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彩華ルート
30話 快適
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いつものように彩華さんの部屋でまったりとした時間を過ごしていたある週末の午後、俺は彩華さんに一つ提案をしてみることにした。
「あのさ」
「うん?」
「もし彩華さんが嫌じゃなければなんだけど……」
「……?」
「料理以外の家事も手伝ってもいいかな? 掃除とか、洗濯とか」
「えっ? 料理以外も? 悪いよ、そんなの」
俺の提案が予想外だったのか、彩華さんは目を丸くして驚いていた。
「遠慮しないで。俺がやりたいだけだから。あ、もちろん俺に見られなくないものもあるだろうから、無理にとは言わないけど」
「いや、颯太くんに見られて困るものなんか何もないけど……。でもやっぱり悪いって。こんなに頻繁に食事作ってもらってるだけでも申し訳ないのに」
「それならぜひやらせて? デートの時とかいつもお金多めに出してもらってるし、こっちこそ申し訳ないから」
「そんなの気にしないで!? 颯太くんはまだ学生なんだから当たり前じゃん」
「そうかもしれないけど、でもいつものお礼を兼ねて彩華さんのために何かしたいんだよね。あと、これはもしかしたら失礼かもしれないけど……」
「……?」
「彩華さん、本当は家事苦手なんでしょう?」
「!? ど、どうしてバレたの……」
「もう一緒にいて長いじゃん。見てたらわかるって。俺は掃除も洗濯も嫌いじゃないからさ。よかったら手伝わせてよ」
「そ、そう? でもさすがに申し訳ない気が……」
「いいからいいから」
「わかっ…た。ありがとう」
よし、押し切った。これでもう一歩前に進められる。
彩華さんから明確な拒絶の意思表示をされてから数か月、俺の計画は着々と進んでいた。間違いなく手応えがある。もちろんその手応えを含めてすべて俺の思い上がりで、勘違いかもしれないけど。
でもすでに週に数回は彩華さんに俺の手料理を食べてもらっている訳だし、これで掃除や洗濯も手伝えるようになった。
これから手料理を振舞う回数はもっと増やしていくつもりだし、他の家事も最初は「手伝う」というレベルからスタートするけど、徐々に分担率をあげていって最終的には家事全般を俺が担当する感じにしていこうと思っている。
そして彩華さんが俺と付き合えない本当の理由を教えてくれたあの日から、俺は一度も彩華さんに交際を迫っていないし、彼女と付き合うことを本当は諦めていないということを彼女に悟られないように気をつけている。
どこまで上手に演じられているかは分からないだけど、俺としては彩華さんが俺と付き合えない理由に納得して「期間限定のパートナー」という関係を受け入れているように見せているつもりである。
このすべての動きの狙いは一つ。あらゆる意味で彩華さんにとって最高に都合の良い存在になって、これ以上なく心地良い時間を提供し続けることだった。
……俺と一緒にいる時間があまりにも快適すぎて、俺がいなくなった後のことを想像もしたくなくなるように、ね。
「あのさ」
「うん?」
「もし彩華さんが嫌じゃなければなんだけど……」
「……?」
「料理以外の家事も手伝ってもいいかな? 掃除とか、洗濯とか」
「えっ? 料理以外も? 悪いよ、そんなの」
俺の提案が予想外だったのか、彩華さんは目を丸くして驚いていた。
「遠慮しないで。俺がやりたいだけだから。あ、もちろん俺に見られなくないものもあるだろうから、無理にとは言わないけど」
「いや、颯太くんに見られて困るものなんか何もないけど……。でもやっぱり悪いって。こんなに頻繁に食事作ってもらってるだけでも申し訳ないのに」
「それならぜひやらせて? デートの時とかいつもお金多めに出してもらってるし、こっちこそ申し訳ないから」
「そんなの気にしないで!? 颯太くんはまだ学生なんだから当たり前じゃん」
「そうかもしれないけど、でもいつものお礼を兼ねて彩華さんのために何かしたいんだよね。あと、これはもしかしたら失礼かもしれないけど……」
「……?」
「彩華さん、本当は家事苦手なんでしょう?」
「!? ど、どうしてバレたの……」
「もう一緒にいて長いじゃん。見てたらわかるって。俺は掃除も洗濯も嫌いじゃないからさ。よかったら手伝わせてよ」
「そ、そう? でもさすがに申し訳ない気が……」
「いいからいいから」
「わかっ…た。ありがとう」
よし、押し切った。これでもう一歩前に進められる。
彩華さんから明確な拒絶の意思表示をされてから数か月、俺の計画は着々と進んでいた。間違いなく手応えがある。もちろんその手応えを含めてすべて俺の思い上がりで、勘違いかもしれないけど。
でもすでに週に数回は彩華さんに俺の手料理を食べてもらっている訳だし、これで掃除や洗濯も手伝えるようになった。
これから手料理を振舞う回数はもっと増やしていくつもりだし、他の家事も最初は「手伝う」というレベルからスタートするけど、徐々に分担率をあげていって最終的には家事全般を俺が担当する感じにしていこうと思っている。
そして彩華さんが俺と付き合えない本当の理由を教えてくれたあの日から、俺は一度も彩華さんに交際を迫っていないし、彼女と付き合うことを本当は諦めていないということを彼女に悟られないように気をつけている。
どこまで上手に演じられているかは分からないだけど、俺としては彩華さんが俺と付き合えない理由に納得して「期間限定のパートナー」という関係を受け入れているように見せているつもりである。
このすべての動きの狙いは一つ。あらゆる意味で彩華さんにとって最高に都合の良い存在になって、これ以上なく心地良い時間を提供し続けることだった。
……俺と一緒にいる時間があまりにも快適すぎて、俺がいなくなった後のことを想像もしたくなくなるように、ね。
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