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第5章 王女の学園生活
19 薬草の納品と商会
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依頼を受けた私は早速、件の山岳地帯に向かった。
通常の道順では、いくつかの街を経由して公爵領に向かい、そこから山の方向へ戻ることになる。
今回は時間短縮のため馬車を使わず走り抜ける。また王都から山岳地帯まで直線で向かうつもりだった。
そんなわけで私は、身体強化と障壁を利用して空を走っている。昼間であれば見通しがいたため、前に演習で学園まで走った時以上の速度を出すことができた。
そのため、日中のうちに距離を稼ぎ夜間はゆっくりと休むことにする。
途中野営を挟みながらも2日ほどかけて到着した。
「さて…薬草はあるかしら?」
植物の納品依頼の場合、ギルドから採取用の簡易鑑定魔術具が支給されるため、採取する対象を間違えることは少ない。
私は、薬草を探し鑑定をして採取する作業を繰り返す。
たまに魔物が襲ってくるが、採取の邪魔なため斬り伏せていく。規定の量が集まる頃には夜になったため、ここで一夜を明かすことにした。
翌朝、周囲に魔物がいないことを確認した私は、転移用の魔術具を使って王都にあるお店まで戻るのだった。
その後は、そのままギルド支部に直行する。
中に入ると受付にカーラがいるのが見えたため、依頼達成を伝えて納品を行うつもりだ。
「カーラさん。依頼の薬草は採取してきました。納品物の確認をお願いします。」
「ティアさん早かったですね!納品の薬草は…はい、問題なさそうですね。本当に助かりました。」
「いえ、これも仕事ですからね。それに…依頼主についても友人のさらに知り合いでしたし。」
私がそう告げるとカーラは目を丸くした。
ギルドの依頼書には、依頼主を記載するかどうか選ぶことができる。
例としては商会などが、新商品の開発のために素材を欲していたとしても、匿名であれば機密が守られる。逆に依頼主を明示した場合、依頼主の名前が通っていれば依頼を受ける人が多くなる可能性もあるわけだ。
今回の依頼書には、エドガー商会の商会長の名前が書いてあった。
エドガー商会は、主に国内外の食料品を幅広く取り扱う商会となっていて、私の離宮とお店で取引がある。
お店の方は取引量が多くないため担当者としか接していないが、離宮に関しては王女との取引ということで何度も対面で話をしている。
「そうだったのですね……はい。ではこれで依頼達成の完了です。こちらをどうぞ。ご利用ありがとうございました。」
話しているうちに手続きが終わり為替を受け取る。報奨金の受け取りは、現金もしくは王国内で使用可能な為替に限られる。
私の場合は住民登録していて銀行が使えることから、為替という形で貰うことにしていた。
後日、エドガー商会の商会長と商談があったため、離宮の応接間で対面していた。
「ラティアーナ王女殿下、お久しゅうございます。本日はどう言ったご用件でしょうか?」
「先日マギルス領に行ったのだけど…お刺身に醤油とわさびをつけて食べたのよ。とても美味しかったわ。そこでね、お魚と醤油とわさびを手に入れたいと思っているけどいかがかしら?」
「お魚だけは日持ちしないため難しいですね……王都まで持ちません…我々の商会でも取り扱いこそあるものの、日持ちしないため海沿いの支店のみで扱っている状況です。」
商会長は冷や汗を書きながらも、難しいと告げてくる。
「別に難しいと言ったからって、どうこうしないから安心なさい。持ち運び型の冷凍用魔術具を1つ貸すわ。それならどう?」
「冷凍用魔術具ですか!?あれは、建物に設置するもので有ればまだしも…持ち運びできるものは我々では手に入らないものですぞ!?」
「ええ、もちろん知っているわよ。持ち運べる魔術具の中でも、常時発動する物で外部から魔力供給する物は、ほとんど売っていないからね。」
商会長は驚いた表情をしていて、口が塞がらないようだ。
もっとも王族が物を貸し与えるということは滅多にないため、仕方ないかもしれないが。
「ただしこの魔術具を他の用途に使用しないこと。と言ってもこちらに来た際に、1度の運搬に使えるだけの魔力結晶を渡しますから、他の用途に使えば自ずとわかると思います。あなたのことは信頼してますから…よろしくお願いしますね。」
「か、かしこまりました。」
商談についてはこれで成立となる。
「そういえば商会とは関係ないのだけど…あなた娘さんがいるの?」
「は、はい。1人でありますが…」
いきなり話題を変えたため、緊張した面持ちで見てくる。
「なんでも薬草を必要としていると聞いたのだけど?」
「はい…近頃魔力の制御が難しくなったようで、娘が苦しそうなのです。」
「身近に魔力を扱える人はいるのかしら?」
「商会の従業員にいます。彼等に少し助力を求めたのですが…なかなか改善しませんでした。なので薬草による対処をすることにしたのです。」
魔力が急に増えると制御は難しくなるが、周りは魔力を扱える人がいるなら多少は安心できる。
制御方法を教えるだけでなく、外から魔力を落ち着かさせることもできるからだ。
「それなら少しは安心かしら?早く良くなるといいわね。」
