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102A 「ドサッ、ドサッ」と上半身と下半身が切り離された少女達が地に落下する。

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「あ・・・・・・・・・・・・・・」



僕は、自分がやった事を理解するのに、数十秒掛かった。僕が握り締めているのは、血塗れた剣、地面には切断された僕の可愛い妹達。



「千尋ちゃあああああああんんんん!!!千歳ちゃあああああああああんんん!!!」



僕は二人に駆け寄る、二人は、下半身の無い腹から、ゴボゴボ血を噴出して、虫の息の様にかすかな呼吸をしていた。その表情は、どこか先ほどの激昂していた時とは打って変わっていて、呆れたような、納得したかの様な、そんな表情だった。



「ごめん、千尋ちゃん、千歳ちゃん、僕は・・・僕は、なんて事を・・・!なんて事を・・・!」



何故、二人を斬ってしまったのだろうか。いくら、二人がおかしな態度を取っていたとは言え、斬り殺す事までは無いだろうに、何故、僕は彼女達を斬り捨てたんだ・・・!?



「・・・・・・お兄さん、お優しいですからね。ほっとけないんですね。ソルフィさんを・・・・・」



口からごほごほ血を吐き出しながら、千歳ちゃんは困った様な顔に言った。



「・・・・・・・そうだね、一度婚約をして、そして、身寄りが無くて、捨て身で助けに来ているソルフィさんを無視なんか出来ないよね。お兄ちゃんだから。だから、私達と夢の中でのほほんと出来ないんだね。」



千尋ちゃんも穏やかな様子で、僕に言った。



「・・・・・・どうしたんだ?、何でそんな平静で居られるんだ?、君達は、僕に斬り捨てられたんだぞ?婚約だってしたじゃないか?・・・それなのに・・・」



「だってね・・・私達、お兄ちゃんの気持ち分かるの。私達は、お兄ちゃんを封印する為に、お兄ちゃんの心に染み付いているからね。お兄ちゃんが私達を拒否したの、直感的にわかるの。・・・・・・分かって来たのは、ソルフィさんに、本当の私達の事知らされてからだけど・・・ね・・・、お兄ちゃんに斬られて、より分かったよ。お兄ちゃんが私と千尋さんを拒否したって」



穏やかに微笑んで、千尋ちゃんは言った。



「・・・でも、私達がお兄さんと、共に、ずっと、お兄さんの世界で居たかったのも本当ですよ。ソルフィさんを殺して、お兄さんを無理矢夢の世界に縛り付けたいのも本当です。・・・でも、もう、お兄さんの剣で斬られた事で、縛り付ける事も出来なくなっちゃったみたいですけど・・・」



千歳ちゃんも、微笑んで言う。



「・・・ごめん・・・・・・・僕は、君たちを・・・殺そうとしている・・・ごめん・・・ごめん・・・」



僕は、二人に謝った。・・・僕が二人に拒否感を感じて反射的に斬ってしまったのだけど、僕が斬ってしまったのだ。それは、この夢の世界の主である、僕の意思で。二人を、斬ってしまったのだ。



「・・・・・・・んも~・・・・・・もう・・・・・・・謝らないでよ・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・・諦めがつかなくなっちゃうよお・・・・・それに、お兄ちゃんを縛り付けていたのは私達の方・・・・・・・だからさ・・・・・・ごめんね、お兄ちゃん、お兄ちゃんに凄く選びづらい選択を、悩む時間も無いまま選ばせちゃったね・・・ごめんね、お兄ちゃん、。私達が悪いから、これからは私達の事で悩まないでね・・・・・」



「・・・・・・・そうです・・・・・・・・・あのムカツク王に殺された時から、私達はもう、終わってました。・・・だから仕方ないんです。・・・・・・お兄さんと一緒に居たいって気持ちをあの王に利用されているだけなんです、私達は、あはは・・・何でしょう、お兄さんに斬られるまで、何が何でもお兄さんとずっと一緒に居てやると思ってたのですけど、割と諦めついちゃってます・・・。これも、封印の魔法の影響でしょうね・・・。・・・だから、良かったんです、仕方がないんです・・・」



がふがふ二人は血を吐きつつ、僕を安心させる用に微笑みながら、二人は語りかける・・・・・・しかし、その語りも、もうそろそろ終りが近いようだった。



「千尋ちゃん・・・千歳ちゃん・・・」



僕は、泣いていた。後悔と罪悪感と、もう二度と二人と会えないだろうという喪失感に押し潰れて、語彙もまったく浮かばず、ただ、二人の名を吐きながら、泣いていただけだった。



「・・・・・・お兄ちゃん、泣かないで・・・・・・?・・・・・・ねっ・・・・?」



「・・・そうです・・・、最期ですから・・・・・・」



まるで幼子をあやす様に、二人は、僕を諌めた。



「・・・・・・・・あのね、お兄ちゃん・・・・・・私、この数日間、とっても楽しかった。・・・お兄ちゃんが、本当のお兄ちゃんに・・・なってくれて。理想の世界だったよ・・・?ちゃんと、この世界に上手くかみ合う様に、小さい頃から、お兄ちゃんと一緒だった・・・・っていう偽の記憶も埋め込まれ・・・・ていたけど・・・・、私の理想の世界だった・・・・・・・・。」



「・・・はい、騎士の跡継ぎ娘なんかより、お兄さんと古い付き合いの普通の学生って・・・・・・・本当に最高に良かったです・・・・・・。楽しかった・・・お兄さんと普通の生活が出来て・・・普通にお兄さんで・・・楽しかったです・・・」



