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第3章 エスペルト王国の動乱
4 崩壊へ進む道
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砦を一定の間隔で衝撃が襲う…
「魔術士団は、遠距離魔術の行使を準備!騎士団は、こっちの魔術の着弾と同時に近くの敵を倒してこい!一撃離脱を基本としてすぐに戻るように。では開始!」
司令官の号令で魔術士が銃眼から魔術を射出する。燃えると面倒なため炎熱系は使わないが水や氷、雷、風といった刃や弾丸、槍など、様々な形をとって撃ち出されていく。そして着弾と同時に砦の外門を開放して、騎士達が近くの帝国兵を攻撃していく。攻撃が終わると同時に撤退し、同時に魔法士たちによる魔術攻撃の第2弾が放たれていく。
この1連の流れを繰り返すことで、帝国兵相手に時間を稼いでいた。
帝国兵の攻撃は、砦の防御能力で受け切っていて、まだ被害は出ていない。
「今のところ大丈夫そうね。この砦の魔力炉はどのくらい持つのかしら?」
「今のペースであれば、約2月です。」
「それまでに、帝国軍をどうにかしないともたないな…」
細かい指示については、基本的に司令官に一任しているが、大まかな方針については私と司令官、アドリアスの3名が主だって決めている。戦いが本格的に始まってはや数日、膠着状態を作り出せたものの打開策がない状態だ。
「帝国側の前線基地ってどの辺りかしら?」
「おそらくこの位置ですね。帝国側の森を抜けたところに砦を建設したものと考えられます。」
地図を見ながら帝国軍の配置を考える。本隊は約2万だが、毎日攻めてきているのは大体一度に5千程度だ。本隊からここまで派遣することを考えると、近くに大きな拠点を持っている可能性が高い。食糧をはじめとする支援物資の供給も必要なため帝国の都市とも連絡しやすい場所だろう。
「また、偵察隊からの報告では、物資の運搬は飛空船を使っているようですね。」
「…さすが大国だな。規模が違う。」
飛空船というのは鋼鉄製の空飛ぶ戦艦のようなもので、魔術による飛行を実現している。ただ、造船にかかる費用が異様に高いのと、飛龍をはじめとする飛行型の魔物に壊されやすいため手軽に運用できない。エスペルト王国では5隻ほど所有しているが、グランバルド帝国は最低でも30隻は所有していると考えられている。
ただ、飛空船による直接攻撃はないと考えられていた。森の上空は飛龍の領域となっているからだ。
「それに騎士たちの練度や装備もそれなりだ。こちらも負けているわけではないが、1人で複数人相手をするのは無謀だろう。できたとしても一握りだけだ。」
アドリアスにも何度か前線に出てもらっていた。恐らくだがこの中では、私とアドリアスが1番強く次点が司令官、次に各部隊長といった順番になる。
結局、何度話し合っても現状維持が精一杯の言う結論になる。
(流石に2万の軍勢となると不利ね…せめて実力者が多くなければいいのだけど。)
「ラティアーナ王女殿下。このままでは不利になります。多少…いえ、かなり危ない橋を渡ることになりますが、帝国軍の拠点を攻めて補給だけでも妨害しなければ、いずれこちらが負けます。」
「そうね。このまま悪戯に消耗戦を行っても兵力差でこちらが不利。であればこそ、こちらから仕掛けなくてはね。…上手く飛空船を鹵獲できないかしら?」
「着地中は、整備と魔力の補充を行う必要があります。その隙をつけばあるいは…」
帝国軍の拠点を攻めるための方法を詰めていく。
後日、砦の中の全てに対して作戦を告げる。
「この先の作戦ついて全隊員に向けて発表する。なお、作戦中の隊員もいるため、砦内全てに向けた通信にて行う。作戦開始は今日の鐘11つ目」。2千5百の兵をもって、各隊を散開した状態で帝国軍の拠点に一斉に潜入し夜襲を仕掛ける。目的は補給物資の奪取もしくは無力化、拠点の破壊、そして飛空船の鹵獲もしくは無力化である!防衛は薄くなるが、夜のため影響が少ないこと、1度しか機会がないことがこの人数になった理由だ。何かあるものは、私のところまで来るといい。以上だ!」
