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第5章 王女の学園生活
20 大会に向けて
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約2月に及ぶ休暇が終わって、学園生活が再び始まる。後期は総合戦闘の大会が行われて、期末に学園祭という予定になっていた。
因みに、後期の間には建国祭が行われるため前後合わせて2月は休暇が入る。
そんなわけで、通常通り授業を受けながらも実技については、大会を意識したものになっていた。
「皆さんは武術と魔術の基本的なことに関しては、既に学んだことと思います。ここからは学んだことをどう活かしていくかが大切です。自分に合った自分だけの活かし方という物を見つけてみてください。」
アイリスの授業も個々の練習が主体となり、定期的にクラスメイト同士でも模擬戦という流れになっていた。
今日の授業については個人練習のため、最近考えていた技術の練習を行う。
戦い慣れてくると手足の動きや重心、目線などから相手の動きを予測することが可能になる。
私も今まで相手の動きを予測するのに使っていた。それを逆にとることで、相手から私の動きを読まれなくしたいと思っている。
あわよくばミスリードできればとも考えていた。
ある程度練習して、体の動かし方や立ち回りを見直した後一息つく。
休憩しながら剣を眺めて別のことを考えていると、近づいてくる気配がした。
「ラティアーナ悩み事か?」
後ろを見ると、先程まで素振りをしていたアドリアスが話しかけてきた。
「最近思うのよね…わたくしだけの戦い方、わたくしにしかできないことってなんだろうって。」
「ラティアーナだったら剣術と体術があるだろう?正直その2つに関しては、王国内で勝てる人物はそうそういないと思うが?」
「前にも同じことを考えたことがあってね。そのときは強大な相手に対して魔術が効かないときで、わたくしの強みは剣術だと思ったわ。けれど剣術だけでも勝てない相手はいるから、魔術も大事だし場合によっては他の武器も使う。わたくしという本質が…たまに分からなくなるのよね。」
私がため息を吐きながらそう言うと、アドリアスは珍しそうな顔をしていた。
「意外だな…お前がそういったことで悩むとは思わなかった。」
「意外って…これでも常日頃からいろいろ考えてるわよ。考えて結論を出して、また迷う。そうするしかないって分かっていても不安は残るのよ。」
「だが考えて突き進むしかない。正しかったかどうかなんて、進んだ先の結果からしかわからない。結果を見るにしても結局は自分の中で満足がいったかどうかだけだ。そうだろう?」
「…アドリアスのその前向きなところは、羨ましいと思うわ。」
そう割り切れれば苦労しないと思って、呆れた目を向けながらそう言うと、アドリアスはにこやかに笑った。
「俺はひたすら前に進むと決めているからな。もちろんその時々で考えもするが…振り返るのは全てが終わったそのときだ。」
アドリアスはそれだけ言うと、元いた場所に戻っていった。
(それもそうね…少しだけ気が楽になったわ。ありがとう。)
内心でお礼を告げて、練習に戻ることにした。
それからしばらく経ち、明日はついに大会が始まる日となる。
「では大会についての詳細を説明します。学年内の1対1によるトーナメント方式です。武術および魔術を問わない総合戦闘となります。道具の持ち込みは禁止で武器についても、事前に申請のあった物のみ持込可とします。」
前にアイリスが話していたが、道具や武器に関するルールは度々変わっているそうだ。
道具が禁止ということは、魔術具の使用や薬品が使えないということになる。ただ武器に魔術を刻むなどの魔剣等の使用は、許可されているためバランスを取るのが難しいらしい。
「トーナメント表は明日の朝張り出されるので、各自確認をお願いしますね。それでは少し早いですが、授業はここまでとします。定刻までは教室にいるつもりなので、質問のある人は来てください。」
授業も終わって解散となった。
「ラティアーナちょっといいかしら?」
帰る準備をしているとイリーナが声をかけてくる。
「改まってどうしたのよ?」
「一応報告だけど、わたくし婚約したわ。」
イリーナのいきなりの報告に思わずむせそうになった。
「おめでとう。相手はわたくしも知っている人?」
「直接は知らないわね。サギッタ伯爵の次男で、1学年上になるアルトム様よ。」
「シクスタスとはよく話すけど…サギッタ伯爵家との婚約話が出ていたなんて全く知らなかったわ。」
伯爵当主のシクスタス・サギッタは、帝国戦の時の司令官を務めていた人だ。一緒に戦ってからは、建国祭やお披露目といった社交の場で毎回話すため、比較的付き合いのある貴族となる。
イリーナは次期公爵でもあるため、婿入りしてくれる令息を探すのに苦労していた。シクスタスの令息なら安心できる相手だと思う。
「サギッタ伯爵領はマギルス公爵領から近いから、家同士の交流はあったのよ。彼とは幼馴染でもあるから昔から知っている中だし、話がまとまって良かったわ。」
「それは良かった。本当に嬉しく思うわ。」
