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第5章 王女の学園生活
5 親友と約束
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学園に入学して約1月が経った。
その間にも、座学や実技などの授業を受ける日常が続いていく。
また、授業以外でも他のクラスとも交流を持ち、数人だが友人になることができた。
今日の授業が終わったため、この後は友人達と街へ出かける予定だ。
「スピカ行きましょうか。」
「はい。ラティアーナ様。」
クラスメイトのスピカとともに、待ち合わせの場所に向かう。入り口のホールで待っていると、2人がやってくるのが見えた。
「「お待たせしました。」」
「わたくしたちもちょうど今来たところです。」
焦ってやってきた2人に、スピカが声をかける。
「焦らなくて大丈夫よ。では行きましょうか。」
私もそう声をかけて、4人で歩き出す。
彼女たちは、スピカを通して知り合った友人で、Bクラスのベロニカ・アミキティア子爵令嬢とミモザ・テネリタス男爵令嬢だ。街の喫茶店にケーキを食べに出かけたときに、偶然3人と遭遇したのがきっかけだった。
好きな食べ物も一緒で、話を合うため次第によく話すようになり、そこから一緒に出かける仲になった。
最初の頃は3人から緊張感が伝わってきたが、今では大分慣れた。そうしていく中で、お互いに親友と呼べる間柄になれたと思っている。
新作のケーキが出たと言うことで、早速喫茶店に移動することにした。そして、新作のケーキを食べながら、いろいろな話をする。
話をする中でベロニカの
「そういえば…皆様は婚約者が決まりましたか?」
という突然の発言に、思わず咳き込みそうになる。
「…わたくしはまだ誰もいないけれど?」
私がそう言うと、スピカとミモザも「わたくしもまだですね。」との返事がきた。
「お父様から最近、婚約者候補の人と会ってみないかという話が来てるのですけど…悩んでしまうのですよね。もちろん貴族としては政略結婚が当たり前だというのを、分かってはいるのです。」
この国でも結婚については両親の意向が強い。基本的には結婚によって、他家とのつながりを得たり、利を得るために使われる。特に女性の場合は、長子であっても爵位を継ぐことは滅多にないため、嫁ぐことがほとんどだ。
「わたくしは学園でいい人がいれば、見つけてきなさいと言われてます。領地に関してはお兄様がいますし、領内に港があるおかげで、そこまで他家とのつながりを必要としていません。もしも卒業までに見つからない場合は、両親が見つけると思いますけど、今のところはそういった話はないですね。」
スピカの領地であるポートクリフ伯爵領は、北側を支える港を抱えているためとても栄えていた。外国との取引量では、アクアリス子爵領に劣るものの北の国境に近いため、国軍への補給基地としての役割も兼ねているのも理由の一つだ。
「わたくしも似たようなものですね。家同士の繋がりは得たいですけど、学園で知り合った方が新しい繋がりができますから。」
テネリタス男爵家も領地持ち貴族となっている。ただ男爵家の場合、高位の貴族家との繋がりを持つ家は、そう多くない。当主が探すよりも、同学年の仲で接する機会が多い学園で探したほうが見つかるだろう。
「ラティアーナ様はどうなさるのですか?」
スピカが私にも聞いてくる。他の2人もかなり興味があるらしく、身を乗り出す勢いで見てくる。
「わたくしは自身で探すつもりよ。少なくとも王国内に居たいと思っているわね。」
王女となると、他国の王族や高位貴族の嫁ぐ、あるいは降嫁することがほとんどとなる。国外へ嫁ぐつもりはさらさらないため、降嫁先を探すつもりだった。
「ベロニカだって、婚約したい相手がいるのであれば目指していいと思うわよ?政略結婚は利を得るためにするものだと言われているわ。だったら希望を通すために、政略結婚以上の利を作ってしまえばいい。結婚を認めてもらうために、あなた自身が利を生み出すというのも有りでしょう。」
私の言葉にベロニカは「なるほど。」とつぶやく。その後もお茶を飲みながら話をして、喫茶店を後にした。
それからも話をしながら4人で街を見て歩く。
しばらくして日が暮れてくると、街にある露店を眺めまがら帰路に着く。すると、ミモザが「あっ」とつぶやく声が聞こえた。
「どうしたの?」
ベロニカがミモザに聞くと、ミモザはお店にあったアクセサリを手に取った。
「このアクセサリを友人たちで分けてもっていると、御利益があるらしいです。せっかくなので、皆様で持ちませんか?」
「お揃いのアクセサリを持つのは、何か良いわよね。」
「そうね。浪漫があっていいと思うわ。」
「そうしましょう。」
ミモザの言葉に3人して答えると、アクセサリを買って1枚ずつ分けて皆に渡していく。
それは、シロツメクサのアクセサリだった。4つ葉のものを選んで、1枚ずつに分けた状態で各々が持つ。
「そういえば、どんな御利益があるのかしら?」
つい気になって聞いてみると、ミモザが教えてくれた。
「確か…困難があった時に、乗り越えることができますように。そして4人に幸せが訪れますように。だったかしら。」
「良いわね…これから先幸せを掴むために、皆に何かあった時は助けにいくわ。」
とスピカが言って
「ええ、1人じゃ無理だとしても4人でなら。」
とベロニカが言い
