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第3章 エスペルト王国の動乱
6 勝つために
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時は、総数2千5百ほどの王国兵が、帝国の拠点へ夜襲を仕掛けている頃に遡る。
「帝国兵に動きはあるかしら?」
「今のところないですね。夜間はやはり攻撃を仕掛けてこないようです。敵兵も見当たりません。」
「そう。なら良かったわ。こちらの攻撃に気づいて、逆に仕掛けてくるのを警戒していたけど、杞憂だったみたいね。」
私とアドリアスは、指揮所にて報告を聞いていた。
周囲を警戒している兵から連絡を受けてほっと一息つく。こちらの動きが読まれているとまでは思わないけど、いつ何が起こるかはわからないからだ。帝国兵たちが拠点を捨ててこちらに流れ込む可能性もあった。防衛能力が極端に減っている今、襲われた場合とてもではないが太刀打ちできないだろう。
「ラティアーナ王女殿下、緊急事態です!右舷上空に正体不明の飛空船1隻を発見!帝国のものを推定されます。いかがされますか?」
「魔力砲の準備!射程に入り次第、迎撃しなさい。」
兵たちが慌てて迎撃の準備を行う。とはいえ、備え付けの魔力砲は、対人もしくは対魔物用のため取り扱いやすい分、飛空船を相手にするには威力と射程が心もとなかった。数発分を同じ位置に当て続けないと大打撃にはならないだろう。
(右舷からってことは、こちらの動きも見られてはいないはずだけど…こっちの攻撃にあわせているのであれば、夜襲部隊が気づくはずだから通信を入れてくれると思う。それがないのであれば…今回の夜襲とは別件で来たってことかしら?)
すると飛空船が明るく光って…砦を衝撃が襲う。
「砲撃です!結界によって損害はありませんが…このまま受け続けると結界が持ちません!」
「魔力炉からの供給を増やしていいから、なんとしても持たせなさい!それから魔術士団は、軍団魔術の用意を。炎熱系統の高温と衝撃を主体にした術式で迎撃するわ!」
私の指示で、魔術士が軍団魔術の準備を行う。
軍団魔術というのは、1人ないしは数人で術式の構築を行い、残りの人たちが魔力供給を行うことで強大な魔術を集団で行使する技術だ。発動に時間がかかり準備中に他のことができなくなる代わりに1人では行使できない規模の術式と魔力を行使可能となる。
飛空船の飛行方法は大きく分けて、風魔術によるものと無属性の重力操作によるもの、炎熱魔術による加速によるものの3通りある。
どれかひとつないしは、複数の組み合わせによって飛行を実現しているわけだ。
そのため、飛空船にたいして特別有効な攻撃手段はないが、強いてあげるなら飛空船を構成している材質に干渉しやすいものとなるだろう。基本的には鋼鉄製が多いため、単純な物理的なもので破壊するか高温によって融解させつつ破壊するかだろう。
今回の場合は、単純な高温の爆炎を用いることにした。
「それにしても、森の上空を通って来たってことだろう?飛龍に襲われそうだけどよく無事だったな。」
アドリアスの疑問に飛空船に詳しい人が答えた。
「それが…どうもあの飛空船は今まで見るものとは違います。もしかしたら新型の可能性もありますね。」
こうして話している間にも、飛空船からの砲撃は続いていて止めどなく轟音と衝撃が襲ってくる。
「っ!?飛空船から帝国兵が飛び降りてきます!先頭にいるのは…グランバルト帝国将軍の1人、デトローク・トルトニス。雷の将とも呼ばれる武人です。」
帝国の将軍は4大将軍と呼ばれ、それぞれ違う属性の魔剣を持つことで有名だった。将軍が出てきた以上、籠城もじきに破られるだろう。だからこそ、今残っている軍は無事に都市まで帰さなくてはならない。
(将軍1人だけならなんとかなるかもしれないけど…他にどれくらいの戦力がいるか読めない。でもうまくいけば…)
「軍団魔術は中止しなさい!…ラティアーナ第3王女として命じます。この砦は破棄します。全軍、国境都市セプテンリオまで待避しなさい!アドリアス、あとはよろしくね。信じてるわ。」
私以外の全員を王族からの命令として撤退させる。
砦から皆が去ったことを確認して、魔力炉の自己破壊術式を作動させた。これによってここを破棄しつつ、帝国軍を足止めできるだろう。
ちょうどその時、数人の帝国兵が上がってきた。
「ほぅ…なんともやばそうな魔力だ。大方、自爆させるってところか。」
「ええ。貴方達を先に通すわけにはいきませんわ。」
「なるほど。貴様が噂の無能王女か。諜報部からも聞いてるぞ?たいした魔力を持たずに離宮に閉じ籠る王女って話だ…さて、貴様には我々と共に来て貰おうか。王族の人質ってのは特別な価値がある。特に貴様のように鍵になっているような奴は特にだ。解剖すれば、秘密を暴くことはできるかな?」
将軍デトロークは魔剣を私に向けて威圧をかけてくる。
私は手を挙げて投降の姿勢を示した。
他の兵士が私に近づいてきて魔封じの腕輪をはめてくる。全身を鎖で拘束され飛空船に連行された。
同刻、撤退中のアドリアスたち王国兵は、全力で都市まで走っていた。ある程度離れた時、砦から膨大な魔力が溢れて大規模な爆発が起こる。
「…さて、俺はこの後ラティアーナ王女を助けに行く。お前達はこのまま撤退を。」
「アドリアス様、我々も…」
「大丈夫だ。策がないわけじゃない。任せておけ。」
俺には、ラティアーナと交わした作戦と約束がある。そのためにも都市の防衛は厚くしなければならない。
俺は、他の兵士たちを撤退させて飛空船を追いかける。
「帝国兵に動きはあるかしら?」
「今のところないですね。夜間はやはり攻撃を仕掛けてこないようです。敵兵も見当たりません。」
「そう。なら良かったわ。こちらの攻撃に気づいて、逆に仕掛けてくるのを警戒していたけど、杞憂だったみたいね。」
私とアドリアスは、指揮所にて報告を聞いていた。
周囲を警戒している兵から連絡を受けてほっと一息つく。こちらの動きが読まれているとまでは思わないけど、いつ何が起こるかはわからないからだ。帝国兵たちが拠点を捨ててこちらに流れ込む可能性もあった。防衛能力が極端に減っている今、襲われた場合とてもではないが太刀打ちできないだろう。
「ラティアーナ王女殿下、緊急事態です!右舷上空に正体不明の飛空船1隻を発見!帝国のものを推定されます。いかがされますか?」
「魔力砲の準備!射程に入り次第、迎撃しなさい。」
兵たちが慌てて迎撃の準備を行う。とはいえ、備え付けの魔力砲は、対人もしくは対魔物用のため取り扱いやすい分、飛空船を相手にするには威力と射程が心もとなかった。数発分を同じ位置に当て続けないと大打撃にはならないだろう。
(右舷からってことは、こちらの動きも見られてはいないはずだけど…こっちの攻撃にあわせているのであれば、夜襲部隊が気づくはずだから通信を入れてくれると思う。それがないのであれば…今回の夜襲とは別件で来たってことかしら?)
