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第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅
30 呪われた刀
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アークソフィアを出てからは、いくつかの街を経由して野営しながら歩いていた。そして10日程たった頃、私は西方連合の西端にある街に着いた。
この街はそれほど大きくないものの冒険者ギルド支部や様々な商店などもありそれなりの賑わいを見せている。街以上都市未満といった感じだろう。
私はいつものようにギルド支部を訪れる。そして依頼や貼り出されている注意書きや魔物の出現状況を確認して、情報収集を行う。
(依頼の難易度や魔物の強さはそこまで高くないわね。Cランクパーティならなんとかなりそうだわ。それにしても、エスペルト王国の周辺だけやけに強くないかしら?)
しばらく情報を確認したり周囲の冒険者を観察したりしながらお茶を飲んでいる。
すると不意に男の人と受付とで話している声が聞こえてくる…
「頼む!呪われた刀から友人を助けてくれっ!報酬も出すから!急ぎの依頼として、扱ってくれ…」
「ギルドとしても受けたいですけど、その報酬じゃ低すぎます!危険性が不明な以上、下手にギルドとしても依頼を貼り出せません。仮に依頼書を貼っても受ける人がいるかどうか…」
気になったので受付と話をしている男の人の方へ向かって詳しいことを聞いてみた。
なんでも隣の集落には昔から祀られている刀があったらしい。ただその刀は持ち主を呪うことで強大な力を得ると有名で、誰も握ったことがなかったそうだ。
けれど数日前に魔物の群れが集落を襲ってくる事態に陥った。普段よりも魔物が多くて、いつもの防衛線よりも下がることになり集落の中にまで侵入されそうになったらしい。集落の番をしていた彼は、魔物を撃退するためにやむなくその刀を使って、戦いに出たそうだ。
撃退こそしたものの、しばらくして彼の様子がおかしくなっていった。目を話した隙に、刀と共に彼が消えていたらしい。住民達が総出で周りを探すと、近くの洞窟に彼の姿を見つけたようだ。
ただし正気を失っていたようで、誰が近づいても警戒され刀を向けられた。そのまま近づくと本当に斬られかねないため、遠くから様子見をするに留めていたらしい。そこから数日経っていて、今に至るとのことだ。
ギルドで張り出される依頼は2種類ある。周囲の魔物が増えてきた場合に貼り出す討伐系の依頼、そしてもう一つが依頼者がギルドを通して貼り出す依頼だ。前者は魔物の強さや環境によって報酬が決められるのに対して、後者は依頼を出す人が決める。
ただし依頼の信頼性や危険性が担保されるまでは、全体に向けては公開しない。裏技として、依頼を出して知り合いが受領するという物がある。前に私たちが孤児院の子供達を助けるために、間にギルドを挟むためにとった方法だ。
「…その依頼、私が受けますよ?」
依頼を受けることを伝えながら冒険者プレートを出す。
昔は、幼い見た目なこともあって心配されることが多かったが、Bランクになってからは説明する必要がなくなった。
すると、受付の人が慌てて答える。
「本気ですか!?危険度が全く見えないんですよ!?」
「受けてくれるのか!?」
助けを求めていた人は、驚きながらも懇願するような表情をしている。
「偶然居合わせたのもなにかの縁ですし。」
返事をして依頼を受けることにした私は、正式にギルドを通した依頼として受けた。
少し準備をして、男の人とともに集落へ向かう。
街を出てしばらく歩いていくと森が見えてきた。森を抜けると家が見え、集落の中に入る。
「ここから先にある洞窟にいるんだが…本当に大丈夫か?」
「これでもBランクですから。全力を尽くします。」
私がそう答えると、不安そうにしながらも頭を下げてくる。私たちは洞窟の中へと、歩みを進めた。
洞窟の中は、日が当たらないため全体的に薄暗かった。壁に設置されている松明の明かりだけを頼りに、洞窟の奥へと進んでいく。
しばらく道沿いに進み、大分奥の方へと進んだ。入ってきたところから考えてもそれなりに深さのある洞窟らしい。
少しすると大きめの空洞に出た。そこには、刀を持った1人の男が座っていた。
「あの人がそうですか?」
「ああ、俺の友だ。頼む、刀から開放してやってくれ。」
「わかりました。…あなたはここにいてください。一旦、あの人から刀を離させます。」
私は、そう言うとそのまま歩いて行く。
男がどう動くかわからないため、念のため身体強化を施しておくが、抜刀はまだしない。
「あなたが、ここの集落の番の方ですよね。もう安全ですからその刀を一旦置きませんか?」
呼びかけながら更に近づく。すると男が徐に立ち上がり…次の瞬間、男が刀を振り抜いた。
同時に私も抜刀し、男の刀を真正面から捉えるが、刀同士が拮抗する。私が刀をずらして男の体勢を崩し、右から蹴りを放つ。その勢いのまま一旦後ろに距離を取るが
、男はなんともないようだった。
(初撃で刀を弾き飛ばそうと思ったけど…簡単には行かないかな。身体能力も頑丈さも、想定以上だけど魔力を使っている気配はない…あの刀の力かな?)
