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第2章 王女兼冒険者の世界を巡る旅
12 建国祭最終日
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今日は社交もお茶会もないため、ティアとして街にいる。
建国祭の期間中は離宮を離れていることが多いため、侍女や執事、使用人たちには交代で休暇を出していた。
リーファスも明日まで王宮のお父様のところに行っているので、私も外出することにした。
まだ休暇を取っていなかったイリスとリーナも久しぶりの休暇で、親子見ず知らずの時間を楽しく過ごしていると嬉しい
。
ここ1週間ずっと王女として生活したため、のんびりと出店を見て回る。
すると前からアリア、ノア、ドムが歩いてくるのが見えた。
「あれ?ティアちゃん!1人なの?」
「うん。今日は特に予定もないから。」
「じゃあ僕たちと回らない?」
「俺たちも今来たところなんだ。」
ここからは、皆で回っていく。3人とはあれから、定期的に食事をしたりパーティを組んだりしている。
出店で串焼きを買って食べながらお祭りを楽しむ。いろいろなところで、曲芸や演奏している人がいるので順番に巡っていく。回り終えると気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば教会は最近どう?なかなか予定が合わなくて行けなかったから、もうそろそろ行ってみようっかなって?」
「あぁ...最近ちょっといろいろあってな。もし来るなら今日のほうがいいかもしれない。」
ノアが答えてくれたが、3人の表情が一瞬歪んだ。
少し気になるが首を突っ込んでも悪いし、今日なら問題ないということだったので、子供たちにお土産を買い教会に向かうことにした。
孤児院につくと子供たちが出てきた。15人ほどだが、皆元気な子たちだ。
「おかえり!ねぇこの子は?」
「ただいま。私の友達のティアちゃんよ。」
「はじめまして。私はティアよ。よろしくね!」
お互い自己紹介して孤児院の中に入る。
お土産を皆で食べて、外で子供たちと駆けっこをして遊ぶ。
日が暮れてきたので子供たちと別れて4人で教会の中を歩いていた。
「今日は楽しかった!同い年のことあんなにはしゃいだの初めてかもしれない。ありがとうね。」
「そりゃ良かった。」
他愛もない話をしていると前からおじさんがやってくる。
「おや、見ないお嬢さんですな。新しく孤児院に入った子かな?」
「この子は私の友達よ!孤児院とは関係ないわ。それに今日は来ないってきいていたけど?」
アリアが慌てて返す。
(アリアは、どうして焦っているの!?おじさんに会わせたくなかったのかしら?)
「予定が変わってね。孤児院長はいるかな?」
「...あと少ししたら帰ってくるわ。この子を送ってくるから少し待ってて。ノア、ドムごめん。先に戻ってて。」
アリアは私を連れて教会の外に向かう。
「「ねぇアリ」なんでもないから!大丈夫だから気にしないで」
ノアとドムも嫌な顔をしていたけど、アリアはとても焦ってる。
ただ、聞かれたくなさそうで...私は聞くことができなかった。
教会を出ると別れを告げて、アリアは急いで戻っていった。
(なにもなければいいけど...もしかしたらお節介って思われるかもしれないけど。友達が困っているなら助けたい。)
私はさっきのおじさんと孤児院長について、調べてみることにする。おじさんの正体を掴むために、孤児院から出てくるところを尾行することにした。監視するために近くの宿の孤児院を見渡せる部屋を借りて、窓から様子を見る。
すると孤児院長らしき人が戻ってきた。観察しているとちょうど窓際の部屋で、おじさんと面会しているようだ。
(所々隠れるけど口元が見えるのは僥倖だわ。趣味のつもりだったけど、読唇術を会得しておいてよかったわ。)
私は、目の前に望遠用の魔術を展開する。この魔術は光に干渉するものでレンズと同じ原理だ。
しばらく見ていると少しずつだが状況が見えてきた。
(孤児たちの引き取りについて...か。けれど普通の引き取りなら養子縁組だから合意がなければ成立しない。もし何かあったとしても警備隊に伝えれば済む話だし、あの3人が嫌がる理由が見えないわね。)
この国の法律は大きく3つある。基本となる王国法、貴族にのみ適用する貴族法、平民のみ対象の民法だ。どの法律に違反した場合でも、警備隊に伝えれば対応してくれる。
結局、それ以上のことはわからなかった。もう少し待つとおじさんが教会から出てきた。
私も宿から出て尾行を開始する。
少し離れたところに馬車が止まっていて、乗り込むのが見えた。
(あの馬車は...アーテル伯爵の紋章!?紋章入りの馬車を使えるのならおじさんは、伯爵家の指示で動いていることになるわね。貴族相手ってなると警備隊も動くかどうか...)