すると飛空船が明るく光って…砦を衝撃が襲う。
「砲撃です!結界によって損害はありませんが…このまま受け続けると結界が持ちません!」
「魔力炉からの供給を増やしていいから、なんとしても持たせなさい!それから魔術士団は、軍団魔術の用意を。炎熱系統の高温と衝撃を主体にした術式で迎撃するわ!」
私の指示で、魔術士が軍団魔術の準備を行う。
軍団魔術というのは、1人ないしは数人で術式の構築を行い、残りの人たちが魔力供給を行うことで強大な魔術を集団で行使する技術だ。発動に時間がかかり準備中に他のことができなくなる代わりに1人では行使できない規模の術式と魔力を行使可能となる。
飛空船の飛行方法は大きく分けて、風魔術によるものと無属性の重力操作によるもの、炎熱魔術による加速によるものの3通りある。
どれかひとつないしは、複数の組み合わせによって飛行を実現しているわけだ。
そのため、飛空船にたいして特別有効な攻撃手段はないが、強いてあげるなら飛空船を構成している材質に干渉しやすいものとなるだろう。基本的には鋼鉄製が多いため、単純な物理的なもので破壊するか高温によって融解させつつ破壊するかだろう。
今回の場合は、単純な高温の爆炎を用いることにした。
「それにしても、森の上空を通って来たってことだろう?飛龍に襲われそうだけどよく無事だったな。」
アドリアスの疑問に飛空船に詳しい人が答えた。
「それが…どうもあの飛空船は今まで見るものとは違います。もしかしたら新型の可能性もありますね。」
こうして話している間にも、飛空船からの砲撃は続いていて止めどなく轟音と衝撃が襲ってくる。
「っ!?飛空船から帝国兵が飛び降りてきます!先頭にいるのは…グランバルト帝国将軍の1人、デトローク・トルトニス。雷の将とも呼ばれる武人です。」
帝国の将軍は4大将軍と呼ばれ、それぞれ違う属性の魔剣を持つことで有名だった。将軍が出てきた以上、籠城もじきに破られるだろう。だからこそ、今残っている軍は無事に都市まで帰さなくてはならない。
(将軍1人だけならなんとかなるかもしれないけど…他にどれくらいの戦力がいるか読めない。でもうまくいけば…)
「軍団魔術は中止しなさい!…ラティアーナ第3王女として命じます。この砦は破棄します。全軍、国境都市セプテンリオまで待避しなさい!アドリアス、あとはよろしくね。信じてるわ。」
私以外の全員を王族からの命令として撤退させる。
砦から皆が去ったことを確認して、魔力炉の自己破壊術式を作動させた。これによってここを破棄しつつ、帝国軍を足止めできるだろう。
ちょうどその時、数人の帝国兵が上がってきた。
「ほぅ…なんともやばそうな魔力だ。大方、自爆させるってところか。」
「ええ。貴方達を先に通すわけにはいきませんわ。」
「なるほど。貴様が噂の無能王女か。諜報部からも聞いてるぞ?たいした魔力を持たずに離宮に閉じ籠る王女って話だ…さて、貴様には我々と共に来て貰おうか。王族の人質ってのは特別な価値がある。特に貴様のように鍵になっているような奴は特にだ。解剖すれば、秘密を暴くことはできるかな?」
将軍デトロークは魔剣を私に向けて威圧をかけてくる。
私は手を挙げて投降の姿勢を示した。
他の兵士が私に近づいてきて魔封じの腕輪をはめてくる。全身を鎖で拘束され飛空船に連行された。
同刻、撤退中のアドリアスたち王国兵は、全力で都市まで走っていた。ある程度離れた時、砦から膨大な魔力が溢れて大規模な爆発が起こる。
「…さて、俺はこの後ラティアーナ王女を助けに行く。お前達はこのまま撤退を。」
「アドリアス様、我々も…」
「大丈夫だ。策がないわけじゃない。任せておけ。」
俺には、ラティアーナと交わした作戦と約束がある。そのためにも都市の防衛は厚くしなければならない。
俺は、他の兵士たちを撤退させて飛空船を追いかける。
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