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91.『いよいよ、明日は、魔王の城に突入だね』

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場面は移り変わり、今度は、夜の雑木林の中、野営している『僕』と剣士千歳ちゃんとエルフ千尋ちゃんと少女と幾数体かのゴーレムの姿が映し出された。

少女がゴーレム達を使役し、火の番や見張り等をさせていて、『僕』らは寛いでいた。

魔王の城・・・。『僕』は魔王を倒す為にこの世界に召還されたと言った。その魔王が目前に居るのだから、この『僕』の旅ももう、終りに近いのだろう。

『魔王の魔力の壁を剥ぎ取る宝玉も持っていますし、私達は神が創ったとされる武器で武装していますし、魔王の血を受け継いだ、ソルフィさんも居ますし、
何より、この世界を崩壊させる程の魔力を持つお兄さんが居るのですから、多分、負ける事は無いですね。』

『そうですわね、例えあの男の魔力でも、大地を更地にする事は出来ても、割る事は出来ませんもの。油断はしませんが、戦力としてはソルフィ達が優勢でしょう』

『と、言っても、お兄ちゃん頼りなんだけどね・・・』

てへへ・・・とチヒロちゃんは小さく笑った。

『ははは・・・でも、二人共、初め会った頃から成長したよな。初めの頃はチトセちゃんはスライムもロクに倒せなかったし、チヒロちゃんの弓も的に当てられないノーコンだった。
それが今じゃ、ドラゴンの群れも軽くねじ伏せられるからなあ・・・』

『へへへ・・・私、強くなれました。お兄さんのお陰ですね・・・』

『お兄ちゃんには、負けるけどね・・・。でも、特別に魔力を持たない私でも、普通のエルフの限界ギリギリまで強くなれた気がする。』

と言って、二人は『僕』にくっついて来た。

『・・・いやあ、ここまで来れたのも、君達のお陰さ。誰も一緒に来てくれなかったら、いくら力があっても、どこかで野たれ死んでいた気がするよ』

『僕』は二人の頭を撫でた。

『あらあら、私も忘れてはいけないですわよ、ソルフィの頭も撫でて下さいな、お兄様』

と少女が自らの頭を『僕』に差し出した。

『うんうん、ソルフィちゃんのお陰だよ。ここまで来れたのも。有り難う』

『うふふっ』

少女の頭を撫でると、少女は幸せそうに微笑んだ。

『・・・結局、貴女も付いて来たんですねー、魔王討伐に。魔王が倒されれば、館で待っているだけでも良かったのに・・・』

『あらあら、もう、私、お兄様のお嫁さん候補ですので、夫と病める時も健やかな時も、共に在りたいと思うのは自然な事ですわ』

剣士千歳ちゃんの質問に、微笑んで少女は答えた。

『・・・結婚は打算じゃなかったの?』

『打算だったのですが・・・、ソルフィは自分で思っていたより、安い女だった様で、お兄様に少し優しくされたら、それだけでももっと優しくされたいと思う様になりまして、
自分でも不思議なのですが・・・。でも、ソルフィは自分自身が安い女と分ったので、開き直って、自分の欲望に素直になろうかなと・・・ねっ、お兄様、ソルフィを愛してくださいまし』

