王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第3章 エスペルト王国の動乱

3 開戦

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 セプテンリオ伯爵領に滞在してから数日、状況は動き出した。

「ラティアーナ王女殿下!司令官殿!グランバルド帝国より宣戦布告の連絡がありました!同時に国境沿いに帝国軍が展開中とのこと。詳細については調査中。以上。」

 どうやら、帝国が動き出したらしい。

「詳細が分からないとこちらも打って出られないが…ひとまず砦に部隊を移動する。国境付近は森が多い。森の中は大規模行軍に向かないうえに、強力な魔物が出現する。来るとすれば…森と森の間のどこかだ。こちらは森を抜けてすぐの位置にある砦に部隊を展開する。全軍準備せよ!」

 司令官の指示で国軍も準備を始める。

 グランバルド帝国とエスペルト王国の間には、いくつか森が点在する。大規模な行軍の場合、森は使えないため点在する森の間を抜けてくるのがほとんどだ。
 今までは帝国側に軍の動きを知られにくくするためと、今までと同じような武力偵察であることを期待して都市内部までしか、国軍を展開してなかった。
 ここからは、本格的な防衛のため、都市と国境の間付近にある砦に部隊を展開して正式に陣を敷く。今砦にいるのは、観測要員と最低限の兵士だけだが、そこを本陣として篭城する。

「ラティアーナ王女殿下は、こちらで待機を。アドリアス様と領兵がいるので安全かと思われます。」

「ご心配なく。わたくしも参りますわ。旗印は前線にいてこそです。それにお父様がわたくしを派遣した理由が分からないわけではないでしょう?それに、帝国軍から敵国の王女がいるのが分かれば、多少動きが変わるかもしれないわ。」

「…かしこまりました。ですが、もしもの時は」

「いざという時は、わたくしを囮にして撤退なさい。この都市が落とされるということは、王国にとってあってはならないことです。それに王女が相手なら、殺さずに人質にした方が相手にとっては都合がいいはず。すぐに殺されないでしょう。」

 私の言葉に誰も何も言えなくなる。
 そんな中で、アドリアスが一言発した。

「ラティアーナ様のことは俺が必ず護りますからご安心を。それに…一友人としても、支え護ることを今日ここに誓おう。」

「アドリアスもありがとう。悪いけど付き合ってもらうわよ?」

 私の言葉にアドリアスも笑みを浮かべる。それに対して私も笑みで返した。


 準備が完了して皆で、砦へと場所を移した。


 この砦は、国境付近での防衛戦のために建築されたもので、砂利や砂、石灰からなるコンクリートと鉄鋼から作られている。砦内部にも魔力炉が設置されており魔力が続く限りは、外装部の強化と対魔力・対物理防御の結界を展開することが可能だ。また、魔力砲をいくつか備え付けてあり攻撃することも可能となっている。
 なお、魔力砲というのは魔力を射出する大砲みたいなものだ。魔力炉もしくは射手から魔力を供給することで使うことができる。


 砦についてしばらくすると、帝国軍の詳細が分かってきた。

「報告申し上げます!帝国軍の総数はおよそ2万。内1割程度が魔術士と思われます。」

「了解した。引き継ぎ監視を頼む。」

 報告に来た人が礼をして去っていく。

「さて、こちらは3千、あちらは2万だ。一応、籠城している相手を落とすには10倍必要と言われているが…こちらのほうが厳しいだろうな。一応、王都には報告は入れておくが増援は期待できないだろう。」

 王国軍の総数は約2万。ただし魔物からの防衛にも人員をまわしているのと、他の諸外国との関係上の問題で、これ以上こちらに人員を集中させると他の部分が脆くなる。また他の場所で緊急事態が発生したときに対処できなくなってしまうだろう。

「当面は砦での篭城戦を主にして、帝国軍を消耗させることで撤退を促させる。可能であれば相手の支給品を奪いたいところだな。もしも…ここが突破されそうになった場合は、砦を破棄した上で国境壁まで下がって都市での篭城戦だな、こちらは、魔術士3百名を4グループに、騎士は8グループに回復専門の魔術士を3グループに分けて交代制にする。怪我をしたものはすぐに退避して治療に入るように。長期戦になる以上犠牲は出せない。ほかに問題なければそれで行こうと思うが…なにかあるか?」

 司令官の言葉に異論のあるものはいないようで反論はない。


 こうして戦うための体制が決まった。あとは攻めてくる帝国軍を迎え撃つだけである。
 こうして、長い籠城戦が始まるのだった。

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