79 / 475
第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
6 魔族との邂逅
しおりを挟む
光が止み浮遊感が収まると真っ暗な空間にいた。念のため気配を殺して様子見をするが、周囲に人影は見当たらない。片目に暗視の魔術を行使して見渡すが、岩場に囲まれた地下空間のようだった。なお、暗視を片目だけに行使する理由は、突如明るくなった場合に両目がくらんでしまうのを防ぐためである。
「周りには誰もいなそうね。光源をお願いできる?」
私が小声で言うとアルキオネが光源の魔術を使用してくれた。明かりを確保したことで、より周囲を観察する。
「地下…あるいは洞窟でしょうか?」
アルキオネが周りを見ながら話す。
「…ここは外に繋がってますね。風通しが今までと全く違います。」
シリウスが目を瞑って、風の流れを把握して呟いた。
「とりあえず外を目指しましょう。だれかいた場合は一旦隠れてやり過ごすけどいいわよね?」
2人が頷いたことを確認して、風を頼りに外を目指した。幸い、罠や敵に遭遇することもなく外に出る。
外に出ると森が広がっていて、空を見上げると太陽の光が眩しかった。
「久しぶりの外ね。やっぱり太陽の光は大事だわ。」
「そうですね。開放感が全く違います。」
アルキオネも同感のようで深く頷いている。
「さて…ここはどこなのだろうか?大まかでも場所を知りたいところだが…」
「目的の方角に進みましょうか。夜になれば多少位置もわかるかも知れないわ。」
この世界の船は、水平線と天体の角度から位置を計算する天測航法が主流だ。同じ原理を使えば、地上でも目安程度になるかも知れない。
途中、昼休憩を挟みながらも北西に向かって歩みを進める。地上に出て半日が経った頃、集落らしき場所を見つけた。
「あれは…人?」
気配を殺しつつも集落の中を観察すると、人らしき姿が見える。
「いえ…あれは魔族ですね。魔力の桁が違います。」
シリウスに言われて感覚を研ぎ澄ませると、私達の魔力に比べて感じる量が桁違いに多い。人だと魔力を意図的に放出しない限り、感じることができないのに対して、魔族はそのままの状態で魔力を感じることができた。
「俺も魔族についてはあまり詳しくありませんが、魔力が桁違いに多いのと個々の特殊能力を持っているらしいです。」
「ここの魔族が敵対的か友好的か…難しいところですね。」
魔族については、ユニダリア大陸で遭遇しないためエスペルト王国でも、あまり詳しく学ぶことがなかった。そのため、3人してどうするべきか判断がつかないでいる。しばらく様子を見てみると、飛龍に乗った魔族が数人降り立つ。そのうち1人の魔族は布に包まった大きめのものを担いでいる。担いでた物を地面に放り投げて布が捲られると、中にいたのは私と同じくらいの歳だと思われる少女だった。
「っ!?女の子が中に!?」
私は声を抑えながらも瞠目した。
(助ける…べきかしら?あの子が捕まっているのが、単なる誘拐なら助けても問題ない。けれど魔族側に正当な理由があるとしたら…助ける行動が裏目に出ることもある。)
例えるなら、この前のエスペルト王国とグランバルド帝国との戦争だろう。帝国が先に攻めてきて、結果的に帝国の将軍を人質に取った。もし人質に取った状況だけを見た人が助けようとした場合、エスペルト王国からしてみれば正当な理由があるのに邪魔されることになる。
隣を見るとシリウスやアルキオネも驚きつつも難しい顔をしていた。
「…2人とも、もし私があの子を助けたいって言ったらどう思うかしら?」
私は、逡巡しながらも聞いてみる。
「そうですね…こう言ってはなんですが、人と魔族の関係が掴めない以上、手を出さない方が無難だと思います。それに相手の力がわからない以上、あの子を護りながら戦うのは危険です。ですが…」
「姫様が助けたいのであれば、私達は全力を尽くします。あなたに忠誠を誓ったのは、王女だからだけではありません。その王族らしくない考え方も、困っている人がいた時につい手を差し伸べるところも含めて姫様の、ラティアーナ様のことが好きなのですから。」
シリウスの言葉にアルキオネが繋げて言葉をくれる。私の好きにしていいと、背中を押してくれたことで私は…
「…ありがとう。まずは状況を把握したい。このまま3人で道に迷ったことにして魔族と話したいわ。人をどう思っているのか知りたい。私に力を貸してくれる?」
「「もちろんです。俺は(私は)あなただけの騎士ですから。」」
「本当にありがとう。」
私達は、相手を警戒させないようにして集落に近づいていく。元々、今いる場所を知らないため迷子というのも、あながち嘘ではない。場所を聞きつつもここの魔族がどういった考えを持つのか、可能であれば連れられた少女がどういった経緯で捕まったのか知りたい。
集落のほうへ向かうと魔族も気付いたらしく、2人ほど近付いてくる。
「すまない。ここはどこなのだろうか?北の大陸へ向かいたいのだが…」
シリウスが代表して話しかける。魔族の言語のため多少拙くはあるが、意味は通じるはずだ。
「…人は支配するべき存在。排除する。」
魔族たちは、呟くと同時に襲ってきた。
「周りには誰もいなそうね。光源をお願いできる?」
私が小声で言うとアルキオネが光源の魔術を使用してくれた。明かりを確保したことで、より周囲を観察する。
「地下…あるいは洞窟でしょうか?」
アルキオネが周りを見ながら話す。
「…ここは外に繋がってますね。風通しが今までと全く違います。」
シリウスが目を瞑って、風の流れを把握して呟いた。
「とりあえず外を目指しましょう。だれかいた場合は一旦隠れてやり過ごすけどいいわよね?」
2人が頷いたことを確認して、風を頼りに外を目指した。幸い、罠や敵に遭遇することもなく外に出る。
