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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
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かつて街だった場所も抜けて、5日程さらに進むと遺跡は迷宮のような造りになっていた。至る所に罠があったりゴーレムがいたりするため、今まで以上に注意が必要だ。
今も通路を通った瞬間、巨大な玉が転がってきて私達を轢こうとしている。
「罠が面倒ですね。」
アルキオネは呟きながら魔術で簡単な坂を作った。坂の陰に3人にして隠れていると勢いよく転がる玉は、坂をジャンプ台の代わりにして、私達の頭上を通り過ぎていった。
「いちいち避けたり逃げたりしても、きりがないわ。最低限の対処で進みましょう。」
通ってきた道には、物理的な傷をつけていく。風の流れから行き止まりや元の場所に戻らない通路を選んでいるが、念のためのマーキングだ。しばらく通路を進み、角を曲がると同時に…無数の矢が飛んできた。
「この程度っ!」
シリウスが魔術で風の障壁を作り、強引に矢の軌道を逸らす。矢が飛んで来なくなったことを確認して通路を進むと、天井から通路の横幅と同じくらいの刃が落ちてきた。
「私が斬るわ。」
私は銀月を抜刀し、落ちてきた刃を両断する。刃が2つに分かれて地面に落ちた直後、いきなり天井が降りてきた。
「ここは俺が。」
シリウスが魔槍を天井に突き刺して、風を爆発させる。突き刺した所を中心に、天井が砕かれる。更に地面がいきなり開いて、突然の浮遊感に襲われた。
私は魔力による足場を、シリウスは風による飛行を、アルキオネは魔力の鎖を生み出して、それぞれ近くの地面まで移動する。
「3重の罠とか…いよいよ本気でかかってきたわね。」
私は一息吐いてさっきまでいた場所を眺める。
「そうですね。今まで以上に殺気を感じる罠でした。」
アルキオネも後ろを眺めながら同意した。
「罠が多くなっているということは、方向は合ってるとも言えるでしょう。」
シリウスは、前を向いて警戒を強める。多くなってきた罠に対処するためにより注意が必要だろう。
そのまま警戒しつつ前に進み、ようやく広場のような空間に出ることができた。
そこは今まで以上のゴーレムで埋もれていた。私達を見つけたようで一斉に襲いかかってくる。
「2人とも時間稼ぎよろしく!カウント20で。」
シリウスとアルキオネは、無言で頷いて遠距離のゴーレムを風で牽制しつつ、近距離の相手を槍と剣で屠っていく。
私はその間に周囲の魔力を使って魔術を構築していく。目の前に5層に並ぶ術式が展開され、それぞれの役割を果たす。
(1層目で周囲の魔力を収束。2層目は魔力の指向性付与…前方への一点収束投射。続く3層目と4層目で魔力砲撃の威力強化。最終の5層目…照準調整。5連術式を一斉稼働!)
