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「では。頂きます」
そう言ったをみは、短くしていない制服のスカートを軽く指で摘み上げ、頭を下げた。
舞踏会かよ、とツッコミながら口の端を上げたつづるは刀を正眼に構える。
でも、をみのそう言うところが良いんだよな。つづるには無い、女の子趣味な物を持ってる。
よし、もう余計な事は考えない。
答えも出した。
後は、大切な友人として決着を付ける。
頭を上げながらスカートから指を離したをみは、またも無防備に歩き出す。心食みが前面に出た時の特徴である薄気味悪い笑みを湛え、つづるに向かって。
しかしその瞳は慈愛に満ちている。
今までとは違う、酷くアンバランスな表情。をみの意識を強く感じる。悪霊が出て行ったのはウソではないようだ。
ひとつ深呼吸をしたつづるは、無心でをみと間合いを詰める。摺り足で、ローファーがコンクリートと擦れる音を廃工場内に響かせながら。
をみの呼吸を感じる。
自然とつづるの呼吸のリズムがをみと重なって行く。
2人の心臓が動くタイミングまで一緒になって行く。
そのリズムに合せて、突然をみが突進して来た。
心臓を掴みに来ると思ったつづるは、伸びて来る手の位置を予想して刀を振った。
が、空振り。をみは屈んでおり、足払いを繰り出して来た。フェイントとはお嬢様らしくない。
刀を振り抜いていたつづるは、刀の重量も合わさり、思いっ切り転ぶ。しかしをみからは決して目を離さず、転んだ勢いのままゴロゴロと転がってをみから距離を離す。お陰で髪や制服が砂だらけになってしまった。
「意外に大人っぽい下着なんですね」
地面に爪を立てながら言うをみ。転がって距離を離していなかったら、あの爪の餌食になっていた。
派手に捲れたスカートを直しながら立ち上がるつづる。
「お母さんがね。高校生になったんだから、子供っぽいのは止めなさいって、ね。何考えてるんだか」
くすくすと笑ったをみは背筋を伸ばす。
「羨ましい。私のお母様は、お仕事で頭がいっぱいなの。そんな事言われた事がない。両親は、私に無関心」
「どうかな。今日、学校にをみの家の人が来てたみたいだけど。心配してると思うよ」
「どうせ使いの者でしょう?」
再び突進して来るをみ。直進だけだった今までとは違い、ぬるりとした動きでジグザグに走って来る。
動きを予想し、肩からをみに体当たりするつづる。刀を警戒しながら隙を探していたをみは、不意を食らってよろめいた。
「ゴホッ……」
咳き込んだをみに向かって、袈裟掛けに刀を振るつづる。
をみは超反応で後ろに下がり、ギリギリで避ける。クリーニングされ、アイロンの掛ったをみの制服が少し切り裂かれた。
をみは素早く一呼吸し、つづるが構え直す前に間合いを詰める。つづるの眉間に向けて右ストレートの構え。首を曲げてそれを避ける準備をするつづる。
しかしパンチは放たれなかった。パンチの構えから上半身を後ろに倒し、大きく片足を上げ、かかと落としをするをみ。その格好は格闘と言うより、アイススケートの変形技の様だった。
今度はをみの質素な白い下着が丸見えとなる。それに気を取られる暇は無いので、かかと落としから身体を逸らそうとするつづる。が、刀の重量が邪魔をして上手く避けられそうもなかった。だから瞬間的に回避を中止し、刀から左手を離す。その左手で落ちて来るをみの足に遠心力を乗せたフックを当てる。とっさの行動で腰が入っていないが、押し退ける様に体重を乗せる事により、つづるの身体に当たる軌道から外す事には成功した。
をみがバレエの様にクルリと一回転して体制を立て直している間に、つづるも刀を構え直す。
動きを止め、睨み合う2人。
武器を持ったつづるの方が有利かと思ったが、意外にそうじゃなかった。接近戦では、むしろ身軽な素手の方が強い。
そんな事を考えたつづるは、プッと噴き出した。
訝しむをみ。
「私も完璧に心絶ちに取り付かれてるな。これ、女の子同士の戦いじゃないよね」
をみも笑む。