外に出ると森が広がっていて、空を見上げると太陽の光が眩しかった。
「久しぶりの外ね。やっぱり太陽の光は大事だわ。」
「そうですね。開放感が全く違います。」
アルキオネも同感のようで深く頷いている。
「さて…ここはどこなのだろうか?大まかでも場所を知りたいところだが…」
「目的の方角に進みましょうか。夜になれば多少位置もわかるかも知れないわ。」
この世界の船は、水平線と天体の角度から位置を計算する天測航法が主流だ。同じ原理を使えば、地上でも目安程度になるかも知れない。
途中、昼休憩を挟みながらも北西に向かって歩みを進める。地上に出て半日が経った頃、集落らしき場所を見つけた。
「あれは…人?」
気配を殺しつつも集落の中を観察すると、人らしき姿が見える。
「いえ…あれは魔族ですね。魔力の桁が違います。」
シリウスに言われて感覚を研ぎ澄ませると、私達の魔力に比べて感じる量が桁違いに多い。人だと魔力を意図的に放出しない限り、感じることができないのに対して、魔族はそのままの状態で魔力を感じることができた。
「俺も魔族についてはあまり詳しくありませんが、魔力が桁違いに多いのと個々の特殊能力を持っているらしいです。」
「ここの魔族が敵対的か友好的か…難しいところですね。」
魔族については、ユニダリア大陸で遭遇しないためエスペルト王国でも、あまり詳しく学ぶことがなかった。そのため、3人してどうするべきか判断がつかないでいる。しばらく様子を見てみると、飛龍に乗った魔族が数人降り立つ。そのうち1人の魔族は布に包まった大きめのものを担いでいる。担いでた物を地面に放り投げて布が捲られると、中にいたのは私と同じくらいの歳だと思われる少女だった。
「っ!?女の子が中に!?」
私は声を抑えながらも瞠目した。
(助ける…べきかしら?あの子が捕まっているのが、単なる誘拐なら助けても問題ない。けれど魔族側に正当な理由があるとしたら…助ける行動が裏目に出ることもある。)
例えるなら、この前のエスペルト王国とグランバルド帝国との戦争だろう。帝国が先に攻めてきて、結果的に帝国の将軍を人質に取った。もし人質に取った状況だけを見た人が助けようとした場合、エスペルト王国からしてみれば正当な理由があるのに邪魔されることになる。
隣を見るとシリウスやアルキオネも驚きつつも難しい顔をしていた。
「…2人とも、もし私があの子を助けたいって言ったらどう思うかしら?」
私は、逡巡しながらも聞いてみる。
「そうですね…こう言ってはなんですが、人と魔族の関係が掴めない以上、手を出さない方が無難だと思います。それに相手の力がわからない以上、あの子を護りながら戦うのは危険です。ですが…」
「姫様が助けたいのであれば、私達は全力を尽くします。あなたに忠誠を誓ったのは、王女だからだけではありません。その王族らしくない考え方も、困っている人がいた時につい手を差し伸べるところも含めて姫様の、ラティアーナ様のことが好きなのですから。」
シリウスの言葉にアルキオネが繋げて言葉をくれる。私の好きにしていいと、背中を押してくれたことで私は…
「…ありがとう。まずは状況を把握したい。このまま3人で道に迷ったことにして魔族と話したいわ。人をどう思っているのか知りたい。私に力を貸してくれる?」
「「もちろんです。俺は(私は)あなただけの騎士ですから。」」
「本当にありがとう。」
私達は、相手を警戒させないようにして集落に近づいていく。元々、今いる場所を知らないため迷子というのも、あながち嘘ではない。場所を聞きつつもここの魔族がどういった考えを持つのか、可能であれば連れられた少女がどういった経緯で捕まったのか知りたい。
集落のほうへ向かうと魔族も気付いたらしく、2人ほど近付いてくる。
「すまない。ここはどこなのだろうか?北の大陸へ向かいたいのだが…」
シリウスが代表して話しかける。魔族の言語のため多少拙くはあるが、意味は通じるはずだ。
「…人は支配するべき存在。排除する。」
魔族たちは、呟くと同時に襲ってきた。
7
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説

田村涼は異世界で物乞いを始めた。
イペンシ・ノキマ
ファンタジー
異世界に転生した田村涼に割り振られた職業は「物乞い」。それは一切の魔術が使えず、戦闘能力は極めて低い、ゴミ職業であった。おまけにこの世界は超階級社会で、「物乞い」のランクは最低の第四階級。街の人々は彼を蔑み、馬鹿にし、人間扱いさえしようとしない。そのうえ、最近やってきた教会長はこの街から第四階級の人々を駆逐しようとさえしている。そんななか、田村涼は「物乞い」には”隠されたスキル”があることに気がつく。そのことに気づいたところから、田村涼の快進撃が始まる――。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界で生きていく。
モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。
素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。
魔法と調合スキルを使って成長していく。
小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。
旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。
3/8申し訳ありません。
章の編集をしました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる