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第五話:ようこそ!異世界へ
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幸いなことに女騎士とロリの二人組は友好的だった。
「なるほど、このゴブリンは君たちが倒したのか。感謝する」
女騎士からお礼を言われた。丁寧に腰まで折るお辞儀までしてもらって。
女騎士は、空色の胸当てと腰当て、棘の生えた肩当て。フルプレートアーマーかと思いきや、お腹周りなどは防具らしいものはない。やっぱりゲームに登場しそうな鎧だ。
俺が鎧を観察しているとアロンがコツく。
ごめんなさい、お腹に見惚れていました。え、違う。あいさつしろって。
「いやー、俺なんて大したことしてないですよ」
「汗をびっしょりかいて……奮闘したのだろう。素手でよく戦い勝利してくれた」
「俺は何もしませんでしたけどね」
「そう謙遜するな。魔法職が実力を発揮するには前衛の力が必要不可欠だ。これは君たちの勝利さ」
邪な視線を気にせず女騎士は、俺をたたえてくれて右手を差し出した。
あと謙遜ではなく事実だ。残念なことに俺は何もしていない。
「レタン・ヴィニルだ。以後お見知りおきを」
「どうも、ソーサク・ナカジマです。こっちはアロン」
俺の手が汗でぐちゃぐちゃにも関わらず、嫌な顔一つせずにレタンは握手してくれた。人の手で汗を拭いているようで申し訳ないな。
レタンは左手でアロンに握手を求めるが。
「アロンさんもよろしく」
「……はい、よろしくお願いいたします」
アロンはうつむいたまま手を握り返す。握手が終わると、すぐに俺の後ろに隠れて服の裾をつかんでしまう。
人見知りなのかもしれないけど、さすがに失礼では。
「ソーサクさん、あとお願いします。魔法を使って喉の調子が」
かすれた声で耳打ちしてきた。そんな代償ってあったかなぁ。
「ところで二人はどうしてここに?」
「ああ、それか」
聞いたところによると、ロリは商人で、目を離した隙にゴブリンから品物を盗まれたらしい。
取り返すために走り回っていたら、たまたま近くを通りかかった女騎士レタンが協力し、二人で追っていたらしい。そのゴブリンが俺たちと遭遇した個体で、アロンの魔法でトドメを刺した。ということだ。
アロンの代わりに俺とレタンが話していると、ロリ商人がランプを持って戻ってきた。
大きなベレー帽がお辞儀をする。
「商人のピノ・ライアです。ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いえいえ、そのランプは何です?」
俺が気になったのはそのランプ。ガラス製の大きな傘と足の部分にダイヤルがついている。
「これですか?テトランプです。これがあればどんなに暗い場所でも昼間のように照らしてくれる、優れモノなんですよ」
「夜とか便利そうですね」
「そりゃあもう夜行性の魔物は光が苦手でて、これが有効なんです」
旅をする上では必須のようだ。
女騎士レタンや魔法使いアロンと違って、商人のピノは白を基調としたシャツにスカートと動きやすそうな軽装だ。腰には短剣をぶら下げているが、旅をしやすいように重い武器や鎧は身に着けないのだろう。
「たまに狙われるんですよね。ゴブリンたちキラキラしている物が好きで、このランプ、ゴブリンたちの頭に被れるくらいの大きさだから、王冠みたなステータスになるらしいんですよね」
もう、困っちゃいますよ。
頬を膨らませてピノが文句を垂れている。
よく見ればランプの傘は色とりどりのガラスで綺麗に作られている。これを被れば宝石をちりばめた王冠に見えなくもない、のか?
