王女の夢見た世界への旅路

ライ

文字の大きさ
上 下
24 / 475
第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅

13 それぞれの想い

しおりを挟む
 次の日、私は孤児院に向かっていた。

 出発する前、今朝戻ってきたイリスとリーナに、所用で数日離宮に戻らないことは伝えてある。魔術の授業と同じく、一般的な学問や所作についても習い終わっているため、私の王族としての仕事は次のお披露目までない。心配はかけているが数日離れていても問題はない。

 教会に着くと、入り口にある衛兵にアリア達の誰かを呼んでもらう。面会約束もない部外者では、礼拝堂までしか入らないためだ。
 しばらく待つとノアがやってきた。

「今日はどうしたんだ?」

「昨日のことが気になっちゃって...一体何がおこってるの?」

 とりあえず孤児院に案内してもらい、昨日のことを訪ねる。最初は言葉を濁していたけど、近くで馬車を見たことを伝えると渋々教えてくれた。

「俺も詳しく知ってるわけじゃないけど、あの子達を引き取りたいっていう貴族がいるみたいなんだ。だけど...アリアが孤児院長たちになにかを掛け合ってるんだけど教えてくれないし、この話をしてくるおじさんも胡散臭いし。俺はまだ成人してないから孤児院に所属していることになってる。俺やドムは稼ぎがあるから孤児院を出ても生活できるけど...あいつらにはきつい。」

 来客用の部屋でノアと話しながら、アリアとドムを待つ。

(教会は独立しているから組織の中の問題に介入は難しい。貴族も絡んでるとなると...伯爵令息ならやりようはあるけど、当主相手の場合、中途半端な方法だとかえって悪い結果になりかねないわね。最終手段に考えていたけど、私も孤児院に住んで囮になろうかしら?)

 伯爵本人が関わっている場合、下手をすれば特権を使われる可能性がある。今回のことの全貌が見えてない状態では、間違った行動1つでも命取りだろう。王女の特権も貴族相手に使う場合は影響が大きい。その場はなんとかできても、状況が悪化する可能性が高い。

 考え事をしていると2人がやってきた。

「ティアちゃんどうしたの!?」

「昨日のことが気になってさ...アリアは何を知ってるの?一体...なにを焦ってるの?」

 私の言葉にアリアは目を逸らす。

「ノアから少し聞いたけど...貴族に引き取りたいって人がいるのよね?本人の意思がなければ普通は引き取ることができないから、何か事情があるのよね?私も力になりたいから!だから、教えて!お願い!」

「どうして...どうしてティアちゃんは、そこまでしようとするの?友達だけど...だからこそ危ない目には、あわせたくない!相手は貴族なのよ!?もしかしたら逮捕されるかもしれないっ、命の危険だってあるかもしれない!?私はもう大人だし皆のお姉さんだからっ!私がなんとかしないと!?」

「前にも言ったでしょ。後悔しないために私は戦うって。私も友達は大切...困ってるなら助けたいし支えたい。それに昨日、あの子達と触れ合ったわ。全く知らない他人ではないし...友達の大切にしている子は友達みたいなものよ?それにアリアの気持ちもわかるわ。私も歳の離れた弟がいるから...姉として弟を守りたいって思ってる。アリアが姉としてなら、私は姉の友達として協力する。」

「僕もアリアさんに今まで助けてきてもらってたから...今度は力になりたい。まだ頼りないかもしれないけど、同じ孤児院で一緒に育ってきた家族みたいなものなんだから。」

「そうだな。俺もノアも、家族で仲間だ。それの危険って言うなら冒険者としての仕事だって同じだろ?今まで一緒にやってきたことと同じだ。」

 私たちの言葉を聞いて、アリアが泣きながら全てを話してくれた。

 きっかけは約10日前。
 アリアが偶然、孤児院長が貴族の使いと話してたを聞いたことにはじまる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

田村涼は異世界で物乞いを始めた。

イペンシ・ノキマ
ファンタジー
異世界に転生した田村涼に割り振られた職業は「物乞い」。それは一切の魔術が使えず、戦闘能力は極めて低い、ゴミ職業であった。おまけにこの世界は超階級社会で、「物乞い」のランクは最低の第四階級。街の人々は彼を蔑み、馬鹿にし、人間扱いさえしようとしない。そのうえ、最近やってきた教会長はこの街から第四階級の人々を駆逐しようとさえしている。そんななか、田村涼は「物乞い」には”隠されたスキル”があることに気がつく。そのことに気づいたところから、田村涼の快進撃が始まる――。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

このやってられない世界で

みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。 悪役令嬢・キーラになったらしいけど、 そのフラグは初っ端に折れてしまった。 主人公のヒロインをそっちのけの、 よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、 王子様に捕まってしまったキーラは 楽しく生き残ることができるのか。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...