずに闘技場の防御が発動する。
「そこまで!イリーナさんの勝利!」
アナウンスと歓声とともに試合が終わった。
「防ぎ切れなかったようだな…イリーナおめでとう。」
「ありがとう。次戦う時は、槍を持った状態で戦ってもらいたいわね。」
「それをいうなら、杖を持ったイリーナと戦いたいものだ。」
2人は微笑みあいながら舞台から去っていく。2人が観客席に戻った頃、今日最後の試合が始まるのだった。
「よろしくねブラッド。」
「こちらこそよろしくお願いします。ラティアーナ様。」
私とブラッドは位置について待機する。周りを見渡すと既に試合が終わったAクラスのメンバーやベロニカ、ミモザといった友人たちの姿も見えた。
「それでは。試合開始!」
合図と同時にブラッドは動き出す。短剣を片手に身体強化をかけると、いきなり接近戦を仕掛けてきた。
「最初から近接戦は意外ね!」
私も剣を振り払いながら応戦する。短剣の方が小回りが効く分手数が増えるが、必要最低限を剣で受けて残りは避けることに専念する。
「ラティアーナ様に対して長期戦は不利になるだけですから……一気に決めさせていただきます。」
ブラッドはそう呟くと同時に、身体強化を最大にして高速で移動し続ける。前後左右あらゆる角度から短剣が襲ってくるため、私も身体強化を使って避けながら斬り払っていく。
すると短剣の猛攻が止むと同時に、巨大な炎の柱に包まれた。
(短剣を振るいながら、地面に術式を仕掛けるなんてやるじゃない…でも残念ね。)
私は剣に風を纏わせると、そのまま炎を斬り払って吹き飛ばす。
炎が消えると同時に、後ろから短剣の切先が迫ってくる。
「っ!?」
短剣が首に当たる直前、極小に展開された魔術の障壁が刃を弾いた。ブラッドの呻き声が漏れた。
「残念ね。」
私はそう呟くと、剣を振り抜いてブラッドを吹き飛ばした。
「試合終了!ラティアーナさんの勝利です!これにて予選全ての試合が終了しました。1年生の本戦出場者は、カトレアさん、スピカさん、イリーナさん、ラティアーナさんです。本戦の組み合わせは、この後2年生の最終予選が終わり次第決定されます。発表は明日の朝行いますので、各自確認してください。」
アナウンスが流れて、私たちの予算が終わった。
舞台から降りると闘技場を出る直前に、ブラッドが話しかけてきた。
「ラティアーナ様には敵いませんでしたね…」
「ブラッドもなかなかだったわよ?炎の柱は驚いたし最後の一撃もギリギリまで気づかなかったわ。」
「ありがとうございます。…僕もまだまだ頑張らないといけませんね。」
少しだけ言葉を交わして会場を後にした。
順調に勝ち上がっていたAクラスのメンバーも、それぞれぶつかり合うことになる。
まず最初のAクラス同士の対決はカトレア対ロアの試合だった。
「カトレアさん対ロアさんの試合を始めます…それでは、始め!」
審判の合図と同時に仕掛けたのはロアだった。
身体強化を使って跳躍すると、杖に魔力を込めて魔術を展開しロアの周りに魔力による槍を作り出す。
カトレアに近づいた瞬間、準備していた槍を斉射した。
カトレアは一歩も動いていないが、周りには魔術による盾が展開されている。盾と槍が衝突して魔力の爆発が起こるが、カトレアの盾を破ることはできなかった。
「流石ですねカトレア様…」
「ロアこそ。なかなかの威力でした。」
カトレアもロアも魔術が主体だが、戦い方は対極に近い。
カトレアは基本的に魔術による強固な防御を軸としてあまり動かずに攻撃する。それに対してロアは、避けることを前提として常に位置を変えながら攻撃を仕掛ける。
「今度はわたくしの番です。」
カトレアは盾を維持しながら、新しく魔術を2つ行使して術式を複数展開いく。1つは氷の弾丸を放つための砲台を、もう1つは魔力を収束させるための砲台だ。
氷の弾丸を連射しながら牽制しつつ、魔力を収束していく。
「わっ!」
チャージされた魔力砲が放たれてロアは急いで避ける。すると、先ほどまでロアのいた場所を魔力砲が炸裂した。
「想像以上の威力ですね…」
ロアが抉れた地面を見ながら呟くと、カトレアも笑みを浮かべている。
「わたくしも公爵家令嬢として負けられませんから。まだまだ行きますよ!」
ロアは射線から外れるように走って位置を変えるが、カトレアの術式はロアの動きを追うように方向を変える。
そして、氷の弾丸が絶え間なく放たれ一定間隔で魔力砲が放たれるのだった。
試合が始まってしばらく、カトレアが攻めてロアが避けるという繰り返しになっていた。
(カトレア様からの射線が切れない…こうなったら一か八か全速力で回り込んで、一撃を与える!)