もう、長くは無いだろうか、二人の声に生気が失っていく。



「千尋ちゃん、千歳ちゃん・・・・・・僕も楽しかった・・・・・千尋ちゃんと千歳ちゃんが、本当の妹になってくれて・・・いや、恋人みたいなものだった。家族で恋人だった。二人に会うまでの現実世界の僕は、つまらない人生だった、それを二人が書き換えてくれた・・・・・・だから・・・・・・だから、僕らが、妹で家族で夫婦って事は本当で良いんだ・・・。」



「・・・うふふ・・・お兄ちゃん・・・・・学生に手を出した、・・・・・ロリコンさんだね・・・・・良いけどね・・・・うふふ・・・。」



「何だかんだで紳士でしたもんね・・・お兄さん、紳士じゃなかったら、今頃、私達の虜だったんですけど・・・」



三人でにこにこ微笑んだ。



もう少しだから、だから、そのもう少しである事を気づかない様に、存在しないかの様に微笑んだ。・・・でも、もう少しは、もうあと僅かなのは、みんな分かっている。



「・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・大好きだよ・・・・・・・私の全部、あげたかったよ。・・・つまらないエルフの集落の人が、お兄ちゃんの妹兼お嫁さんになれて・・・・嬉しかったよ・・・・有り難うね、お兄ちゃん・・・」



「・・・・・・私が騎士以外の人生を送れたのは、お兄さんのお陰です・・・・・・・・愛しています・・・・・お兄さん・・・・・・今まで・・・・・・有り難う・・・・・ござい・・・ました・・・」



生き絶え絶えの二人は、最期まで、僕ににっこりと微笑んでお礼を言った。



「・・・・・有り難う、二人共・・・・・・・僕のつまらない人生が、二人のお陰で、過去も書き換わって花色になった。・・・・・・・有り難う・・・・・・愛している・・・・・・二人の事・・・・・・ずっと、一生、愛している・・・・お別れになっても・・・・愛している・・・・・」



僕は・・・どうにか、今の自分の気持ちを、伝えようと、二人ともう数分後には訪れる永遠の別れに、混乱する頭を、なんとか、統率し、統率しつつ・・・働かない頭が繰り出すありきたりな語彙に怒りを感じながら、頼りない語彙で、二人の別れと感謝の気持ちを述べた。・・・・・・こんなありきたりな言葉で、二人に、まだ整理も出来ない、自分の二人への気持ちが、伝わって欲しい、どうにか伝わって欲しいと、願い、願って。



僕の言葉にふっ・・・と二人は微笑んだ。



「・・・・・・・・お兄様・・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・お二人の別れを水を差してしまいますが・・・・・・封印である、二人が消えつつあります。お二人が消えてしまうと、私達の魂もこの封印の世界諸共、消えてしまいます・・・ですから、脱出しなければなりません。・・・私の生命の伊吹を、お兄様に流し込む事によって・・・」



申し訳なさそうに、ソルフィちゃんは言った。



「・・・・・・・ごめんなさい・・・・チヒロさん、チトセさん。・・・・・・でも、私は、お兄様を死なせたく無いのです。・・・・・・ごめんなさい・・・・」



ソルフィちゃんは、震えながら二人に頭を下げた。



僕が二人と別れる原因は、ソルフィちゃんだ、だから、自責を感じているんだろう・・・。



「・・・もういいよ・・・ソルフィさん・・・・・・・いいから、お兄ちゃん、よろしく・・・ね・・・・」



「・・・・・・そうです、私達が、悪いんです・・・だから、良いんです・・・だから、私達に引導渡して下さい・・・ちゃんと・・・諦められるように・・・ね・・・?」



もう虫の息の二人が、ソルフィちゃんに微笑む。その笑顔の心中は、言葉とは逆だろう、それが痛いほど分かった。



「・・・・・・はい・・・・・・・ごめんなさい・・・・チヒロさん、チトセさん・・・・・・」



ソルフィちゃんは、ただ、申し訳なさそうに・・・だが、二人の視線を外ささずに、二人の目を見続けて言った。



その様子に、これ以上ソルフィちゃんを、悪者には出来ない・・・と思った。



「ソルフィちゃん・・・・・・僕は、目を覚ます事にする・・・・・・・だから、ソルフィちゃん、キス・・・・・・だよね?・・・・・・やろう、キスを・・・」



ソルフィちゃんの肩を掴むと、ソルフィちゃんは、一瞬驚いたが、すぐ顔を申し訳なさそうな顔に戻して



「・・・・はい・・・・お兄様・・・・」



と、ソルフィちゃんも、僕の肩を掴み、そして、僕と目と目を合わせる体勢になった。



もう、今からキスするんだ・・・そして、夢から醒めて、二人とはお別れだ・・・・



そう思ってしまって、僕は、二人の方へ振り向く。



二人は、ただ微笑んで、僕を見ている。



僕が後ろめたい思いをせずにしようとしている・・・この期に及んで・・・。



僕は、その気遣いを無駄にしない事にした。したくないから、最後の二人への微笑みをし、そして、「やろう」と、ソルフィちゃんにキスを促した。



僕から、やろうとしたが、ソルフィちゃんの方から、唇を合わせて来た。



そして、唇が触れて、ソルフィちゃんの舌が、僕の口内に侵入し、僕の舌に触れた瞬間、世界は真っ白になった
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