うーん、ゴブリンたちの感性は分からん。
「それにこのランプ、とある劇団様からの注文の品なんですよ。うん、傷ついてなくてよかった。お二人が素早く倒してくれたおかげですね」
「劇団って?」
「ああ、ソーサクさんも遠くから来たんですね。劇団はこの国の名物。娯楽でありながら文字が読めない子供たちのため、おとぎ話や英雄譚を教えているんです」
これはいいことを聞いた。
ゴブリンとの戦いで俺の能力は戦闘では役に立たない。絵に描いた餅である。かといって、アロンの魔法みたいに日常生活でも使えない。
しかし演劇ならどうだ。俺の着ぐるみ怪獣は、ゴブリンがビビり散らかすほどのクオリティをほこる。勇者に倒される怪獣役として舞台に上がれるだろう。バイトのヒーローショーで得た経験も発揮できるし、場合によっては特撮の技法や演出も役に立つかもしれない。まさに天職じゃないか、着ぐるみ怪獣バンザイ。
「いいな、劇団。怪獣役で働けるかな?」
今後はどっかの街の劇団にでも拾ってもらって、ドラゴン役として劇に出してもらう。そうすれば唯一無二の活躍ができそうだ。お給料も弾んでくれるぞ……フヒヒ。
「……劇団で働きたいんですか?」
やべ、アロンにニヤケ面を見られた。そんなに見ないで、恥ずかしい。
心の声は商人にも聞こえていたようで。
「いいよねっ演劇。ロマンここにありって感じで。その前にぃ、お礼もかねてぇ、みんなでこれからご飯でもどう?」
「いいんですか」
頼むからピノの奢りであってほしい。年下らしき少女に飯をたかるのは情けないが、こちらは異世界に来たばかり。通貨など持っているはずもなく、しかしお腹は減るもので。
「お腹空いた?魚、肉。いろいろあるよ、ちょっと食べてかない?お値段貼るけど、ドラゴンのお肉とかもありますよ」
「ドラゴンの肉か……アロン、どう?」
食欲に釣られて寄り道を決意したとき、アロンに服の裾を思いっきり引っ張られた。
「嫌です」
振り返れば不機嫌なアロンが首を横に振る。これは行くなってことか。でも、どこかで着替えたいから街には寄りたいな。
「お気持ちはありがたいんですが……」
「日用品から旅の道具まで取り揃えてるよ。ロングソード?それとも騎士甲冑?お着替えもあ・る・よ」
「是非!お願いします」
痛いアロン、足踏まないで。俺が悪かったから。
「なるほど、このゴブリンは君たちが倒したのか。感謝する」
女騎士からお礼を言われた。丁寧に腰まで折るお辞儀までしてもらって。
女騎士は、空色の胸当てと腰当て、棘の生えた肩当て。フルプレートアーマーかと思いきや、お腹周りなどは防具らしいものはない。やっぱりゲームに登場しそうな鎧だ。
俺が鎧を観察しているとアロンがコツく。
ごめんなさい、お腹に見惚れていました。え、違う。あいさつしろって。
「いやー、俺なんて大したことしてないですよ」
「汗をびっしょりかいて……奮闘したのだろう。素手でよく戦い勝利してくれた」
「俺は何もしませんでしたけどね」
「そう謙遜するな。魔法職が実力を発揮するには前衛の力が必要不可欠だ。これは君たちの勝利さ」
邪な視線を気にせず女騎士は、俺をたたえてくれて右手を差し出した。
あと謙遜ではなく事実だ。残念なことに俺は何もしていない。
「レタン・ヴィニルだ。以後お見知りおきを」
「どうも、ソーサク・ナカジマです。こっちはアロン」
俺の手が汗でぐちゃぐちゃにも関わらず、嫌な顔一つせずにレタンは握手してくれた。人の手で汗を拭いているようで申し訳ないな。
レタンは左手でアロンに握手を求めるが。
「アロンさんもよろしく」
「……はい、よろしくお願いいたします」
アロンはうつむいたまま手を握り返す。握手が終わると、すぐに俺の後ろに隠れて服の裾をつかんでしまう。
人見知りなのかもしれないけど、さすがに失礼では。
「ソーサクさん、あとお願いします。魔法を使って喉の調子が」
かすれた声で耳打ちしてきた。そんな代償ってあったかなぁ。
「ところで二人はどうしてここに?」
「ああ、それか」
聞いたところによると、ロリは商人で、目を離した隙にゴブリンから品物を盗まれたらしい。
