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第3章 エスペルト王国の動乱
25 嵐を通り抜けて
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その日、夕暮れを過ぎたころから風や高波によって船が揺れている。嵐の影響で船の外は暴風雨に晒されていて、立っていることも厳しいだろう。
「リウ、アキ、2人とも大丈夫?入るわよ?」
「私は大丈夫です。」
「俺も…うっ…大丈夫で、ふよ。」
部屋の中に入ると顔色を悪くしているシリウスと苦笑しながら世話をしているアルキオネの姿があった。
私は、部屋の中に入るとシリウスに手をかざす。
船酔いは、自律神経のバランスが崩れることで起きることが多い。聖属性魔術を使えば酔い止めまでは行かなくても、痛み止めの応用で自律神経のバランスを整えることができるため、多少抑えるくらいの効果はあるだろう。
「気休め程度だけど多少は楽になるでしょう。…あまり多用すると体が慣れて効かなくなるから今回だけね。」
「すいません。ありがとうございます。」
「私からもありがとうございます。」
「どういたしまして。これだけ揺れると船が苦手な人にとっては厳しいだろうし、仕方がっ!?」
話していると船全体を揺らすほどの衝撃が襲い、同時に轟音が響いてきた。
「…これは、落ちたかしら?」
「落ちましたね…」
私とアルキオネが同時に同じことを言うが、恐らく雷が船に落ちたのだと思われた。一応避雷針があるため、雷が落ちても避雷針を伝って海に電流が逃げる造りになっているらしい。しかし、運が悪いと周りに影響があるらしく近くのところが砕ける場合もあるようだ。雨が降っているため火事にはならないだろうけど、少し心配だ。
すると船員の人が、客室を回っているらしく様子を見にきた。
「おお、3人ともここにいたか。雷については避雷針があるから船内は安全だ。嵐が抜けるまでは部屋の中にいるように頼む。何かあったら近くにいる船員に声を掛けてくれ。」
「わかりました。」
「あなたも気を付けてくださいね。」
その後も、何回か雷が落ちたらしく続けて音が響いたり衝撃が伝ってくる。しばらくして夜が明けるころには、ようやく静かになってきた。
朝になって甲板に上がってみると、船員たちは徹夜の作業によって疲労でぐったりとしていた。けが人を運んでいるのを見えるが、大きな怪我を負っている人は見当たらないため一先ず安心だ。
また、船はマストが一部砕けているものの特段大きな損傷はないように見える。
「あの、大丈夫ですか?」
ちょうど近くにいた人に声をかけてみた。
「ん?あぁ…嬢ちゃんか。船はこの程度なら若干、航行速度が落ちるが問題なく進めるぞ。けが人もいるが、命に別状はない。」
「もしよければ、怪我の応急措置程度になりますが手伝いますよ?」
「あー、手伝ってくれるんなら助かるな…怪我した奴らは、船内に入ってすぐの医務室に運んでいる。一応、船員の中で慣れてる奴が手当てしてるはずだ。」
船内の医務室に入ると数人がベットで横になっていた。簡単に見た限りだとほとんどは、打ち身や擦過傷といったところだろう。1人だけ腕の骨を折っているようだった。
「どうした?けが人か病人でも出たのか?」
「いえ。甲板で聞いたらここで手当てしていると聞いたので。応急処置になりますけど、簡単な治癒魔術は使えますから。」
「それは助かるが…いいのか?」
私は笑顔でうなずくと順番に治療を行っていく。治療といっても完全回復をこの人数にかけるのは厳しいため、自然回復の促進と簡単な痛み止めになる。骨折していた人に対しては、骨の結合まで行った。
「これで大丈夫だと思います。骨折していた骨は簡単にしかくっつけていないので、しばらくは固定させて安静にしてくださいね。」
「ありがとうな。恩に着る…これはお礼もかねて忠告だけどよ、東の大陸についたら聖属性の治癒魔術を使えることは黙ってた方がいい。治癒魔術を扱える奴は貴重だからな。街の中なら比較的大丈夫だが、街の外で誘拐されることが多いそうだ。嬢ちゃんの優しさは美点だが、自分のことも大事にしてくれよ?」
私くらいの魔力量だと平民の中でもそれなりにいたりする。幼いことから魔力を使っていれば増えやすいし、両親以上の魔力をもつこともそれなりにあるからだ。また、聖属性魔術は適性の影響を受けやすい。王族や侯爵以上の貴族なら適性が高いが、その他貴族はないに等しいため、適性にばらつきのない平民の方が使えたりする。もっとも十分な知識が必要なため誰でも使えるわけではないけれど。
「…わかりました。忠告ありがとうございます。」
手当てが終わると私は自室に戻る。
それからは、しばらく平和な日々が続いた。天候にも恵まれて、嵐はもちろん雨風が強い日もなくて順調な船旅といえるだろう。
ある日の夜、客室で寝ていると慌ただしい声が聞こえて目が覚める。