少女は僕の胸に、抱きつく。

『うん・・・、ソルフィは僕の・・・お嫁さん・・・だもんな』

『そうですよ』

戸惑いながら聞く『僕』に微笑んで答える少女。

『あーーー!!駄目だよ、ソルフィさんは、側室なんだから!!お兄ちゃんと一番近い所で一緒なのは私なんだから!!』

『いやいや、私です!私が本妻です!認めません!!』

と言って、3人はぎゃあぎゃあと僕を思い思いに抱き寄せ抱きしめる。

『ひええ!分った。分った。3人とも僕の嫁だから、勘弁してくれ!!』

と、『僕』3人を引き剥がす。

『あっ・・・お兄さんがデレた!!私達が誘惑しても、いつも答えをはぐらかしていたお兄さんが、嫁宣言を・・・!しかもハーレム宣言をした!!』

『ようやく公言したね。言質取ったよ。私、お兄ちゃんの家族なんだから!!』

『うふふっ有り難うございます、お兄様』

引き剥がされた3人はきゃほきゃほ小踊りをしながら喜んでいる。こんなおっさんに俺の嫁扱いされて嬉しいんだなあ、この3人は。

『うふふ・・・して、ではいかがなさいます?契りはいつにしますか?今・・・?』

そう言って少女はスカートを捲り、下着を露にする。顔は朱に染まり蒸気しており、明らかに、その手の誘惑だった。

『・・・はっ・・・?契り・・・って・・・?』

『ですから、契りです。夫婦でやる事契りと言えばこれでしょう。お兄様が気が変わる内に、心身にお互いの事を刻み合いましょう?』

『いやいやいやいやいやいやいや!!それは早いっていうか・・・!!なあ、早いよなあ、チトセちゃんチヒロちゃん・・・!?』

『え・・・そうですね・・・いずれはするんでしょうが・・・』

『そうだね・・・いずれはね・・・いずれは・・・』

剣士千尋ちゃんとエルフ千歳ちゃんは、顔を真っ赤にしてうつむく。『僕』の顔も真っ赤だった。

『まあ!もしかして、貴女達生娘だったのですか?今までお兄様と旅をして来て、何にもなかった?長旅だったでしょうに・・・もしかしてキスもまだだったり・・・?』

『うん・・・』『そうだね・・・』『あはは・・・』

少女に問われて、僕ら3人は何とも答えづらそうに答えた。

『・・・そうですか。貴女達もあれだけ好意を振りまいておきながら、結構、奥手というか、お兄様も割りと良い歳なのに、手を出してないなんて紳士的というか・・・もしかして、お兄様は・・・童貞でいらしたり・・・?』

手痛い少女の問いに『僕』は「うん・・・」と答えた。

しょうがないだろ!。機会も無かったのだから。

『あらまあまあ・・・。汚れた体のソルフィじゃ、少し申し訳無いですが・・・、でも、良いですわ。ソルフィは、お兄様がされたい事、全部答えられる自信がありましてよ。お兄様、愛し合いましょう?ソルフィが手取り足取り教えて差し上げます』

と、少女が『僕』の体に、胸を押し付けると

『待った!待った!』『だめだめだめだめ!!』

顔がリンゴの様に染まった二人は『僕』から、少女を引き剥がした。

『・・・ソルフィちゃん、気持ちは嬉しいけど、僕らは明日、魔王を倒さないといけないんだ。えっちな事をしてる場合じゃないからさ』

『えっちな事ではありませんよ?。お互いが今後の人生のパートナーである事の確かめ合いです。えっちな事は強いられてましたが、それとは違う事です。ソルフィにとって大事な大事な・・・』

少女は視線を落して口つぐんだ。

『・・・うん、そうだね・・・でも、大事な事だから、魔王を討伐するのに緊張している今じゃ出来ない。大事な事だから』

『僕』がそう、はっきり拒否の言葉を告げると少女は視線を『僕』に合わせて

『そうですわね。全てはあの男、魔王を倒した後に致しましょう。その後に、お兄様とソルフィは結ばれたいと思います。良いですね?絶対ですよ?今は諦めるのですから、絶対に夫婦になりましょうね?』

と少女は圧力が篭った笑みを浮かべ

『待った!お兄ちゃん!私もだからね!!』

『お兄さん、私も忘れてはいけませんよ?私もです!』

と剣士千歳ちゃんやエルフ千尋ちゃんにもせがまれた。

『・・・うん、分った。僕は・・・3人と結婚するよ・・・。魔王を倒したら、3人と結婚して、そして・・・夫婦として大事な事をする・・・よ』

『僕』は真っ赤になって3人に答えた。

『約束です!約束!!魔王を倒したら、私の・・・旦那さんになって、夫婦の事をして、夫婦になって貰いますからね!』

『魔王を倒したら、お兄ちゃんに全部捧げて、お兄ちゃんの全部を私が貰って、心と体に、ずっと一緒になり続ける約束をするから!』

『うふふ・・・さらにあの男を殺す理由が出来ました。お兄様、ソルフィは幸せになる為に、明日は全力で戦わせて戴きますわ』

3人の幸せと圧力が混じった微笑みが『僕』を拘束し続けていた。

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