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第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅
23 それぞれの反応と思惑
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お父様の発表は、周囲に大きな影響を与えた。
通常は、お披露目前の王侯貴族の令息令嬢に対して何かをするということはないからだ。ましてやいくら魔力に秀でているといっても、計測前に聖人の候補と見做すのは過去に例がない。リーファスを引き取るのも、側妃が亡くなった時に正妃が引き取るというのはある。ただし、しばらく経ってからというのは珍しいし片方だけというのはなかった。
(突然の発表に驚いたけど…レティシア様やお兄様たちは知っているということは、発案はレティシア様かしら?目的が読めないけど、リーファスの安全だけを考えるなら…ありかもしれないわ。
周囲の貴族たちも顔に出してないものの、大半は驚いてそうね。レティシア様を支持している家は、知っている可能性もあるかな。)
今回のことで、お父様とレティシア様が私を良く思ってないことがはっきりしたため、風当たりはさらに強くなるだろう。
けれど、私のやる事は変わらない。たとえ離れて住む事になっても会えないわけではない。それに大事な家族であることには変わらないのだから…
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一方で、グラディウス公爵家の別邸。
ドミニク・グラディウスは今後のことを案じていた。
「アドリアス。ラティアーナ王女殿下は、どんな感じだった?」
陛下の発表の後、ラティアーナ様と息子のアドリアスは言葉を交わしていた。心情などがわかればと思ったが…
「驚いてはいましたよ。ただ…他には特になにも言わなかったですね。」
「クラディウス公爵家は、王の剣。他を追随しない武力を持つからこそ国に対して忠を誓っている…だからこそ、公爵家として王女殿下をお守りすることは難しいが、アドリアス。なにかあったときは、お前が助けてあげなさい。」
「ええ。私にとっても大切な友人ですから。いざというときは、力を貸します。もっともこの程度でどうにかできるほど、弱くはないですけどね。」
私はアドリアスの言葉に笑みを浮かべるが、これからのことを思うと内心で溜め息を吐く。
(口に出すことはできないが…陛下も王妃様も、ラティアーナ王女殿下を見誤っている。無能だとか落ちこぼれだと言われ、王族であることしか価値のない王女。それがお二人や大半の貴族の評価だ。しかし…少なくとも王族としての社交や情報収集能力は凄まじい。滅多に社交していないに関わらずいくつかの貴族当主と縁を得ているようだし、うまく立ち回られておられる。
とはいえ、国としてはあまり良くない。今はまだ大丈夫だが…これ以上内側が崩れると他国から狙われることもあり得る。)
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同刻、マギルス公爵家の別邸。
「イリーナ。わたくしは、ラティアーナ王女殿下を支持します。今のところなにかするわけではありませんが、覚えておきなさい。」
「かしこまりました。しかし、公爵家としてよろしいのですか?」
「問題ないわ。我が家は中立の立場ですけれど、派閥争いが前よりも激しくなっているこの状況で、派閥間のバランスが崩れるのはあまり良くありませんからね。ですが、ラティアーナ王女殿下に危険が迫る可能性がある以上、やむ終えません。そもそも、彼女はわたくしの姪ですからね。ティアラお姉さまに申し訳がたたないわ。
…それから、マギルス公爵領の南に面しているドラコロニア共和国とその西隣のエインクレイス連邦には注意しなさい。こちらが崩れれば、攻めてくる可能性があるわ。」
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その日の夜、レティシアは内心でほくそ笑んでいた。
(息子を次期国王にしてわたくしも力を得るためには、ラティアーナもリーファスも邪魔でしたの。ラティアーナは王族として変わり者で、お忍びで出かけることが多いそうで…変装しているとはいえ王城の入り口を使う以上、動きを把握するのは簡単でした。1度刺客を出したときは生き延びてしまいましたが、それからはあまり離宮を出なくなりましたの。けれど、測定によって魔力が少ないことが周知されて、自滅に近い状態だから問題ないですわ…
対してリーファスは、幼いながらも魔力が強いらしく、コーネリアからの報告でもかなり高い適性があるとのことを受けました。離宮から出ることがないため手が出せませんでしたが…だからこそこちら側に取り込むことにしたのです。早いうちからわたくしが母として、将来は臣下になるよう育てることで、最大の障害を最高の手札とすれば、よりよい結果を出せるでしょう。)
わたくしは作戦がうまくいったことを喜び、夕食に向かう。
席に着くと、3人の子供たちが待っていた。
「待たせたわね。ローゼリンテ、今日はおめでとう。王族としてしっかりと勤めを果たせていたわ。それから、次の月にはリーファスを引き取る予定だから、そのつもりでね。」
それぞれの思いを抱えて、その日は終わった。
そしてひと月がたちリーファスガやってくる。
「わたくしが、母になるレティシアよ?よろしくね、リーファス。」
「こちらこそよろしくおねがいします。ははうえ。」
「早速部屋に案内するわ。こちらにいっらしゃい。なにかあれば遠慮なくいうのよ?」