「かも知れませんね。私も自分がこんなに動けるとは知りませんでした。他の人を襲う時は、私は眠ってますので」
「そうなの?」
「正確には、瞼は開いているけれど目を瞑っている状態、と言いましょうか。つづるさんを怖がらせて怯ませる為に色々言いましたが――」
可愛らしく肩を竦めるをみ。
「私、ホラーとか苦手で。本当は教科書等に載っている省略化された人体解剖図も直視出来ないくらいなんです」
「うーん。こんな結果になった今では、ちょっと信じられないかな」
今度はつづるが先手を取る。スイカ割りの様に思いっ切り真上に刀を振り上げ、一気に間合いを詰めた。
そのまま振り下す。
紙一重で避けるをみ。
つづるは踏ん張り、縦に振った軌道を直角に曲げた。両腕の筋肉が悲鳴を上げる。明らかに肉体の限界を超えた動きを刀にやらされている。
こりゃ筋肉痛になるな、と思いながらクルリとコマの様に一回転するつづる。
アキレス腱が軋むほど踏ん張り、バク転して薙ぎ払いを避けたをみに追撃。低い位置で2度目の薙ぎ払い。
ジャンプして避けるをみを更に追撃、切り上げる。
が、をみはジャンプと同時に身体を回転させて旋風脚をした。つづるの横っ面にめり込むをみのローファー。軽くて衝撃は少なかったが、結構痛かった。ジャンプの軌道修正が目的だった様で、をみはかなり遠くまで飛んで行く。
「いってぇ。――女の子の顔に蹴りを入れるなんて、酷い」
蹴られた部分を撫でるつづる。思った以上の重さが乗った蹴りを食らった様だ。どうやら痛みの感覚が鈍っているらしく、頬と首に今までに感じた事の無い違和感が出ているのに全然平気だ。本来なら顔に蹴りを食らった時点で気を失っていてもおかしくない。つづるは身体を鍛えていない普通の女子高校生なんだし。
自分の身体なのに不自然で気持ち悪い。
「ごめんなさい」
ペロッと舌を出して謝るをみ。
可愛らしいが、何だか目に力が無くなって来ている。
良く見ると、額に脂汗が浮かんでいる。
「辛そうだね、をみ」
「……ええ。無茶な動きをしていますので、数分で息が切れます。早くつづるさんを食べて楽になりたいですわ」
「じゃ、そろそろ終わりにしようか」
「はい。そうして頂けると有り難いです」
コンマ1秒のズレも無く、2人同時に間合いを詰める。
狙いは、2人共相手の心臓。
まるで長年離れ離れになっていた恋人が抱き合うかの様に、勢い良く身体を重ねる2人。
「……あれ?」
つづるの左胸に爪を立てたをみは、その固い感触に驚きと疑問の声を上げた。指がめり込んではいるのだが、心臓を抉るまで行かない。
抱き合っている様な形なので、つづるの耳元で囁く様に喋るをみ。
「何か仕込んでいるんですか?」
「うん。サラシをきつく巻いてるんだ。タオルとダンボールも挟んでる」
つづるもをみの耳元で囁く。
「そうですか。そうですね。私が何をするのかが分かっているのなら、当然、対策をしますよね。時間が無くて焦ったのが失敗でした」
をみは自分の左胸に視線を落とす。日本刀が深々と刺さっていた。きっと白刃が背中から生えているかの様に突き出ているだろう。この日本刀がをみの心臓を破壊し、鼓動を止めた。
終わった。
「愛しています。つづる」
目の前に有った唇に唇を重ねるをみ。つづるの唇はかさかさだけど温かく、をみの唇はぷよぷよだけど冷たかった。
「ふぅっ……」
それからつづるを突き飛ばしたをみは、刀身を素手で掴み、気合いと共に抜いた。刺さったままだと、心食みと呼ばれている部分の大切な物が刀にズルズルと吸い取られて行くから。こんな刀が無ければ想いが遂げられるのに、と言う恨みを込めて投げ捨てる。
「あは。つい……呼び捨てに……してしまいました」
すでに心臓が止まっている為、傷口から出る血の勢いは少ない。それでも可愛いと評判の制服がみるみる赤黒く染まって行く。
「をみっ……!」
崩れ落ちるをみを抱き止めるつづる。
「ごめんね! ごめんなさい!」
泣きながら謝るつづるに笑みを向けたをみは、そのまま事切れた。
一週間に亘って街を騒がせた連続猟奇殺人事件は、これで幕を閉じた。
