少女達の日常

ガル

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朝食ぐらい静かにしろ!

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  スーと音がなりながら襖が開いた。
「ん?他は?」
「平賀お姉ちゃんは畑に行っててにゃーとお姉ちゃんはまだ爆睡してます」
と、ほどよくキツネ色に焼けたパンにマーガリンを塗る四女のユメはいう。ユメという名はあだ名で本当は夢空である。
「平賀姉さんは畑でクソ姉貴とにゃーは寝てるのか。んじゃ、起こさなくてもいいか。めんどくさいし」
サラダにドレッシングをかけて混ぜながら起こしに行くことを放棄する。
(あー体がダルい...。わかってちゃいるけど寝る時間を調整するか、あるい別の方法も考えなくちゃな)
そんなことをボーっと考えながらフュミはサラダをシャクシャク食べていく。
 一方、ユメはマーガリンを塗ったパンにサラダ、目玉焼き、ハムを挟んでもう一回マーガリンを塗ったパンをパフッとのせてサンドイッチを作っていた。
「おーうまそー」
目玉焼きは醬油派なので醬油を目玉焼きにかけながらフュミはいう。
そしてユメはサンドイッチを両手で持って食べた。大きな口を開けて二口で。バリバリバリバリムシャムシャムシャムシャゴックンって。10秒も満たずに。
「おーいい食べっぷり」
そして食べた終わって湯気がのぼる熱々のお茶を一口飲み一呼吸おいて一言、
「ぜんぜっん足りません」
「知らん」
「ぜーんーぜーんーたーりーまーせーんー!」
机をバンバンバンて叩きながら訴えてくる。
「おかわりぐらい自分で持ってこい!」
「えー、それはめんどくさいじゃないですかー」
「めんどくさいやつだな」
「ぷりーずふーど!ぷりーずふーど!」
「お前がよく嚙んで食べないのが悪い!」
ぷりーずふーど!ぷりーずふーど!とずっと言ってくる。
フュミは「ハー・・・」とため息をつき、
「わかった。ちょうどお茶飲み切っちまったところだったから汲んでくるついでになにか持ってきてやるよ」
よっこらっしょと立ち上がって台所にお茶を汲んむついでに何か食べる物を取りに行った。
 食べる物ね・・・と思いつつコポコポコポとマイカップにフュミは少しぬるくしたお茶を注いでいる。
「んま、何かしら食べる物冷蔵庫にあるでしょ」
お茶を注ぎ終わった急須を置き冷蔵庫を開く。

「調理しなくてもいいやつがいいn...」
すっからかんである。冷蔵庫の中身が。一応味噌と七味があるがこれを渡す訳にはいかない。
居間からぷりーずふーど!ぷりーずふーど!とずっと聞こえてくる。
「・・・どうしよ」
とても困った状況である。
(このまま何もありませんでしたなんて言ったら間違いなく泣きわめくに違いない。朝っぱらからそんな事はしたくないし・・・。いやほんとにどうしよどうしよ)
そんなこと考えてたら台所の入り口から、
「フュミお姉ちゃんまだですか?」
とユメの声が近づいてきた。
「ちょ、ちょっと、あとちょっとまってろ!すぐに行くから!」
そう言ってユメの接近を止めようとしたがまったく意味なんてなく
「わたしのお腹はペコペコグーグーなんですけ・・・」
台所の入り口からひょっこりと顏を覗かしたユメは言っている最中に言葉が止まった。冷蔵庫の中身を見てしまったのである。
「あ、あ・・・」
「食べる物は?」
「ま、まってろ。今なにか買ってきてやるからまってろ!」
「ぅ、ぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああもう、うさっさいうさっさい!」
冷蔵庫の中身を見てしまったユメの叫びはとどまることを知らない。
「ほ、ほら何か食べる物買ってきてやるからな?な?ね?・・・ってぜんぜん聞いてないな!こいつ!」
聞く耳を持たず大きくうあうあ泣き騒ぐ。どのくらい大きいかというと寝てるお姉ちゃんたちが起きるんじゃない?っていうくらい。
「ぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ああもう、これでも飲んで黙りやがれ!くらえ!私の知らないうちに机においてあったトリカブト味のジュースを!」
フュミは白衣の内ポケットから『毒物を味わってみよう!!毒物再現シリーズ:トリカブト味』と書かれたペットボトルを出しユメの口の中に無理矢理流し込んでいく。
「いきなりなんでって、う、ぅげまっず・・・」
そう言うと静かになったと思ったら地面にバタンキューと倒れてしまった。
「え、噓。これ気絶するくらいまずいのか。・・・少し気になるな」
好奇心は猫をも殺すというがフュミはどうなんだろうか。
 ゴク
一口飲んだ。
「・・・」
バタッ
これまたユメと同じく静かにバタンキューと倒れた。どうやらフュミは猫だったようだ。
 台所は外から土を掘る音が僅かに聞こえるぐらいの静寂さに包まれていた。
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