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共通ルート

7話 笑顔

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「ねぇねぇ、颯太そうたくんさ」
「!? は、はい?」

 時刻は午後三時四十五分。午前中から歩き回って少し疲れてしまった俺たちはカフェのテラス席で休憩をとっていた。

 俺の向かい側の席に座り、俺の顔を見つめながらニコニコ笑っていた大鳥居さんが、突然俺のことを下の名前で呼んできた。

 ヤバ、またドキっとしてしまった。今日だけでドキッとさせられるの何回目? ちょっと心臓が持たないんだけど。

「そろそろ敬語やめません?」
「あっ、は、はい。大鳥居さんがそれで良いなら……」

 いやまた「あっ」って言ってるし。普段はここまで童貞感を前面に出してないはずだけど、大鳥居さんの前だとどうしてもこうなっちゃうんだよな……。

「『大鳥居さん』もやめようよ。私だけ『颯太くん』って呼ぶのもなんか変じゃん?」
「えっと、はい……じゃなくて、うん。じゃあ、彩華さん…で」
「うん♡」

 ……なんていうか、距離の詰め方がすごい。迅速かつ大胆。

 しかもね、彩華さん、先ほどからずっと俺の目を見て楽しそうにニコニコしながら喋ってるんだよね。

 その笑顔の破壊力がもう本当にヤバくてヤバくて。彩華さんにあれをやられて落ちない男なんかいないと思う。

 その後も上機嫌な彩華さんとの会話はしばらく続き……。

「そろそろ行こっか。次どこ行く?」
「そうだな。ロープウェイでも乗ってみる?」
「いいね! 行こう行こう♪」

 俺たちは次の目的地に向かうことにした。

 地元がデートコースに困らないようなところでよかった。全国的に有名なレンガ倉庫に中華街、世界最大級の観覧車にロープウェイまで、いろいろ揃っているからね。


「今日はありがとう! すっっっっごい楽しかった!」

 その日のデートは深夜まで続いた。定番のデートコースを一通り堪能して、一度は彩華さんの自宅近くまで戻ってきたものの、二人ともそのまま別れるのが名残惜しくて近くのカフェで閉店時間になるまで一緒に過ごしたのである。

「こちらこそ。遅くまで付き合ってくれてありがとう」
「いやいや、引き留めたの私じゃん。ありがとうね」
「俺ももっと一緒にいたかったから」
「最後まで落としにくるんだね。ダメ押しってやつ?」

 どちらかというと落とされているのは俺の方だと思うけどな。今日一日でもう心の隅々まで完落ちしちゃった気がするよ?

「あっ、そうだ。次のバイト、いつ?」
「次? えっと、明日」
「そうなんだ。じゃあ、また明日だね♪」

 やった。彩華さん、明日も来てくれるんだ。というか今の嬉しそうな笑顔よ。ダメ押ししてるのどっちだよ。

「うん、待ってるね。あ、あとさ……」
「うん?」

 正直、俺の自惚れじゃなければ今の状況って間違いなく脈ありだと思うし、彼女がダメ押しとか言ってくれるならちょっとだけ調子に乗ってみよう。

「また誘ってもいいかな?」

 楽しそうに俺の言葉を聞いた彼女の笑顔が、一段とまぶしいものになった。

「もちろん!」
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