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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
13 魔族領を抜けて
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戦いが終わって、私は仰向けになりながらシリウス達の戦いを眺めていた。すると、ソフィアが近付いてくる。
「ティア様、大丈夫ですか?すぐに治療しますね。」
ソフィアが慌てて聖属性の治療魔術をかけてくれる。
「ありがとうね。」
ソフィアに感謝を告げながら、自身でも治癒を試みる。水属性魔術による血止めと地属性による傷の修復だ。
「っ!?見た目以上に重症ではないですか!?」
「…私も傷を塞ぐから、しばらくすれば治るわ。申し訳ないんだけど、もうしばらく付き合ってくれるかしら…それと2人には、重症だってこと黙っておいてもらえる?」
涙目になって治療するソフィアに申し訳なく感じて、つい謝ってしまう。またシリウスとアルキオネには、あまり責任を感じて欲しくないため、重症だということは隠したかった。
少ししてシリウス達の戦いも決着した。ゼーエンと言葉を交わして、私達のほうに向かってくる頃には、私の怪我も大分回復していた。
「2人ともお疲れ様。」
「いえ…本当はもう少し早く倒して援護に向かいたかったのですが…怪我は大丈夫ですか?」
「ええ。ソフィア様の治療もあって大分回復したわ。」
シリウスの問いに微笑みながら返す。
「私達のほうが消耗は少ないので、しばらくの間、戦闘はお任せください。」
少しだけ休息をとって、出発した。
ノーランド王国への道筋は、比較的平和だった。魔族領の中でも、人間と中立関係にあって多少の物流があるため、魔族と遭遇しても戦いにはならない。むしろ、食糧などをやりとりすることができた。
今は2日ほど経過して、もうずく森を抜ける予定だ。
「この辺りは魔物が少ないですね…少し先に大きい蜘蛛型の魔物がいるみたいです。」
今はアルキオネが前方の哨戒をしている。風による広域探知によって、常に周囲の状況を把握してもらっていた。
「蜘蛛ですか…もしかしたら、前にティアが戦ったと言う魔物に近いかも知れませんね。」
「透明になる毒蜘蛛ね。…もうそろそろ私も戦いに参加するわ。ずっと休んでいると体が鈍りそうだから。」
シリウス達には、私が以前戦った魔物も含めて、本などで知った情報と共にあらかじめ共有していた。こちらの大陸で、役に立つこともあるかもしれないからだ。
私も魔術による広域探知を使用する。見えない敵に苦労した後、開発と研究を進めた私だけの魔術で、風と電磁波による探知魔術となっている。
蜘蛛が近づいてきた時、辺りに霧が広がった。
「ソフィア様は、俺の近くから離れないでください。」
シリウスがソフィアごと風の領域を展開する。風の護りによって、シリウス達のいる場所は霧に包まれない。
蜘蛛はまだ透明になっているようだが、場所は把握できている。蜘蛛が襲う前に、私の銀月とアルキオネの剣が振われた。同時に蜘蛛の足が斬り落とされて、姿が露わになる。アルキオネが剣に風を纏わせ、私も魔装を銀月に使う。直後、2人の剣と刀が蜘蛛を両断して、蜘蛛は沈黙した。蜘蛛が倒されたことで霧も徐々に晴れていく。以前戦った時はだいぶ苦戦したが、今回は呆気なく勝利できた。
(こうしてみると、私も成長してるのね…)
「これで終わりですね。周りにも…魔物はいなそうです。」
「周りに魔物がいないなら、今のうちに食事を取りませんか?」
「そうね。丁度いい時間だし良いんじゃないかしら。」
私が思い耽っているとシリウスが提案してきた。周りを見渡すと異論はなさそうだったのと、お昼時だったため了承する。
食事をして少し休憩した後、そのまましばらく進んでいくと、森を抜けて平原に出た。少し先には火山のある山脈が見えている。
「この平原までが魔族領です。あの山脈を抜けると大きな川があって、川の向かい側がノスタルジア王国とノーランド王国の共有領地になります。海沿いに行けば国境にある共同貿易都市、トランスポートスクエアに着くはずです。」
ソフィアによると、山脈の頂上付近は龍種の住処になっているらしく人も魔族も寄り付かないらしい。そのため、山脈の中でも海沿いを通ることになる。東の大陸からノスタルジア王国とノーランド王国に向かう場合は、必然的に通る場所が限られるため、2国の共同で都市を作ったそうだ。
「都市まで行くことができれば、飛空船に乗って移動可能です。わたくしの名前を出せば、王国所有の飛空船も呼べますから。」
北の大陸は、魔力濃度が少なく魔物が少ないことで有名だった。飛行する魔物もいないため、空の移動が主流になっているらしい。
そのため、トランスポートスクエアを目指すことになる。