男の刀を弾き飛ばすために再び刀を振るう。何度も刀を打ち合うが、一向に崩れる気配はない。それどころか、男の動きが徐々に良くなっている。
(この剣術は、男の人のものじゃなくて刀の力によるものね。それにしても、魔力なしでここまで力を引き出しているとなると…代償が、それも生命力かなにかを引き換えにしている可能性もあるわ。時間を掛けていると男の人の身も危ないし、より厄介になっていく…そろそろ決めるしかない!)
男の剣術は強かったが、男の人には合わないものであった。基本的に剣術をはじめとする武術には、基本とする型はある。ただ同じ型でも扱う者によって、若干差が出る。それも当然のはずで、人によって体格や膂力に違いがあるのだから同じ動きが最適とは限らない。
私は身体強化をさらに上げて、刀を振り下ろした。男が受け止めることで拮抗する。その瞬間刀をずらして男の刀を滑らすと、空いてる手で刀を握る手を掴む。
その状態で掴む手から電撃を流して、男の手が緩んだ瞬間に、蹴り飛ばした。
刀が地面に落ちて、男は少し吹き飛んだが大怪我まではしてないだろう。
「とりあえず刀は離したわ。あの人を助けてあげてください。」
「っありがとう!」
私の言葉に反応して、依頼者は男の人の方へ駆け寄って行き、助け起こそうとしていた。
私も納刀して、落ちた刀を回収する。
刀に手を触れた瞬間、私の中に膨大な思念が流れ込んできた。
この街はそれほど大きくないものの冒険者ギルド支部や様々な商店などもありそれなりの賑わいを見せている。街以上都市未満といった感じだろう。
私はいつものようにギルド支部を訪れる。そして依頼や貼り出されている注意書きや魔物の出現状況を確認して、情報収集を行う。
(依頼の難易度や魔物の強さはそこまで高くないわね。Cランクパーティならなんとかなりそうだわ。それにしても、エスペルト王国の周辺だけやけに強くないかしら?)
しばらく情報を確認したり周囲の冒険者を観察したりしながらお茶を飲んでいる。
すると不意に男の人と受付とで話している声が聞こえてくる…
「頼む!呪われた刀から友人を助けてくれっ!報酬も出すから!急ぎの依頼として、扱ってくれ…」
「ギルドとしても受けたいですけど、その報酬じゃ低すぎます!危険性が不明な以上、下手にギルドとしても依頼を貼り出せません。仮に依頼書を貼っても受ける人がいるかどうか…」
気になったので受付と話をしている男の人の方へ向かって詳しいことを聞いてみた。
なんでも隣の集落には昔から祀られている刀があったらしい。ただその刀は持ち主を呪うことで強大な力を得ると有名で、誰も握ったことがなかったそうだ。
けれど数日前に魔物の群れが集落を襲ってくる事態に陥った。普段よりも魔物が多くて、いつもの防衛線よりも下がることになり集落の中にまで侵入されそうになったらしい。集落の番をしていた彼は、魔物を撃退するためにやむなくその刀を使って、戦いに出たそうだ。
撃退こそしたものの、しばらくして彼の様子がおかしくなっていった。目を話した隙に、刀と共に彼が消えていたらしい。住民達が総出で周りを探すと、近くの洞窟に彼の姿を見つけたようだ。
ただし正気を失っていたようで、誰が近づいても警戒され刀を向けられた。そのまま近づくと本当に斬られかねないため、遠くから様子見をするに留めていたらしい。そこから数日経っていて、今に至るとのことだ。
ギルドで張り出される依頼は2種類ある。周囲の魔物が増えてきた場合に貼り出す討伐系の依頼、そしてもう一つが依頼者がギルドを通して貼り出す依頼だ。前者は魔物の強さや環境によって報酬が決められるのに対して、後者は依頼を出す人が決める。
ただし依頼の信頼性や危険性が担保されるまでは、全体に向けては公開しない。裏技として、依頼を出して知り合いが受領するという物がある。前に私たちが孤児院の子供達を助けるために、間にギルドを挟むためにとった方法だ。
