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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
18 邪を纏いし黒き龍
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私は、火龍を相手取りながら、周囲の状況を確認していた。騎士団による、住民たちの避難は今のところ進んでいて、残りの騎士たちが地上に降りた火龍の迎撃に当たっている。シリウスとアルキオネも地上での迎撃に回っているようだった。
(最初の地震のとき、住民が避難場所に集まったおかげで、護りやすいのよね。なんとかなるかしら…)
住民は大きく分けて5箇所に集まっていて、地下にある広場へ避難中だ。避難担当の騎士のほかに、迎撃担当の騎士のそれぞれ駆けつけているため、1頭ずつ程度であれば問題ないだろう。ざっと確認したところ火龍はおよそ100頭。8割程度は、私の周りをうろうろしているため、残りの2割が地上にいる。そして地上にいる火龍も、無人の建物を襲っているのが大半である。
私はしばらく火龍の相手に専念する。注意をひくように動き、効率よく傷を与えていくことで、1頭1頭順番に倒していた。たまにブレス攻撃がくるが、地上にいかないように火龍同士で攻撃しあうように位置取りを変えて誘導していく。
少しすると、巨大な気配が火山の中から現れた…
火龍よりも大きな体躯。漆黒の鱗や甲殻につつまれた全身。それは、属性龍よりも格上の、人々が目にしたことがある龍の中で最上位にあたる黒龍だった。そして、その黒龍は邪気をまとっている。今まで感じたことのない威圧感を放って、空に君臨するのだった。
一方で、騎士団長であるレイガスも黒龍の存在を確認していた。また、今回の事象についての報告を調査していた文官から聞いている。
「団長。今回の件、龍脈が原因ですね。膨大な魔力が溜まり噴出したようですね。恐らくその影響で、地震が発生し当たり一帯の魔力に乱れが生じています。通信魔術が繋がらないのはそのためでしょう。」
「なるほどな…あの黒龍はなんだ?今まで、姿を見たものはいたが、人里に来たことはなかったはずだ。」
「想像でしかありませんが…龍脈から噴出した魔力が邪気に染まっていて、黒龍に影響したのではないかと。」
文官の想像した内容は、可能性としては十分ありえる話だった。
「了解した。お前も速く避難するといい。どちらにせよ、龍の群れをどうにかしないといけないからな。」
文官が走り去っていくのを見送って、対処法について考える。黒龍はまだ火山の上空にいるだけで、動きがなかった。
(本来、黒龍は相当頭がいいため、無闇に破壊活動を行わないはず。黒龍自体は群れをなさず単体で君臨するから、無用の争いをしないといわれている…ただ、邪気に飲み込まれると本能のままに力を振るうらしいからな。このまま襲ってこないといいが…)
杞憂であることを願いつつ、直面している火龍の迎撃に当たるのだった。
その頃、シリウスも火龍を迎撃しながら黒龍の様子を伺っていた。
火龍自体は、魔物の中でも相当強いほうに当たるが、魔族に比べると力及ばない。今回の旅で、数々の激戦を制してきたことで、シリウスも急激に成長しており、苦戦することなく倒すことができていた。
すると、ちょうどアルキオネが近付いてきた。
「兄さん。こっちの火龍は全部倒したわ。…ここからどうする?」
「…火龍は問題ないが、黒龍をどうにかしないといけないからな…一旦ティアと合流したい。」
「わかったわ。じゃあ1度上空にあがりましょうか。」
シリウスとアルキオネは、風魔術で飛行するとラティアーナの元へ向かうことにした。
同刻、ラティアーナもシリウス達と連絡を取りたいと考えていた。ちょうど、2人が飛行して近付いてくるのが見えたため、火龍をひきつけながらも2人が来るのを待つ。
3人で合流し、火龍を斬り落としつつ話し合いをすることにした。
「地上は少し落ち着いてきましたが…黒龍含めどうしますか?」
「あの黒龍は邪気に包まれているわ。おそらく聖属性を扱える私が、相手をするのが最善だと思う…2人のうちどちらかに、ここで火龍をひきつけてもらいたいのだけど、構わないかしら?」
シリウスの問いに私は答える。
黒龍については伝承レベルだが、体表を覆う鱗や甲殻は、ありとあらゆる魔力を霧散させると伝えられている。つまり、魔力を介した攻撃が直接通じないのだ。例えば風の刃は、空気を圧縮して刃状にしたものだが、触れた瞬間魔力が散って、圧縮した空気も同様に散ってしまう。魔力を使って効果があるとすれば、魔力の爆発によって発生した衝撃や魔力の炎による熱など、副次的なものだけだろう。
(邪気は魔力とは別物だから霧散しない…聖属性も邪気には効くだろうけど、龍本体には通らないのよね。本当厄介だわ。)
「私が空中で火龍を相手取ります。兄さんは地上に戻ってください。」