イリーナの表情を見ると普段通りの笑みを浮かべているものの、心なしかいつもより嬉しそうだった。
その後は、イリーナと少し言葉を交わして寮に帰る。
翌日、ついに大会がはじまるのだった。
因みに、後期の間には建国祭が行われるため前後合わせて2月は休暇が入る。
そんなわけで、通常通り授業を受けながらも実技については、大会を意識したものになっていた。
「皆さんは武術と魔術の基本的なことに関しては、既に学んだことと思います。ここからは学んだことをどう活かしていくかが大切です。自分に合った自分だけの活かし方という物を見つけてみてください。」
アイリスの授業も個々の練習が主体となり、定期的にクラスメイト同士でも模擬戦という流れになっていた。
今日の授業については個人練習のため、最近考えていた技術の練習を行う。
戦い慣れてくると手足の動きや重心、目線などから相手の動きを予測することが可能になる。
私も今まで相手の動きを予測するのに使っていた。それを逆にとることで、相手から私の動きを読まれなくしたいと思っている。
あわよくばミスリードできればとも考えていた。
ある程度練習して、体の動かし方や立ち回りを見直した後一息つく。
休憩しながら剣を眺めて別のことを考えていると、近づいてくる気配がした。
「ラティアーナ悩み事か?」
後ろを見ると、先程まで素振りをしていたアドリアスが話しかけてきた。
「最近思うのよね…わたくしだけの戦い方、わたくしにしかできないことってなんだろうって。」
「ラティアーナだったら剣術と体術があるだろう?正直その2つに関しては、王国内で勝てる人物はそうそういないと思うが?」
「前にも同じことを考えたことがあってね。そのときは強大な相手に対して魔術が効かないときで、わたくしの強みは剣術だと思ったわ。けれど剣術だけでも勝てない相手はいるから、魔術も大事だし場合によっては他の武器も使う。わたくしという本質が…たまに分からなくなるのよね。」
私がため息を吐きながらそう言うと、アドリアスは珍しそうな顔をしていた。
「意外だな…お前がそういったことで悩むとは思わなかった。」
「意外って…これでも常日頃からいろいろ考えてるわよ。考えて結論を出して、また迷う。そうするしかないって分かっていても不安は残るのよ。」
「だが考えて突き進むしかない。正しかったかどうかなんて、進んだ先の結果からしかわからない。結果を見るにしても結局は自分の中で満足がいったかどうかだけだ。そうだろう?」
「…アドリアスのその前向きなところは、羨ましいと思うわ。」
そう割り切れれば苦労しないと思って、呆れた目を向けながらそう言うと、アドリアスはにこやかに笑った。
「俺はひたすら前に進むと決めているからな。もちろんその時々で考えもするが…振り返るのは全てが終わったそのときだ。」
アドリアスはそれだけ言うと、元いた場所に戻っていった。
(それもそうね…少しだけ気が楽になったわ。ありがとう。)
内心でお礼を告げて、練習に戻ることにした。
それからしばらく経ち、明日はついに大会が始まる日となる。
「では大会についての詳細を説明します。学年内の1対1によるトーナメント方式です。武術および魔術を問わない総合戦闘となります。道具の持ち込みは禁止で武器についても、事前に申請のあった物のみ持込可とします。」
前にアイリスが話していたが、道具や武器に関するルールは度々変わっているそうだ。
道具が禁止ということは、魔術具の使用や薬品が使えないということになる。ただ武器に魔術を刻むなどの魔剣等の使用は、許可されているためバランスを取るのが難しいらしい。
「トーナメント表は明日の朝張り出されるので、各自確認をお願いしますね。それでは少し早いですが、授業はここまでとします。定刻までは教室にいるつもりなので、質問のある人は来てください。」
授業も終わって解散となった。
「ラティアーナちょっといいかしら?」
帰る準備をしているとイリーナが声をかけてくる。
「改まってどうしたのよ?」
「一応報告だけど、わたくし婚約したわ。」
イリーナのいきなりの報告に思わずむせそうになった。
「おめでとう。相手はわたくしも知っている人?」
「直接は知らないわね。サギッタ伯爵の次男で、1学年上になるアルトム様よ。」
「シクスタスとはよく話すけど…サギッタ伯爵家との婚約話が出ていたなんて全く知らなかったわ。」
伯爵当主のシクスタス・サギッタは、帝国戦の時の司令官を務めていた人だ。一緒に戦ってからは、建国祭やお披露目といった社交の場で毎回話すため、比較的付き合いのある貴族となる。
イリーナは次期公爵でもあるため、婿入りしてくれる令息を探すのに苦労していた。シクスタスの令息なら安心できる相手だと思う。
「サギッタ伯爵領はマギルス公爵領から近いから、家同士の交流はあったのよ。彼とは幼馴染でもあるから昔から知っている中だし、話がまとまって良かったわ。」
「それは良かった。本当に嬉しく思うわ。」
イリーナの表情を見ると普段通りの笑みを浮かべているものの、心なしかいつもより嬉しそうだった。
その後は、イリーナと少し言葉を交わして寮に帰る。
翌日、ついに大会がはじまるのだった。
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