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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界
1 東の大陸
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港について誘導に合わせて船を寄せる。錨を下ろし桟橋と船の間に板を乗せて、順番に乗客が降りる。
私たちも順番が来たため、近くにいた人にお礼を告げながら船を降りた。
「ここが…セイン王国の港町パロスポート。名前の通り巨大な灯台があるのね。」
この街は、セイン王国の海の玄関として使われているようだ。街の中央に灯台があってそれを囲むように行政区域が存在する。そこから外周に向かって商店や宿があり一番外側に住宅がある円状の街となっていた。
「初めて他国に来ましたが…これは慣れるまでは辛いですね。」
「ああ…息を吸うのがここまで辛いとは思わなかった。」
アルキオネとシリウスは、息をするのが辛そうだった。私たちは呼吸によって、空気中の魔力を取り込んでいる。普段以上に自身の魔力以外が体内に入ってくるまで慣れるまでは苦しく感じる。私も初めて空気中の魔力を収束させて取り込んだ時は、激痛に苛まれた上に身体の中が傷ついて吐血してしまったくらいだ。
東の大陸は、他の大陸に比べて魔力濃度が異常に高いことで知られている。大地の奥底には、龍脈と呼ばれる魔力の奔流が流れているが、特にこの大陸に多く存在するらしい。所々に龍穴と言われる龍脈の噴き出し口みたいなものもあるようだ。
そのためこの大陸の半分は、多量の魔力を好む魔族の領土になっているし、魔物の強さも桁違いとなっている。その上、北の方には山脈があって龍の住処にもなっている。この大陸は人が住むには、相当過酷な場所と言えるだろう。
私たちは、一旦宿を探すことにする。情報収集や物資の補充のため、数日はこの街に滞在することになるだろう。
宿に行くまでの間、通り過ぎる人達を見ていると今までに比べて暗く感じた。もちろん身なりは奇麗だし怪我などしているわけではない。体格も特別小さいわけではないので食事も問題ないだろう。けれど、どこか表情が暗いのが気になった。
街の中央にある宿を見つけたため、私たちは中に入る。
「数日の間宿泊したいのですが、部屋は空いてますか?」
「空いてるよ。最近は、海からくるお客さんしかいないからね。部屋はどうするんだい?」
「1人1部屋でお願いします。街の外から人はやってこないんですか?」
「あいよ。料金は1人につき1泊大銀貨2枚、部屋は3階の奥で鍵がこれさね。人がやってこない理由は、街の外は危険すぎて歩けないからだよ。今は1月に1度、軍と傭兵ギルドが物資の運搬をしていて、その時に一緒についていくくらいしか手段がないし、毎月犠牲になる人はいるから商売をやっている人じゃなければ、街の外には誰も出ないさね。」
お金を渡して鍵を受け取る。因みにセイン王国にも独自の貨幣があるため本来は両替しないといけないが、この街に限っては大陸の貨幣が使用可能だ。
私たちは部屋に向かい、一旦3人で集まり今後のことを相談することにした。
「これからどうします?移動自体は俺たち3人で移動するんですよね?」
「そうねぇ。あまり詮索されたくないから、軍の近くにはいたくないわね。5日くらいあれば体は慣れそう?」
「申し訳ないですが、それくらいは欲しいです。」
「俺も大丈夫だと思います。」
3人で打ち合わせを済ませるとご飯を食べて休むことにした。この街についた段階で夕方になっていたため、本格的な活動は明日からになる。また、食事は穀物と魚が中心だった。月に1度しか他の街から運搬されないため、野菜は乾燥させたものや酢漬けしたもので肉はソーセージが主流らしい。
次の日私たちは情報収集を行う。こちらには冒険者というものがない代わりに傭兵が主流でギルドも存在する。依頼を受けるのは同じだが、護衛と魔物の討伐が専門となる。一先ず傭兵ギルドに行けば周囲の情報を集めやすいだろう。
ギルドの中に入ると視線が一斉にこちらを向く。見ない顔だったため観察してくるのがほとんどだが、中には獲物を見る雰囲気もある。依頼情報などを見ていると月1の護衛のみで、個人の護衛はなかった。
「個人の護衛依頼はないんですね。」
アルキオネがつぶやくと近くにいたおじさんが答えてくれた。
「個人の護衛は無理だな。基本的に護衛対象の10倍が必要な人数の基準になりつつある。外の危険度の性でよっぽどの依頼料じゃなきゃ誰も受けねえからな。必然とこうなるわけだ。」
「そんなに外は危険なんですか?」
「嬢ちゃんは西の大陸から来たのか?あっちと違って魔物の強さが桁違いだからな。向こうの魔物とも戦ったことのある奴の話じゃ、1番弱いゴブリンと向こうのオーガが同じくらいらしいぜ。なんでも冒険者だと最低Aランクないと、1日も生きられないって言ってたな。」
「オーガクラスのゴブリンの群れは厄介そうですね。しかもその言い方だと他の魔物もそれ以上ということですよね?」
シリウスの言葉におじさんはうなづく。
「兄ちゃんの言うとおりだ。外に行きたいならおとなしく月に1度の時に一緒に移動した方がいい。それから街の外れや路地裏には近づくんじゃねえぞ。人通りの少ない場所は窃盗や暴力沙汰があるからな。3人のように子供や成人してすぐくらいの奴は特に狙われやすい。気を付けるんだな。」
詳しく教えてくれたおじさんに感謝を告げてギルドを後にした。街の中で買い物をしながらそれとなく聞いてみるが、皆同じ反応だった。街の外の危険度は今までと比べ物にならなそうだ。