「後は今夜に賭けるだけですな。アドリアス様、ラティアーナ王女殿下のことを頼みますぞ。では。」
司令官が通信を終えて去っていく。
この部屋には私とアドリアスだけになったので、私もアドリアスに1つお願いをしておく。
「これをアドリアスに預けておくわ。」
私が取り出したのは、刀や短剣、宝石といったものをしまっている魔法袋だ。
「これは…ラティアーナにとって必要なものだろう?どうして俺に…」
「もしもの話よ。今夜の攻撃中に砦が襲われた場合、持ち堪えることができない可能性があるわ。そうした時は、ここを破棄して都市まで下がることになる。その時にアドリアスには、皆を連れて都市まで撤退して欲しいの。私は、ここに残って人質になるから…」
「それは!?」
アドリアスが驚きのあまり固まっている。けれど私は考えを変えるつもりはない。
「私は無能王女だもの。武装もせずに無抵抗のままであれば拘束されるだけですると思う。そのまま、帝国軍の拠点に連れて行かれてもそこから脱走すれば良いだけだわ。」
「魔封じの腕輪をつけられたら魔力の行使ができなくなるんだぞ!?」
魔封じの腕輪とは、つけた対象の魔力の放出を抑える効果がある魔術具だ。捕虜や犯罪者に使われることが多い。
「あれはね、魔力を外に出せなくなるだけなのよ。身体強化に限れば使える。それにね、おそらく私くらいしかやろうとする人はいないだろうけど…一つだけ裏技があるのよ?今回の戦いも極力こちら側の被害を出したくないと思ってるわ。そのために危険は高いかもしれないけど勝算がないわけじゃない。私を信じて…そしてアドリアスのことも信じてるから。」
アドリアスも最終的には折れてくれた。今相談したことは、最終手段に近いけど有効な手でもある。
急いで決まった作戦によって、防衛戦闘をしつつも着々と準備は進められた。
そしてついに、作戦決行の時間となる。
「魔術士団は、遠距離魔術の行使を準備!騎士団は、こっちの魔術の着弾と同時に近くの敵を倒してこい!一撃離脱を基本としてすぐに戻るように。では開始!」
司令官の号令で魔術士が銃眼から魔術を射出する。燃えると面倒なため炎熱系は使わないが水や氷、雷、風といった刃や弾丸、槍など、様々な形をとって撃ち出されていく。そして着弾と同時に砦の外門を開放して、騎士達が近くの帝国兵を攻撃していく。攻撃が終わると同時に撤退し、同時に魔法士たちによる魔術攻撃の第2弾が放たれていく。
この1連の流れを繰り返すことで、帝国兵相手に時間を稼いでいた。
帝国兵の攻撃は、砦の防御能力で受け切っていて、まだ被害は出ていない。
「今のところ大丈夫そうね。この砦の魔力炉はどのくらい持つのかしら?」
「今のペースであれば、約2月です。」
「それまでに、帝国軍をどうにかしないともたないな…」
細かい指示については、基本的に司令官に一任しているが、大まかな方針については私と司令官、アドリアスの3名が主だって決めている。戦いが本格的に始まってはや数日、膠着状態を作り出せたものの打開策がない状態だ。
「帝国側の前線基地ってどの辺りかしら?」
「おそらくこの位置ですね。帝国側の森を抜けたところに砦を建設したものと考えられます。」
地図を見ながら帝国軍の配置を考える。本隊は約2万だが、毎日攻めてきているのは大体一度に5千程度だ。本隊からここまで派遣することを考えると、近くに大きな拠点を持っている可能性が高い。食糧をはじめとする支援物資の供給も必要なため帝国の都市とも連絡しやすい場所だろう。
「また、偵察隊からの報告では、物資の運搬は飛空船を使っているようですね。」
「…さすが大国だな。規模が違う。」
