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第3章 エスペルト王国の動乱
7 空の上で舞う姫
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私は今、飛空船の一室にて捕らえられていた。
鍵のかかった小さめの部屋の中で、両手を魔封じの腕輪で両足を鎖で拘束された状態だ。
部屋の外には見張りの兵も立っている。
(さて、捕まって飛空船に乗り込むところまではうまくいったわね、ここからは出たところ勝負になるかしら。)
元々は、勝てない物量差で攻められたときに捕まることで逆転の一手を投じるつもりだったけれど、相手の布陣を見て考えを変えていた。おそらく、帝国の将軍を相手にする場合、アドリアスと協力すれば十中八苦勝てるだろう。
ただし、周囲の兵たちを護るのは難しいため、少なくない犠牲が出ると思われた。
しかし、飛空船による少数での攻めてきたところに隙がある。
デトローク・トルトニスが持つ魔剣はボルテアスパーダと呼ばれていて、持ち主に雷を纏わせる。また、広範囲に雷を放つことも可能なため、あらゆる距離で戦うことができ殲滅力が高い。
(だけど…だからこそ飛空船の中という味方が密集していて周囲を破壊できないような場所で戦うには本来の力を発揮できない。)
相手の力を発揮させずに自身が全力を出せるという意味ではこの場所は最適だった。
(さてと、まずは拘束を解きましょうか。)
私はまず、魔封じの腕輪を無力化することにする。
この腕輪は魔力を外に出せなくするが抜け道がないわけじゃない。
指を噛み切って血を流すと、地面に術式を描いていく。血には魔力を含んでいるため魔術の核にするつもりだ。あとは、自身の血を経由して周囲の魔力に干渉する。
今まで、魔力が少ないゆえの周囲の魔力を利用し取り込むことを続けてきたおかげで、自信の魔力を間接的に操作することも多少はできるようになっている。普通の人は、おそらくできないであろうこれは、自身の魔力以外を代用し続けてきた私だからこそできることだ。
複雑な術式を行使することは出来ないが、腕輪を破壊するくらいはできる。魔力で生み出した刃で腕輪を斬ると、胸元に隠していたペンダントの魔術具を発動する。
これは装備を一瞬で換装するもので、ドレスから戦闘用の衣装に切り替えると同時に、刀も装備される。普段魔法袋にしまっている武装全ては無理だが、刀2本くらいであれば、この魔術具でもしまっておくことが可能だった。
(では、参りましょうか。理想は、飛空船の奪取。最低でも破壊した上での脱出かしらね。)
私は銀月を抜くと、鍵のかかった扉ごと両断する。扉の外には見張りが2人ほどいた。
扉が内側から斬られて驚いた一瞬の硬直の間に1人の見張りの意識を刈り取る。
もう1人が行動を起こす前に私は、刀を首もとに向けた。
「この船の構造と人員について教えなさい。抵抗しなければ身の安全だけは保障してあげる。」
「誰がお前などに…」
「これはあなたたち帝国から宣戦布告した戦争よ?わたくしとしては、護る側の大義名分があるし、戦いになった時点で殺されても仕方がないでしょう?逆に感謝して欲しいくらいだけど。」
「…お前みたいな温室育ちの女に殺すだけの覚悟があるわけっ!?」
私は、抵抗する兵士を蹴り飛ばす。壁にぶつかった兵士は、意識こそ失っていないが衝撃で身体の自由は利かないようだ。
「わたくしは、身の安全としか言ってないわ。」
殺気に当てられて刀を目の前に突きつけられた彼は、この船の大体の部屋の場所と乗員数を話す。
全て聞き終わった私は、彼を峰打ちで眠らせた。
(ここはちょうど船の中心で船員は後ろの動力質か前の艦橋にいるみたいね。艦橋に行ってデトローク将軍をどうにかしましょうか…)
私は艦橋に向けて歩き出す。途中兵士たちに遭遇することはなく、艦橋の入り口までたどり着いたので、扉を全力で開けた。
扉が開くと同時に兵士たちの視線が一斉に私に向く。
「貴様…どうやって拘束を解いた?」
「あら、あの程度でわたくしを抑えられたとでも?」
将軍が魔剣の柄に手をかけながら聞いてきたので、私も刀の柄に手をかけて答える。
気軽に声を掛け合ってるように聞こえるがお互いに殺気に溢れていて、周りの兵士たちは息を呑んでいた。
すると将軍が一瞬で私の前に現れて魔剣を振りかざす。同時に、私も身体強化をかけると同時に銀月を抜刀した。
刃同士がぶつかる甲高い音を響かせてそれぞれの武器が停止する。
「…あのとき、無抵抗で捕まったのはこれが狙いか。」
「さてどうかしら、ね!」
鍔迫り合いの中、私は銀月をずらして魔剣を横にそらす。そのままあいてる左手で夜月を抜刀して逆手持ちのまま振りかぶり、将軍は、後ろに跳躍して攻撃をかわした。追いかける形で私は刀を振るう。一撃一撃は重くない、速度と手数を重視した連撃は、徐々に将軍の体に傷をつけていく。
(このまま、均衡を崩さない程度に追い込んでいく。こちらが際立って優位にならない限りは、周囲を巻き込んだり船を壊したりするほどの攻撃はしてこないはず!長期戦を仕掛けて隙を作る!)
