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通じた想い

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 さくらは本当の気持ちを打ち明けようと心に決め、聖の部屋へと向かっていた。

 本当はすごく恐かった。
 逃げ出したい気持ちと闘い、さくらは自分を振るい立たせ歩き続ける。

 あの日から、聖はさくらを避けているようだった。
 話しかけてもない返事だけ、以前のように微笑みかけてくれることもない。
 あからさまにさくらとの接触をさけているように感じられた。

 このままの状態は絶対嫌だ。

 さくらは聖の部屋の扉をノックする……返事はない。

「さくらです、失礼いたします」

 声をかけても返答がないので、さくらは扉を開けた。

 部屋に入ると、聖は窓辺にたたずみ外の景色を眺めていた。
 さくらの方を見ずに聖が声をかける。

「何か用?」

 そっけない態度にさくらは寂しさを感じるが、ここでひるんではいけないと自分を鼓舞こぶする。

「聖様、なぜ私を避けるのですか? こちらを向いてください」

 聖はさくらの方は見ずに話し続ける。

「この前のこと怒ってないの?」

 少しだけ顔をこちらにかたむける聖、さくらのことを気にしている様子だった。

「すごく驚きました! 急にされたら誰だって戸惑います。
 以前、聖様から好きって言われたことすら夢かと思うほどだったのに。
 ……キ、キスなんて」

 さくらがあせり戸惑う姿を見て、聖が落ち込む。

「そうだよな……、さくらは僕のこと嫌いになった?」

 力のない聖の言葉に、さくらは唖然あぜんとしポカンとした表情で見つめる。

「何をおっしゃっているのですか? 私があなたを嫌うことなんて一生ありません! 
 私は聖様に拾われたあのときから、私はあなたのものです。
 ……私の方こそ、聖様に嫌われたら生きてはいけません」

 そのとき、聖はやっとさくらの方を向いた。
 さくらをじっと見つめ、ゆっくりと距離をめてくる。

「じゃあ、なんで僕の告白の返事くれないの?
 君がどう思っているのかわからなくて苦しいよ。
 それに、なんで兄さんの専属になったの? 兄さんが好きなの? 旭とも仲いいけど、旭のこと好きなの?」

 聖は眉を寄せ、苦しそうに顔をゆがめる。

 さくらのせいで聖がこんなに苦しんでいるのかと思うと、もう耐えられなかった。
 やはり、自分の気持ちに正直になろう、さくらは覚悟を決めた。

「君のことを考えると、僕は冷静でいられなくなる。
 こんなに欲深く嫉妬しっと深い人間だったなんて、自分でも驚く……っ」

 深いため息をつき、項垂うなだれる聖。

 その手を取り握り締めると、さくらは正面から聖を見据えた。

「聖様、こんなに苦しめてしまってごめんなさい。
 私は……聖様のことをおしたいしております。好きです、愛しています。
 聖様は私にとって命よりも大切な存在なのです」

 思いがけないさくらの告白に、聖の目が大きく開く。

「本当? ……本当に?」

 聖の問いに、さくらがしっかりと頷く。

「やった! 嬉しい、さくらっ!」

 聖がぎゅっと力強くさくらを抱きしめた。

 温かい、大好きな人に抱きしめられるとこんなにも幸せなんだ。

 めながらさくらは聖の背にそっと手を回した。

「聖様……」
「さくら……」

 二人は長い間、お互いの体温を感じながら抱き合っていた。
 やっと通じた想いを確かめ合うように。

 ふと聖がさくらに問いかける。

「そういえば、なんでさくらは今まで僕のこと好きって言ってくれなかったの?」

 不思議そうな顔をする聖に、さくらは少し顔をそむけつつ答える。

「私は使用人で、あなたは主です。普通に考えれば結ばれるわけがない。
 もし、この気持ちが知られたら、聖様と一緒にいることすら叶わなくなるかもしれない。それなら気持ちを封じ、このままの関係でもいいからずっと側にいたいって思ったんです」

 さくらの想いを聞いていた聖は驚いた表情をしたあと優しく微笑んだ。
 そして愛しそうにさくらの頬に手を添える。

「馬鹿だな、僕はもう君以外愛せない。
 さくら、君じゃなきゃ駄目なんだよ。
 ……身分の差なんて関係ない。僕は君のためならこの家を捨ててもいいと思っている」
「そんなっ……」

 さくらの開きかけた唇に聖の人差し指があてられる。

「大丈夫。そうならないように、父上をせてみせるから。
 さくらは何も心配しなくていい」

 聖は熱のこもった眼差しをさくらに注ぐ。

「兄上の専属の件も僕から兄上に断っておくから、いいね?」

 聖がさくらに確認すると、さくらは慌てた。

「い、いえ、専属の件は私が誠一様にお断りします。聖様は御父上の方に専念してください」

 聖はさくらの案にあまり納得していないようだったが、さくらがあまりに一生懸命お願いするのでなんとか引き下がってくれた。

 もし、聖が専属の断りを入れたら、誠一はさくらの能力のことをばらすかもしれない。
 それはだけは絶対に阻止そししなくてはならない。
 能力のことは自分の口から言いたかった。

 誠一のことは苦手だったが、さくらが頑張って誠一をせるしかない。

 さくらが思案していると、ふいにあごを持ち上げられた。

「さくら……キス、していい?」

 うるんだ瞳を向けてくる聖にそうせがまれ、さくらは顔を真っ赤にし口をパクパクさせる。
 そんなさくらを見て、聖はおかしそうに笑った。

「可愛い……」

 聖はさくらに口づけをする。
 さくらのことを想った優しい口づけ……。

 その想いに応えたかったが、まだ慣れないさくらは聖にされるがまま、身をまかせた。
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