「…らてぃあーなあねうえと、どうしてべつべつにすむことに、なったんですか?」
「あなたはね、ラティアーナに捨てられたのよ?大丈夫、わたくしが守ってあげるわ。」
通常は、お披露目前の王侯貴族の令息令嬢に対して何かをするということはないからだ。ましてやいくら魔力に秀でているといっても、計測前に聖人の候補と見做すのは過去に例がない。リーファスを引き取るのも、側妃が亡くなった時に正妃が引き取るというのはある。ただし、しばらく経ってからというのは珍しいし片方だけというのはなかった。
(突然の発表に驚いたけど…レティシア様やお兄様たちは知っているということは、発案はレティシア様かしら?目的が読めないけど、リーファスの安全だけを考えるなら…ありかもしれないわ。
周囲の貴族たちも顔に出してないものの、大半は驚いてそうね。レティシア様を支持している家は、知っている可能性もあるかな。)
今回のことで、お父様とレティシア様が私を良く思ってないことがはっきりしたため、風当たりはさらに強くなるだろう。
けれど、私のやる事は変わらない。たとえ離れて住む事になっても会えないわけではない。それに大事な家族であることには変わらないのだから…
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一方で、グラディウス公爵家の別邸。
ドミニク・グラディウスは今後のことを案じていた。
「アドリアス。ラティアーナ王女殿下は、どんな感じだった?」
陛下の発表の後、ラティアーナ様と息子のアドリアスは言葉を交わしていた。心情などがわかればと思ったが…
「驚いてはいましたよ。ただ…他には特になにも言わなかったですね。」
「クラディウス公爵家は、王の剣。他を追随しない武力を持つからこそ国に対して忠を誓っている…だからこそ、公爵家として王女殿下をお守りすることは難しいが、アドリアス。なにかあったときは、お前が助けてあげなさい。」
「ええ。私にとっても大切な友人ですから。いざというときは、力を貸します。もっともこの程度でどうにかできるほど、弱くはないですけどね。」
私はアドリアスの言葉に笑みを浮かべるが、これからのことを思うと内心で溜め息を吐く。
(口に出すことはできないが…陛下も王妃様も、ラティアーナ王女殿下を見誤っている。無能だとか落ちこぼれだと言われ、王族であることしか価値のない王女。それがお二人や大半の貴族の評価だ。しかし…少なくとも王族としての社交や情報収集能力は凄まじい。滅多に社交していないに関わらずいくつかの貴族当主と縁を得ているようだし、うまく立ち回られておられる。
とはいえ、国としてはあまり良くない。今はまだ大丈夫だが…これ以上内側が崩れると他国から狙われることもあり得る。)
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同刻、マギルス公爵家の別邸。
「イリーナ。わたくしは、ラティアーナ王女殿下を支持します。今のところなにかするわけではありませんが、覚えておきなさい。」
「かしこまりました。しかし、公爵家としてよろしいのですか?」
「問題ないわ。我が家は中立の立場ですけれど、派閥争いが前よりも激しくなっているこの状況で、派閥間のバランスが崩れるのはあまり良くありませんからね。ですが、ラティアーナ王女殿下に危険が迫る可能性がある以上、やむ終えません。そもそも、彼女はわたくしの姪ですからね。ティアラお姉さまに申し訳がたたないわ。
…それから、マギルス公爵領の南に面しているドラコロニア共和国とその西隣のエインクレイス連邦には注意しなさい。こちらが崩れれば、攻めてくる可能性があるわ。」
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その日の夜、レティシアは内心でほくそ笑んでいた。
(息子を次期国王にしてわたくしも力を得るためには、ラティアーナもリーファスも邪魔でしたの。ラティアーナは王族として変わり者で、お忍びで出かけることが多いそうで…変装しているとはいえ王城の入り口を使う以上、動きを把握するのは簡単でした。1度刺客を出したときは生き延びてしまいましたが、それからはあまり離宮を出なくなりましたの。けれど、測定によって魔力が少ないことが周知されて、自滅に近い状態だから問題ないですわ…
対してリーファスは、幼いながらも魔力が強いらしく、コーネリアからの報告でもかなり高い適性があるとのことを受けました。離宮から出ることがないため手が出せませんでしたが…だからこそこちら側に取り込むことにしたのです。早いうちからわたくしが母として、将来は臣下になるよう育てることで、最大の障害を最高の手札とすれば、よりよい結果を出せるでしょう。)
わたくしは作戦がうまくいったことを喜び、夕食に向かう。
席に着くと、3人の子供たちが待っていた。
「待たせたわね。ローゼリンテ、今日はおめでとう。王族としてしっかりと勤めを果たせていたわ。それから、次の月にはリーファスを引き取る予定だから、そのつもりでね。」
それぞれの思いを抱えて、その日は終わった。
そしてひと月がたちリーファスガやってくる。
「わたくしが、母になるレティシアよ?よろしくね、リーファス。」
「こちらこそよろしくおねがいします。ははうえ。」
「早速部屋に案内するわ。こちらにいっらしゃい。なにかあれば遠慮なくいうのよ?」
「…らてぃあーなあねうえと、どうしてべつべつにすむことに、なったんですか?」
「あなたはね、ラティアーナに捨てられたのよ?大丈夫、わたくしが守ってあげるわ。」
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