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25.「スーパーで飯を買って、自称妹と並んで帰路についている。」
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「ごめんね。お兄ちゃんだけに荷物を持たせて。」
「良い、良い、透明の君が買い物袋を持つと、端からみたら買い物袋が宙に浮いている様にしか見えないだろうし」
「・・・うん・・・」
こうやって外で会話をしてある時、僕はスマホを耳に当てて、まるで誰かと通話しているかの様に振る舞っている。
じゃないと他人から見れば、独り言をぶつぶつ呟いている怪しい人にしか見えないだろうから。
「ねぇ・・・お兄ちゃん・・・」
「ん?」
「私の事、本当に覚えていの?」
「えっ?」
「・・・その、私はずっとお兄ちゃんと一緒に居たのに、お兄ちゃんは私の事、覚えてくれてないもん。」
自称妹は寂しそうな顔で僕を見つめた。
そんな顔をされても覚えの無いものは覚えが無い。
「君の事はまったく覚えが無いなあ」
と言ってやると
「本当に?お兄ちゃんが記憶喪失になっちゃったんじゃ?」
と自称妹は食い下がった。
「この歳でボケたくないぞ。それに、それだけじゃあ、君が周りの人に認知されない理由にならない」
と言ったら
「・・・そうかも・・・いや、そうだよね・・・。うーん・・・」
自称妹は落ち込んだように深い頭を垂れた。
「・・・私、どうしちゃったんだろう?引きこもりだけど、ふつーにお兄ちゃんと暮らしていただけなのに、どうしてかな?」
自称妹は不安そうに僕を見つめる。
見つめるられてもこんな頂上現象の原理なんて、僕が分かる訳無い。
「さあ、わからない。わからないが・・・」
僕はその先の言葉を言い淀んだ。その先の言葉を言うには少し照れを感じてしまったからだ。
「なぁに?お兄ちゃん?」
自称妹はその先の言葉を催促する様に僕を見る。
「いや、何でもない」
と僕はその先の言葉を言わない事にした。
「えぇー。何ー?、お兄ちゃん、気になるよー。」
「何でも無い。何でも無いよ。」
『今の生活が楽しい』・・・なんてこの気弱だけどお調子者の自称妹に言える訳が無い。
「むぅー、まあ良いけど。」
「あっ、待ってよ!」
自称妹より前に出た僕に後ろから自称妹に腕を抱きつかれた。
「置いてかないでよ!」
自称妹は僕の腕をぎゅうぎゅうと掴み、僕にしがみつく。
自称妹のささやかな、ほんのささやかな胸の膨らみの感触が衣服越しからも感じられた。
「分かった。分かったから、離れてくれ。歩きづらい!」
「だーめ。お兄ちゃん私置いて一人でぐいぐい前に行っちゃうんだもん!」
自称妹はその後もぎゅうぎゅうと僕の腕を掴みながら歩いたのだった。
鬱陶しい奴だ。だけれども、その鬱陶しさにも、いくばかの心地良さを否定は出来なかった。
そうして僕らはアパートに帰還したのだった。
「私達の家に着いちゃったね・・・」
アパートの入り口に着いて自称妹はぽつりと呟いた。
「着いたな。ほら、腕を離して。」
僕は自称妹の虚を突いて腕の拘束を振りほどいた。
「あ・・・、お兄ちゃん・・・・。」
「家に着いたし、もういいだろう?」
と言うと、
「んん・・・そうだね、お兄ちゃん・・・。」
と自称妹は少し残念そうに言い、
「・・・お兄ちゃん」
僕の目を見据えて
「・・・今度の休みもどこかにお出かけしたいなあ・・・」
と訴えて来た。
「いやだよ。めんどくさいし。」
僕は即座に断った。
「えー!そんな事言わないでよー!」
自称妹は頬を膨らませて抗議する。
「めんどくさいものはめんどくさいからだ。」
と僕は吐き捨ててやった。
「そう、そうなんだ・・・。残念ー・・・。」
と言って自称妹は僕の腕を掴んだ。
「な、何だよ。」
「まだ、家の中に着いてないから。もう少し、こうしよ?」
にこにこ微笑む自称妹。
もう数メートルだ。いちいち拒否するのもめんどくさい。
「分かった、分かった。早く家の中に入ろう。」
「うんうん、行こう行こう。」
上機嫌の自称妹と一緒に僕らは自分の部屋に向かった。
