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9 生徒会での問答
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1日の授業が終わり、生徒会室へ向かう。恐らくリゲル殿下とカストルお兄様からは、昨日の1件を聞かれるだろう。今までは問い詰められるのが怖かったが、今はそばにリリアがいる。そう思うだけでも心強かった。
生徒会室に2人揃って入ると、様々な視線を向けられた。大きく分けると2種類で、怪しむ視線と驚きの視線だ。
「リコリス嬢。こっちに来てくれ。」
リゲル殿下とカストルお兄様に呼ばれる。リリアが不安そうな表情で見てくるが、安心させるように頷き返しておく。私は意を決して、2人の元へ歩いて行った。皆の前で話したくないのか、隣の部屋に移動した。
「リゲル殿下、お兄様なんでしょうか?」
「昨日、リリア嬢が階段から突き落とされたらしいな。」
「そうですわね。友人のリリアさんを傷つける人がいるなんて、悲しいですわ。」
そういうと2人は険しい視線を向けてきた。
「やはり認めないか…お前の悪事は必ず暴く。覚悟しておくように…以上だ。」
話は終わりのようなため、私は元の部屋に戻る。この日も書類仕事を行うが、リリア以外から話しかけられることはなかった。
今日やろうとしていた分が終わり、寮に戻ろうとすると、お兄様が話しかけてくる。
「…殿下はああ言っているが、俺は許さないからな。リリアに手をだ!?」
「リコリス様は私の友人です。カストル様、例え実の兄君であっても言っていいことと悪いことがあると思います。」
私を庇うようにしてリリアが前に立つ。お兄様もリリア本人が割り込んでくるのが意外だったのか、驚いて言葉が止まった。
「リリアはリコリスの本性を知らないからそう言えるんだ。」
それだけ言い放つと、お兄様は去って行った。私はなんとも言えない気持ちで立っていると、リリアが私の手を握った。
「寮に戻りましょう。今日もまた打ち合わせがしたいです!」
「…そうね。帰りましょうか。」
寮の中の私の部屋に着く。シーナに頼んで紅茶を2人分用意してもらう。そして2人きりになると断罪回避のための打ち合わせをする。
「それにしても…攻略対象の方達の動きが変なんですよね。若干、考えに一貫性がないと言うかなんというか…ゲームの中に何かしらのアイテムとかないんですか?」
リリアに言われて思い返すが、それらしいものは思い浮かばなかった。
「特にないと思うのよね…ただわたくしの場合は、自力で攻略するタイプだったから、隠し要素がないとも言い切れないわ。」
「今のところ何もできなさそうですね。私とリコリス様が普段から仲良くしていれば、噂もなくなると思いますけど…どうですかね?」
「そうね。確かに今日1日は、侮蔑の視線はあまりなかったわね。」
リリアが近くにいた今日は、私に対して興味や怪しむ目線を向けてくることが多くなっていた。そして、リリアも…持ち物がなくなるくらいで直接どうこうと言うことはない。
「明日午前中の音楽発表会が終われば、夏の長期休暇になりますね。リコリス様はどう過ごされるんですか?」
「少しは実家の領地に帰るけど…お兄様と顔は合わせたくないのよね。…あなたもついてきたりしない?」
「行っていいのであれば、ご一緒したいですね。でも公爵家の方は、平民が家に上がることを厭わないのですか?」
冗談半分だったが、ついてきてくれるのはありがたい申し出だった。両親は、身分を飾らない性格なため友人として紹介する分には問題ないだろう。
「多分大丈夫だと思うわ。」
憂鬱だった気分が少し良くなった気がした。
生徒会室に2人揃って入ると、様々な視線を向けられた。大きく分けると2種類で、怪しむ視線と驚きの視線だ。
「リコリス嬢。こっちに来てくれ。」
リゲル殿下とカストルお兄様に呼ばれる。リリアが不安そうな表情で見てくるが、安心させるように頷き返しておく。私は意を決して、2人の元へ歩いて行った。皆の前で話したくないのか、隣の部屋に移動した。
「リゲル殿下、お兄様なんでしょうか?」
「昨日、リリア嬢が階段から突き落とされたらしいな。」
「そうですわね。友人のリリアさんを傷つける人がいるなんて、悲しいですわ。」
そういうと2人は険しい視線を向けてきた。
「やはり認めないか…お前の悪事は必ず暴く。覚悟しておくように…以上だ。」
話は終わりのようなため、私は元の部屋に戻る。この日も書類仕事を行うが、リリア以外から話しかけられることはなかった。
今日やろうとしていた分が終わり、寮に戻ろうとすると、お兄様が話しかけてくる。
「…殿下はああ言っているが、俺は許さないからな。リリアに手をだ!?」
「リコリス様は私の友人です。カストル様、例え実の兄君であっても言っていいことと悪いことがあると思います。」
私を庇うようにしてリリアが前に立つ。お兄様もリリア本人が割り込んでくるのが意外だったのか、驚いて言葉が止まった。
「リリアはリコリスの本性を知らないからそう言えるんだ。」
それだけ言い放つと、お兄様は去って行った。私はなんとも言えない気持ちで立っていると、リリアが私の手を握った。
「寮に戻りましょう。今日もまた打ち合わせがしたいです!」
「…そうね。帰りましょうか。」
寮の中の私の部屋に着く。シーナに頼んで紅茶を2人分用意してもらう。そして2人きりになると断罪回避のための打ち合わせをする。
「それにしても…攻略対象の方達の動きが変なんですよね。若干、考えに一貫性がないと言うかなんというか…ゲームの中に何かしらのアイテムとかないんですか?」
リリアに言われて思い返すが、それらしいものは思い浮かばなかった。
「特にないと思うのよね…ただわたくしの場合は、自力で攻略するタイプだったから、隠し要素がないとも言い切れないわ。」
「今のところ何もできなさそうですね。私とリコリス様が普段から仲良くしていれば、噂もなくなると思いますけど…どうですかね?」
「そうね。確かに今日1日は、侮蔑の視線はあまりなかったわね。」
リリアが近くにいた今日は、私に対して興味や怪しむ目線を向けてくることが多くなっていた。そして、リリアも…持ち物がなくなるくらいで直接どうこうと言うことはない。
「明日午前中の音楽発表会が終われば、夏の長期休暇になりますね。リコリス様はどう過ごされるんですか?」
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冗談半分だったが、ついてきてくれるのはありがたい申し出だった。両親は、身分を飾らない性格なため友人として紹介する分には問題ないだろう。
「多分大丈夫だと思うわ。」
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