一方、デトローク将軍は、ここまで押されたことに焦っていた。
(拘束されたいた王女が、自力で脱出することもここまでの強さを持っていることも想定外だ…確かに魔力は王族どころか貴族のなかでも少ないのだろう。それでも、剣術や体術といった基本的な戦闘能力が高い上に身体強化の使い方もうまい。この場所で全力を出せば勝てるだろうが、飛空船も味方も巻き込んでしまう…わざわざ捕まったということは既に相手の手のひらの上ということか。)
私が攻めてデトローク将軍が守りに徹する戦いが続く。
このまま、膠着状態が続くかと思われたとき、飛空船が大きく揺れた。
「っ今度は何だ!?」
「飛空船の右翼部分に魔力攻撃が着弾!損傷は軽微ですが、地上からの攻撃です!」
私はデトローク将軍の意識がそれた一瞬に、身体強化の強度を周囲の魔力込みでの最大まで引き上げた上で夜月にも魔力を流す。
強化された夜月を全力で振るって込めた魔力を持って斬撃として飛ばし、デトローク将軍の横を抜けて、船の壁を貫通した。そしてそのまま銀月を全力で薙ぎ払う。
デトローク将軍は、魔剣で銀月を受け止めたが魔力と夜月による身体強化によって繰り出された一閃によって、身体ごと吹き飛ばされて飛空船からはじき出された。
飛空船の中の指揮官であり最強の武人であったデトローク将軍がいなくなったことで、残りの兵士たちは諦めて投降した。
私は兵士たちを縛って無力化すると、飛空船をセプテンリオ領まで飛ばすために操舵する。
(操作自体は単純そうね。重力制御によって高度を火炎噴射によって加速を、風によって旋回を制御していて、全部ここから操作できるのは楽だわ。あとは、アドリアスとシクスタスが援護に来てくれたみたいだから、回収して帰りましょうか。)
私は飛空船を地上近くに降ろすと2人を乗せる。
「作戦成功か。流石だな。」
「ラティアーナ王女殿下。ご無事で何よりです。」
「2人ともありがとう。デトローク将軍が追いかけてくると面倒だから、このままセプテンリオまで飛ばすわよ?都市の方に通信だけ入れておいてね。」
私の言葉にシクスタス司令官が私の無事と飛空船を鹵獲して戻る旨を国軍と国境都市セプテンリオ伝えた。
「忘れる前にこれだけ先に返しておく。」
私はアドリアスに渡してあった魔法袋を受け取って、3人で飛空船に乗り込む。再度操舵して、上空は浮かばせるとセプテンリオに向けて進める。
「今回はうまくいったけど、ほとんど奇襲に近いものだったわ。これから先、帝国軍も本格的に侵攻してくるかも知れないわね。」
「そうですな。今まで帝国軍は兵量差で押し切れると思っていたからこそ、持久戦を仕掛けていましたからな。」
私の言葉に司令官が返しアドリアスが続けて言った。
「だが得たものも大きい。将軍の存在に飛空船の情報、帝国の拠点と都市の位置。情報を得た上でこちらの損害は少なかった。」
「ええ。犠牲者をなくすことはできなかったけど…最良の結果だと思うわ。」
(本当であれば犠牲を出さないようにしたかった。もちろん戦いになった以上、不可能なことはわかっているけど。理想は遠いわね。)
帝国軍との最初の大規模な衝突は、全体的に見れば王国側の勝利となった。
鍵のかかった小さめの部屋の中で、両手を魔封じの腕輪で両足を鎖で拘束された状態だ。
部屋の外には見張りの兵も立っている。
(さて、捕まって飛空船に乗り込むところまではうまくいったわね、ここからは出たところ勝負になるかしら。)
元々は、勝てない物量差で攻められたときに捕まることで逆転の一手を投じるつもりだったけれど、相手の布陣を見て考えを変えていた。おそらく、帝国の将軍を相手にする場合、アドリアスと協力すれば十中八苦勝てるだろう。
ただし、周囲の兵たちを護るのは難しいため、少なくない犠牲が出ると思われた。
しかし、飛空船による少数での攻めてきたところに隙がある。
デトローク・トルトニスが持つ魔剣はボルテアスパーダと呼ばれていて、持ち主に雷を纏わせる。また、広範囲に雷を放つことも可能なため、あらゆる距離で戦うことができ殲滅力が高い。