「ありがとうございます。」
商会長は安心した表情を見せて、離宮を後にするのだった。
通常の道順では、いくつかの街を経由して公爵領に向かい、そこから山の方向へ戻ることになる。
今回は時間短縮のため馬車を使わず走り抜ける。また王都から山岳地帯まで直線で向かうつもりだった。
そんなわけで私は、身体強化と障壁を利用して空を走っている。昼間であれば見通しがいたため、前に演習で学園まで走った時以上の速度を出すことができた。
そのため、日中のうちに距離を稼ぎ夜間はゆっくりと休むことにする。
途中野営を挟みながらも2日ほどかけて到着した。
「さて…薬草はあるかしら?」
植物の納品依頼の場合、ギルドから採取用の簡易鑑定魔術具が支給されるため、採取する対象を間違えることは少ない。
私は、薬草を探し鑑定をして採取する作業を繰り返す。
たまに魔物が襲ってくるが、採取の邪魔なため斬り伏せていく。規定の量が集まる頃には夜になったため、ここで一夜を明かすことにした。
翌朝、周囲に魔物がいないことを確認した私は、転移用の魔術具を使って王都にあるお店まで戻るのだった。
その後は、そのままギルド支部に直行する。
中に入ると受付にカーラがいるのが見えたため、依頼達成を伝えて納品を行うつもりだ。
「カーラさん。依頼の薬草は採取してきました。納品物の確認をお願いします。」
「ティアさん早かったですね!納品の薬草は…はい、問題なさそうですね。本当に助かりました。」
「いえ、これも仕事ですからね。それに…依頼主についても友人のさらに知り合いでしたし。」
私がそう告げるとカーラは目を丸くした。
ギルドの依頼書には、依頼主を記載するかどうか選ぶことができる。
例としては商会などが、新商品の開発のために素材を欲していたとしても、匿名であれば機密が守られる。逆に依頼主を明示した場合、依頼主の名前が通っていれば依頼を受ける人が多くなる可能性もあるわけだ。
今回の依頼書には、エドガー商会の商会長の名前が書いてあった。
エドガー商会は、主に国内外の食料品を幅広く取り扱う商会となっていて、私の離宮とお店で取引がある。
お店の方は取引量が多くないため担当者としか接していないが、離宮に関しては王女との取引ということで何度も対面で話をしている。
「そうだったのですね……はい。ではこれで依頼達成の完了です。こちらをどうぞ。ご利用ありがとうございました。」
話しているうちに手続きが終わり為替を受け取る。報奨金の受け取りは、現金もしくは王国内で使用可能な為替に限られる。
私の場合は住民登録していて銀行が使えることから、為替という形で貰うことにしていた。
後日、エドガー商会の商会長と商談があったため、離宮の応接間で対面していた。
「ラティアーナ王女殿下、お久しゅうございます。本日はどう言ったご用件でしょうか?」
「先日マギルス領に行ったのだけど…お刺身に醤油とわさびをつけて食べたのよ。とても美味しかったわ。そこでね、お魚と醤油とわさびを手に入れたいと思っているけどいかがかしら?」
「お魚だけは日持ちしないため難しいですね……王都まで持ちません…我々の商会でも取り扱いこそあるものの、日持ちしないため海沿いの支店のみで扱っている状況です。」
商会長は冷や汗を書きながらも、難しいと告げてくる。
「別に難しいと言ったからって、どうこうしないから安心なさい。持ち運び型の冷凍用魔術具を1つ貸すわ。それならどう?」
「冷凍用魔術具ですか!?あれは、建物に設置するもので有ればまだしも…持ち運びできるものは我々では手に入らないものですぞ!?」
「ええ、もちろん知っているわよ。持ち運べる魔術具の中でも、常時発動する物で外部から魔力供給する物は、ほとんど売っていないからね。」
商会長は驚いた表情をしていて、口が塞がらないようだ。
もっとも王族が物を貸し与えるということは滅多にないため、仕方ないかもしれないが。
「ただしこの魔術具を他の用途に使用しないこと。と言ってもこちらに来た際に、1度の運搬に使えるだけの魔力結晶を渡しますから、他の用途に使えば自ずとわかると思います。あなたのことは信頼してますから…よろしくお願いしますね。」
「か、かしこまりました。」
商談についてはこれで成立となる。
「そういえば商会とは関係ないのだけど…あなた娘さんがいるの?」
「は、はい。1人でありますが…」
いきなり話題を変えたため、緊張した面持ちで見てくる。
「なんでも薬草を必要としていると聞いたのだけど?」
「はい…近頃魔力の制御が難しくなったようで、娘が苦しそうなのです。」
「身近に魔力を扱える人はいるのかしら?」
「商会の従業員にいます。彼等に少し助力を求めたのですが…なかなか改善しませんでした。なので薬草による対処をすることにしたのです。」
魔力が急に増えると制御は難しくなるが、周りは魔力を扱える人がいるなら多少は安心できる。
制御方法を教えるだけでなく、外から魔力を落ち着かさせることもできるからだ。
「それなら少しは安心かしら?早く良くなるといいわね。」
「ありがとうございます。」
商会長は安心した表情を見せて、離宮を後にするのだった。
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