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第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅
26 砂丘での戦いと飛龍
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国を出てしばらく経ち、私たちは砂丘を進んでいる。
現在はマティさん達が哨戒、私たちが護衛のローテーションになっている。
この辺りは土竜が住処にしているらしく、地中からの襲撃に警戒する必要がある。
土竜というのは、大きいモグラの魔物で主に硬い皮膚と強い膂力によって襲ってくる。単体でかなり強い分群れはなさないらしい。
マティさんたちの合図によって比較的遭遇は少ないが、戦闘はそこそこ起きる。
今も前方から1体の土竜が襲ってきた。
基本的には商隊に届く前に対処しなければならないため、最初から全力で倒しにかかる。
クレアさんをはじめとする何人かで土竜を攻撃して勢いを緩めると、残りのメンバーと私で一斉に倒しにかかる。
身体強化と魔装によって強化された刀で土竜を斬って、倒したことを確認すると私は一息はいて護衛の位置に戻る。その時、クレアさんと一言交わした。
「正直あなたの実力を疑問に思っていたけど、この分なら大丈夫そうね。油断はできないけどがんばりましょう。」
「はい。こちらこそ。」
(確かに…今までの魔物たちとは別格ね。中途半端な攻撃は通らないわ。それにしても周囲の魔力濃度が桁違いね。魔物の気配が読みとれないわ。)
通常だと、魔物が持つ魔力を少しは慣れていても感じることができる。ただこの辺りのように空気中に漂う魔力が濃いと感じにくくなる。
(慣れていけば多少はましになるかしら?もっとも…魔力濃度が高いおかげで収束効率が高いから魔力消費を抑えることができるけど、)
私の戦い方の関係上、周囲の魔力を身体に取り込むことが多い、普段よりも周囲の魔力が濃ければ、その分自身の魔力を使わなくてすむ。周囲の魔力を強制的に取り込むのは、身体の中に異物を入れるのと同じなため初めのころは多用できなかったが、慣れてきた今は苦痛には感じない。
その後も、何度か土竜を撃退していった。
すると哨戒に出ていたマティさんが戻ってきて、警戒を促す。
「前方の上空に飛龍の影が見えた。極力、交戦しないようにしたいが念のため上空への警戒を強めておいてくれ!このペースであれば、あと数刻で森に入れるはずだ。」
「「「了解」しました。」」」
森の中は視界が悪くなる代わりに空から襲われる危険が少なくなる。飛龍は龍種に属している。龍種は魔物の中で、もっとも強い分類に入るため戦わないことが基本だ。
一応、龍種の中では飛龍が一番弱く、Aランク冒険者が複数人でかかれば倒すことはできる。しかし、倒せるだけで犠牲が出る可能性が高い。
森が見えてきたころ、慌ててマティさん達が戻ってきた。
「飛龍がこっちに近づいてくる!クレアとティアたちもいつでも戦えるように準備しておいてくれ。ウォルフたちも準備を頼む!皆さんも俺たちの指示に従って落ち着いて行動してくれ。下手に動けば狙われやすくなる!」
商隊はすばやい動きができないため、襲われた場合は迎撃するか、ひきつけるしかない。
私たちは3グループで警戒態勢を強めた。
少しして、飛龍もこちらに気づいたらしく顔をこちらに向けて口を開いた…
「っ!?各自、障壁を前方に展開!直撃だけは避けろ!」
私たちは、それぞれ防御魔術や防御用の魔術具を使用する。同時に放たれた咆哮が守りと激突して、凄まじい衝撃が発生した。
「無事か!?」
「直撃は防いだわ!でも完全にこっちを狙っているけどどうするの!?」
クレアさんの返事にマティさんが答える。
「まずは引き付けるしかないが…あの位置だと届かないな。魔術具をえさにするか…」
「私がやるわ。」
「「「ティア!?」」」
私は一言告げて、全力で跳躍する。空気中に障壁を発生させて、足場として利用しさらに跳躍を重ねる。何度かの跳躍で飛龍の目の前に到達した。
(まずは商隊から意識を外させて、地面に落とす!)