「…了解。俺は地上に戻ります。こちらのことは、レイガス騎士団長に伝えておきますね。…2人ともお気をつけて。」
アルキオネの言葉を受けて、シリウスが地上に戻っていく。私もこの場をアルキオネに任せて、黒龍の元に向かうことにした。
(最初の地震のとき、住民が避難場所に集まったおかげで、護りやすいのよね。なんとかなるかしら…)
住民は大きく分けて5箇所に集まっていて、地下にある広場へ避難中だ。避難担当の騎士のほかに、迎撃担当の騎士のそれぞれ駆けつけているため、1頭ずつ程度であれば問題ないだろう。ざっと確認したところ火龍はおよそ100頭。8割程度は、私の周りをうろうろしているため、残りの2割が地上にいる。そして地上にいる火龍も、無人の建物を襲っているのが大半である。
私はしばらく火龍の相手に専念する。注意をひくように動き、効率よく傷を与えていくことで、1頭1頭順番に倒していた。たまにブレス攻撃がくるが、地上にいかないように火龍同士で攻撃しあうように位置取りを変えて誘導していく。
少しすると、巨大な気配が火山の中から現れた…
火龍よりも大きな体躯。漆黒の鱗や甲殻につつまれた全身。それは、属性龍よりも格上の、人々が目にしたことがある龍の中で最上位にあたる黒龍だった。そして、その黒龍は邪気をまとっている。今まで感じたことのない威圧感を放って、空に君臨するのだった。
一方で、騎士団長であるレイガスも黒龍の存在を確認していた。また、今回の事象についての報告を調査していた文官から聞いている。
「団長。今回の件、龍脈が原因ですね。膨大な魔力が溜まり噴出したようですね。恐らくその影響で、地震が発生し当たり一帯の魔力に乱れが生じています。通信魔術が繋がらないのはそのためでしょう。」
「なるほどな…あの黒龍はなんだ?今まで、姿を見たものはいたが、人里に来たことはなかったはずだ。」
「想像でしかありませんが…龍脈から噴出した魔力が邪気に染まっていて、黒龍に影響したのではないかと。」
文官の想像した内容は、可能性としては十分ありえる話だった。
「了解した。お前も速く避難するといい。どちらにせよ、龍の群れをどうにかしないといけないからな。」
文官が走り去っていくのを見送って、対処法について考える。黒龍はまだ火山の上空にいるだけで、動きがなかった。
(本来、黒龍は相当頭がいいため、無闇に破壊活動を行わないはず。黒龍自体は群れをなさず単体で君臨するから、無用の争いをしないといわれている…ただ、邪気に飲み込まれると本能のままに力を振るうらしいからな。このまま襲ってこないといいが…)
杞憂であることを願いつつ、直面している火龍の迎撃に当たるのだった。
その頃、シリウスも火龍を迎撃しながら黒龍の様子を伺っていた。
火龍自体は、魔物の中でも相当強いほうに当たるが、魔族に比べると力及ばない。今回の旅で、数々の激戦を制してきたことで、シリウスも急激に成長しており、苦戦することなく倒すことができていた。
すると、ちょうどアルキオネが近付いてきた。
「兄さん。こっちの火龍は全部倒したわ。…ここからどうする?」
「…火龍は問題ないが、黒龍をどうにかしないといけないからな…一旦ティアと合流したい。」
「わかったわ。じゃあ1度上空にあがりましょうか。」
シリウスとアルキオネは、風魔術で飛行するとラティアーナの元へ向かうことにした。
同刻、ラティアーナもシリウス達と連絡を取りたいと考えていた。ちょうど、2人が飛行して近付いてくるのが見えたため、火龍をひきつけながらも2人が来るのを待つ。
3人で合流し、火龍を斬り落としつつ話し合いをすることにした。
「地上は少し落ち着いてきましたが…黒龍含めどうしますか?」
「あの黒龍は邪気に包まれているわ。おそらく聖属性を扱える私が、相手をするのが最善だと思う…2人のうちどちらかに、ここで火龍をひきつけてもらいたいのだけど、構わないかしら?」
シリウスの問いに私は答える。
黒龍については伝承レベルだが、体表を覆う鱗や甲殻は、ありとあらゆる魔力を霧散させると伝えられている。つまり、魔力を介した攻撃が直接通じないのだ。例えば風の刃は、空気を圧縮して刃状にしたものだが、触れた瞬間魔力が散って、圧縮した空気も同様に散ってしまう。魔力を使って効果があるとすれば、魔力の爆発によって発生した衝撃や魔力の炎による熱など、副次的なものだけだろう。
(邪気は魔力とは別物だから霧散しない…聖属性も邪気には効くだろうけど、龍本体には通らないのよね。本当厄介だわ。)
「私が空中で火龍を相手取ります。兄さんは地上に戻ってください。」
「…了解。俺は地上に戻ります。こちらのことは、レイガス騎士団長に伝えておきますね。…2人ともお気をつけて。」
アルキオネの言葉を受けて、シリウスが地上に戻っていく。私もこの場をアルキオネに任せて、黒龍の元に向かうことにした。
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