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第二十五話
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迎えの船に横付けされる救助艇。こうしてすぐ横まで来ると、凄く大きな軍艦である事が分かる。
「まずはレインボー姫からお登りください」
軍艦から下ろされた縄梯子を海風に持って行かれない様に押さえながら言うセーラー服の男。
レイは風で揺れる銀髪を手で纏めながら慎重に立ち上がる。小舟がひっくり返って遭難した直後なので、恐怖心からへっぴり腰になっている。
「もしもわたくし達の誰かがバランスを崩して海に落ちたら、すぐに助けて頂けますか?」
「ご安心ください。私は泳ぎが得意ですし、救助の訓練も受けております」
セーラー服の男が頼もしく頷いたので、レイは王女スマイルになった。
「そぉいッ!」
いきなりバードの襟首を掴んだレイは、女性にあるまじき怪力で薄汚い男を海に投げ落とした。
宙を舞った後に水飛沫を上げたバードを見送ったカレンとプリシゥアは「そりゃそうなるよね」と苦笑した。
「一体何が?」
目を白黒させながらバードに救助の手を伸ばしているセーラー服の男を尻目にスイスイと縄梯子を登って行くレイ。
次に登ろうと中腰になるプリシゥア。
「その男、船が揺れる度に私達の身体を触り捲ったんスよ。軍人さんは触ってないっスから確信犯っス。ちゃんと助かるかどうか確認してから落とすんスから、レイは優しいっスね。私はぶん殴って歯を折りたいっス」
プリシゥアが軽い口調でこぶしを握る。
「俺は目が見えないんだから、揺れたら大袈裟に手を伸ばすのはしょうがないだろ。たまたまそこに君達が居ただけで」
船に引き上げられたバードが海水を吐きながら言い訳すると、プリシゥアは派手に指の骨を鳴らした。
「どっちでも良いからさっさと登るっス。後がつかえてるんスから」
「たった今溺れ掛けたの分かってるくせに急かすなんて、理不尽だなぁ」
「あ? 島に残りたいんスか?」
「ハイスミマセン」
色々有ったが、無事に遭難者全員が船に上がった。
安堵の一息を吐く間も無く船長を呼ぶレイ。
「あちらの方向にテルラが、ダンダルミア大聖堂跡取りのテルラティア・グリプト様が遭難なさっています。すぐに助けに向かいましょう」
白い髭が似合う恰幅の良い船長がそちらを見る。目印になる物は何も無い。
「それは近いのですか?」
「方向しか分かりませんわ。バード、テルラが漂着した島は近いですか?」
びしょ濡れのバードは広い甲板で座っている。ロン毛が顔や肩に張り付いていて見苦しい。
「君達が用意していた手漕ぎの小舟で真っ直ぐ向かっていたら遠くはない。歩きと同じスピードなら数時間から半日だろうな。海流とかは見えないから、そう言うのを無視したらの話だけど」
「ふーむ。――航海士」
部下を呼ぶ船長。
言葉短かに相談した後、申し訳なさそうにレイに向き直る。
「ポーカンカの領海に近いため、これ以上南に進む事は出来ません。本船は軍艦なので、領海侵犯をしなくても、近付いただけで国際問題になります」
「領海侵犯」
納得していない顔のレイを見て慌てる船長。
「この辺りは海賊出没地域なので、急いで王女様を救出するには軍艦を出す必要が有ったのです。これ以上探索を続けるとなると、ポーカンカの許可を得ませんと。勿論手続きは出航前から行っていますが、数日で済む作業ではありませんので……」
「ぐぬぬ」
歯を食いしばっているレイが無茶を言い出す前に説得しようとカレンとプリシゥアが動くと、その前にバードが口を開いた。
「おとといも言ったが、テルラとか言う奴が居る島は、俺達が居た島と条件はほぼ同じだ。動物を捌けない甘ちゃんでも一週間くらいは生きられる。ワガママで軍人さんを困らせるなよ、王女様」
「分かっていますわ! しかし、早急な救助活動をお願いしますわ!」
顔を真っ赤にして堪えている王女にビビル船長と甲板に居る船員達。
