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第二十二話

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「金山の街、ゴールドグラスに到着ですわ」
 先頭のレイがそう言ったが、他のパーティメンバー達はピンと来ていなかった。大きな街なら有るはずの、侵入者を防ぐ城壁が無かったからだ。小さな村でさえ獣除けの柵が有るのに、それすら無い。
「観光業が盛んな街だと聞いていましたが、それにしてはさびれ過ぎでは?」
 レイと並んで先頭を歩くミマルンが不安そうに言う。人気が無いのは魔物のせいで観光客が居ないからだと思うが、見える建物が手作り感溢れる布張りのログハウスばかりで、下町のホームレス街に近い雰囲気が有る。しかも掃除されていないのでちょっと臭い。
「わたくしは何度か訪れた事が有るので間違いは有りませんわ。ここは入り口で、メインは川沿いなのです。入り口が汚いのは――」
「こんにちは、お姉ちゃん達。砂金取りに良い場所知ってるんだけど、どう?」
 レイが説明しようとしているのを遮り、小さな男の子が早速観光案内をさせろと言って来た。
 その後ろには、更に小さな数人の女の子が居る。
 全員みすぼらしい服を着ていて、浮浪児だと一目で分かる小汚さだった。
「『寄付先は決まっていますわ』。わたくし達の目的地は奥なので急ぐのです。奥の意味、分かりますわよね? ごきげんよう」
 歩くスピードを緩めずに言うレイ。
 子供達はアッサリ諦め、その場でタムロした。
「あれが噂の観光案内だね。ところで、奥って何?」
 代わりにカレンが食い付いて来た。
「ここを下町とすると、奥は上町と言う意味になりますわ。言葉をそのまま受け取ると貴族街になりますが、実際は他の街で言うところの普通の住宅街ですわ。一般の観光客はそちらまで行く用事は無いでしょうから、わたくし達の目的は観光ではないと言うアピールになります」
「へぇー。で、砂金って?」
 それに応えるのはプリシゥア
「観光の目玉は金山から流れて来る川での砂金取りなんス。取れた砂金はお持ち帰り自由っスから、観光ついでのお小遣い稼ぎになる訳っスよ」
「砂金貰えるの? 凄いじゃん。そりゃ人気の観光地になる訳だ」
 納得して二度頷いたカレンは、ふと気付く。
「じゃ、さっきの子供達も砂金取りすればお金持ちになれるんじゃない? なんでボロボロの服着てるの? 家も貧乏くさいし」
「金をクラゥに換金する場所が無いからっス。ここは金山の街っスから、上町以外の住人は全て工夫扱いになってるっス。工夫と言う働き手だからタダでご飯が食べられるんスね」
 法律とか道徳とかから文句を言われないための方便なんスけどね、と続けるプリシゥア。
「下町の住人、つまり工夫が金を取っても街に没収され、国庫に入るっス。だから観光客に絡んでチップを貰い、ちゃんとした通貨であるクラゥを稼がないといけないって訳っス」
「なるほどー。でも私なら、砂金をこっそり溜め込んで街を出るかなー。いやでも、この街に居れば食費がタダか。うーん、悩む」
「まぁ、そんな感じで上手く回ってる訳っスよ、この街は。ちなみに、カレンが言う様に砂金を溜め込んで街を出てもお咎め無しのハズっス。それで生きて行けるならどうぞご自由に、って感じっス」
 次々と絡んで来る子供達をあしらいながら話に入って来るレイ。
「街に入った時に言おうとしていた話ですが、身形と家屋がボロボロなのはワザとと聞いていますわ。内情を知らない観光客に『自分達みたいな子供が貧しい暮らしをしていて可哀想でしょ?』と同情を誘うためだとか。同情されればチップが増えますから」
「はぁー。したたかと言うか、賢いと言うか」
「街を囲む壁が無いのは、出るのも入るのも自由だからですか?」
 肌の色を珍しがっている子供に悪い印象を持たせない様に笑顔を向けているミマルンに頷くレイ。
「外から悪い人が侵入しても、ボロ屋を襲うより川で砂金取りしたほうが儲かりますしね。川の水に鉱毒が含まれているとかで、野生動物も近付きませんし。――あ、そうそう。川の水を飲んではいけませんよ。鉱毒の他にも、人が砂金拾いに入って汚れていますから」
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