取り返すために走り回っていたら、たまたま近くを通りかかった女騎士レタンが協力し、二人で追っていたらしい。そのゴブリンが俺たちと遭遇した個体で、アロンの魔法でトドメを刺した。ということだ。
アロンの代わりに俺とレタンが話していると、ロリ商人がランプを持って戻ってきた。
大きなベレー帽がお辞儀をする。
「商人のピノ・ライアです。ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いえいえ、そのランプは何です?」
俺が気になったのはそのランプ。ガラス製の大きな傘と足の部分にダイヤルがついている。
「これですか?テトランプです。これがあればどんなに暗い場所でも昼間のように照らしてくれる、優れモノなんですよ」
「夜とか便利そうですね」
「そりゃあもう夜行性の魔物は光が苦手でて、これが有効なんです」
旅をする上では必須のようだ。
女騎士レタンや魔法使いアロンと違って、商人のピノは白を基調としたシャツにスカートと動きやすそうな軽装だ。腰には短剣をぶら下げているが、旅をしやすいように重い武器や鎧は身に着けないのだろう。
「たまに狙われるんですよね。ゴブリンたちキラキラしている物が好きで、このランプ、ゴブリンたちの頭に被れるくらいの大きさだから、王冠みたなステータスになるらしいんですよね」
もう、困っちゃいますよ。
頬を膨らませてピノが文句を垂れている。
よく見ればランプの傘は色とりどりのガラスで綺麗に作られている。これを被れば宝石をちりばめた王冠に見えなくもない、のか?
うーん、ゴブリンたちの感性は分からん。
「それにこのランプ、とある劇団様からの注文の品なんですよ。うん、傷ついてなくてよかった。お二人が素早く倒してくれたおかげですね」
「劇団って?」
「ああ、ソーサクさんも遠くから来たんですね。劇団はこの国の名物。娯楽でありながら文字が読めない子供たちのため、おとぎ話や英雄譚を教えているんです」
これはいいことを聞いた。
ゴブリンとの戦いで俺の能力は戦闘では役に立たない。絵に描いた餅である。かといって、アロンの魔法みたいに日常生活でも使えない。
しかし演劇ならどうだ。俺の着ぐるみ怪獣は、ゴブリンがビビり散らかすほどのクオリティをほこる。勇者に倒される怪獣役として舞台に上がれるだろう。バイトのヒーローショーで得た経験も発揮できるし、場合によっては特撮の技法や演出も役に立つかもしれない。まさに天職じゃないか、着ぐるみ怪獣バンザイ。
「いいな、劇団。怪獣役で働けるかな?」
今後はどっかの街の劇団にでも拾ってもらって、ドラゴン役として劇に出してもらう。そうすれば唯一無二の活躍ができそうだ。お給料も弾んでくれるぞ……フヒヒ。
「……劇団で働きたいんですか?」
やべ、アロンにニヤケ面を見られた。そんなに見ないで、恥ずかしい。
心の声は商人にも聞こえていたようで。
「いいよねっ演劇。ロマンここにありって感じで。その前にぃ、お礼もかねてぇ、みんなでこれからご飯でもどう?」
「いいんですか」
頼むからピノの奢りであってほしい。年下らしき少女に飯をたかるのは情けないが、こちらは異世界に来たばかり。通貨など持っているはずもなく、しかしお腹は減るもので。
「お腹空いた?魚、肉。いろいろあるよ、ちょっと食べてかない?お値段貼るけど、ドラゴンのお肉とかもありますよ」
「ドラゴンの肉か……アロン、どう?」
食欲に釣られて寄り道を決意したとき、アロンに服の裾を思いっきり引っ張られた。
「嫌です」
振り返れば不機嫌なアロンが首を横に振る。これは行くなってことか。でも、どこかで着替えたいから街には寄りたいな。
「お気持ちはありがたいんですが……」
「日用品から旅の道具まで取り揃えてるよ。ロングソード?それとも騎士甲冑?お着替えもあ・る・よ」
「是非!お願いします」
痛いアロン、足踏まないで。俺が悪かったから。
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