そう言ったをみは、短くしていない制服のスカートを軽く指で摘み上げ、頭を下げた。
舞踏会かよ、とツッコミながら口の端を上げたつづるは刀を正眼に構える。
でも、をみのそう言うところが良いんだよな。つづるには無い、女の子趣味な物を持ってる。
よし、もう余計な事は考えない。
答えも出した。
後は、大切な友人として決着を付ける。
頭を上げながらスカートから指を離したをみは、またも無防備に歩き出す。心食みが前面に出た時の特徴である薄気味悪い笑みを湛え、つづるに向かって。
しかしその瞳は慈愛に満ちている。
今までとは違う、酷くアンバランスな表情。をみの意識を強く感じる。悪霊が出て行ったのはウソではないようだ。
ひとつ深呼吸をしたつづるは、無心でをみと間合いを詰める。摺り足で、ローファーがコンクリートと擦れる音を廃工場内に響かせながら。
をみの呼吸を感じる。
自然とつづるの呼吸のリズムがをみと重なって行く。
2人の心臓が動くタイミングまで一緒になって行く。
そのリズムに合せて、突然をみが突進して来た。
心臓を掴みに来ると思ったつづるは、伸びて来る手の位置を予想して刀を振った。
が、空振り。をみは屈んでおり、足払いを繰り出して来た。フェイントとはお嬢様らしくない。
刀を振り抜いていたつづるは、刀の重量も合わさり、思いっ切り転ぶ。しかしをみからは決して目を離さず、転んだ勢いのままゴロゴロと転がってをみから距離を離す。お陰で髪や制服が砂だらけになってしまった。
「意外に大人っぽい下着なんですね」
地面に爪を立てながら言うをみ。転がって距離を離していなかったら、あの爪の餌食になっていた。
派手に捲れたスカートを直しながら立ち上がるつづる。
「お母さんがね。高校生になったんだから、子供っぽいのは止めなさいって、ね。何考えてるんだか」
くすくすと笑ったをみは背筋を伸ばす。
「羨ましい。私のお母様は、お仕事で頭がいっぱいなの。そんな事言われた事がない。両親は、私に無関心」
「どうかな。今日、学校にをみの家の人が来てたみたいだけど。心配してると思うよ」
「どうせ使いの者でしょう?」
再び突進して来るをみ。直進だけだった今までとは違い、ぬるりとした動きでジグザグに走って来る。
動きを予想し、肩からをみに体当たりするつづる。刀を警戒しながら隙を探していたをみは、不意を食らってよろめいた。
「ゴホッ……」
咳き込んだをみに向かって、袈裟掛けに刀を振るつづる。
をみは超反応で後ろに下がり、ギリギリで避ける。クリーニングされ、アイロンの掛ったをみの制服が少し切り裂かれた。
をみは素早く一呼吸し、つづるが構え直す前に間合いを詰める。つづるの眉間に向けて右ストレートの構え。首を曲げてそれを避ける準備をするつづる。
しかしパンチは放たれなかった。パンチの構えから上半身を後ろに倒し、大きく片足を上げ、かかと落としをするをみ。その格好は格闘と言うより、アイススケートの変形技の様だった。
今度はをみの質素な白い下着が丸見えとなる。それに気を取られる暇は無いので、かかと落としから身体を逸らそうとするつづる。が、刀の重量が邪魔をして上手く避けられそうもなかった。だから瞬間的に回避を中止し、刀から左手を離す。その左手で落ちて来るをみの足に遠心力を乗せたフックを当てる。とっさの行動で腰が入っていないが、押し退ける様に体重を乗せる事により、つづるの身体に当たる軌道から外す事には成功した。
をみがバレエの様にクルリと一回転して体制を立て直している間に、つづるも刀を構え直す。
動きを止め、睨み合う2人。
武器を持ったつづるの方が有利かと思ったが、意外にそうじゃなかった。接近戦では、むしろ身軽な素手の方が強い。
そんな事を考えたつづるは、プッと噴き出した。
訝しむをみ。
「私も完璧に心絶ちに取り付かれてるな。これ、女の子同士の戦いじゃないよね」
をみも笑む。
「かも知れませんね。私も自分がこんなに動けるとは知りませんでした。他の人を襲う時は、私は眠ってますので」
「そうなの?」