「4人で幸せを掴む…約束よ。」
と私が言う。
その言葉に合わせて4人で手を合わせた。
その間にも、座学や実技などの授業を受ける日常が続いていく。
また、授業以外でも他のクラスとも交流を持ち、数人だが友人になることができた。
今日の授業が終わったため、この後は友人達と街へ出かける予定だ。
「スピカ行きましょうか。」
「はい。ラティアーナ様。」
クラスメイトのスピカとともに、待ち合わせの場所に向かう。入り口のホールで待っていると、2人がやってくるのが見えた。
「「お待たせしました。」」
「わたくしたちもちょうど今来たところです。」
焦ってやってきた2人に、スピカが声をかける。
「焦らなくて大丈夫よ。では行きましょうか。」
私もそう声をかけて、4人で歩き出す。
彼女たちは、スピカを通して知り合った友人で、Bクラスのベロニカ・アミキティア子爵令嬢とミモザ・テネリタス男爵令嬢だ。街の喫茶店にケーキを食べに出かけたときに、偶然3人と遭遇したのがきっかけだった。
好きな食べ物も一緒で、話を合うため次第によく話すようになり、そこから一緒に出かける仲になった。
最初の頃は3人から緊張感が伝わってきたが、今では大分慣れた。そうしていく中で、お互いに親友と呼べる間柄になれたと思っている。
新作のケーキが出たと言うことで、早速喫茶店に移動することにした。そして、新作のケーキを食べながら、いろいろな話をする。
話をする中でベロニカの
「そういえば…皆様は婚約者が決まりましたか?」
という突然の発言に、思わず咳き込みそうになる。
「…わたくしはまだ誰もいないけれど?」
私がそう言うと、スピカとミモザも「わたくしもまだですね。」との返事がきた。
「お父様から最近、婚約者候補の人と会ってみないかという話が来てるのですけど…悩んでしまうのですよね。もちろん貴族としては政略結婚が当たり前だというのを、分かってはいるのです。」
この国でも結婚については両親の意向が強い。基本的には結婚によって、他家とのつながりを得たり、利を得るために使われる。特に女性の場合は、長子であっても爵位を継ぐことは滅多にないため、嫁ぐことがほとんどだ。
「わたくしは学園でいい人がいれば、見つけてきなさいと言われてます。領地に関してはお兄様がいますし、領内に港があるおかげで、そこまで他家とのつながりを必要としていません。もしも卒業までに見つからない場合は、両親が見つけると思いますけど、今のところはそういった話はないですね。」
スピカの領地であるポートクリフ伯爵領は、北側を支える港を抱えているためとても栄えていた。外国との取引量では、アクアリス子爵領に劣るものの北の国境に近いため、国軍への補給基地としての役割も兼ねているのも理由の一つだ。
「わたくしも似たようなものですね。家同士の繋がりは得たいですけど、学園で知り合った方が新しい繋がりができますから。」
テネリタス男爵家も領地持ち貴族となっている。ただ男爵家の場合、高位の貴族家との繋がりを持つ家は、そう多くない。当主が探すよりも、同学年の仲で接する機会が多い学園で探したほうが見つかるだろう。
「ラティアーナ様はどうなさるのですか?」
スピカが私にも聞いてくる。他の2人もかなり興味があるらしく、身を乗り出す勢いで見てくる。
「わたくしは自身で探すつもりよ。少なくとも王国内に居たいと思っているわね。」
王女となると、他国の王族や高位貴族の嫁ぐ、あるいは降嫁することがほとんどとなる。国外へ嫁ぐつもりはさらさらないため、降嫁先を探すつもりだった。
「ベロニカだって、婚約したい相手がいるのであれば目指していいと思うわよ?政略結婚は利を得るためにするものだと言われているわ。だったら希望を通すために、政略結婚以上の利を作ってしまえばいい。結婚を認めてもらうために、あなた自身が利を生み出すというのも有りでしょう。」
私の言葉にベロニカは「なるほど。」とつぶやく。その後もお茶を飲みながら話をして、喫茶店を後にした。
それからも話をしながら4人で街を見て歩く。
しばらくして日が暮れてくると、街にある露店を眺めまがら帰路に着く。すると、ミモザが「あっ」とつぶやく声が聞こえた。
「どうしたの?」
ベロニカがミモザに聞くと、ミモザはお店にあったアクセサリを手に取った。
「このアクセサリを友人たちで分けてもっていると、御利益があるらしいです。せっかくなので、皆様で持ちませんか?」
「お揃いのアクセサリを持つのは、何か良いわよね。」
「そうね。浪漫があっていいと思うわ。」
「そうしましょう。」
ミモザの言葉に3人して答えると、アクセサリを買って1枚ずつ分けて皆に渡していく。
それは、シロツメクサのアクセサリだった。4つ葉のものを選んで、1枚ずつに分けた状態で各々が持つ。
「そういえば、どんな御利益があるのかしら?」
つい気になって聞いてみると、ミモザが教えてくれた。
「確か…困難があった時に、乗り越えることができますように。そして4人に幸せが訪れますように。だったかしら。」
「良いわね…これから先幸せを掴むために、皆に何かあった時は助けにいくわ。」
とスピカが言って
「ええ、1人じゃ無理だとしても4人でなら。」
とベロニカが言い
「4人で幸せを掴む…約束よ。」
と私が言う。
その言葉に合わせて4人で手を合わせた。
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