王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第3章 エスペルト王国の動乱

11 異変の調査

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 さて、薬について調べるといっても今のところ判明しているのは、路地裏で漢方薬として売っているというだけで他に情報はなかった。

(最近は帝国との戦争も影響していて、入国や国内からでも街に入る時は、王侯貴族以外は荷物の検査を受けるはず。薬の状態であれば検査に引っかかるだろうし…原料だけを外から運んで街の中で精製している可能性が高いかな。街の中で精製していることを前提に考えるとあれだけの薬を作るには、かなりの人出がいるはず。)

 この国では、医薬品を取り扱う許可を得ている商人や医者くらいしか毒物の持ち込みは基本的にできない。
 そして医薬品を扱う商人も医者も例外なく医療ギルドに所属することになっている。持ち込んだ場合は国境や街の審査時に記録されるだろう上に、ギルドにも記録が残る。可能性がないとは言えないが、かなり低いだろう。
 詳細が全くわからない以上、ある程度は予測を元に調査を進めるしかない。地道に行っていくしかないだろう。

 なお、医療ギルドは医者の相互扶助を目的としていて医薬品の管理も行なっている。医療技術の向上のため側面もある。



 そこからは、商業ギルドへ向かう。この街で活動している商人や商会、雇用についての情報を集めるためだ。
 敵がどこに潜んでいるか敵が1つかもわからない以上は、調査していることを悟らせないためにも、王女ではなく1人の住民として問い合わせる。

「働き口をいくつか紹介してくれませんか?」

「嬢ちゃんくらいだとなぁ…この2つくらいかな。今だと情勢が安定しなくてな、あまり大口の仕事はないんだよ。ごめんな。」

 感謝を告げて、紹介してもらった紙を貰ってギルドを出る。

(正規の方法じゃ募集してなさそうね…それとももう十分集まっているのか分からないわ。)

 念のため、冒険者ギルドにも行ってみる。
 依頼者を確認するが、特段変わったものはなく精々帝国戦の傭兵依頼があるくらいだ。

 その日は結局、有力な情報は得られなかった。





 何日か同じことを繰り返していたが、進捗はない。
 この日も街を見回り、ギルドで情報を集める。
 すると、冒険者ギルドに普段見ない3人の子供たちがいるのが見えた。
 気になったので近くに行ってみると話し声が聞こえてくる。

「依頼するっていってもお金ないけど…」

「でもよ!あいつらのこと心配だろ!?なんとかしないと…」

「ねぇ君たち、何か困ってることでもあるの?私は冒険者だから、私にできることなら協力できるかもしれないよ?」

 私が声を掛けると子供たちが驚いたようで、顔を見合わせている。

「…実は、俺たちの友達が仕事に行ってから帰ってこないんだ。それで俺たちと同じスラムに住んでるやつに聞いたんだけど、何も知らないって言うし見てもないって言う。警備隊にも話したけど…孤児だからって取り合ってもくれなかった。もう、どうしようもないんだよ!」

 更に話を聞くと、数日前に日銭を稼ぐために仕事に行ったが、それ以降帰ってこなくて行方不明らしい。

「仕事内容は聞いてないけど、確か…プランブラ商会に行くって言ってた!」

「なるほどね…プランブラ商会については私の方でも調べてみるわ。もしなにか分かったらスラムの方に行くけど…あまり期待はしないでね。」



 子供たちから話を聞いた後、商業ギルドに再度向かってプランブラ商会の情報を集める。

 プランブラ商会は開設して、ここ3年くらいになるらしい。商会としては、食品や雑貨の製造と販売を手掛けており、そこまで人数は多くない。特色などもない普通の商会といった感じだ。

(商会自体におかしいところはないけど…表向きの窓口かダミーとして使われている可能性もある。けれど、人を集めていて帰ってこないのだとしたらどこかに幽閉されてるはず。今なら助けられるかも…)



 プランブラ商会の近くを見て回っていると数人が後をつけているようだ。
 少し走ってみるが、走って追いかけてくるため路地裏に入り、そのまま走って袋小路にたどり着いた。後ろを振り返ると5人の男の人がいる。

「探ってる女がいるって話だがそいつだな?」

「ああそうだ。依頼通りにそいつは連れて行くぞ。働くことさえできれば傷ついたても構わないそうだ。」

 商会かもっと後ろにいる人物かは分からないけれど、事態を探っていたことは、向こうにばれているらしい。

(依頼されたみたいけど…殺すつもりはなさそうだし、ここは乗りましょうか。)

「あなたたちが子供たちを攫っているんですか?」

「さあな?俺たちは嗅ぎまわっているガキがいるから、捕まえてこいって言われただけだ。詳しくは知らねえよ。悪いが俺たちのために犠牲になってもらう。」

 それだけ言うと男の人が私を全力で蹴り飛ばして、壁に激突する。そのまま口元に布を当てられて、眠気が襲ってきた。



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