ロアは身体強化に回す魔力を最大まで引き上げる。
身体強化というのは身体が許容できる範囲という限度はあるが、魔力を多く流せばその分強化される。
しかし自身で扱える身体能力には限度があるため、過剰に強化すると思ったように動けなくなるデメリットがあった。
当然ロアも知ってはいるが、カトレアの後ろに回り込むだけのため、リスクを承知で実行した。
想定よりも大回りになったが、後ろに回り込むことに成功する。カトレアの術式も回頭が間に合っていないため、魔術による攻撃も飛んでこない。
ロアは杖に全力で魔力を集めると、自身が最速で扱える魔力の弾丸を放った。そしてカトレアに直撃する瞬間、魔力の爆発を発生させる。
「僕の考える限りの全力…これな!?」
爆発の影響で土煙が立っているため、息を整えながら様子を見ようとしていると、煙の中から雷撃を撃たれた。
とっさに横に跳躍して避けようとするが、続けて放たれた雷撃が直撃し闘技場の防御が作動する。
「そこまで!勝者はカトレアさん!」
周りからの歓声が上がって試合が終わった。
「最後の攻撃…どう対処したのですか?」
「ロアが後ろから攻撃したとき、わたくしからは死角になっていたわ。けどね…わたくしの立ち回りだと死角からの攻撃が一番危険だから、瞬時に防御魔術を発動できるように心がけているのよ。」
ロアはカトレアの言葉に驚いたようだった。
「でも…煙で見えない状態で、あんなに正確に攻撃を当てるなんて。」
「実戦で軍団を指揮するとき、味方と敵の位置を把握することが重要なのよ。だからわたくしの場合は魔術による探知をかけているの。それのおかげね。」
それを聞いたロアは「まだまだ練習が足りなかったようです。」と呟いた後、お礼を告げる。
カトレアもお礼を告げたあと闘技場を後にするのだった。
同じ頃、別の闘技場ではスピカとアルマクの試合が行われていた。
魔術士志望同士でアルマクのほうが魔力量が多いため有利と思われているが、試合を押しているのはスピカだった。
スピカは身体強化を使って杖を構えると、アルマクに接近し打撃を加えていく。
アルマクは盾の魔術で防ぐが、杖による打撃と度々放たれる炎弾によって攻撃する隙を作れないでいた。
「スピカさん!?あなた今まで一度も近接戦闘なんてしなかったでしょう!?」
アルマクは驚きが隠せない様子でスピカのことを見ている。
「ええ。ですが…アドリアス様に特訓を付き合っていただきましたから!勝たせていただきます。」
長期休暇以降、アドリアスとスピカは仲を深めていて、学園が終わった後や休日にも出かけるようになっていた。その際に魔術の練習に付き合ってもらうこともあったが、簡単な護身術として棒術も学んでいた。
これがスピカにはあっていたらしく、魔術士相手であれば通用するくらいにはなっている。
スピカは杖を突き出して魔術の盾にぶつけると、そのままアルマクの足元に風の魔術を展開した。
それによってアルマクの足元からの突風によって飛ばされそうになり、一瞬動きが止まる。その隙にスピカは杖の先から魔力弾を放つとアルマクに直撃した。
「試合終了。スピカさんの勝利です!」
アルマクとスピカはお互いにお礼を告げると下がっていく。スピカはこの後同じ会場で試合があるため、待機用の部屋に戻っていった。
午後になるとまずは、スピカとロナの試合から始まる。
2人の試合は、スピカが攻めてロナが守るという展開になっていた。
元々、ロナは防御と治癒の魔術が得意だった。学園に入ってからは、いくつかの支援系の魔術や攻撃魔術を習得しているが本質は変わらない。
ここまでの戦いでは強固な防御によって、相手の攻撃を誘い、隙ができるのを待つ戦法をとっていた。
防御の仕方次第では攻撃するほうが魔力消費が多くなるため、魔力切れを気にして焦りが生まれるためだ。
しかしそれを知っているスピカは杖による打撃を主体にすることで、攻撃時の魔力を抑えていた。
そして、一定の時間が経過したときロナが膝を着いた。
「ま、参りました…」
ロナから降参の声が上がる。
「試合終了。スピカさんの勝利です!」
アナウンスの声を聞きながら、スピカはロナの元に寄っていく。
「ロナ大丈夫?」
「スピカ様…はい、大丈夫です。魔力切れを起こしただけですから…」
スピカはロナに手を貸して起こすと、肩を貸して一緒に闘技場を後にする。