魔力が限界まで収束する。そして…
「退避!」
私の合図で2人が後方に下がる。同時に展開した魔術を解放する。照準通りに魔力の奔流が駆け巡って、軌道上のゴーレムを消しとばす。更に術式を横に回転させて、辺り一体を薙ぎ払った。衝撃と閃光が突き抜けて煙が晴れると、敵は全て消え去った。
「はぁ、はぁっ…外の魔力を使っていても消耗が激しいわね…連発はできないけど、威力と攻撃範囲は申し分ないでしょう!」
息を整えながら周りを確認する。
「流石ですね。ゴーレムは全滅したようです。」
「姫様のおかげで大分楽をできました…魔力ポーションをどうぞ。」
「ありがとう。では行きましょうか。」
アルキオネがくれた薬を飲みながら前へ進む。遺跡の仕掛けが、最初の頃よりも過激になっていくのを感じていた。もしかしたら、この先に護りが必要な何かがあるのかも知れない。
更に進むと扉が見えてきた。
「ん?押しても引いてもびくともしないですね?」
シリウスが扉に手を当てて試している。身体強化をかけた状態でもびくともしないようだ。
「鍵とかもなさそうなのよね?」
私も扉を観察するが鍵穴の一つも見つからなかった。
「仕方ありませんね。斬りますか。」
アルキオネは、剣を抜いて身体強化し縦に振る。次の瞬間、扉が2つに分かれて奥に倒れた。
奥には上に登る階段が見えている。そのまま、階段を登っていくと一つの部屋があった。
「行き止まり…ですか?」
アルキオネが先に部屋の中を入り、周りを見回している。それなりの広さがあって、四方が壁になっているようにしか見えなかった。
「姫様。これってまだ使えますか?」
シリウスがしゃがみこんで、地面を観察している。詳しく見てみると、術式が刻んであるように見えた。
「これは…転移系の術式ね。私が知っているものと若干違うけど、起動させると指定されているどこかの場所に転移すると思うわ。自動的に装填されてる魔力が使われるみたいだけど、消費魔力が少ないから短距離の転移だと思う。」
魔術の術式というのは、計算式に近い。計算方法に違いがあっても結果が一緒になるのと同じで、術式の構成は多岐にわたる。また、術式の構成からある程度効果を読み取ることも可能だ。
「転移ですか…他に道もなさそうですし転移先がどうなっているかは読めないですが行きますか?」
シリウスが悩みながら聞いてくる。風による探知では、他に地上に抜けていそうな道は見当たらなかったらしい。絶対にないとまでは断言できないそうだが、可能性は低いだろう。
「転移先には少なくも、魔術を無効化する仕掛けや特殊な結界はないはずよ。仮に敵に囲まれても…私達なら切り抜けられる可能性が高いと思う。」
特定の空間に対して魔力を分解することで魔術を封じる仕掛けは、転移自体も無力化してしまう。王城にあるような強力な結界も、転移を遮るため気にしなくて良いだろう。
「行きましょう。私達なら、なんとかなると思うわ。」
シリウスとアルキオネがうなずくのを確認して、私達は術式の上に載る。術式を起動させると光に包まれた。
今も通路を通った瞬間、巨大な玉が転がってきて私達を轢こうとしている。
「罠が面倒ですね。」
アルキオネは呟きながら魔術で簡単な坂を作った。坂の陰に3人にして隠れていると勢いよく転がる玉は、坂をジャンプ台の代わりにして、私達の頭上を通り過ぎていった。
「いちいち避けたり逃げたりしても、きりがないわ。最低限の対処で進みましょう。」
通ってきた道には、物理的な傷をつけていく。風の流れから行き止まりや元の場所に戻らない通路を選んでいるが、念のためのマーキングだ。しばらく通路を進み、角を曲がると同時に…無数の矢が飛んできた。
「この程度っ!」
シリウスが魔術で風の障壁を作り、強引に矢の軌道を逸らす。矢が飛んで来なくなったことを確認して通路を進むと、天井から通路の横幅と同じくらいの刃が落ちてきた。
「私が斬るわ。」
私は銀月を抜刀し、落ちてきた刃を両断する。刃が2つに分かれて地面に落ちた直後、いきなり天井が降りてきた。
「ここは俺が。」
シリウスが魔槍を天井に突き刺して、風を爆発させる。突き刺した所を中心に、天井が砕かれる。更に地面がいきなり開いて、突然の浮遊感に襲われた。
私は魔力による足場を、シリウスは風による飛行を、アルキオネは魔力の鎖を生み出して、それぞれ近くの地面まで移動する。
「3重の罠とか…いよいよ本気でかかってきたわね。」
私は一息吐いてさっきまでいた場所を眺める。
「そうですね。今まで以上に殺気を感じる罠でした。」
アルキオネも後ろを眺めながら同意した。
「罠が多くなっているということは、方向は合ってるとも言えるでしょう。」
シリウスは、前を向いて警戒を強める。多くなってきた罠に対処するためにより注意が必要だろう。
そのまま警戒しつつ前に進み、ようやく広場のような空間に出ることができた。
そこは今まで以上のゴーレムで埋もれていた。私達を見つけたようで一斉に襲いかかってくる。
「2人とも時間稼ぎよろしく!カウント20で。」
シリウスとアルキオネは、無言で頷いて遠距離のゴーレムを風で牽制しつつ、近距離の相手を槍と剣で屠っていく。
私はその間に周囲の魔力を使って魔術を構築していく。目の前に5層に並ぶ術式が展開され、それぞれの役割を果たす。
(1層目で周囲の魔力を収束。2層目は魔力の指向性付与…前方への一点収束投射。続く3層目と4層目で魔力砲撃の威力強化。最終の5層目…照準調整。5連術式を一斉稼働!)
