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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
23 冒険者本部の街グロリアス
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冒険者ギルド本部がある街、グロリアス。エスペルト王国のある大陸の最西端に位置する街になる。どこの国にも属さないこの辺りは、冒険者による街がいくつか存在するが、ここは正式にギルド本部が運営しているまちになる。冒険者ギルドは、この大陸中の各国に存在するため、他国もこの街のことは認めている状態だ。
「結構大きな街ですよね。街の中に鉄道を走らせているとは思いませんでした。」
シリウスは列車の窓から外を眺めている。
私たちは、港からギルド本部のある地区へ鉄道に乗って移動していた。少し弾むと個室になるようで、今この部屋には3人しかいない。
この街は、全体が横に長くなっていて東西約100キロメートルほどになる。鉄道を使うと約半刻で横断できるらしく、本部はちょうど中間地点にあるそうだ。
「規模だけで見れば、小国に近いでしょうね。かつての護送によって生まれた繋がりは、国だけじゃなく各国の商会にも根付いているようだし、いろいろな方面への影響力が高いわ。」
「帝国でさえも敵対しませんから、かなりのものだと思います。」
アルキオネの言葉に、ふと帝国について考える。
「今回の…ノスタルジア王国やノーランド王国との動きを見て、帝国はどう動くかしらね?」
「普通であれば海があるとはいえ北と南で挟まれて、東には同じくらいの武力を誇るアルカディア王国がありますからね…前回の敗戦もありますし、当面はおとなしくなるのではないですかね?」
シリウスが答えるとアルキオネと同意する。
「帝国は領土拡大を最優先にしてますが、現帝王は頭もよく統治はしっかりしていると聞いています。無茶してまで攻めることはしないと思いますよ。」
私はそれを聞いて杞憂に終わることを願った。
中央地区に着くと列車を降りた。
少しだけ背伸びすると、駅の近くにあった食事処で昼食にする。
「鉄道はいいわよね。馬車よりも速いし…王国にも欲しいわ。」
初めて鉄道での移動をしたがとても快適だった。難しいことがわかっているが、つい願望が漏れてしまう。
「王国は、街と街の間が離れていますからね。主要の街道に使われているような魔物避けでさえ、魔物の侵入を完全には防げないので仕方がないですが…」
アルキオネが難しい顔をして呟いた。
この世界で、鉄道が普及しない理由は魔物にあった。この街のように防御結界によって、内外を完全に遮断した状態で内部の魔物を殲滅すれば問題ない。けれど魔物と遭遇する可能性がある場合、魔物に襲われても逃げ場がないうえに、脱線などの二次被害が発生する可能性がある。もちろん線路や道単位で結界を張るというのも現実的ではない。
そのため今でも馬車が主流となっていた。この世界の馬は警戒心が強く臆病なため、魔物を避けることが多いことも理由の1つだ。
「魔物の問題は難しいですね。」
シリウスの言葉に対して3人とも同じ気持ちだった。
グロリアスからエスペルト王国までは、基本的に歩いて帰るつもりだった。そのため、保存食をはじめとする食料を補充しておく。ここには1泊だけして出発する予定だ。
ギルド本部のある地区は、中央にギルド本部の建物があり、その周囲に冒険者用のお店が並んでいる。そのさらに東西にはその他商店と住居が並んでいる。
私たちは1泊する間に、情報収集目的で街を見て回る。手早く済ませるために、3人バラバラで行動することにした。シリウスは西側全域、アルキオネは東側全域、そして私はギルド本部を含む中央担当である。
ギルド本部に入ると、周りの視線が私に集中するが、気にせずそのまま進む。掲示板や依頼を確認して、周辺国の動向と、魔物の状況を確認するのが目的だ。
(周辺国は小競り合い程度だから概ね通常通り。特別変わった依頼もなし。魔物の情報も変なところはないと)
情報を確認した私は次にギルドの受付で情報を確認する。
「すいません。グロリアスからエスペルト王国まで旅をする予定なのですが、最近変わったことってありましたか?」
私は受付の人に冒険者プレートを見せて質問した。
ギルド支部は、周辺国の情報はたくさんあるが、ギルド全体では重要事項しか連携されないらしい。対してギルド本部は各支部の情報も収集しているため、細かい内容でも知ることができる。
また、情報のなかには秘匿情報も含まれるが、Aランク以上は原則すべての情報が開示される。
受付の人はプレートを一瞥すると、紙を持ってきて説明してくれる。
「変わったことですか?ここ2月ほどの話ですが、エスペルト王国で中央と辺境でいざこざ…武力衝突まではいきませんが、地方領主と中央の間に溝があるようですね。また、グロリアスでも活動している商人からの情報ですが、関税や商店にかかる税が少し上がったようですね。警戒するにこしたことはありませんが、旅をする上での危険性は前と変わらないと思いますよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
私はお礼を告げてギルド本部を出た。どうやら、王国を離れている間に色々と変化があったらしい。帰国したら調べてみる必要がありそうだ。