そして第4試合が全て終わり予選の最終である第5試合が始まる。
最後の組み合わせは、以下のとおりとなる。
ラティアーナ対ブラッド
アドリアス対イリーナ
スピカ対Bクラスの生徒
カトレア対Bクラスの生徒
まず、スピカとカトレアは苦戦もすることなく勝利し、先に予選突破となった。
そしてアドリアスとイリーナの試合が始まる。
「あなたと全力で戦いのは始めてね。」
「ああそうだな。昔から手合わせはしていなかったからな…」
お互いに笑みを浮かべると位置に着く。少ししてからアナウンスの声が聞こえる。
「それでは…試合開始!」
開始と同時に、2人はお互いに向かって走り出す。
アドリアスが剣を突き出し、イリーナの魔術の盾が防ぐ。次の瞬間、イリーナの雷撃が空から降り注いだ。
アドリアスは咄嗟に剣を払って、雷撃を弾く。
「流石の速さだな。」
「ええ、あなたが相手だもの…出し惜しみはしないわ!」
イリーナは炎弾を大量に作り出すと斉射する。アドリアスも斬り払いながら弾幕の中を進んでいく。
そこからは互角の戦いが続いた。お互いが高速で移動しながら魔術と剣術が入り乱れる。
半刻ほど試合が続いた頃、突如甲高い音が響いた。
「っ!もう少しもつと思ったが…」
アドリアスが魔術を斬った瞬間、剣が半ばから二つに折れて空気中を舞う。
そのため、一瞬だがアドリアスに隙が生まれた。
イリーナは待機状態にあった術式に魔力を流して、上級に匹敵するであろう雷魔術を発動させる。同時に空からアドリアスに向けて雷が降り注ぎ、球場に広がる雷の檻が作られた。
アドリアスも咄嗟に体に魔力を纏わせるが、防ぎ切れずに闘技場の防御が発動する。
「そこまで!イリーナさんの勝利!」
アナウンスと歓声とともに試合が終わった。
「防ぎ切れなかったようだな…イリーナおめでとう。」
「ありがとう。次戦う時は、槍を持った状態で戦ってもらいたいわね。」
「それをいうなら、杖を持ったイリーナと戦いたいものだ。」
2人は微笑みあいながら舞台から去っていく。2人が観客席に戻った頃、今日最後の試合が始まるのだった。
「よろしくねブラッド。」
「こちらこそよろしくお願いします。ラティアーナ様。」
私とブラッドは位置について待機する。周りを見渡すと既に試合が終わったAクラスのメンバーやベロニカ、ミモザといった友人たちの姿も見えた。
「それでは。試合開始!」
合図と同時にブラッドは動き出す。短剣を片手に身体強化をかけると、いきなり接近戦を仕掛けてきた。
「最初から近接戦は意外ね!」
私も剣を振り払いながら応戦する。短剣の方が小回りが効く分手数が増えるが、必要最低限を剣で受けて残りは避けることに専念する。
「ラティアーナ様に対して長期戦は不利になるだけですから……一気に決めさせていただきます。」
ブラッドはそう呟くと同時に、身体強化を最大にして高速で移動し続ける。前後左右あらゆる角度から短剣が襲ってくるため、私も身体強化を使って避けながら斬り払っていく。
すると短剣の猛攻が止むと同時に、巨大な炎の柱に包まれた。
(短剣を振るいながら、地面に術式を仕掛けるなんてやるじゃない…でも残念ね。)
私は剣に風を纏わせると、そのまま炎を斬り払って吹き飛ばす。
炎が消えると同時に、後ろから短剣の切先が迫ってくる。
「っ!?」
短剣が首に当たる直前、極小に展開された魔術の障壁が刃を弾いた。ブラッドの呻き声が漏れた。
「残念ね。」
私はそう呟くと、剣を振り抜いてブラッドを吹き飛ばした。
「試合終了!ラティアーナさんの勝利です!これにて予選全ての試合が終了しました。1年生の本戦出場者は、カトレアさん、スピカさん、イリーナさん、ラティアーナさんです。本戦の組み合わせは、この後2年生の最終予選が終わり次第決定されます。発表は明日の朝行いますので、各自確認してください。」
アナウンスが流れて、私たちの予算が終わった。
舞台から降りると闘技場を出る直前に、ブラッドが話しかけてきた。
「ラティアーナ様には敵いませんでしたね…」
「ブラッドもなかなかだったわよ?炎の柱は驚いたし最後の一撃もギリギリまで気づかなかったわ。」
「ありがとうございます。…僕もまだまだ頑張らないといけませんね。」
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