「勿論です! 本船は一旦エルカノートの港に戻りますが、すぐに救助に向けて準備を行います!」
「まずはレインボー姫からお登りください」
軍艦から下ろされた縄梯子を海風に持って行かれない様に押さえながら言うセーラー服の男。
レイは風で揺れる銀髪を手で纏めながら慎重に立ち上がる。小舟がひっくり返って遭難した直後なので、恐怖心からへっぴり腰になっている。
「もしもわたくし達の誰かがバランスを崩して海に落ちたら、すぐに助けて頂けますか?」
「ご安心ください。私は泳ぎが得意ですし、救助の訓練も受けております」
セーラー服の男が頼もしく頷いたので、レイは王女スマイルになった。
「そぉいッ!」
いきなりバードの襟首を掴んだレイは、女性にあるまじき怪力で薄汚い男を海に投げ落とした。
宙を舞った後に水飛沫を上げたバードを見送ったカレンとプリシゥアは「そりゃそうなるよね」と苦笑した。
「一体何が?」
目を白黒させながらバードに救助の手を伸ばしているセーラー服の男を尻目にスイスイと縄梯子を登って行くレイ。
次に登ろうと中腰になるプリシゥア。
「その男、船が揺れる度に私達の身体を触り捲ったんスよ。軍人さんは触ってないっスから確信犯っス。ちゃんと助かるかどうか確認してから落とすんスから、レイは優しいっスね。私はぶん殴って歯を折りたいっス」
プリシゥアが軽い口調でこぶしを握る。
「俺は目が見えないんだから、揺れたら大袈裟に手を伸ばすのはしょうがないだろ。たまたまそこに君達が居ただけで」
船に引き上げられたバードが海水を吐きながら言い訳すると、プリシゥアは派手に指の骨を鳴らした。
「どっちでも良いからさっさと登るっス。後がつかえてるんスから」
「たった今溺れ掛けたの分かってるくせに急かすなんて、理不尽だなぁ」
「あ? 島に残りたいんスか?」
「ハイスミマセン」
色々有ったが、無事に遭難者全員が船に上がった。
安堵の一息を吐く間も無く船長を呼ぶレイ。
「あちらの方向にテルラが、ダンダルミア大聖堂跡取りのテルラティア・グリプト様が遭難なさっています。すぐに助けに向かいましょう」
白い髭が似合う恰幅の良い船長がそちらを見る。目印になる物は何も無い。
「それは近いのですか?」
「方向しか分かりませんわ。バード、テルラが漂着した島は近いですか?」
びしょ濡れのバードは広い甲板で座っている。ロン毛が顔や肩に張り付いていて見苦しい。
「君達が用意していた手漕ぎの小舟で真っ直ぐ向かっていたら遠くはない。歩きと同じスピードなら数時間から半日だろうな。海流とかは見えないから、そう言うのを無視したらの話だけど」
「ふーむ。――航海士」
部下を呼ぶ船長。
言葉短かに相談した後、申し訳なさそうにレイに向き直る。
「ポーカンカの領海に近いため、これ以上南に進む事は出来ません。本船は軍艦なので、領海侵犯をしなくても、近付いただけで国際問題になります」
「領海侵犯」
納得していない顔のレイを見て慌てる船長。
「この辺りは海賊出没地域なので、急いで王女様を救出するには軍艦を出す必要が有ったのです。これ以上探索を続けるとなると、ポーカンカの許可を得ませんと。勿論手続きは出航前から行っていますが、数日で済む作業ではありませんので……」
「ぐぬぬ」
歯を食いしばっているレイが無茶を言い出す前に説得しようとカレンとプリシゥアが動くと、その前にバードが口を開いた。
「おとといも言ったが、テルラとか言う奴が居る島は、俺達が居た島と条件はほぼ同じだ。動物を捌けない甘ちゃんでも一週間くらいは生きられる。ワガママで軍人さんを困らせるなよ、王女様」
「分かっていますわ! しかし、早急な救助活動をお願いしますわ!」
顔を真っ赤にして堪えている王女にビビル船長と甲板に居る船員達。
「勿論です! 本船は一旦エルカノートの港に戻りますが、すぐに救助に向けて準備を行います!」
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