私達は、平原を抜けてついに山脈に入った。火山地帯のため、所々に溶岩が流れているのが見える。温度も高いため、体力の消耗も激しい厳しい環境になるだろう。
「ティア様、大丈夫ですか?すぐに治療しますね。」
ソフィアが慌てて聖属性の治療魔術をかけてくれる。
「ありがとうね。」
ソフィアに感謝を告げながら、自身でも治癒を試みる。水属性魔術による血止めと地属性による傷の修復だ。
「っ!?見た目以上に重症ではないですか!?」
「…私も傷を塞ぐから、しばらくすれば治るわ。申し訳ないんだけど、もうしばらく付き合ってくれるかしら…それと2人には、重症だってこと黙っておいてもらえる?」
涙目になって治療するソフィアに申し訳なく感じて、つい謝ってしまう。またシリウスとアルキオネには、あまり責任を感じて欲しくないため、重症だということは隠したかった。
少ししてシリウス達の戦いも決着した。ゼーエンと言葉を交わして、私達のほうに向かってくる頃には、私の怪我も大分回復していた。
「2人ともお疲れ様。」
「いえ…本当はもう少し早く倒して援護に向かいたかったのですが…怪我は大丈夫ですか?」
「ええ。ソフィア様の治療もあって大分回復したわ。」
シリウスの問いに微笑みながら返す。
「私達のほうが消耗は少ないので、しばらくの間、戦闘はお任せください。」
少しだけ休息をとって、出発した。
ノーランド王国への道筋は、比較的平和だった。魔族領の中でも、人間と中立関係にあって多少の物流があるため、魔族と遭遇しても戦いにはならない。むしろ、食糧などをやりとりすることができた。
今は2日ほど経過して、もうずく森を抜ける予定だ。
「この辺りは魔物が少ないですね…少し先に大きい蜘蛛型の魔物がいるみたいです。」
今はアルキオネが前方の哨戒をしている。風による広域探知によって、常に周囲の状況を把握してもらっていた。
「蜘蛛ですか…もしかしたら、前にティアが戦ったと言う魔物に近いかも知れませんね。」
「透明になる毒蜘蛛ね。…もうそろそろ私も戦いに参加するわ。ずっと休んでいると体が鈍りそうだから。」
シリウス達には、私が以前戦った魔物も含めて、本などで知った情報と共にあらかじめ共有していた。こちらの大陸で、役に立つこともあるかもしれないからだ。
私も魔術による広域探知を使用する。見えない敵に苦労した後、開発と研究を進めた私だけの魔術で、風と電磁波による探知魔術となっている。
蜘蛛が近づいてきた時、辺りに霧が広がった。
「ソフィア様は、俺の近くから離れないでください。」
シリウスがソフィアごと風の領域を展開する。風の護りによって、シリウス達のいる場所は霧に包まれない。
蜘蛛はまだ透明になっているようだが、場所は把握できている。蜘蛛が襲う前に、私の銀月とアルキオネの剣が振われた。同時に蜘蛛の足が斬り落とされて、姿が露わになる。アルキオネが剣に風を纏わせ、私も魔装を銀月に使う。直後、2人の剣と刀が蜘蛛を両断して、蜘蛛は沈黙した。蜘蛛が倒されたことで霧も徐々に晴れていく。以前戦った時はだいぶ苦戦したが、今回は呆気なく勝利できた。
(こうしてみると、私も成長してるのね…)
「これで終わりですね。周りにも…魔物はいなそうです。」
「周りに魔物がいないなら、今のうちに食事を取りませんか?」
「そうね。丁度いい時間だし良いんじゃないかしら。」
私が思い耽っているとシリウスが提案してきた。周りを見渡すと異論はなさそうだったのと、お昼時だったため了承する。
食事をして少し休憩した後、そのまましばらく進んでいくと、森を抜けて平原に出た。少し先には火山のある山脈が見えている。
「この平原までが魔族領です。あの山脈を抜けると大きな川があって、川の向かい側がノスタルジア王国とノーランド王国の共有領地になります。海沿いに行けば国境にある共同貿易都市、トランスポートスクエアに着くはずです。」
ソフィアによると、山脈の頂上付近は龍種の住処になっているらしく人も魔族も寄り付かないらしい。そのため、山脈の中でも海沿いを通ることになる。東の大陸からノスタルジア王国とノーランド王国に向かう場合は、必然的に通る場所が限られるため、2国の共同で都市を作ったそうだ。
「都市まで行くことができれば、飛空船に乗って移動可能です。わたくしの名前を出せば、王国所有の飛空船も呼べますから。」
北の大陸は、魔力濃度が少なく魔物が少ないことで有名だった。飛行する魔物もいないため、空の移動が主流になっているらしい。
そのため、トランスポートスクエアを目指すことになる。
私達は、平原を抜けてついに山脈に入った。火山地帯のため、所々に溶岩が流れているのが見える。温度も高いため、体力の消耗も激しい厳しい環境になるだろう。
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