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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
17 龍群襲来
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少しの間かなり大きな揺れが続く。
この世界では、建物などが魔物に壊されることがよくあるため、比較的頑丈で燃やされない造りになっていることが多い。そのため、建物などに被害はなかったが、揺れに驚いた多くの人が外に出てきていた。
「なんだ!?地震!?」
「噴火か!?何が起こった?」
周りから人の驚いた叫び声が響く。近くにいた係員の人がやってきて、落ち着くように声をかけているが原因はまだわからないらしい。
私も遠見の魔術を使って、周囲を見渡す。
(噴火はしてなさそうね…ただの地震かしら?)
建物の中は危険かもしれないため、広場の方に集まるように指示があった。広場に向かうと、避難してきた人が沢山いる。
念のため、シリウス達に連絡を入れようと通信魔術具を使うが、一向に繋がる気配がなかった。
(…通信に出れないというよりは、繋がらない方が正しいかもしれないわ。)
通信が繋がらないため、この後のことを考えていると周囲が慌ただしくなる。
「なんだあれ…さらにたくさんの何かが飛んでる…、?」
「火山の方からよね?でも噴火してないから、火山灰とかじゃないでしょ?」
周りのざわめきを聞いて、火山の方をよく見る。遠見で見たところ点々の正体は、たくさんの龍種の魔物だった。すぐに肉眼でもわかるようになる。龍が近づいて来るのが分かると、広場にいた人々はパニックに陥って、悲鳴や叫びで溢れかえる。
(いくつかの龍がこっちに近づいて来るわね…人がいないところで迎え撃つしかないかな。)
地上で戦うと被害が大きいため、可能な限り人のいない場所の上空で迎撃したかった。
「あなた係員よね?街に魔物が攻めてきた場合、どういった対処になっているのかしら?」
「っ!それぞれの地区にある避難場所が設定されているので、そこに集まる手筈です。温泉街の場合、この広場ですが…基本的に騎士団が対処可能な魔物を想定しているので、あれだけの数となると…ここにいても安全かどうか…」
係員に聞くと少し落ち着きを取り戻したようで、避難方法を教えてくれた。
「じゃあ騎士団が来るまで、あなたが皆のことを導いてあげて。私は迎撃に出るわ。」
私はそう言って、竜の群れに向けて走り出す。身体強化を施して魔術障壁を足場代わりに、空を駆け昇る。攻めてきた龍は、火龍の群れのようで、地上を襲わないように私に引きつける。ブレスが地上に当たると大惨事になるため、火龍が下を向かないように立ち回る必要があるだろう。龍の鱗や甲殻は硬いため、隙間の部分を狙うようにして、銀月で斬り裂いていくことにした。
(ここは、他の大陸に比べて魔力が少ないから、極力温存…身体強化主体で戦うしかないわね。魔力入りの宝石は、残り3つ。私の液状化魔力は1本。魔力回復薬3本。何一つ、無駄にはできないわ。)
私は内心で持ち合わせている道具の残数を整理すると、そのまま龍と対峙していく。
一方、修練場にいたシリウス達も状況を把握していた。
「騎士団は、4から20番隊は担当地区へ急行せよ!民の避難を最優先だ!1から3番隊は、俺と共に龍の迎撃に向かう!」
騎士団長のレイガスが各隊に指示を出す。
「俺たちも手伝います。」
「それは助かりますが…ティア様の元に向かわなくてもよろしいのですか?ソフィア王女殿下からは冒険者一行と聞いてはいます。…拝見したところお二人は、ティア様の護衛という印象を受けましたが?」
レイガスが確認するような眼差しで向けてくる。
「ティアは自分よりも周りの人を護って欲しいというでしょうから、問題ありません。それに…悔しいですが、俺たちよりも強いですから。」
「そうですね。心配はしますが、無事だと信じています。」
シリウスとアルキオネは、そう答えた。
「問題ないなら…助かるな。むしろこちらが、お願いしたいくらいだ。頼む。力を貸してくれ。」
「「こちらこそ。」」
2人が騎士団に協力することが決まった。基本的には、レイガス達に同行して龍の迎撃に当たる。
修練場から走り出すと龍の群れが見えてきた。
「あれか…ん?龍の群れの大部分が降りてこないな。」
「おそらくですが、ティアがあそこで引き付けてるのだと思います。」
アルキオネがそう答えるとレイガスは驚いた表情をして見返してくる。
「本当か!?空中戦なんてノーランド王国どころからノスタルジア王国まで含めても、両手の指で数えるほどしかできねないぞ!…俺たちは地上戦しかできない。2人はどうする?」
どうやら、今この都市に空中戦ができる騎士はいないようだった。とはいえ、現状ラティアーナが大部分を引き付けているため、地上に降りてくる龍はまばらになっている。それでも住民にとっては、遭遇自体が死に等しいため安心はできない。
「地上に回ります。避難中のところを襲われたらひとたまりもないでしょうし、その方が生存者は多くなるはずです。」
シリウスが地上に残ることを伝えるとレイガスは頷き返した。
「了解した。各隊は散開して迎撃にあたれ!俺と副団長は個々で迎撃する。リウ様とアキ様も迎撃を頼む。」
「「了解!」」
簡単に打ち合わせをして各隊と4人は散開して、それぞれ龍の迎撃にあたることになった。
この世界では、建物などが魔物に壊されることがよくあるため、比較的頑丈で燃やされない造りになっていることが多い。そのため、建物などに被害はなかったが、揺れに驚いた多くの人が外に出てきていた。
「なんだ!?地震!?」
「噴火か!?何が起こった?」
周りから人の驚いた叫び声が響く。近くにいた係員の人がやってきて、落ち着くように声をかけているが原因はまだわからないらしい。
私も遠見の魔術を使って、周囲を見渡す。
(噴火はしてなさそうね…ただの地震かしら?)
