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第3章 エスペルト王国の動乱
24 船上での交流
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「乗客は全員確認できました。」
「よし!では、出航だ。錨を上げろ!帆を開け!」
船員の合図で錨が上げられる。開かれた帆が風を受けて船が動き出した。私たちは、しばらく甲板から海や都市を眺めている。
すると、シリウスが気まずそうに私とアルキオネの影に隠れるようにしていた。
「リウ?どうしたの?」
「いえ、王立学園の同級生がいたもので…正体がバレないかどうか心配です。」
シリウスの目線を辿ると2人の男女がいた。近くには侍女と執事が控えていて、服には家紋がついているため知っている人が見れば貴族だとわかる。
(あの家紋はマイヤー男爵家ね。直接話したことはないけど、何代か前の当主が貿易で利益を出すことで爵位を得たって聞いたことがあるわ。昔は、堅実な家だったらしいけど、今は悪い意味で貴族らしいって噂なのよね。)
貴族間の噂は、他を陥れる罠の可能性もあるため真実を見極める必要があるが、見た限りの印象では噂に近いだろう。
「2人も変装しているから大丈夫じゃない?」
「だといいですが。学生時代それなりに関わりがあるので…もうそろそろ客室に行きませんか?」
私は了承して念のため客室に行くことにした。因みに、シリウスもアルキオネも明るい茶髪だが、魔術具で黒に変えて髪型も普段と違うようにしている。
「客室はこの辺りかしら?」
「俺がこの部屋でアキがその奥ですね。ティアが1番奥です。鍵をどうぞ。」
「ええ、ありがとう。なにかあったら遠慮なく呼んでかまわないからね。」
客室は1人部屋を皆で借りることにしていた。部屋の中には荷物入れと机、ベッドがある質素な作りになっている。
また、シリウスとアルキオネにはアクセサリ型の通信用魔術具を渡しているため、いつでも連絡をすることが可能だった。
荷物の整理といっても、衣服がほとんどであり最低限必要なものや貴重品は、魔法袋に収納しているためほとんど時間はかからなかった。
少し部屋でゆっくりしてから甲板に出ると、辺り一面が青い海で天気も良くて輝いている。風も程よくて心地いい。
「嬢ちゃん。海を見るのははじめてか?」
「ええ。普段は王都に住んでいて、今回初めてこっちにきました。」
話しかけてくれたのは、船員の男の人だった。普段は帆の管理をしているが、風が安定しているため手が空いているらしい。
「その歳で東の大陸に渡るのは大変だろうが、自棄になるなよ?」
「大変なのはなんとなくわかりますけど…自棄になるなとは?」
「ん?知らないで向かってたのか?東の大陸は、左半分が人間の領地、右半分が魔族の領地って感じに分かれてるんだ。前までは比較的平和だったんだが、最近治安が悪くなってきててな。どうしても生き残りためには強い人間が必要だからって、強さが基準になりつつあるんだ。女子供だけで生きていくのは特に厳しいだろうな。まぁセイン王国は、他の国に比べればマシだし嬢ちゃんの場合、優しそうな兄ちゃんが一緒にいるからなんとかなるかもしれないがな。」
東の大陸は、人間の国だと広大な国が5つほどある。今向かっているセイン王国は、エスペルト王国ともやりとりがあって比較的友好関係にある国だ。以前、本で見たときはなかった情報のため、最近になって情勢が変わったのだろうが、現地で活動するのは厳しいものになると思われる。
船に乗って数日たち意外だったのが、シリウスが船に弱かったことだ。船酔いのため客室に閉じこもっていることが多くなっている。私もたまに様子見に行くが、申し訳なさそうにしてくるため、アルキオネに看病もといそばについていてもらっている。
その間、私はやることもなかったため船員たちの手伝いをしていた。手伝いといっても、料理や掃除の補助が主な内容だ。
「厨房には、冷蔵室があるんですね。」
「おおよ!これでも大規模な船に入るからな。冷蔵用の魔術具は積んでるぜ。魔力結晶を使ってるから時間制限はあるが、航行日数分は使える計算だ。」
冷蔵室は、城などにもあるが冷気が抜けにくくした密室に、冷やすための魔術具を動作させて部屋ごと冷やすことで食材を保管するものだ。小さめの冷蔵庫の魔術具はお店や商店でも使っているが、冷蔵室を使っているのは珍しかった。
さて、厨房での手伝いは主に食材を切ったりする下拵えや皿洗いだ。食材を包丁で切って準備が終わると、調理中に出た洗い物を洗っていく。
「…てっきりどこかの金持ちの嬢ちゃんかと思ってたが、随分といい手際だな。びっくりしたぞ。」
「喫茶店で働いてましたから。ある程度はできますよ。」
実際にオーナーをしている喫茶店で店員としていることもあるため、嘘はついていない。また、冒険者として1人で野営もしているから一般的な調理技術程度は、身に付けているつもりだ。
食事の準備が終わると私の手伝いも終了となる。
「ありがとうな。嬢ちゃんのおかげで助かった。機会があるときに何かサービスするぜ。」
「どういたしまして。私も楽しかったですし、定期的に手伝わせて下さい。」
船の中の1日は、こうして平和に過ぎていく。
数日が経って、海の上は風が強くなり雨も振っていた。どうやらこのあとは本格的に天気が荒れるらしく、船の上も慌しくなっていた。
「帆を少なくしろ!嵐が来るぞ!」
嵐がやってくるときには帆を最小限にして、マストにかかる負荷を抑える。そのために船員たちが大急ぎで作業をしていた。