(だけど…だからこそ飛空船の中という味方が密集していて周囲を破壊できないような場所で戦うには本来の力を発揮できない。)
相手の力を発揮させずに自身が全力を出せるという意味ではこの場所は最適だった。
(さてと、まずは拘束を解きましょうか。)
私はまず、魔封じの腕輪を無力化することにする。
この腕輪は魔力を外に出せなくするが抜け道がないわけじゃない。
指を噛み切って血を流すと、地面に術式を描いていく。血には魔力を含んでいるため魔術の核にするつもりだ。あとは、自身の血を経由して周囲の魔力に干渉する。
今まで、魔力が少ないゆえの周囲の魔力を利用し取り込むことを続けてきたおかげで、自信の魔力を間接的に操作することも多少はできるようになっている。普通の人は、おそらくできないであろうこれは、自身の魔力以外を代用し続けてきた私だからこそできることだ。
複雑な術式を行使することは出来ないが、腕輪を破壊するくらいはできる。魔力で生み出した刃で腕輪を斬ると、胸元に隠していたペンダントの魔術具を発動する。
これは装備を一瞬で換装するもので、ドレスから戦闘用の衣装に切り替えると同時に、刀も装備される。普段魔法袋にしまっている武装全ては無理だが、刀2本くらいであれば、この魔術具でもしまっておくことが可能だった。
(では、参りましょうか。理想は、飛空船の奪取。最低でも破壊した上での脱出かしらね。)
私は銀月を抜くと、鍵のかかった扉ごと両断する。扉の外には見張りが2人ほどいた。
扉が内側から斬られて驚いた一瞬の硬直の間に1人の見張りの意識を刈り取る。
もう1人が行動を起こす前に私は、刀を首もとに向けた。
「この船の構造と人員について教えなさい。抵抗しなければ身の安全だけは保障してあげる。」
「誰がお前などに…」
「これはあなたたち帝国から宣戦布告した戦争よ?わたくしとしては、護る側の大義名分があるし、戦いになった時点で殺されても仕方がないでしょう?逆に感謝して欲しいくらいだけど。」
「…お前みたいな温室育ちの女に殺すだけの覚悟があるわけっ!?」
私は、抵抗する兵士を蹴り飛ばす。壁にぶつかった兵士は、意識こそ失っていないが衝撃で身体の自由は利かないようだ。
「わたくしは、身の安全としか言ってないわ。」
殺気に当てられて刀を目の前に突きつけられた彼は、この船の大体の部屋の場所と乗員数を話す。
全て聞き終わった私は、彼を峰打ちで眠らせた。
(ここはちょうど船の中心で船員は後ろの動力質か前の艦橋にいるみたいね。艦橋に行ってデトローク将軍をどうにかしましょうか…)
私は艦橋に向けて歩き出す。途中兵士たちに遭遇することはなく、艦橋の入り口までたどり着いたので、扉を全力で開けた。
扉が開くと同時に兵士たちの視線が一斉に私に向く。
「貴様…どうやって拘束を解いた?」
「あら、あの程度でわたくしを抑えられたとでも?」
将軍が魔剣の柄に手をかけながら聞いてきたので、私も刀の柄に手をかけて答える。
気軽に声を掛け合ってるように聞こえるがお互いに殺気に溢れていて、周りの兵士たちは息を呑んでいた。
すると将軍が一瞬で私の前に現れて魔剣を振りかざす。同時に、私も身体強化をかけると同時に銀月を抜刀した。
刃同士がぶつかる甲高い音を響かせてそれぞれの武器が停止する。
「…あのとき、無抵抗で捕まったのはこれが狙いか。」
「さてどうかしら、ね!」
鍔迫り合いの中、私は銀月をずらして魔剣を横にそらす。そのままあいてる左手で夜月を抜刀して逆手持ちのまま振りかぶり、将軍は、後ろに跳躍して攻撃をかわした。追いかける形で私は刀を振るう。一撃一撃は重くない、速度と手数を重視した連撃は、徐々に将軍の体に傷をつけていく。
(このまま、均衡を崩さない程度に追い込んでいく。こちらが際立って優位にならない限りは、周囲を巻き込んだり船を壊したりするほどの攻撃はしてこないはず!長期戦を仕掛けて隙を作る!)