飛空船というのは鋼鉄製の空飛ぶ戦艦のようなもので、魔術による飛行を実現している。ただ、造船にかかる費用が異様に高いのと、飛龍をはじめとする飛行型の魔物に壊されやすいため手軽に運用できない。エスペルト王国では5隻ほど所有しているが、グランバルド帝国は最低でも30隻は所有していると考えられている。
ただ、飛空船による直接攻撃はないと考えられていた。森の上空は飛龍の領域となっているからだ。
「それに騎士たちの練度や装備もそれなりだ。こちらも負けているわけではないが、1人で複数人相手をするのは無謀だろう。できたとしても一握りだけだ。」
アドリアスにも何度か前線に出てもらっていた。恐らくだがこの中では、私とアドリアスが1番強く次点が司令官、次に各部隊長といった順番になる。
結局、何度話し合っても現状維持が精一杯の言う結論になる。
(流石に2万の軍勢となると不利ね…せめて実力者が多くなければいいのだけど。)
「ラティアーナ王女殿下。このままでは不利になります。多少…いえ、かなり危ない橋を渡ることになりますが、帝国軍の拠点を攻めて補給だけでも妨害しなければ、いずれこちらが負けます。」
「そうね。このまま悪戯に消耗戦を行っても兵力差でこちらが不利。であればこそ、こちらから仕掛けなくてはね。…上手く飛空船を鹵獲できないかしら?」
「着地中は、整備と魔力の補充を行う必要があります。その隙をつけばあるいは…」
帝国軍の拠点を攻めるための方法を詰めていく。
後日、砦の中の全てに対して作戦を告げる。
「この先の作戦ついて全隊員に向けて発表する。なお、作戦中の隊員もいるため、砦内全てに向けた通信にて行う。作戦開始は今日の鐘11つ目」。2千5百の兵をもって、各隊を散開した状態で帝国軍の拠点に一斉に潜入し夜襲を仕掛ける。目的は補給物資の奪取もしくは無力化、拠点の破壊、そして飛空船の鹵獲もしくは無力化である!防衛は薄くなるが、夜のため影響が少ないこと、1度しか機会がないことがこの人数になった理由だ。何かあるものは、私のところまで来るといい。以上だ!」
「後は今夜に賭けるだけですな。アドリアス様、ラティアーナ王女殿下のことを頼みますぞ。では。」
司令官が通信を終えて去っていく。
この部屋には私とアドリアスだけになったので、私もアドリアスに1つお願いをしておく。
「これをアドリアスに預けておくわ。」
私が取り出したのは、刀や短剣、宝石といったものをしまっている魔法袋だ。
「これは…ラティアーナにとって必要なものだろう?どうして俺に…」
「もしもの話よ。今夜の攻撃中に砦が襲われた場合、持ち堪えることができない可能性があるわ。そうした時は、ここを破棄して都市まで下がることになる。その時にアドリアスには、皆を連れて都市まで撤退して欲しいの。私は、ここに残って人質になるから…」
「それは!?」
アドリアスが驚きのあまり固まっている。けれど私は考えを変えるつもりはない。
「私は無能王女だもの。武装もせずに無抵抗のままであれば拘束されるだけですると思う。そのまま、帝国軍の拠点に連れて行かれてもそこから脱走すれば良いだけだわ。」
「魔封じの腕輪をつけられたら魔力の行使ができなくなるんだぞ!?」
魔封じの腕輪とは、つけた対象の魔力の放出を抑える効果がある魔術具だ。捕虜や犯罪者に使われることが多い。
「あれはね、魔力を外に出せなくなるだけなのよ。身体強化に限れば使える。それにね、おそらく私くらいしかやろうとする人はいないだろうけど…一つだけ裏技があるのよ?今回の戦いも極力こちら側の被害を出したくないと思ってるわ。そのために危険は高いかもしれないけど勝算がないわけじゃない。私を信じて…そしてアドリアスのことも信じてるから。」
アドリアスも最終的には折れてくれた。今相談したことは、最終手段に近いけど有効な手でもある。
急いで決まった作戦によって、防衛戦闘をしつつも着々と準備は進められた。
そしてついに、作戦決行の時間となる。
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