私たち客員は、安全のために船内にいることになっている。
船旅はひとつの山場を迎えることになる。
「よし!では、出航だ。錨を上げろ!帆を開け!」
船員の合図で錨が上げられる。開かれた帆が風を受けて船が動き出した。私たちは、しばらく甲板から海や都市を眺めている。
すると、シリウスが気まずそうに私とアルキオネの影に隠れるようにしていた。
「リウ?どうしたの?」
「いえ、王立学園の同級生がいたもので…正体がバレないかどうか心配です。」
シリウスの目線を辿ると2人の男女がいた。近くには侍女と執事が控えていて、服には家紋がついているため知っている人が見れば貴族だとわかる。
(あの家紋はマイヤー男爵家ね。直接話したことはないけど、何代か前の当主が貿易で利益を出すことで爵位を得たって聞いたことがあるわ。昔は、堅実な家だったらしいけど、今は悪い意味で貴族らしいって噂なのよね。)
貴族間の噂は、他を陥れる罠の可能性もあるため真実を見極める必要があるが、見た限りの印象では噂に近いだろう。
「2人も変装しているから大丈夫じゃない?」
「だといいですが。学生時代それなりに関わりがあるので…もうそろそろ客室に行きませんか?」
私は了承して念のため客室に行くことにした。因みに、シリウスもアルキオネも明るい茶髪だが、魔術具で黒に変えて髪型も普段と違うようにしている。
「客室はこの辺りかしら?」
「俺がこの部屋でアキがその奥ですね。ティアが1番奥です。鍵をどうぞ。」
「ええ、ありがとう。なにかあったら遠慮なく呼んでかまわないからね。」
客室は1人部屋を皆で借りることにしていた。部屋の中には荷物入れと机、ベッドがある質素な作りになっている。
また、シリウスとアルキオネにはアクセサリ型の通信用魔術具を渡しているため、いつでも連絡をすることが可能だった。
荷物の整理といっても、衣服がほとんどであり最低限必要なものや貴重品は、魔法袋に収納しているためほとんど時間はかからなかった。
少し部屋でゆっくりしてから甲板に出ると、辺り一面が青い海で天気も良くて輝いている。風も程よくて心地いい。
「嬢ちゃん。海を見るのははじめてか?」
「ええ。普段は王都に住んでいて、今回初めてこっちにきました。」
話しかけてくれたのは、船員の男の人だった。普段は帆の管理をしているが、風が安定しているため手が空いているらしい。
「その歳で東の大陸に渡るのは大変だろうが、自棄になるなよ?」
「大変なのはなんとなくわかりますけど…自棄になるなとは?」
「ん?知らないで向かってたのか?東の大陸は、左半分が人間の領地、右半分が魔族の領地って感じに分かれてるんだ。前までは比較的平和だったんだが、最近治安が悪くなってきててな。どうしても生き残りためには強い人間が必要だからって、強さが基準になりつつあるんだ。女子供だけで生きていくのは特に厳しいだろうな。まぁセイン王国は、他の国に比べればマシだし嬢ちゃんの場合、優しそうな兄ちゃんが一緒にいるからなんとかなるかもしれないがな。」
東の大陸は、人間の国だと広大な国が5つほどある。今向かっているセイン王国は、エスペルト王国ともやりとりがあって比較的友好関係にある国だ。以前、本で見たときはなかった情報のため、最近になって情勢が変わったのだろうが、現地で活動するのは厳しいものになると思われる。
船に乗って数日たち意外だったのが、シリウスが船に弱かったことだ。船酔いのため客室に閉じこもっていることが多くなっている。私もたまに様子見に行くが、申し訳なさそうにしてくるため、アルキオネに看病もといそばについていてもらっている。
その間、私はやることもなかったため船員たちの手伝いをしていた。手伝いといっても、料理や掃除の補助が主な内容だ。
「厨房には、冷蔵室があるんですね。」
「おおよ!これでも大規模な船に入るからな。冷蔵用の魔術具は積んでるぜ。魔力結晶を使ってるから時間制限はあるが、航行日数分は使える計算だ。」
冷蔵室は、城などにもあるが冷気が抜けにくくした密室に、冷やすための魔術具を動作させて部屋ごと冷やすことで食材を保管するものだ。小さめの冷蔵庫の魔術具はお店や商店でも使っているが、冷蔵室を使っているのは珍しかった。
さて、厨房での手伝いは主に食材を切ったりする下拵えや皿洗いだ。食材を包丁で切って準備が終わると、調理中に出た洗い物を洗っていく。
「…てっきりどこかの金持ちの嬢ちゃんかと思ってたが、随分といい手際だな。びっくりしたぞ。」
「喫茶店で働いてましたから。ある程度はできますよ。」
実際にオーナーをしている喫茶店で店員としていることもあるため、嘘はついていない。また、冒険者として1人で野営もしているから一般的な調理技術程度は、身に付けているつもりだ。
食事の準備が終わると私の手伝いも終了となる。
「ありがとうな。嬢ちゃんのおかげで助かった。機会があるときに何かサービスするぜ。」
「どういたしまして。私も楽しかったですし、定期的に手伝わせて下さい。」
船の中の1日は、こうして平和に過ぎていく。
数日が経って、海の上は風が強くなり雨も振っていた。どうやらこのあとは本格的に天気が荒れるらしく、船の上も慌しくなっていた。
「帆を少なくしろ!嵐が来るぞ!」
嵐がやってくるときには帆を最小限にして、マストにかかる負荷を抑える。そのために船員たちが大急ぎで作業をしていた。
私たち客員は、安全のために船内にいることになっている。
船旅はひとつの山場を迎えることになる。
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