アーテル伯爵家は、王都の隣に領地をもつ貴族だ。今日は城で夜会があるので、貴族当主は今頃城にいる。当主以外だと成人前の息子が1人いたはずで別邸にいるかもしれない。
このまま馬車を追っていると貴族街に入っていく。貴族街は、王侯貴族もしくは通行許可証がなければ入ることができない。
(流石にティアとして侵入するのは危険かもしれない...王女としてなら入れるけど、この時間に1人徒歩というのも目立つわね。仕方ないから今日は諦めて、明日孤児院を訪れましょうか。)
尾行はここまでにして引き返した。
私は明日アリアたちに詳しい事情を聞くことにしたのだ。
建国祭の期間中は離宮を離れていることが多いため、侍女や執事、使用人たちには交代で休暇を出していた。
リーファスも明日まで王宮のお父様のところに行っているので、私も外出することにした。
まだ休暇を取っていなかったイリスとリーナも久しぶりの休暇で、親子見ず知らずの時間を楽しく過ごしていると嬉しい
。
ここ1週間ずっと王女として生活したため、のんびりと出店を見て回る。
すると前からアリア、ノア、ドムが歩いてくるのが見えた。
「あれ?ティアちゃん!1人なの?」
「うん。今日は特に予定もないから。」
「じゃあ僕たちと回らない?」
「俺たちも今来たところなんだ。」
ここからは、皆で回っていく。3人とはあれから、定期的に食事をしたりパーティを組んだりしている。
出店で串焼きを買って食べながらお祭りを楽しむ。いろいろなところで、曲芸や演奏している人がいるので順番に巡っていく。回り終えると気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば教会は最近どう?なかなか予定が合わなくて行けなかったから、もうそろそろ行ってみようっかなって?」
「あぁ...最近ちょっといろいろあってな。もし来るなら今日のほうがいいかもしれない。」
ノアが答えてくれたが、3人の表情が一瞬歪んだ。
少し気になるが首を突っ込んでも悪いし、今日なら問題ないということだったので、子供たちにお土産を買い教会に向かうことにした。
孤児院につくと子供たちが出てきた。15人ほどだが、皆元気な子たちだ。
「おかえり!ねぇこの子は?」
「ただいま。私の友達のティアちゃんよ。」
「はじめまして。私はティアよ。よろしくね!」
お互い自己紹介して孤児院の中に入る。
お土産を皆で食べて、外で子供たちと駆けっこをして遊ぶ。
日が暮れてきたので子供たちと別れて4人で教会の中を歩いていた。
「今日は楽しかった!同い年のことあんなにはしゃいだの初めてかもしれない。ありがとうね。」
「そりゃ良かった。」
他愛もない話をしていると前からおじさんがやってくる。
「おや、見ないお嬢さんですな。新しく孤児院に入った子かな?」
「この子は私の友達よ!孤児院とは関係ないわ。それに今日は来ないってきいていたけど?」
アリアが慌てて返す。
(アリアは、どうして焦っているの!?おじさんに会わせたくなかったのかしら?)
「予定が変わってね。孤児院長はいるかな?」
「...あと少ししたら帰ってくるわ。この子を送ってくるから少し待ってて。ノア、ドムごめん。先に戻ってて。」
アリアは私を連れて教会の外に向かう。
「「ねぇアリ」なんでもないから!大丈夫だから気にしないで」
ノアとドムも嫌な顔をしていたけど、アリアはとても焦ってる。
ただ、聞かれたくなさそうで...私は聞くことができなかった。
教会を出ると別れを告げて、アリアは急いで戻っていった。
(なにもなければいいけど...もしかしたらお節介って思われるかもしれないけど。友達が困っているなら助けたい。)
私はさっきのおじさんと孤児院長について、調べてみることにする。おじさんの正体を掴むために、孤児院から出てくるところを尾行することにした。監視するために近くの宿の孤児院を見渡せる部屋を借りて、窓から様子を見る。
すると孤児院長らしき人が戻ってきた。観察しているとちょうど窓際の部屋で、おじさんと面会しているようだ。
(所々隠れるけど口元が見えるのは僥倖だわ。趣味のつもりだったけど、読唇術を会得しておいてよかったわ。)
私は、目の前に望遠用の魔術を展開する。この魔術は光に干渉するものでレンズと同じ原理だ。
しばらく見ていると少しずつだが状況が見えてきた。
(孤児たちの引き取りについて...か。けれど普通の引き取りなら養子縁組だから合意がなければ成立しない。もし何かあったとしても警備隊に伝えれば済む話だし、あの3人が嫌がる理由が見えないわね。)
この国の法律は大きく3つある。基本となる王国法、貴族にのみ適用する貴族法、平民のみ対象の民法だ。どの法律に違反した場合でも、警備隊に伝えれば対応してくれる。
結局、それ以上のことはわからなかった。もう少し待つとおじさんが教会から出てきた。
私も宿から出て尾行を開始する。
少し離れたところに馬車が止まっていて、乗り込むのが見えた。
(あの馬車は...アーテル伯爵の紋章!?紋章入りの馬車を使えるのならおじさんは、伯爵家の指示で動いていることになるわね。貴族相手ってなると警備隊も動くかどうか...)
アーテル伯爵家は、王都の隣に領地をもつ貴族だ。今日は城で夜会があるので、貴族当主は今頃城にいる。当主以外だと成人前の息子が1人いたはずで別邸にいるかもしれない。
このまま馬車を追っていると貴族街に入っていく。貴族街は、王侯貴族もしくは通行許可証がなければ入ることができない。
(流石にティアとして侵入するのは危険かもしれない...王女としてなら入れるけど、この時間に1人徒歩というのも目立つわね。仕方ないから今日は諦めて、明日孤児院を訪れましょうか。)
尾行はここまでにして引き返した。
私は明日アリアたちに詳しい事情を聞くことにしたのだ。
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