「海賊からの敵襲!皆は客室の中で隠れてくれ!野郎どもは甲板に上がって迎撃だ!」
どうやら、海賊が近づいてきたらしい。波乱の夜の幕開けとなった。
「リウ、アキ、2人とも大丈夫?入るわよ?」
「私は大丈夫です。」
「俺も…うっ…大丈夫で、ふよ。」
部屋の中に入ると顔色を悪くしているシリウスと苦笑しながら世話をしているアルキオネの姿があった。
私は、部屋の中に入るとシリウスに手をかざす。
船酔いは、自律神経のバランスが崩れることで起きることが多い。聖属性魔術を使えば酔い止めまでは行かなくても、痛み止めの応用で自律神経のバランスを整えることができるため、多少抑えるくらいの効果はあるだろう。
「気休め程度だけど多少は楽になるでしょう。…あまり多用すると体が慣れて効かなくなるから今回だけね。」
「すいません。ありがとうございます。」
「私からもありがとうございます。」
「どういたしまして。これだけ揺れると船が苦手な人にとっては厳しいだろうし、仕方がっ!?」
話していると船全体を揺らすほどの衝撃が襲い、同時に轟音が響いてきた。
「…これは、落ちたかしら?」
「落ちましたね…」
私とアルキオネが同時に同じことを言うが、恐らく雷が船に落ちたのだと思われた。一応避雷針があるため、雷が落ちても避雷針を伝って海に電流が逃げる造りになっているらしい。しかし、運が悪いと周りに影響があるらしく近くのところが砕ける場合もあるようだ。雨が降っているため火事にはならないだろうけど、少し心配だ。
すると船員の人が、客室を回っているらしく様子を見にきた。
「おお、3人ともここにいたか。雷については避雷針があるから船内は安全だ。嵐が抜けるまでは部屋の中にいるように頼む。何かあったら近くにいる船員に声を掛けてくれ。」
「わかりました。」
「あなたも気を付けてくださいね。」
その後も、何回か雷が落ちたらしく続けて音が響いたり衝撃が伝ってくる。しばらくして夜が明けるころには、ようやく静かになってきた。
朝になって甲板に上がってみると、船員たちは徹夜の作業によって疲労でぐったりとしていた。けが人を運んでいるのを見えるが、大きな怪我を負っている人は見当たらないため一先ず安心だ。
また、船はマストが一部砕けているものの特段大きな損傷はないように見える。
「あの、大丈夫ですか?」
ちょうど近くにいた人に声をかけてみた。
「ん?あぁ…嬢ちゃんか。船はこの程度なら若干、航行速度が落ちるが問題なく進めるぞ。けが人もいるが、命に別状はない。」
「もしよければ、怪我の応急措置程度になりますが手伝いますよ?」
「あー、手伝ってくれるんなら助かるな…怪我した奴らは、船内に入ってすぐの医務室に運んでいる。一応、船員の中で慣れてる奴が手当てしてるはずだ。」
船内の医務室に入ると数人がベットで横になっていた。簡単に見た限りだとほとんどは、打ち身や擦過傷といったところだろう。1人だけ腕の骨を折っているようだった。
「どうした?けが人か病人でも出たのか?」
「いえ。甲板で聞いたらここで手当てしていると聞いたので。応急処置になりますけど、簡単な治癒魔術は使えますから。」
「それは助かるが…いいのか?」
私は笑顔でうなずくと順番に治療を行っていく。治療といっても完全回復をこの人数にかけるのは厳しいため、自然回復の促進と簡単な痛み止めになる。骨折していた人に対しては、骨の結合まで行った。
「これで大丈夫だと思います。骨折していた骨は簡単にしかくっつけていないので、しばらくは固定させて安静にしてくださいね。」
「ありがとうな。恩に着る…これはお礼もかねて忠告だけどよ、東の大陸についたら聖属性の治癒魔術を使えることは黙ってた方がいい。治癒魔術を扱える奴は貴重だからな。街の中なら比較的大丈夫だが、街の外で誘拐されることが多いそうだ。嬢ちゃんの優しさは美点だが、自分のことも大事にしてくれよ?」
私くらいの魔力量だと平民の中でもそれなりにいたりする。幼いことから魔力を使っていれば増えやすいし、両親以上の魔力をもつこともそれなりにあるからだ。また、聖属性魔術は適性の影響を受けやすい。王族や侯爵以上の貴族なら適性が高いが、その他貴族はないに等しいため、適性にばらつきのない平民の方が使えたりする。もっとも十分な知識が必要なため誰でも使えるわけではないけれど。
「…わかりました。忠告ありがとうございます。」
手当てが終わると私は自室に戻る。
それからは、しばらく平和な日々が続いた。天候にも恵まれて、嵐はもちろん雨風が強い日もなくて順調な船旅といえるだろう。
ある日の夜、客室で寝ていると慌ただしい声が聞こえて目が覚める。
「海賊からの敵襲!皆は客室の中で隠れてくれ!野郎どもは甲板に上がって迎撃だ!」
どうやら、海賊が近づいてきたらしい。波乱の夜の幕開けとなった。
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