その後は、宿で合流して集めた情報を付き合わせる。特別気にする必要があるのは、エスペルト王国についてだけのようだ。
1泊したあとは、ひたすら帰国するために移動する。
エスペルト王国の王都に着いたのは、グロリアス出発かは2月後、ちょうど建国際の1月前だった。
「結構大きな街ですよね。街の中に鉄道を走らせているとは思いませんでした。」
シリウスは列車の窓から外を眺めている。
私たちは、港からギルド本部のある地区へ鉄道に乗って移動していた。少し弾むと個室になるようで、今この部屋には3人しかいない。
この街は、全体が横に長くなっていて東西約100キロメートルほどになる。鉄道を使うと約半刻で横断できるらしく、本部はちょうど中間地点にあるそうだ。
「規模だけで見れば、小国に近いでしょうね。かつての護送によって生まれた繋がりは、国だけじゃなく各国の商会にも根付いているようだし、いろいろな方面への影響力が高いわ。」
「帝国でさえも敵対しませんから、かなりのものだと思います。」
アルキオネの言葉に、ふと帝国について考える。
「今回の…ノスタルジア王国やノーランド王国との動きを見て、帝国はどう動くかしらね?」
「普通であれば海があるとはいえ北と南で挟まれて、東には同じくらいの武力を誇るアルカディア王国がありますからね…前回の敗戦もありますし、当面はおとなしくなるのではないですかね?」
シリウスが答えるとアルキオネと同意する。
「帝国は領土拡大を最優先にしてますが、現帝王は頭もよく統治はしっかりしていると聞いています。無茶してまで攻めることはしないと思いますよ。」
私はそれを聞いて杞憂に終わることを願った。
中央地区に着くと列車を降りた。
少しだけ背伸びすると、駅の近くにあった食事処で昼食にする。
「鉄道はいいわよね。馬車よりも速いし…王国にも欲しいわ。」
初めて鉄道での移動をしたがとても快適だった。難しいことがわかっているが、つい願望が漏れてしまう。
「王国は、街と街の間が離れていますからね。主要の街道に使われているような魔物避けでさえ、魔物の侵入を完全には防げないので仕方がないですが…」
アルキオネが難しい顔をして呟いた。
この世界で、鉄道が普及しない理由は魔物にあった。この街のように防御結界によって、内外を完全に遮断した状態で内部の魔物を殲滅すれば問題ない。けれど魔物と遭遇する可能性がある場合、魔物に襲われても逃げ場がないうえに、脱線などの二次被害が発生する可能性がある。もちろん線路や道単位で結界を張るというのも現実的ではない。
そのため今でも馬車が主流となっていた。この世界の馬は警戒心が強く臆病なため、魔物を避けることが多いことも理由の1つだ。
「魔物の問題は難しいですね。」
シリウスの言葉に対して3人とも同じ気持ちだった。
グロリアスからエスペルト王国までは、基本的に歩いて帰るつもりだった。そのため、保存食をはじめとする食料を補充しておく。ここには1泊だけして出発する予定だ。
ギルド本部のある地区は、中央にギルド本部の建物があり、その周囲に冒険者用のお店が並んでいる。そのさらに東西にはその他商店と住居が並んでいる。
私たちは1泊する間に、情報収集目的で街を見て回る。手早く済ませるために、3人バラバラで行動することにした。シリウスは西側全域、アルキオネは東側全域、そして私はギルド本部を含む中央担当である。
ギルド本部に入ると、周りの視線が私に集中するが、気にせずそのまま進む。掲示板や依頼を確認して、周辺国の動向と、魔物の状況を確認するのが目的だ。
(周辺国は小競り合い程度だから概ね通常通り。特別変わった依頼もなし。魔物の情報も変なところはないと)
情報を確認した私は次にギルドの受付で情報を確認する。
「すいません。グロリアスからエスペルト王国まで旅をする予定なのですが、最近変わったことってありましたか?」
私は受付の人に冒険者プレートを見せて質問した。
ギルド支部は、周辺国の情報はたくさんあるが、ギルド全体では重要事項しか連携されないらしい。対してギルド本部は各支部の情報も収集しているため、細かい内容でも知ることができる。
また、情報のなかには秘匿情報も含まれるが、Aランク以上は原則すべての情報が開示される。
受付の人はプレートを一瞥すると、紙を持ってきて説明してくれる。
「変わったことですか?ここ2月ほどの話ですが、エスペルト王国で中央と辺境でいざこざ…武力衝突まではいきませんが、地方領主と中央の間に溝があるようですね。また、グロリアスでも活動している商人からの情報ですが、関税や商店にかかる税が少し上がったようですね。警戒するにこしたことはありませんが、旅をする上での危険性は前と変わらないと思いますよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
私はお礼を告げてギルド本部を出た。どうやら、王国を離れている間に色々と変化があったらしい。帰国したら調べてみる必要がありそうだ。
その後は、宿で合流して集めた情報を付き合わせる。特別気にする必要があるのは、エスペルト王国についてだけのようだ。
1泊したあとは、ひたすら帰国するために移動する。
エスペルト王国の王都に着いたのは、グロリアス出発かは2月後、ちょうど建国際の1月前だった。
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