飛龍が振りかざした爪を避けて、私は刀による全力の一閃を頭に繰り出した。
(周囲の魔力込みの普段の最大以上の身体強化とおまけに聖属性での魔装による一撃!少しでも効いてくれればいいけど…最低でも引き付けることができればっ)
脳天に直撃し、飛龍はバランスを崩すが、そのまま尻尾の叩きつけが私を襲う。
私は、頭上に障壁を作って下に向かって跳躍する。地面へ跳躍する間に小さい魔力弾を放ち、商隊から少し離れたところに減速魔術を併用して着地する。
近寄ってきていたマティさんのグループが援護に来た。
「ティア、ナイスだ!これなら!」
飛龍は私に向かって滑空しながら突撃してくる。私は、跳躍してその場から退避し飛龍は地面に激突した。
その隙にマティさんとウォルフさんののグループが一斉攻撃を行う。
皆の剣や槍が龍の身体を捉え、龍の外郭を傷つけていく。
流石に効果があったのか、飛龍は上空に逃げて去っていった。
「とりあえず撃退には成功だな、皆も助かった!ありがとう。」
商隊のところに戻り、クレアさん達とも合流した。
「ただいま戻りました。」
「おかえりなさい。ティアも大丈夫?」
「問題ないです。」
「そう…後で詳しく聞かせてよね。」
それだけ話して所定の場所に戻る。
以降は、魔物と少し遭遇するくらいで無事に森まで辿り着いた。
森に着いた時点で、暗くなる前に野営の準備をすることになる。
グループごとにテントの設営やご飯を作って野営の準備は完了だ。
また、周囲に魔物避けの魔術具を置くことで、魔物に襲われる危険は少なくしている。それによって寝ずの番を1グループだけにしても問題がなかった。
今日の番は、ウォルフさんのグループのためわたしたちはテントの中で休憩となる。
「昼間の飛龍と戦いは助かったわ。あの動きは一体どうなってるの?」
周りを見ると他のメンバーも興味津々らしい。私も隠すことではないので、正直に答える。
「あれは、障壁魔術を足場にしているだけですよ?飛行魔術は魔力の消費が激しいから戦闘に向かないので。」
「理解はできるけど、少しでも位置がずれれば大変なことになるから実際にやるのは難しいわね…それから敬語じゃなくていいし呼び捨てでいいわ。お互いに命を預けるんだから。」
「ええ。わかったわ。」
「さて、練れるうちに寝ておきましょうか。じゃあおやすみなさい。」
「「「「「おやすみなさい。」」」」」
こうして初の国外での戦闘と護衛1日目が終了した。
現在はマティさん達が哨戒、私たちが護衛のローテーションになっている。
この辺りは土竜が住処にしているらしく、地中からの襲撃に警戒する必要がある。
土竜というのは、大きいモグラの魔物で主に硬い皮膚と強い膂力によって襲ってくる。単体でかなり強い分群れはなさないらしい。
マティさんたちの合図によって比較的遭遇は少ないが、戦闘はそこそこ起きる。
今も前方から1体の土竜が襲ってきた。
基本的には商隊に届く前に対処しなければならないため、最初から全力で倒しにかかる。
クレアさんをはじめとする何人かで土竜を攻撃して勢いを緩めると、残りのメンバーと私で一斉に倒しにかかる。
身体強化と魔装によって強化された刀で土竜を斬って、倒したことを確認すると私は一息はいて護衛の位置に戻る。その時、クレアさんと一言交わした。
「正直あなたの実力を疑問に思っていたけど、この分なら大丈夫そうね。油断はできないけどがんばりましょう。」
「はい。こちらこそ。」
(確かに…今までの魔物たちとは別格ね。中途半端な攻撃は通らないわ。それにしても周囲の魔力濃度が桁違いね。魔物の気配が読みとれないわ。)
通常だと、魔物が持つ魔力を少しは慣れていても感じることができる。ただこの辺りのように空気中に漂う魔力が濃いと感じにくくなる。
(慣れていけば多少はましになるかしら?もっとも…魔力濃度が高いおかげで収束効率が高いから魔力消費を抑えることができるけど、)
私の戦い方の関係上、周囲の魔力を身体に取り込むことが多い、普段よりも周囲の魔力が濃ければ、その分自身の魔力を使わなくてすむ。周囲の魔力を強制的に取り込むのは、身体の中に異物を入れるのと同じなため初めのころは多用できなかったが、慣れてきた今は苦痛には感じない。
その後も、何度か土竜を撃退していった。
すると哨戒に出ていたマティさんが戻ってきて、警戒を促す。