「正確には、瞼は開いているけれど目を瞑っている状態、と言いましょうか。つづるさんを怖がらせて怯ませる為に色々言いましたが――」
可愛らしく肩を竦めるをみ。
「私、ホラーとか苦手で。本当は教科書等に載っている省略化された人体解剖図も直視出来ないくらいなんです」
「うーん。こんな結果になった今では、ちょっと信じられないかな」
今度はつづるが先手を取る。スイカ割りの様に思いっ切り真上に刀を振り上げ、一気に間合いを詰めた。
そのまま振り下す。
紙一重で避けるをみ。
つづるは踏ん張り、縦に振った軌道を直角に曲げた。両腕の筋肉が悲鳴を上げる。明らかに肉体の限界を超えた動きを刀にやらされている。
こりゃ筋肉痛になるな、と思いながらクルリとコマの様に一回転するつづる。
アキレス腱が軋むほど踏ん張り、バク転して薙ぎ払いを避けたをみに追撃。低い位置で2度目の薙ぎ払い。
ジャンプして避けるをみを更に追撃、切り上げる。
が、をみはジャンプと同時に身体を回転させて旋風脚をした。つづるの横っ面にめり込むをみのローファー。軽くて衝撃は少なかったが、結構痛かった。ジャンプの軌道修正が目的だった様で、をみはかなり遠くまで飛んで行く。
「いってぇ。――女の子の顔に蹴りを入れるなんて、酷い」
蹴られた部分を撫でるつづる。思った以上の重さが乗った蹴りを食らった様だ。どうやら痛みの感覚が鈍っているらしく、頬と首に今までに感じた事の無い違和感が出ているのに全然平気だ。本来なら顔に蹴りを食らった時点で気を失っていてもおかしくない。つづるは身体を鍛えていない普通の女子高校生なんだし。
自分の身体なのに不自然で気持ち悪い。
「ごめんなさい」
ペロッと舌を出して謝るをみ。
可愛らしいが、何だか目に力が無くなって来ている。
良く見ると、額に脂汗が浮かんでいる。
「辛そうだね、をみ」
「……ええ。無茶な動きをしていますので、数分で息が切れます。早くつづるさんを食べて楽になりたいですわ」
「じゃ、そろそろ終わりにしようか」
「はい。そうして頂けると有り難いです」
コンマ1秒のズレも無く、2人同時に間合いを詰める。
狙いは、2人共相手の心臓。
まるで長年離れ離れになっていた恋人が抱き合うかの様に、勢い良く身体を重ねる2人。
「……あれ?」
つづるの左胸に爪を立てたをみは、その固い感触に驚きと疑問の声を上げた。指がめり込んではいるのだが、心臓を抉るまで行かない。
抱き合っている様な形なので、つづるの耳元で囁く様に喋るをみ。
「何か仕込んでいるんですか?」
「うん。サラシをきつく巻いてるんだ。タオルとダンボールも挟んでる」
つづるもをみの耳元で囁く。
「そうですか。そうですね。私が何をするのかが分かっているのなら、当然、対策をしますよね。時間が無くて焦ったのが失敗でした」
をみは自分の左胸に視線を落とす。日本刀が深々と刺さっていた。きっと白刃が背中から生えているかの様に突き出ているだろう。この日本刀がをみの心臓を破壊し、鼓動を止めた。
終わった。
「愛しています。つづる」
目の前に有った唇に唇を重ねるをみ。つづるの唇はかさかさだけど温かく、をみの唇はぷよぷよだけど冷たかった。
「ふぅっ……」
それからつづるを突き飛ばしたをみは、刀身を素手で掴み、気合いと共に抜いた。刺さったままだと、心食みと呼ばれている部分の大切な物が刀にズルズルと吸い取られて行くから。こんな刀が無ければ想いが遂げられるのに、と言う恨みを込めて投げ捨てる。
「あは。つい……呼び捨てに……してしまいました」
すでに心臓が止まっている為、傷口から出る血の勢いは少ない。それでも可愛いと評判の制服がみるみる赤黒く染まって行く。
「をみっ……!」
崩れ落ちるをみを抱き止めるつづる。
「ごめんね! ごめんなさい!」
泣きながら謝るつづるに笑みを向けたをみは、そのまま事切れた。
一週間に亘って街を騒がせた連続猟奇殺人事件は、これで幕を閉じた。
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