王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第1章 前世の記憶とお披露目

5 教会とお披露目

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 あれから1ヶ月がたち、ついにお披露目の日だ。

 リーナが起こしに来て、身支度をしている。仕上げとして、ドレスに着替えているところだ。

「念のため本日の予定の確認ですが、午前中に教会で測定を行い、午後は王城にてお披露目です。お着替えが済みましたら王宮へ向かい、陛下に御目通りします。」


 測定は、教会にある特殊な魔術具で行われる。教会は聖霊を祀っていて、精霊の加護を受けた魔術具や武具を多数保持している。国教とこそしてはないものの、国から見ても重要な機関にあたり、この大陸のほぼ全ての国家に存在する。
 また、魔力に関する成長はおおよそ7歳くらいで止まることが多いので、この時期に現在の魔力量と適正を調べるわけだ。
 属性は基本となる6属性と特殊な2属性と無属性が存在する。特徴としては次のような形だ。

【基本属性】
 炎熱 - 火や熱、加速等に干渉
 水 - 水等の液体に干渉
 氷冷 - 冷気や減速等に干渉、氷を生み出す場合は水属性も必要
 風 - 大気等に干渉
 地 - 地面等の物質に干渉
 雷光 - 雷(電気)や光に干渉

【特殊属性】
 聖 - 生命と闇属性に干渉
 闇 - 精神と聖属性に干渉

【無属性】
 基本属性や特殊属性に分類されないもの

 適正というのは、どの属性が合っているかをさし、属性魔術を行使したり魔力を属性を帯びたものに変換したりする際に影響する。
 ちなみに、回復魔術には水と地属性からのと聖属性からなるものが存在する。私が以前に行使したのは後者になり、お母様が得意だったのもあって習得していた。


 また、お披露目は王侯貴族は必ず行うもので、両親が同行することがほとんどだ。仲が良い家族だと正妻や兄姉も一緒にいくようだが、レティシア様はしないだろう。お父様は、私のことを邪魔には思っていないようなので、会いに来てはくれないものの、必要なことはしてくれている。

 お披露目をすることで、正式に家の一員となり家紋や特権を使えるようになる。特権は王族だと、平民への不敬罪適用と、貴族や平民への命令が可能になり、貴族だと当主は平民への不敬罪適用や命令、当主以外は平民への不敬罪適用の嫌疑をかけられる。特権の悪用が発覚した場合は処罰が下されるらしい。


 王城に到着した私たちは、城の応接間にいてお父様を待っている。

「久しぶりだな、ラティアーナ。」

「お父様こそ、お久しぶりですね。今日はよろしくお願いしますね。」

「あぁそうだな...では行こうか。」

 馬車に乗って教会へ行くと私はお披露目を迎える子たちの方へ向かうと横から2人が声をかけてきた。

「あら、ラティアーナ様。お久しぶりですね。」
「去年以来かな?ラティアーナ様。」

「2人とも久しぶりね。イリーナ、アドリアス。」

 イリーナはお母様の妹の子でいとこにあたり、アドリアスは元帥の子で王城に何回か来ていたこともあって、2人ともよく話す仲だ。

「今年のお披露目は結構多いらしいな。」

「そのようですね。王族のラティアーナ様にわたくしやあなたを含めた全ての公爵家が揃っているのは珍しいですし...」

「確かに初めてかもしれないわ。今まで歳が同じくらいの友達はあなたたちくらいだったから、少し緊張するわね。」

 3人で話していると司祭から始まる旨の声が掛かる。

「では席に着くとしましょうか。ではまたね。」

 2人と別れた用意されている席に着く。
 身分順に呼ばれるため、男爵家から始まり公爵家、最後に私の順番だ。他の人たちの測定を見ていると私の名前を呼ばれる。

「ラティアーナ様。お願いします。」

 呼ばれたので、返事をして席を立ち前に出る。
 測定用の場所に立つと私の周りを術式が展開され、測定が終わる。

「適性は聖属性がかなり高く、他も全体的に高いです。魔力量は...およそ100くらいですね...もっともこれから伸びる可能性もありますから...」

 場がざわついた。王族の魔力量は平均して2000程度、1番低い男爵家で100に届くかどうかと言ったところだ。魔力は両親の影響を受けるため100というのは相当少ないだろう。適性があるから変な疑いはかからないだろうが、思った以上に魔力量が少なくて泣きそうになる。けれど、王族としてのせめて堂々しなければならない。悲しみは胸の内に隠して席に戻った。

 測定が終わると城のホールでお披露目が行われる。
 お披露目は最初に前に出て紹介されたのちに、立食形式のパーティーみたいなものだ。以降は、お茶会や夜会などにも参加が可能になるため繋がりを作る1番最初の会となる。
 ただ、王城までの馬車の中でお父様が一言も話さないのは、助かるような苦しいような感じがしてもどかしい。


 城に着くとあてがわれている個室に入り、リーナに身だしなみを整えてもらう。

「ラティアーナ様...その...」

「...ショックを受けてないといえば嘘になるけど...あなたを失うことに比べれば些細なことだわ。あの時の行動を後悔はしていない。」

 ホールでは私に近づいてくるものは、イリーナとアドリアスを除いてあまりいなかった。周りからすれば私は王族の落ちこぼれだから、近づくことによる利がないと思われているのだろう。

 こうして、お披露目が終了した。
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