とはいえ3人で行動することは、既定路線だ。必要な物資や食料、野営に必要なものの補充と、この場所へ体を慣らすことに中心に準備を重ねる。
そして5日後、出発の朝がやってきた。
私たちも順番が来たため、近くにいた人にお礼を告げながら船を降りた。
「ここが…セイン王国の港町パロスポート。名前の通り巨大な灯台があるのね。」
この街は、セイン王国の海の玄関として使われているようだ。街の中央に灯台があってそれを囲むように行政区域が存在する。そこから外周に向かって商店や宿があり一番外側に住宅がある円状の街となっていた。
「初めて他国に来ましたが…これは慣れるまでは辛いですね。」
「ああ…息を吸うのがここまで辛いとは思わなかった。」
アルキオネとシリウスは、息をするのが辛そうだった。私たちは呼吸によって、空気中の魔力を取り込んでいる。普段以上に自身の魔力以外が体内に入ってくるまで慣れるまでは苦しく感じる。私も初めて空気中の魔力を収束させて取り込んだ時は、激痛に苛まれた上に身体の中が傷ついて吐血してしまったくらいだ。
東の大陸は、他の大陸に比べて魔力濃度が異常に高いことで知られている。大地の奥底には、龍脈と呼ばれる魔力の奔流が流れているが、特にこの大陸に多く存在するらしい。所々に龍穴と言われる龍脈の噴き出し口みたいなものもあるようだ。
そのためこの大陸の半分は、多量の魔力を好む魔族の領土になっているし、魔物の強さも桁違いとなっている。その上、北の方には山脈があって龍の住処にもなっている。この大陸は人が住むには、相当過酷な場所と言えるだろう。
私たちは、一旦宿を探すことにする。情報収集や物資の補充のため、数日はこの街に滞在することになるだろう。
宿に行くまでの間、通り過ぎる人達を見ていると今までに比べて暗く感じた。もちろん身なりは奇麗だし怪我などしているわけではない。体格も特別小さいわけではないので食事も問題ないだろう。けれど、どこか表情が暗いのが気になった。
街の中央にある宿を見つけたため、私たちは中に入る。
「数日の間宿泊したいのですが、部屋は空いてますか?」
「空いてるよ。最近は、海からくるお客さんしかいないからね。部屋はどうするんだい?」
「1人1部屋でお願いします。街の外から人はやってこないんですか?」
「あいよ。料金は1人につき1泊大銀貨2枚、部屋は3階の奥で鍵がこれさね。人がやってこない理由は、街の外は危険すぎて歩けないからだよ。今は1月に1度、軍と傭兵ギルドが物資の運搬をしていて、その時に一緒についていくくらいしか手段がないし、毎月犠牲になる人はいるから商売をやっている人じゃなければ、街の外には誰も出ないさね。」
お金を渡して鍵を受け取る。因みにセイン王国にも独自の貨幣があるため本来は両替しないといけないが、この街に限っては大陸の貨幣が使用可能だ。
私たちは部屋に向かい、一旦3人で集まり今後のことを相談することにした。
「これからどうします?移動自体は俺たち3人で移動するんですよね?」
「そうねぇ。あまり詮索されたくないから、軍の近くにはいたくないわね。5日くらいあれば体は慣れそう?」
「申し訳ないですが、それくらいは欲しいです。」
「俺も大丈夫だと思います。」
3人で打ち合わせを済ませるとご飯を食べて休むことにした。この街についた段階で夕方になっていたため、本格的な活動は明日からになる。また、食事は穀物と魚が中心だった。月に1度しか他の街から運搬されないため、野菜は乾燥させたものや酢漬けしたもので肉はソーセージが主流らしい。
次の日私たちは情報収集を行う。こちらには冒険者というものがない代わりに傭兵が主流でギルドも存在する。依頼を受けるのは同じだが、護衛と魔物の討伐が専門となる。一先ず傭兵ギルドに行けば周囲の情報を集めやすいだろう。
ギルドの中に入ると視線が一斉にこちらを向く。見ない顔だったため観察してくるのがほとんどだが、中には獲物を見る雰囲気もある。依頼情報などを見ていると月1の護衛のみで、個人の護衛はなかった。
「個人の護衛依頼はないんですね。」
アルキオネがつぶやくと近くにいたおじさんが答えてくれた。
「個人の護衛は無理だな。基本的に護衛対象の10倍が必要な人数の基準になりつつある。外の危険度の性でよっぽどの依頼料じゃなきゃ誰も受けねえからな。必然とこうなるわけだ。」
「そんなに外は危険なんですか?」
「嬢ちゃんは西の大陸から来たのか?あっちと違って魔物の強さが桁違いだからな。向こうの魔物とも戦ったことのある奴の話じゃ、1番弱いゴブリンと向こうのオーガが同じくらいらしいぜ。なんでも冒険者だと最低Aランクないと、1日も生きられないって言ってたな。」
「オーガクラスのゴブリンの群れは厄介そうですね。しかもその言い方だと他の魔物もそれ以上ということですよね?」
シリウスの言葉におじさんはうなづく。
「兄ちゃんの言うとおりだ。外に行きたいならおとなしく月に1度の時に一緒に移動した方がいい。それから街の外れや路地裏には近づくんじゃねえぞ。人通りの少ない場所は窃盗や暴力沙汰があるからな。3人のように子供や成人してすぐくらいの奴は特に狙われやすい。気を付けるんだな。」
詳しく教えてくれたおじさんに感謝を告げてギルドを後にした。街の中で買い物をしながらそれとなく聞いてみるが、皆同じ反応だった。街の外の危険度は今までと比べ物にならなそうだ。
とはいえ3人で行動することは、既定路線だ。必要な物資や食料、野営に必要なものの補充と、この場所へ体を慣らすことに中心に準備を重ねる。
そして5日後、出発の朝がやってきた。
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