「前方の上空に飛龍の影が見えた。極力、交戦しないようにしたいが念のため上空への警戒を強めておいてくれ!このペースであれば、あと数刻で森に入れるはずだ。」
「「「了解」しました。」」」
森の中は視界が悪くなる代わりに空から襲われる危険が少なくなる。飛龍は龍種に属している。龍種は魔物の中で、もっとも強い分類に入るため戦わないことが基本だ。
一応、龍種の中では飛龍が一番弱く、Aランク冒険者が複数人でかかれば倒すことはできる。しかし、倒せるだけで犠牲が出る可能性が高い。
森が見えてきたころ、慌ててマティさん達が戻ってきた。
「飛龍がこっちに近づいてくる!クレアとティアたちもいつでも戦えるように準備しておいてくれ。ウォルフたちも準備を頼む!皆さんも俺たちの指示に従って落ち着いて行動してくれ。下手に動けば狙われやすくなる!」
商隊はすばやい動きができないため、襲われた場合は迎撃するか、ひきつけるしかない。
私たちは3グループで警戒態勢を強めた。
少しして、飛龍もこちらに気づいたらしく顔をこちらに向けて口を開いた…
「っ!?各自、障壁を前方に展開!直撃だけは避けろ!」
私たちは、それぞれ防御魔術や防御用の魔術具を使用する。同時に放たれた咆哮が守りと激突して、凄まじい衝撃が発生した。
「無事か!?」
「直撃は防いだわ!でも完全にこっちを狙っているけどどうするの!?」
クレアさんの返事にマティさんが答える。
「まずは引き付けるしかないが…あの位置だと届かないな。魔術具をえさにするか…」
「私がやるわ。」
「「「ティア!?」」」
私は一言告げて、全力で跳躍する。空気中に障壁を発生させて、足場として利用しさらに跳躍を重ねる。何度かの跳躍で飛龍の目の前に到達した。
(まずは商隊から意識を外させて、地面に落とす!)
飛龍が振りかざした爪を避けて、私は刀による全力の一閃を頭に繰り出した。
(周囲の魔力込みの普段の最大以上の身体強化とおまけに聖属性での魔装による一撃!少しでも効いてくれればいいけど…最低でも引き付けることができればっ)
脳天に直撃し、飛龍はバランスを崩すが、そのまま尻尾の叩きつけが私を襲う。
私は、頭上に障壁を作って下に向かって跳躍する。地面へ跳躍する間に小さい魔力弾を放ち、商隊から少し離れたところに減速魔術を併用して着地する。
近寄ってきていたマティさんのグループが援護に来た。
「ティア、ナイスだ!これなら!」
飛龍は私に向かって滑空しながら突撃してくる。私は、跳躍してその場から退避し飛龍は地面に激突した。
その隙にマティさんとウォルフさんののグループが一斉攻撃を行う。
皆の剣や槍が龍の身体を捉え、龍の外郭を傷つけていく。
流石に効果があったのか、飛龍は上空に逃げて去っていった。
「とりあえず撃退には成功だな、皆も助かった!ありがとう。」
商隊のところに戻り、クレアさん達とも合流した。
「ただいま戻りました。」
「おかえりなさい。ティアも大丈夫?」
「問題ないです。」
「そう…後で詳しく聞かせてよね。」
それだけ話して所定の場所に戻る。
以降は、魔物と少し遭遇するくらいで無事に森まで辿り着いた。
森に着いた時点で、暗くなる前に野営の準備をすることになる。
グループごとにテントの設営やご飯を作って野営の準備は完了だ。
また、周囲に魔物避けの魔術具を置くことで、魔物に襲われる危険は少なくしている。それによって寝ずの番を1グループだけにしても問題がなかった。
今日の番は、ウォルフさんのグループのためわたしたちはテントの中で休憩となる。
「昼間の飛龍と戦いは助かったわ。あの動きは一体どうなってるの?」
周りを見ると他のメンバーも興味津々らしい。私も隠すことではないので、正直に答える。
「あれは、障壁魔術を足場にしているだけですよ?飛行魔術は魔力の消費が激しいから戦闘に向かないので。」
「理解はできるけど、少しでも位置がずれれば大変なことになるから実際にやるのは難しいわね…それから敬語じゃなくていいし呼び捨てでいいわ。お互いに命を預けるんだから。」
「ええ。わかったわ。」
「さて、練れるうちに寝ておきましょうか。じゃあおやすみなさい。」
「「「「「おやすみなさい。」」」」」
こうして初の国外での戦闘と護衛1日目が終了した。
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