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第二十四話

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 ふやけた保存食を胃袋に納めて処分したテルラとミマルンは、街の中以外では初めてお腹いっぱいになった。
 捕まえた犬を日持ちする様に処理し、生木を焚火にくべて白い煙を必要以上に空に放つと、太陽が水平線に近付いて来た。
「明日は探索でいっぱい歩くでしょうから、今日はもう休みましょう。火の番は僕からにしましょう」
 テルラはテントの設営場所の選定を始めた。
 ミマルンも手伝いますと言って周囲をうろついた。
 砂浜だとペグが撃てないので、林をちょっと入った場所で草を刈りつつ建てた。地面がデコボコだが、木々が海風を防いでくれるので都合が良かった。
「うーん。寝転がると、木の枝で背中が痛いですね。でも、ここが一番の場所でしたし……」
 テントの床になるシートの上で横になったミマルンが寝返りを打ちながら不満そうな顔をしたが、テルラは構わずにテントを立てた。
 ミマルンはそれ以上何も言わず、ペグ打ちに手を貸す。
「寝難くても寝なければ。今日は色々有って疲れましたからね」
 干してあった衣類や毛布をテントの中に仕舞うテルラ。閉じた空間だと、とても潮臭い。明日は朝から洗濯だ。
「……テルラも疲れているでしょう? 一緒に寝ませんか?」
 テントの設営完了で一息吐いたミマルンが変な事を言い始めたので、テルラは不思議そうに首を傾げた。
「え? いえ、どちらかが火の番をしなければ。野営はどちらかが起きていなければなりません」
「私には一人旅の期間が有ります。その時は火を消し、気配を消して寝ていました。ここは海風で火の維持が難しいので、いっその事火種にしてしまった方が良いかと」
「いえ、ですから、のろしの意味も有るので、火は消せません。無人島に火の明かりが有れば、夜の漁船あたりに気付いて頂けるかも知れませんし」
「そうですか」
 林から出たミマルンは、黒髪のポニーテールを解いて水平線の方に顔を向けた。太陽は背後の方に沈んでいるので、こちらは東か。
「私としては海賊に見付かるリスクの方が怖いんですが。目立つ行動は、他の三人がこの付近に居るか居ないかを確かめてからにしたいです」
「確かに判断が難しいところですが……うーん」
 テルラは苦悩の表情で水平線を見た。
 あの三人が海に沈んでいる可能性も有るが、最悪な事は考えたくない。
 ミマルンは、そうやって考えない様にしているのを見抜いているかの様にテルラを休ませようとする。
「床がデコボコなテントなら熟睡出来ないでしょう。不審な物音が有れば、きっと嫌でも目覚めます。それに、外で夜の海風に当たり続けると体調を崩すかも知れません。寝られずに寝不足になるのなら、それを見越して二人で朝まで寝ましょう」
「いえ、やはり火は絶やさない様にします。それに、エルカノートの女神教では未婚の男女が同じ部屋で寝る事を良しとしていません。女神様に三人の無事を願う為にも、教義はキッチリと守りたいです」
 迷いを吹っ切った顔になるテルラ。
「照れは一切無し、ですか。なるほど、これはレイがいくらアプローチしても揺るがない訳だ」
 ため息交じりで納得するミマルン。
 むしろ、ミマルンが甘い誘いをしたからこそ真面目な判断をしたらしい。
「分かりました。では、お先に休みます」
「はい」
 笑顔で頷いたテルラは、遭難直後の余裕の無い短い時間で確保した薪の量を確かめた。
 生木を含んでも良い状況なので、一晩くらいなら余裕で持ちそうだった。
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