魔力が限界まで収束する。そして…
「退避!」
私の合図で2人が後方に下がる。同時に展開した魔術を解放する。照準通りに魔力の奔流が駆け巡って、軌道上のゴーレムを消しとばす。更に術式を横に回転させて、辺り一体を薙ぎ払った。衝撃と閃光が突き抜けて煙が晴れると、敵は全て消え去った。
「はぁ、はぁっ…外の魔力を使っていても消耗が激しいわね…連発はできないけど、威力と攻撃範囲は申し分ないでしょう!」
息を整えながら周りを確認する。
「流石ですね。ゴーレムは全滅したようです。」
「姫様のおかげで大分楽をできました…魔力ポーションをどうぞ。」
「ありがとう。では行きましょうか。」
アルキオネがくれた薬を飲みながら前へ進む。遺跡の仕掛けが、最初の頃よりも過激になっていくのを感じていた。もしかしたら、この先に護りが必要な何かがあるのかも知れない。
更に進むと扉が見えてきた。
「ん?押しても引いてもびくともしないですね?」
シリウスが扉に手を当てて試している。身体強化をかけた状態でもびくともしないようだ。
「鍵とかもなさそうなのよね?」
私も扉を観察するが鍵穴の一つも見つからなかった。
「仕方ありませんね。斬りますか。」
アルキオネは、剣を抜いて身体強化し縦に振る。次の瞬間、扉が2つに分かれて奥に倒れた。
奥には上に登る階段が見えている。そのまま、階段を登っていくと一つの部屋があった。
「行き止まり…ですか?」
アルキオネが先に部屋の中を入り、周りを見回している。それなりの広さがあって、四方が壁になっているようにしか見えなかった。
「姫様。これってまだ使えますか?」
シリウスがしゃがみこんで、地面を観察している。詳しく見てみると、術式が刻んであるように見えた。
「これは…転移系の術式ね。私が知っているものと若干違うけど、起動させると指定されているどこかの場所に転移すると思うわ。自動的に装填されてる魔力が使われるみたいだけど、消費魔力が少ないから短距離の転移だと思う。」
魔術の術式というのは、計算式に近い。計算方法に違いがあっても結果が一緒になるのと同じで、術式の構成は多岐にわたる。また、術式の構成からある程度効果を読み取ることも可能だ。
「転移ですか…他に道もなさそうですし転移先がどうなっているかは読めないですが行きますか?」
シリウスが悩みながら聞いてくる。風による探知では、他に地上に抜けていそうな道は見当たらなかったらしい。絶対にないとまでは断言できないそうだが、可能性は低いだろう。
「転移先には少なくも、魔術を無効化する仕掛けや特殊な結界はないはずよ。仮に敵に囲まれても…私達なら切り抜けられる可能性が高いと思う。」
特定の空間に対して魔力を分解することで魔術を封じる仕掛けは、転移自体も無力化してしまう。王城にあるような強力な結界も、転移を遮るため気にしなくて良いだろう。
「行きましょう。私達なら、なんとかなると思うわ。」
シリウスとアルキオネがうなずくのを確認して、私達は術式の上に載る。術式を起動させると光に包まれた。
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