建物の中は危険かもしれないため、広場の方に集まるように指示があった。広場に向かうと、避難してきた人が沢山いる。
念のため、シリウス達に連絡を入れようと通信魔術具を使うが、一向に繋がる気配がなかった。
(…通信に出れないというよりは、繋がらない方が正しいかもしれないわ。)
通信が繋がらないため、この後のことを考えていると周囲が慌ただしくなる。
「なんだあれ…さらにたくさんの何かが飛んでる…、?」
「火山の方からよね?でも噴火してないから、火山灰とかじゃないでしょ?」
周りのざわめきを聞いて、火山の方をよく見る。遠見で見たところ点々の正体は、たくさんの龍種の魔物だった。すぐに肉眼でもわかるようになる。龍が近づいて来るのが分かると、広場にいた人々はパニックに陥って、悲鳴や叫びで溢れかえる。
(いくつかの龍がこっちに近づいて来るわね…人がいないところで迎え撃つしかないかな。)
地上で戦うと被害が大きいため、可能な限り人のいない場所の上空で迎撃したかった。
「あなた係員よね?街に魔物が攻めてきた場合、どういった対処になっているのかしら?」
「っ!それぞれの地区にある避難場所が設定されているので、そこに集まる手筈です。温泉街の場合、この広場ですが…基本的に騎士団が対処可能な魔物を想定しているので、あれだけの数となると…ここにいても安全かどうか…」
係員に聞くと少し落ち着きを取り戻したようで、避難方法を教えてくれた。
「じゃあ騎士団が来るまで、あなたが皆のことを導いてあげて。私は迎撃に出るわ。」
私はそう言って、竜の群れに向けて走り出す。身体強化を施して魔術障壁を足場代わりに、空を駆け昇る。攻めてきた龍は、火龍の群れのようで、地上を襲わないように私に引きつける。ブレスが地上に当たると大惨事になるため、火龍が下を向かないように立ち回る必要があるだろう。龍の鱗や甲殻は硬いため、隙間の部分を狙うようにして、銀月で斬り裂いていくことにした。
(ここは、他の大陸に比べて魔力が少ないから、極力温存…身体強化主体で戦うしかないわね。魔力入りの宝石は、残り3つ。私の液状化魔力は1本。魔力回復薬3本。何一つ、無駄にはできないわ。)
私は内心で持ち合わせている道具の残数を整理すると、そのまま龍と対峙していく。
一方、修練場にいたシリウス達も状況を把握していた。
「騎士団は、4から20番隊は担当地区へ急行せよ!民の避難を最優先だ!1から3番隊は、俺と共に龍の迎撃に向かう!」
騎士団長のレイガスが各隊に指示を出す。
「俺たちも手伝います。」
「それは助かりますが…ティア様の元に向かわなくてもよろしいのですか?ソフィア王女殿下からは冒険者一行と聞いてはいます。…拝見したところお二人は、ティア様の護衛という印象を受けましたが?」
レイガスが確認するような眼差しで向けてくる。
「ティアは自分よりも周りの人を護って欲しいというでしょうから、問題ありません。それに…悔しいですが、俺たちよりも強いですから。」
「そうですね。心配はしますが、無事だと信じています。」
シリウスとアルキオネは、そう答えた。
「問題ないなら…助かるな。むしろこちらが、お願いしたいくらいだ。頼む。力を貸してくれ。」
「「こちらこそ。」」
2人が騎士団に協力することが決まった。基本的には、レイガス達に同行して龍の迎撃に当たる。
修練場から走り出すと龍の群れが見えてきた。
「あれか…ん?龍の群れの大部分が降りてこないな。」
「おそらくですが、ティアがあそこで引き付けてるのだと思います。」
アルキオネがそう答えるとレイガスは驚いた表情をして見返してくる。
「本当か!?空中戦なんてノーランド王国どころからノスタルジア王国まで含めても、両手の指で数えるほどしかできねないぞ!…俺たちは地上戦しかできない。2人はどうする?」
どうやら、今この都市に空中戦ができる騎士はいないようだった。とはいえ、現状ラティアーナが大部分を引き付けているため、地上に降りてくる龍はまばらになっている。それでも住民にとっては、遭遇自体が死に等しいため安心はできない。
「地上に回ります。避難中のところを襲われたらひとたまりもないでしょうし、その方が生存者は多くなるはずです。」
シリウスが地上に残ることを伝えるとレイガスは頷き返した。
「了解した。各隊は散開して迎撃にあたれ!俺と副団長は個々で迎撃する。リウ様とアキ様も迎撃を頼む。」
「「了解!」」
簡単に打ち合わせをして各隊と4人は散開して、それぞれ龍の迎撃にあたることになった。
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