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二章

大根のおでんのおでんを食べに列車へ

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 月は変わらず明るく輝いている。少女も変わらずタッタッタッとどこかへ走っている。走っている先を見ても道の脇に2m近い草が生えている道しかない。代わり映えがない。それでも少女は走っていってる。お腹がグゥーと15回くらい鳴いた頃に少女がいきなり止まった。そして回れ右。少女の目の前には酷く廃れ、草やツタが生い茂った無人駅があった。遠くから列車の音が聞こえてくる。どうやらあと少しでこの駅に着くようだ。少女は急いで酷く廃れた無人駅のホームに走ってった。

 黄色い線の外側に立ち、列車の様子を見ている。列車のライトの光は見えるがまだ少し時間がかかりそうだ。少女は酷く廃れた無人駅にある、これまた酷く廃れた自販機の前に立ってジュースを買おうとしていた。さて、少女は自販機の目の前に立ったのはいいが背が低くてボタンに手が届かない。…。何かを思い出したかのようにポンっと手を打った。そして、地面に溶けて沈んだと思ったら、白く猫耳が生えているのは同じだが身長は約160㎝ぐらいになり、服がパーカーになっていた。
「そうだったそうだった」
少女は笑いながら言う。
「なーんで身長が低いのに自販機でジュースを買おうとするのかなー。この格好になるのいつ振りだったけなー」
少女は腹を左手で抱えながらジュースを買う。ゴトッとジュースが落ちてきた音がした。
「あー、笑いすぎた。笑いすぎで喉乾いちゃったよ。」
そう言うと自販機からジュースを取り出し、飲もうとしたら少女の手が止まった。
「・・・。」
ジュースのラベルには『毒物を味わってみよう!!毒物再現シリーズ:トリカブト味』と書いてあった。
「は?」
戸惑い、少しキレながら近くに近づいてくる列車の音が聞こえてきた。少女はため息をつきながら黄色い線の内側に立ち、列車が来るのを待つことにした。

キィィィィィィーと音を立てながら列車は止まり、入り口が開いた。
「はぁ・・・。」
ため息をつきながら少女は乗り込んだ。するとすぐに走り出してった。
「えーっと、一番車両運転席はっと」
そう言いながら運転席に歩いていく。
「お!」
少女は運転席を見つけ、前に立つと、
「はいせーのっ!で」
意気揚々と八つ当たりでバンッと運転席のドアをけり破った。
「ちわーっす。ただ今ご機嫌が直角90度に曲がって悪い奴が邪魔しまーす!」
けり破ったドアの上に立ち、運転手に向けて叫ぶ。
「邪魔するなら帰ってくれ!と言うよりそのドアもなんとかして帰ってくれ!」
少女に負けないくらい大きくデカく叫ぶ。
「うっさいうっさいうっさいな!見て見ろよこれ!『毒物を味わってみよう!!毒物再現シリーズ:トリカブト味』って。なんなんだよこれ!絶対不味いだろこれ!」
「後ろからずっと叫んでうるせぇー奴だなって、また懐かしの持ってきやがったな」
「これか?」
「そいつだよ」
「お前が列車の時だった頃の記憶か?」
運転手と少女の話が静かになる。
「列車だった時なんだけどな」
「うん」
「どっかの会社がな、おもしろがって作ったものらしくてな。そいつを販売したのよ。」
「・・・」
「んで、いざ販売してみると客どもは『なんだこれ』『毒物飲んでみたwって動画にしたらおもしろんじゃね?』とかで人気なったんだよ」
「んで味は?」
「苦い、不味いって言われるならまだいいほうだ。中にはこれ飲むくらいなら泥水飲んでた方がまだいい、トリカブト風味で実際に死なないとは言え不味すぎて本当に死にそうとか散々な言われようだ」
「なんちゅーもん生み出してくれたな!今すぐ殴り込みに行ってやる!」
「ちなみに飲んだら体調不良に失神したとかで訴えられて敗訴して倒産してるから、殴り込みに行く所なんてないぞ」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「うっせー!何回叫べは気が済むんだよ!」
「ああもう!ドアというドア全部けり破っってやる!」
「よーし、表で出ろ!この列車から叩き出してやる!」
「上等じゃ!逆にお前を叩き出してやる!」
楽しい楽しい喧嘩が始まりかけてるのをそばに終着駅が見えてきた。喧嘩は始まるが列車の旅は終わりそうだ。
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