「…その依頼、私が受けますよ?」
依頼を受けることを伝えながら冒険者プレートを出す。
昔は、幼い見た目なこともあって心配されることが多かったが、Bランクになってからは説明する必要がなくなった。
すると、受付の人が慌てて答える。
「本気ですか!?危険度が全く見えないんですよ!?」
「受けてくれるのか!?」
助けを求めていた人は、驚きながらも懇願するような表情をしている。
「偶然居合わせたのもなにかの縁ですし。」
返事をして依頼を受けることにした私は、正式にギルドを通した依頼として受けた。
少し準備をして、男の人とともに集落へ向かう。
街を出てしばらく歩いていくと森が見えてきた。森を抜けると家が見え、集落の中に入る。
「ここから先にある洞窟にいるんだが…本当に大丈夫か?」
「これでもBランクですから。全力を尽くします。」
私がそう答えると、不安そうにしながらも頭を下げてくる。私たちは洞窟の中へと、歩みを進めた。
洞窟の中は、日が当たらないため全体的に薄暗かった。壁に設置されている松明の明かりだけを頼りに、洞窟の奥へと進んでいく。
しばらく道沿いに進み、大分奥の方へと進んだ。入ってきたところから考えてもそれなりに深さのある洞窟らしい。
少しすると大きめの空洞に出た。そこには、刀を持った1人の男が座っていた。
「あの人がそうですか?」
「ああ、俺の友だ。頼む、刀から開放してやってくれ。」
「わかりました。…あなたはここにいてください。一旦、あの人から刀を離させます。」
私は、そう言うとそのまま歩いて行く。
男がどう動くかわからないため、念のため身体強化を施しておくが、抜刀はまだしない。
「あなたが、ここの集落の番の方ですよね。もう安全ですからその刀を一旦置きませんか?」
呼びかけながら更に近づく。すると男が徐に立ち上がり…次の瞬間、男が刀を振り抜いた。
同時に私も抜刀し、男の刀を真正面から捉えるが、刀同士が拮抗する。私が刀をずらして男の体勢を崩し、右から蹴りを放つ。その勢いのまま一旦後ろに距離を取るが
、男はなんともないようだった。
(初撃で刀を弾き飛ばそうと思ったけど…簡単には行かないかな。身体能力も頑丈さも、想定以上だけど魔力を使っている気配はない…あの刀の力かな?)
男の刀を弾き飛ばすために再び刀を振るう。何度も刀を打ち合うが、一向に崩れる気配はない。それどころか、男の動きが徐々に良くなっている。
(この剣術は、男の人のものじゃなくて刀の力によるものね。それにしても、魔力なしでここまで力を引き出しているとなると…代償が、それも生命力かなにかを引き換えにしている可能性もあるわ。時間を掛けていると男の人の身も危ないし、より厄介になっていく…そろそろ決めるしかない!)
男の剣術は強かったが、男の人には合わないものであった。基本的に剣術をはじめとする武術には、基本とする型はある。ただ同じ型でも扱う者によって、若干差が出る。それも当然のはずで、人によって体格や膂力に違いがあるのだから同じ動きが最適とは限らない。
私は身体強化をさらに上げて、刀を振り下ろした。男が受け止めることで拮抗する。その瞬間刀をずらして男の刀を滑らすと、空いてる手で刀を握る手を掴む。
その状態で掴む手から電撃を流して、男の手が緩んだ瞬間に、蹴り飛ばした。
刀が地面に落ちて、男は少し吹き飛んだが大怪我まではしてないだろう。
「とりあえず刀は離したわ。あの人を助けてあげてください。」
「っありがとう!」
私の言葉に反応して、依頼者は男の人の方へ駆け寄って行き、助け起こそうとしていた。
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