一方、デトローク将軍は、ここまで押されたことに焦っていた。
(拘束されたいた王女が、自力で脱出することもここまでの強さを持っていることも想定外だ…確かに魔力は王族どころか貴族のなかでも少ないのだろう。それでも、剣術や体術といった基本的な戦闘能力が高い上に身体強化の使い方もうまい。この場所で全力を出せば勝てるだろうが、飛空船も味方も巻き込んでしまう…わざわざ捕まったということは既に相手の手のひらの上ということか。)
私が攻めてデトローク将軍が守りに徹する戦いが続く。
このまま、膠着状態が続くかと思われたとき、飛空船が大きく揺れた。
「っ今度は何だ!?」
「飛空船の右翼部分に魔力攻撃が着弾!損傷は軽微ですが、地上からの攻撃です!」
私はデトローク将軍の意識がそれた一瞬に、身体強化の強度を周囲の魔力込みでの最大まで引き上げた上で夜月にも魔力を流す。
強化された夜月を全力で振るって込めた魔力を持って斬撃として飛ばし、デトローク将軍の横を抜けて、船の壁を貫通した。そしてそのまま銀月を全力で薙ぎ払う。
デトローク将軍は、魔剣で銀月を受け止めたが魔力と夜月による身体強化によって繰り出された一閃によって、身体ごと吹き飛ばされて飛空船からはじき出された。
飛空船の中の指揮官であり最強の武人であったデトローク将軍がいなくなったことで、残りの兵士たちは諦めて投降した。
私は兵士たちを縛って無力化すると、飛空船をセプテンリオ領まで飛ばすために操舵する。
(操作自体は単純そうね。重力制御によって高度を火炎噴射によって加速を、風によって旋回を制御していて、全部ここから操作できるのは楽だわ。あとは、アドリアスとシクスタスが援護に来てくれたみたいだから、回収して帰りましょうか。)
私は飛空船を地上近くに降ろすと2人を乗せる。
「作戦成功か。流石だな。」
「ラティアーナ王女殿下。ご無事で何よりです。」
「2人ともありがとう。デトローク将軍が追いかけてくると面倒だから、このままセプテンリオまで飛ばすわよ?都市の方に通信だけ入れておいてね。」
私の言葉にシクスタス司令官が私の無事と飛空船を鹵獲して戻る旨を国軍と国境都市セプテンリオ伝えた。
「忘れる前にこれだけ先に返しておく。」
私はアドリアスに渡してあった魔法袋を受け取って、3人で飛空船に乗り込む。再度操舵して、上空は浮かばせるとセプテンリオに向けて進める。
「今回はうまくいったけど、ほとんど奇襲に近いものだったわ。これから先、帝国軍も本格的に侵攻してくるかも知れないわね。」
「そうですな。今まで帝国軍は兵量差で押し切れると思っていたからこそ、持久戦を仕掛けていましたからな。」
私の言葉に司令官が返しアドリアスが続けて言った。
「だが得たものも大きい。将軍の存在に飛空船の情報、帝国の拠点と都市の位置。情報を得た上でこちらの損害は少なかった。」
「ええ。犠牲者をなくすことはできなかったけど…最良の結果だと思うわ。」
(本当であれば犠牲を出さないようにしたかった。もちろん戦いになった以上、不可能なことはわかっているけど。理想は遠いわね。)
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