自分の部屋の前に着くと、そこには、学生服の少女が突っ立っていた。
「お兄さん!」
その少女は僕の顔を見るなりそう言ったのだった。
「良い、良い、透明の君が買い物袋を持つと、端からみたら買い物袋が宙に浮いている様にしか見えないだろうし」
「・・・うん・・・」
こうやって外で会話をしてある時、僕はスマホを耳に当てて、まるで誰かと通話しているかの様に振る舞っている。
じゃないと他人から見れば、独り言をぶつぶつ呟いている怪しい人にしか見えないだろうから。
「ねぇ・・・お兄ちゃん・・・」
「ん?」
「私の事、本当に覚えていの?」
「えっ?」
「・・・その、私はずっとお兄ちゃんと一緒に居たのに、お兄ちゃんは私の事、覚えてくれてないもん。」
自称妹は寂しそうな顔で僕を見つめた。
そんな顔をされても覚えの無いものは覚えが無い。
「君の事はまったく覚えが無いなあ」
と言ってやると
「本当に?お兄ちゃんが記憶喪失になっちゃったんじゃ?」
と自称妹は食い下がった。
「この歳でボケたくないぞ。それに、それだけじゃあ、君が周りの人に認知されない理由にならない」
と言ったら
「・・・そうかも・・・いや、そうだよね・・・。うーん・・・」
自称妹は落ち込んだように深い頭を垂れた。
「・・・私、どうしちゃったんだろう?引きこもりだけど、ふつーにお兄ちゃんと暮らしていただけなのに、どうしてかな?」
自称妹は不安そうに僕を見つめる。
見つめるられてもこんな頂上現象の原理なんて、僕が分かる訳無い。
「さあ、わからない。わからないが・・・」
僕はその先の言葉を言い淀んだ。その先の言葉を言うには少し照れを感じてしまったからだ。
「なぁに?お兄ちゃん?」
自称妹はその先の言葉を催促する様に僕を見る。
「いや、何でもない」
と僕はその先の言葉を言わない事にした。
「えぇー。何ー?、お兄ちゃん、気になるよー。」
「何でも無い。何でも無いよ。」
『今の生活が楽しい』・・・なんてこの気弱だけどお調子者の自称妹に言える訳が無い。
「むぅー、まあ良いけど。」
「あっ、待ってよ!」
自称妹より前に出た僕に後ろから自称妹に腕を抱きつかれた。
「置いてかないでよ!」
自称妹は僕の腕をぎゅうぎゅうと掴み、僕にしがみつく。
自称妹のささやかな、ほんのささやかな胸の膨らみの感触が衣服越しからも感じられた。
「分かった。分かったから、離れてくれ。歩きづらい!」
「だーめ。お兄ちゃん私置いて一人でぐいぐい前に行っちゃうんだもん!」
自称妹はその後もぎゅうぎゅうと僕の腕を掴みながら歩いたのだった。
鬱陶しい奴だ。だけれども、その鬱陶しさにも、いくばかの心地良さを否定は出来なかった。
そうして僕らはアパートに帰還したのだった。
「私達の家に着いちゃったね・・・」
アパートの入り口に着いて自称妹はぽつりと呟いた。
「着いたな。ほら、腕を離して。」
僕は自称妹の虚を突いて腕の拘束を振りほどいた。
「あ・・・、お兄ちゃん・・・・。」
「家に着いたし、もういいだろう?」
と言うと、
「んん・・・そうだね、お兄ちゃん・・・。」
と自称妹は少し残念そうに言い、
「・・・お兄ちゃん」
僕の目を見据えて
「・・・今度の休みもどこかにお出かけしたいなあ・・・」
と訴えて来た。
「いやだよ。めんどくさいし。」
僕は即座に断った。
「えー!そんな事言わないでよー!」
自称妹は頬を膨らませて抗議する。
「めんどくさいものはめんどくさいからだ。」
と僕は吐き捨ててやった。
「そう、そうなんだ・・・。残念ー・・・。」
と言って自称妹は僕の腕を掴んだ。
「な、何だよ。」
「まだ、家の中に着いてないから。もう少し、こうしよ?」
にこにこ微笑む自称妹。
もう数メートルだ。いちいち拒否するのもめんどくさい。
「分かった、分かった。早く家の中に入ろう。」
「うんうん、行こう行こう。」
上機嫌の自称妹と一緒に僕らは自分の部屋に向かった。
自分の部屋の前に着くと、そこには、学生服の少女が突っ立っていた。
「お兄さん!」
その少女は僕の顔を見るなりそう言ったのだった。
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