王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第3章 エスペルト王国の動乱

22 同盟の模索

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 グランバルド帝国と停戦状態になってからしばらく経った。
 その間にも建国祭とお披露目を迎えた。対帝国戦では、王国軍の旗頭になっていたこともあり、今までよりも王女として社交する機会が増えた。
 とはいえ、国境の情勢が不安定なことで国軍だけで守ることが難しくなり、徐々に地方領主の力が増大し王族の権威が落ちつつある。
 今の貴族派閥は、レティシア派が主力だが辺境の領主たちによる派閥がいくつかできていて、レティシア派に次ぐ規模になりつつあった。
 その中で、11歳になったばかりの私は、お父様から王城に呼ばれていた。



 玉座の間に入ると、お父様と最近よく耳にする顧問の2人がいた。

「よく来てくれた。ラティアーナに頼みがあってな…我が国は、北の大陸との同盟を模索したいと考えている。たが他国には、特にグランバルド帝国には知られたくはない。そこで、ラティアーナにはこっそりと北の大陸に渡り、この書状を渡してもらいたい。バルトロス、説明を。」

「はい。ラティアーナ王女殿下には、海路にて一度東の大陸に渡り、北の大陸を目指してもらいます。辿り着くまでに最短でも半年かかるでしょうが、グランバルド帝国やアルカディア王国の中を縦断するわけにはいきませんから。ラティアーナ王女殿下には、書状と王国とやりとりするための、通信用魔術具を渡してもらいたいのです。」

 お父様とバルトロスから、今回の件について説明を受ける。

「1つ質問ですが…いくら隠密行動とはいえ、使者を出せば良いのでは?わたくしが直接参ることの利が見えません。」

「使者では、こちらの本気が見えませんからな。王族が行くことに意味があるのです。それに、ガイアス第1王子は今、南の国境に出向いてますし、ギルベルト第2王子はまだ学生です。その点、あなたであればまだ学園に通っていませんし問題ないでしょう?」

(確かに筋は通ってるわね。けれどなにか…棘があるというか嫌な感じがするわ。バルトロスも顧問として雇われて以降、かなり政治に絡むようになってきてるのよね。有能そうだけど胡散臭いわ。)

 最近社交で貴族たちと会っても城の中にいても、全体的にピリピリしている。国境の不安定さが1番だろうが、注意が必要だろう。

「かしこまりました。準備ができ次第、すぐ出発しますわ。護衛として近衛を連れて行きますが、構いませんよね?」

「ああ、問題ない。その辺りは任せる。」





 王城から離宮に戻ると、イリスとリーナ、シリウス、アルキオネを呼んで計画を立てることにした。まずは、お父様に呼ばれた件を簡単に説明する。

「北の大陸ですか?」

「ええ、同盟を結べないかどうか、書簡を渡すためにね。直接は行けないから、東の大陸に渡ってから陸路で向かうわ。」

 この国のある大陸と、東あるいは北の大陸は海を挟んでいる。ただ東と北の大陸の間は、巨大な川に挟まれているだけなため船を使わずに渡すことが可能らしい。
 また、海には通常の海流とは別に、魔力の流れというものが存在する。水棲の魔物は魔力が濃いところを好むため、魔力が少ないところを船で通るのが一般的だ。
 因みに船については、木製の帆船が通常使われている。帆によって進むが、緊急用の魔力動力も備え付けてあるため、風がなくても多少は動くことが可能だ。
 金属製の船も存在するが、こちらは魔力炉による動力のみで動く船になるため、飛空船と同様に数が少なく国が所有するだけだ。

「東の大陸から北の大陸となると、海沿いを通る場合は、火山地帯や凍土地帯を抜けることになります。一般の方にはでは移動できないため、内陸から砂漠を通るらしいです。」

 シリウスは、子爵家当主になったときに歴代当主の日記を読んだらしい。シリウスの祖父、2代前の当主が若い頃に旅をしていて、日記に旅の記録が書いてあったようだ。

「あまり時間はかけたくないわ。次の年の建国祭か遅くても、リーファスのお披露目までには戻りたいと思ってるの。過酷になるかもしれないけど、わたくしとシリウス、アルキオネの3人なら可能じゃないかしら?」

「…そうですね。本来であれば、リーナのような侍女も付けたいところですが、その道だと恐らく耐えられないでしょう。その点3人であれば可能かとは思います。魔物に関しても…わたくしやシリウスお兄様が、頑張ればいいだけです。」

「そうですね。姫様なら問題ないでしょうし、むしろ私とアルキオネが足を引っ張らないようにしないといけませんね。」

 2人の同意を得て、イリスとリーナにもお願いをしておく。

「わたくしが外に出ている間、ここのことはお任せします。近衛隊の指揮権もあなたたちに渡しておくから。」

 準備に時間がかかるため、王都を出発するのは3日後となる。私たちは、準備や引き継ぎのために忙しい時間を過ごしていく。





 そのころの王城では、バルトロスが国王と話をして別れたところだった。

(この王国は、世界にとって重要な場所になりますからね…帝国などに滅ぼされては困ります。とはいえ私の願いのために、ラティアーナ王女殿下は邪魔になりそうですね。いずれは、消えてもらいましょうか。)

 口元に笑みを浮かべながら、王城の廊下を歩いていく。
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